戦争が急に終わったせいで無職になった元兵士の女の子が路頭に迷ってしまった話   作:エルカス

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12凄く申し訳ないので実家を出て行く事にする

「突然帰って来たと思ったら・・・・その後ろの歩く毒ガス兵器ともう一人は何なんだい?」

 

「誰が毒ガス兵器――」

 

「シッ!」

 

「スンマセン」

 

 

やっぱり帰ってくるという手紙は届いておらず、私の突然の帰宅と謎の二人組の存在に祖母は困惑して険しい顔をしている、この上なく険しい。

アレンの馬鹿の匂いのせいか、リーリスの痛々しい顔のせいか、私のせいか。

今はただ願い懇願する事しか出来ない。

 

 

「・・・・・お願いがあります、おばあちゃん」

 

「・・・・・なんだい」

 

「この二人を、雇ってくれませんか。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・何で」

 

「二人ともお金に、困っているんです。・・・・助けがいるんです」

 

「あんたとベッドを共にした野郎でもそこら辺に生えてる脳無し共だろうが何で私が知りもしない奴に貴重な金を払ってやらないけない」

 

「私のお世話になった人、友達だからです」

 

「・・・・・・・・」

 

「お願いします、一生のお願いです。・・・・・・時間を貰えば私が二人の賃金を支払います、建て替えて貰えるだけで良いんです」

 

「お、お願いしますぅうう!!!。」

 

「ボコン!」

 

「ア、ヤベ」

 

 

この馬鹿はわざとなのか天然なのか・・・まあ馬鹿だからわざとではないのだろう。

四つん這いになって土下座を勢いよくしたらヘドバンで床に穴をあけてくれた。

 

 

「あ、え・・・お、ね、がい・・・・、します」

 

「・・・・・・」

 

 

上手く行く確証なんてない。私は卑怯な手を使っている。

祖母が私の事をあまり好いていない事は知っていた、だけれど人間が持ち合わせている良心に期待して。

特に家族に多くの『兵士』を持つ祖母なら並みの人より私達を人と近しい存在として見てくれる。

だからリーリスの傷が良く見えるようにわざと解かせ、アレンには大袈裟に土下座させた、額を地面に打ち付けて血が流れるぐらいに

・・・・・地面が陥没してるからアレンの方は完全に失策だったけど。

 

 

「・・・・・・・お断りだ。」

 

「・・・・・・そう、ですか・・・・・突然帰って来て、無理なお願いをしてごめんな―――」

 

 

 

「人の話は最後まで聞きなカフカ」

 

「・・・・!」

 

「そこの兵士の悪い所ばかり集めたような脳筋バカが破壊した床を直さない限り、私はお断りだね、自分の不始末を片付けられないガキを雇う何てごめんだからね。」

 

「あ、ありがとうございます!ありがとうございます!」

 

「・・・・・・ありがとう、ございます・・・・・・」

 

「あーあ、あんたさん何でこんな・・・・こっちに来な、ないよりはマシな薬ぐらいはあるからね、まあ・・・大事な顔にどうしてこんな・・・・」

 

 

失敗した、と思ったのは早計だった。

作戦が功を奏したのか、策を弄さなくても祖母は私の提案を受け入れてくれたのかは分からないけれど。

いの一番にリーリスを心配して薬を付けてあげる姿を見て私は一安心した。

 

 

「本当に感謝するよ!このお礼はいつか必ずきっとする!絶対にするよ!」

 

「勘違いしないで、私はリーリスを助けたの、アレンはそのついで。

リーリスをないがしろにしたり私のおばあちゃんに故意だろうと事故だろうと何かあったらアンタを殺しにすっ飛んでくるからね」

 

「ああ、任しとけ!・・・・って、え?カフカはここにいないのか?」

 

「・・・・・・そ、そうね、元々帰るつもりじゃなかったし」

 

「じゃあ何処に向かってたんだ?。」

 

「何処でもいいでしょ、とにかく・・・・リーリスとおばあちゃんをよろしくね」

 

「ああ任せとけ!遠くへ行く機会があったらさ、俺の家族っぽい奴がいたら教えてくれよ」

 

「うん分かった、じゃあ・・・・・・許す!」

 

「な、何を?」

 

「私から持ち物を掠め取ろうとした事」

 

「あ~悪かったよ本当、ごめん・・・・ごめんなさい」

 

「出頭しろとは言わないけど私以外からも取ってるでしょ?彼らにも心では謝罪しておきなさいよ」

 

「何でだよ」

 

「許すのやめるよ?」

 

「な、何でだよ!アイツら散々俺達を都合よく利用してポイ捨てするノーマル野郎共だぜ!?一体何人の仲間がアイツらに使い潰されて冷たい泥に下に埋まったか・・・・!」

 

「でも彼らが私達を死地に追いやった訳じゃない、生まれ持ったこの力でしか出来ない事があったから私達は兵士になる宿命を背負っていたの、彼らを代わりに行かせてもしょうがないじゃない」

 

「でもよ、だからって・・・・・いや、カフカ、あんたはきっといい人に恵まれたんだ、だから俺の考えは分からないんだろうよ。」

 

「・・・・・私のおばあちゃんは普通の人間だよ、同じこともう一度言ってくれる?」

 

