戦争が急に終わったせいで無職になった元兵士の女の子が路頭に迷ってしまった話   作:エルカス

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作中世界は地中海、主にアドリア海にアイスロードが出来るぐらいに寒冷化しています。(こ↑こ↓重要)


14何とか再就職先は見つかりそうです

「あ?仕事?・・・・ねぇよんなモン!」

 

「な、ないんですか!?」

 

「ああ!知らねえのか?黒海の港町は特に仕事がねえんだ、お偉いさんのプライドとかよく分からねえいざこざで対岸の国と貿易しねえんだからな!」

 

「対岸の国?」

 

「山岳共和国さ、正式名称は何だったか・・・・ソヴィエト社会主義山岳共和国だったか?ソヴィエトが何なのか?知らねえな!」

 

「そんな・・・」

 

「遠路はるばる来たのか知らんが・・・・お前さん行く当ては・・・・在ったらこんな場所に来ねえし頼れる奴がいたらここに来るのは止めるな!」

 

「あ、あはは・・・・」

 

「どうしたもんかね・・・・あー・・・アンタ兵士か?」

 

「そうですよ」

 

「んお~!それを早く言えよ馬鹿野郎!なら仕事じゃねえけど稼げる仕事があるんだ!」

 

「本当ですか!」

 

 

街の一画にある小さな役場で仕事を探しに来て開口一番に仕事なんてないと言われて膝から崩れ落ちそうだったけど何とか持ち直した。

前にいた都会の街と比べて気品はなかったけど人間味は感じる役所だった。

しかし仕事じゃない仕事とは一体何なのだろうか。

 

 

「リッペン!人手を連れて来たぞ!軽くて力のある奴だぞ。」

 

「こんなご時世に来るわけないだろ、冗談はおやじギャクだけにしとけ・・・・・っておい」

 

「何だよ?こんなナリでも兵士だぞコイツ。リンゴミキサーやらせたんだ保証するよ、腕っぷしは十分だろ?」

 

「どうもチェルナー・カフカです!これからよろしくお願いします!」

 

「俺はまだお前を雇うって言ってねえぞ・・・・っち、まあこの仕事をする上での約束事は3つだこれをよく覚えておけ。」

 

「はい!」

 

「一つ、仕事内容を口外しない、二つ、仕事はちゃんとする事、三つ、辞める時はちゃんと相談する事」

 

「はい」

 

「よし、じゃあ俺は失礼するよ、じゃあ頑張りなお嬢さん。」

 

 

案内された先は遠くから見えた大型船、ではなくその陰に隠れている・・・・小さくはないけど見劣りはする少し古くなった漁船だった。

船長らしき人は大変ご立派な髭がカチコチに凍っていてちょっと面白かった。

仕事の約束事は運転手の時と特に変わりなかったので変な条件を出されるかもと言う心配は消えた。

 

 

「さて・・・・早速仕事だがいいな?」

 

「はい」

 

「・・・・・賃金とかどんな仕事か聞かなくて良いのか?」

 

「是非教えてください」

 

「大丈夫かお前・・・・」

 

 

色々初めて見る物とかとんとん拍子に仕事が見つかって浮かれているせいで大事な所が抜けてしまっていた、危ない危ない。

早速の仕事は少し重いドラム缶を船に積むことだった、兵士養成所時代に水の入ったドラム缶を何回か運ぶ経験をしていたのでそれが役に立った。

まさかあの時の経験がこんな所で役に立つなんて思わなかった。

 

「荷物の運び方も知らねえド低能!」

 

とか言って正しい運び方教えてくれてありがとう教官、最初から運び方教えてくれれば文句なしだったけど。

 

 

「あ、あの~」

 

「聞かれても答えるとは限らねえぞ」

 

「答えてくれる事もあるんですね、これだけ船に重い物積んで大丈夫なんですか?沈みませんか?」

 

「沈んでもお前は兵士だから泳いで帰れるだろ」

 

「そんなに泳げませんよ私?」

 

「普通の奴は氷点下未満の海に投げ出された確実に死ぬんだ、だがお前たちは夏のバカンスみてえに泳げるんだよ」

 

「へぇ・・・知らなかった。詳しいんですね」

 

