戦争が急に終わったせいで無職になった元兵士の女の子が路頭に迷ってしまった話   作:エルカス

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ふと思ったんだけど、シスターとかの宗教関連の創作を(黙認)してくれている現代のキリスト教はかなり寛容な宗教なのでは?



19前任者が破滅的負債を残して逃亡した

奇妙としか例えようがなかった。

直近の私のストレスシェア率の7割近くを占めていた大臣がその椅子を追われる数日前に急に人が変わったように馴れ馴れしく接してきたのだ。

 

 

「やぁローン!そんな机に何か向かっていないで私と国内視察に行かないかね!行けない?仕事が溜まってる?なーに大臣命令だそんなのは他の者に任せたまえ!」

 

 

正直気持ちが悪かった、視察と言っても高そうなお店でお酒を引っかけたり美人を引っかけたりするだけで到底仕事と呼べる物ではなかった。

他にもゴルフや大臣仲間との会食など在郷軍人会のお年寄りの戯れの様相を呈していた。

 

 

「大臣殿、議会で不信任決議案が提出されました、間もなく内閣は瓦解します。」

 

「おぉ!やっとか、いやー長い事ここに座ったがねローン君、君を灰皿で殴るのはやり過ぎたと反省している、いや本当に悪かった!お詫びにこれでもやろう」

 

「・・・・・な、何ですかこれ?指輪?」

 

「おっとと君にプロポーズをする訳ではないぞ!未使用だから安心したまえ、この先身を固める事があったら相手に贈ると良い、まあ私はついに贈る相手など出来なかったがね!ここ笑う所だぞ?」

 

「意味が分かりません」

 

「分からないだろうさ、何も分からないんだ私でさえ、だから君は悲劇的な程に真面目過ぎるんだローン、もう少し手を抜いても良い、ああでも他の頭が空っぽの真性馬鹿にはなってくれるな。」

 

 

真性馬鹿とは誰の事か一瞬分からなかったが多分、働きもせずに給料を受け取っている他の公務員の事だろう。

大臣の職務放棄と並列で増えていった忌々しい堕落者どもだ、あれの仲間入りなんて失礼な。

 

 

「おっとこれでは飛行機に遅れてしまうな!さらばだローン、達者で、またどこかで会う機会があったらその時はまた一から関係を築き合おう、君とは良き政治仲間になれる気がするのだ。」

 

 

疾風のように大臣は去っていった。

翌日の出勤から私もう二度と大臣の顔を見ることがなかった、この先の人生でもう彼には二度と会う事はなかった。

 

 

 

「就任おめでとうございます首相閣下」

 

「ああ、さて祝い事は程々にして仕事に取り掛かろう諸君、連邦の問題は山積みだ。」

 

 

議会から首相に任命された時は大西洋のど真ん中で泥船の操舵を任されたような最悪の気分だった。

前任者の顔に一発この拳を叩きこめないかと期待していたが案の定、何処かに亡命してしまった。

戦争の権益で儲け、政治のやり方を忘れ、国家を傾けた売国野郎が最後までのうのうと生き延びた事は反吐が出るというレベルではない。

 

 

「さてまずは食料問題だ、現在我が国では広範囲で飢餓が発生している。人の不幸が食い物の国際記者団共に散々スクープされている様を見るに早急の対策が必要だ。」

 

「外務省からは山岳共和国との貿易再開を提言します。」

 

「大蔵省としては外務省の提案に反対でありますな。」

 

「両者とも静粛に、まずは外務大臣が考える貿易再開の利点を、次に大蔵省の考える不利を順番に述べるように」

 

「了解です首相閣下、さてまず山岳共和国との貿易は他国、新大陸やアフリカ大陸から食料を輸入するよりずっと安価な上に少ない時間で達成できます」

 

「輸送距離が短い為にすぐに食料が輸入できるのは分かるが足元を見られ安価に手に入るとは思えないのだが?」

 

「足元は両者ともに見えているのです、山岳共和国は世界市場から切り離されているため多くの物資が不足しています、石炭、石油、鋼鉄、鉱石類、電気と」

 

「成程・・・・我々の足元を見るよりも対等な貿易関係でそれら不足物資を輸入する可能性が高いと見ているのだな、ありがとう、次に大蔵省、意見を述べてくれ。」

 

「御意に首相閣下、大蔵省としましてはえー、共産主義国家との交流は他多くの大国の反感を招き世界的にも孤立する可能性が危惧されるため貿易の再開は国益を害する物と考えます。」

 

「抽象的だな、もっと具体的に述べてくれ。」

 

「はい、世界各国は非交戦国の列強に従い今日まで山岳共和国との交易を絶ってきました、イデオロギー闘争の勝利のために、この世界的な歩調を乱せば今新大陸やアジアから確約されている交易が大幅に変更、最悪取り消しになる事もあり得ます。」