「え、あ・・・・そ、そっか、ごめん・・・・・俺が悪かったよ。考えを改めるよ、でも・・・・俺の言う事も分かってくれ、人の善性を信じ過ぎたらいつか自分が食い物になるんだぜ?それに助けられたばっかり俺が言うのは失礼だけどよ」

 

「・・・・・・・覚えとく」

 

 

確かに私達兵士をそれだけで下に見て排斥する奴も嫌いだけど、悪人だからといって何をしても許されると自分を正当化する奴も大嫌いだ。

力があろうとなかろうと私達を私達たらしめるのは理性と社会規範だと信じている。

ルールに従って模範的な献身を続ければいつかきっと大きな溝も埋まると信じている。

力に酔って分断を加速させる大馬鹿も力を恐れて弾圧する愚か者も、私は等しく嫌いで許せないのだ。両者は同じ穴のムジナとさえ思う。

 

 

「突然で急な事を言ってごめんなさい、学校は・・・まだ暫く行けそうにない」

 

「そうかい、お金はどうなんだい?」

 

「これぐらいは・・・・。」

 

「随分と・・・・持ったんだね」

 

 

私は所持金の殆どをテーブルに出す、祖母はそれを取り枚数を数えて自分の手元に置いたままにしている。

今はこれぐらいしか出せないけれど色々迷惑かけたから今後はもっと用意しなければいけないだろう。

私は席を立ち荷物を持つ。

 

 

「待ちな、何処に行くんだ?」

 

「ここへは寄っただけだから。本当にごめん」

 

「だからどこに行くと聞いているんだい。」

 

「仕事・・・・・仕事転勤になったの。」

 

「・・・・・・私はてっきり仕事をやめてアンタがここに舞い戻って来たんだと思ったんだがね、そうかい!」

 

「リーリスは特に・・・・いい子なの、問題があったら私に手紙を・・・出してくれれば、新しい住居は後で手紙送るから。」

 

「ああ、・・・・・ああ、・・・・二人に別れは言わなくていいのかい?友達なんだろ?」

 

「いいの」

 

「そうかい、行ってきな・・・存分に」

 

「うん、ありがとう・・・・本当に、ありがとう。」

 

 

しかし、私が勝手に祖母が新しい人を雇っていると思っていただけでこの農場には一人しかしなかった。

誤解の謝罪も込めて、私は祖母に向けて深々と頭を下げた。

きっとこの農場に四人は狭すぎるから。

祖母と二人の時は少し疲れる日もあるけど問題なく回せていたから私がいても過剰戦力で人件費が増えて損にしかならない。

アレンは不器用だけど素の出力は私以上だし、リーリスだってちょっと危ういけど普通の人一人分ぐらいの仕事はしてくれると思う。

未経験を鑑みれば丁度良い助っ人になるだろう。

私はただでさえ祖母には迷惑をかけているんだから最低限自分の面倒は自分で見るべきなのだ。

だから家を出る。

 

 

「おはようございます!いい朝ですね!」

 

「あーもうアンタは朝からその調子なのかい、先祖に夜明けの鶏でもいるのかい?。」

 

「おはよ、う・・・・ございます。」

 

「火傷の調子はどうだい?その目の隈、痛みで眠れなかったんだろ?」

 

「・・・・」

 

「そ、そうなのか!?もう随分と立つのにまだ痛いのか!?。」

 

「この馬鹿ガキ!舐めんじゃないよ、あんたら兵士は頭に鉛球食らってもピンピンする生き物だけどね、火にだけは私達と同じぐらい弱いんだよ!もっと丁寧に扱えなかったのかい道中!」

 

「す、すんませんおば様!」

 

「その不甲斐なさを挽回したいなら呑気にしてないでさっさと仕事にありつくんだよ!今は木偶の坊のアンタに出来るのは仕事だけだからね!。」

 

「い、イェッサー!所でお孫のカフカさんは・・・・」

 

「あの子は・・・・出ていったよ」

 

「「えっ」な、なんで?」

 

「あの子は私の事があんまり好きじゃないのさ、好きでもない私にわざわざ頭下げて来たんだ、あんたらの為に立ち寄ったんだろうさ、でなけりゃ突然飛び出して帰ってきたりしないよ」

 

「え、・・・・え、でもぉ・・・・」

 

「御託が多いね!お喋りは仕事が終わってからにしな!」

 

「し、失礼しました!」

 

 

当てつけのように稼いだお金を私に渡してまた出ていった。

学校に行かせようとした時も私が嫌っている反骨精神から学費は自分で稼ぐと出て行ってしまった。

最大限の愛情を持って育てたつもりだったけれどどうも人の生き死にかないしは年を取ると感覚が鈍ってしまう。

どこで間違えたのか、何があの子の琴線に触れたのかは分からないが、何にせよ戦争に行くあの子を、我が子も旦那さえも止めなかった私に何かを言う資格はないのだ。

出来るのはせめてあの子が八方塞で自身の信条に反してまで私を頼って来た時に最大限の援助をする準備をしておくことだ。まさしく今回のように。

 




親子揃って言葉足らずの模様
でも今回はすれ違いがなかったのでヨシ!
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