「まあな、俺はこんな所で死にたくねえから船が沈むような量は積まねえからな、でも沢山積みたいから乗せる人間は少なくする」

 

「私ダイエットした方が良いですか・・・?」

 

「何で・・・?」

 

「お前最近太ったなって祖母に言われて・・・」

 

「そう、なのか・・・・・?」

 

リッペ船長と小話をしながら最後のドラム缶をつぎ込んで船は出港した。

そこら中に広がる氷の面を砕いて、初めて見る光景に私はワクワクが止まらなかった。

こんなに圧巻な光景は見たことがないからだ。

 

 

「すっごいですね!氷を砕きながら進むなんて人生で初めてですよ!船に乗るのも初めてですけど!というか海も初めてです!」

 

「言い忘れてたが氷を砕く船ってのは口外禁止だ」

 

「そうなんですか!伝家秘伝の裏技って奴ですね!うわ~すっごい!うはぁ、これが波風!」

 

「あんまり先頭に立つな!揺れで落ちるぞ!」

 

「大丈夫ですよ落ちませんって!いいな凄いな!来て良かったな!ありがとうアル何とかさ~ん!!!」

 

「すっげえなアイツ・・・・何で落ちねえんだ・・・これも兵士の専売特許か?」

 

「わー!うぉおお!!!あっはは~!!!」

 

 

目の前の光景に夢中だった私には分からない事だったけど無邪気にはしゃいでいる私の後姿にリッペ船長は少し微笑んでいた。

しばらく海を堪能した後は急に恥ずかしさがこみ上げて来てしまったので、はにかみながら船首からそそくさと降りた。

 

 

「所で何処に向かってるんですかコレ?」

 

「待ち合わせ場所にだ、陸じゃねえぞ、海の上だ」

 

「何だかお洒落ですね!」

 

「子供心全開だな、だがな海の上での待ち合わせなんて不確定な事が多くて不便極まりないんだ、まあ何故か最近は毎回相手がこっちを見つけてくれるんだがな」

 

「その待ち合わせ相手にドラム缶をあげるんですね」

 

「・・・・・ああ」

 

「ともすると相手は貿易を禁止されている対岸の国でしょうか?」

 

「・・・・・・・お前馬鹿だと思ったけど何でそこまで想像できるんだ?」

 

「えー?・・・・やっちゃいけない事をやってる人と長く関わってましたから」

 

「そこまで知ったからにはお前はもう生きて返せねえな・・・・って俺が言ったらどうしてたんだ?」

 

「リッペ船長を海に突き落とします」

 

「やっぱお前バカじゃねえだろ、さては海とかでっけえ船見て浮かれてただけだな、本来は狸か狐か?兵士には見ねえなそんな奴」

 

「こんな性格じゃこの仕事はダメそうですか?」

 

「・・・・いや、寧ろ最適かもな・・・・おっと今回は向こうさんが最初に到着していたみたいだな。」

 

「わぁ・・・向こうの人達の船おっきいですね・・・・!」

 

「待っているのは俺達だけとは限らないからな。」

 

 

港で見た船とも違う・・・多分大砲っぽい何かがついているから軍艦なのだろう。

そしてその周りには大小様々な船が隣接して積み下ろしをしている。

特に目を引いたのが船に入りきらなかったのか尻尾みたいに荷物を外に引いている船で、周りに何人かの人が集まって力技で荷物を引き上げる所だった。

一気に力を入れて引いた瞬間に船がぐんっと下に下がった時は少しヒヤッとした。

 

 

「浮き港に停めたら積み荷を降ろしてでかい船の傍に寄せとけ、少ししたら勝手に回収される。」

 

「分かりました、リッペ船長は?」

 

「秘密の会談に行ってくる。」

 

 

たぶん次に海の上で取引する時間とか持ってくる荷物の相談をするのだろう。

浮き港は波のせいで足場が不安定で他の同業者の人達は皆腰が引けていた。

対照的に同じ服装をした人達、恐らく対岸の国の人達は慣れた手つきで荷物を移動させている。

 

 

「よい・・・っしょ!・・・・ふぅ、これで全部・・・・船長はまだ帰って来てないな・・・・」

 

「あんた見ない顔ね」

 

「あ、はい、こんにちわ」

 

「ドイツ語は分かるのね、はい、始めましての握手よ」

 

 

荷物が受領されるのを待っていたら随分と小さな子が私の元にやってきて話しかけて来た。

服装から見るに向こうの国の人だろう、言葉が通じるか心配だったけど向こうがこっちの言葉で喋ってくれた。

 

 

「どうも」

 

「ギュー」

 

「ちょ、イタタ!?」

 

 

背丈が私より少し小さめで正直侮ってたら凄い力で手を握られた。

反射的に振りほどいてしまったが相手は笑いながらごめんごめんと言った。

どうやら相手も私と同じ兵士の出らしい、最初は普通の人間ぐらいの力で握って来たから勘違いする所だった。

 

 

「それくらいで音を上げるなら使えない新兵か子供ね、亡命希望者?」

 

「はい?」

 

「違うのならよし、亡命したくなったらいつでもウェルカムよ!同志たちはいつでもあなた達の来訪を歓迎するわ!」

 

「チェルナー・カフカです、よろしくお願いします」

 

「アズトナーシャ・ドニェ、皆からはアズニャンって呼ばれてる、その荷物は・・・・リッペの所ね、年食って荷物が重たいって嘆いてたから丁度よかったわね!」

 

「本当にありがたいです、近頃は仕事が全く見つからなくて」

 

「そりゃ戦争が終わったから当然でしょ!労働革命児の兵士たちが続々と産業に参加したら普通の人はクビを切られて当然よ!兵士でもまだ子供だったらちょっと難しいものね」

 

「別にバルカンの方じゃ兵士の人達は変わらず仕事はないですよ」

 

「にゃに!?・・・・なんで?」

 

「だって兵士ですし、兵士になる事しか考えられずに育てられた人たちに社会規範がある訳ないでしょ?常識とか品性すら期待できない人達を誰が雇いたがるんですか?」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

 

普通に一般論を言ったらあずにゃんさんが黙ってしまったので不味いと思った。

私が住んでいるバルカンならまあ当然の認知だと思うけど相手は外国の人、こっちの国の常識が通用しないこともあるかもしれないと思い至らなかった。

すぐに取り繕う言葉を言って謝罪した。

 

 

「あ、いや、アズニャンさんとか兵士の人達を貶してる訳じゃないですよ!」

 

「まぁ・・・そっちは随分と大変って事ね」

 

 

殴られるぐらいは覚悟してたけど寧ろ苦労を労われた。

山岳共和国の方では寧ろ兵士である事が重宝されているような言い分だったから少し羨ましく思った。

確かに言われてみれば幾ら品性と力加減がないとは言え、あれだけの力があるのなら欲しがる職場もあるかもしれないと納得した。

でもやはり世に、素手で頭蓋骨を粉砕する怪力お化けが蔓延るのを他の人が許すとは思えないので期待するだけ無駄なのかもしれない。

 

 

「軽油が若干混じってる気がするけど・・・・これはサービス!不問にしとくってリッペには言っときなさい、ついでに何か巻き上げなさいアイツから」

 

「あ、ありがとうございます?・・・・ドラム缶の中身石油だったんだ・・・」

 

 

荷物に何か不備があったみたいだけど不問にされた、多分

 

「新人のお前に免じて勘弁してやる!」

 

という彼女なりの優しさなのだろう。

代わりにこんな荷物を寄越したリッペ船長から何か物でも貰いなさいという事なのか。

 

 

「よいしょぉ!」」

 

「!?」

 

などと考えているとあずにゃんさんが石油の入ったドラム缶を垂直に投げ上げた。

私が動転している内に上まで投げられたドラム缶はひょいっと出て来た手によって船へと回収された。

これが職人の技・・・と一人感動した。今日一日中は感動ばっかりしてる気がする。

 

 

「ほんじゃまたな、チェルッち!」

 

「ま、また!・・・・・ちぇるっち?」

 

 

それと何だかとても砕けた渾名を貰った。




聡明なニキネキは船長が亡命斡旋者と推察していると思われますが、正解です。
カフカちゃんはそんな船長の密輸の片棒を担がされています。ナンテヒドイヤツナンダー
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