 

「成程・・・・大蔵省の懸念は大いに理解した、・・・しかしやはり交易は再開するべきだと私は考える。」

 

「何故でしょうか?」

 

「一つは世論感情に従って動く列強、特に新大陸はそうですから我々が飢餓対策に山岳共和国と貿易をしそれを制裁されるとなれば彼らの自由で民主主義的な民は政府を非難する事間違いないでしょう。」

 

「市民感情に任せて賭けをするのですか?」

 

「これは勝率の高い賭けだ、1949年にアドリア国が山岳共和国に観戦武官を派遣しても特に各国からお咎めはなかった事を覚えているか?結局、早とちりした我々とイベリア、後は山岳共和国憎しのオスマン帝国しか公に非難しなかった。」

 

「あぁ・・・そんな事もありましたな・・・。」

 

「やってもやらなくても問題ない軍事顧問団派遣すらお咎めがないなら国難のために動くことを誰が罰せられようか、私は再びここに山岳共和国との貿易再開を提言します、如何ですか皆さん?」

 

「首相閣下に賛同いたします。」

 

「大蔵省も支持いたします。」

 

「「「「パチパチパチ」」」」

 

「さてここからが始まりだ諸君、外務省殿はオスマン帝国にダータネルス・ボスポラス海峡通過の許可取得を」

 

「了解であります」

 

「海軍省はエーゲ海、アドリア海に停泊している交易船を黒海方面に移送する準備を。」

 

「御意に」

 

「内務省は黒海湾岸都市の整備と労働者の確保を。」

 

「承りました」

 

 

就任最初の政策は円満に閣議決定で通過した、早ければ明日には議会に提出され明後日には施工される。

山岳共和国はここ20年ずっと対外政策はかなり宥和的な動きを見せているので間違いなくこの提案には乗るだろう。

さて仕事はこれだけでは終わらない、一国からの食料輸入で飢餓は解決しきる事は出来ない、国内の自給的生産体制を確立する必要もある。

その過程で生まれる雇用で失業者を減らす助けになれば良いが焼け石に水程度の効果しかないだろう。

 

 

「失業者のデータは・・・・むぅ、増加が留まる所を知らないな、このペースだと6月には2500万人の失業者が発生するじゃないか。おい君、統計局の人間を呼んでくれ」

 

「御意に閣下」

 

 

戦争終結後に出された予想される失業者数の統計から統計局に先見の明があるようには思えないが私は専門家でもないので無能の疑いのあっても彼ら部署に頼らざるを得ない。

内線ですぐに部署の職員がやってくると思っていたが5分、10分と過ぎても担当の人間は現れない。

 

 

「全く遅いぞ!彼らは手の離せない仕事でもしているのか!」

 

「ガチャリ」

 

「ようやく来たか!全く遅いぞ!」

 

「申し訳ありません首相閣下、・・・その、呼び出されるのは非常に稀有で道に・・・迷いまして」

 

「一体君は何年ここに勤務しているんだ!まぁいい、少し失業者数のデータに関して聞きたい事がある。」

 

「は、何でしょうか?」

 

 

職員に若干怒りをぶつけたがやってきた者は理路整然に私の疑問を解消してくれた。

無能な部署と言う認識は改めて怠け者の部署と認定する事にしよう。

 

 

「と言うと兵士の労働力は普通の人間の5~10倍の出力を要するから頭を使わない仕事全般では続々と普通の人間がクビを切られ全て兵士に入れ替えられていると?」

 

「はい」

 

「何故それが分かっていて予想される失業者数を300万ぽっちと予想したんだ!」

 

「それは・・・・その、・・・・」

 

「ああ分かっているさ!大方前任者が仕事をしなかったのだろう!これが初めてではないからね!全くこの国は叩けば叩く程埃が舞う!このままでは私は結核にでも罹ってしまいそうだ!」

 

「閣下、お水を」

 

「ああ感謝する・・・・ゴク・・・・ふぅ、ありがとう君、仕事に戻ってくれたまえ、これからは前みたいに怠慢の時間は許されない。一瞬の暇も惜しまずに働くんだ、いいね?」

 

「了解です首相閣下」

 

「はぁ・・・・しかし困った、失業者数を減らすどころじゃない・・・歯止めが利かなくなるぞこのままでは・・・・兵士人口は退役も含めて1000万、彼らに力仕事の求人を全て埋められれば多くの人が路頭に迷う、普通の人間全員に頭を使う仕事を用意するのは不可能だ・・・・」

 

 

想像を絶する公共事業でも展開するか?無駄だ、求人を満たすと同時に国庫が破綻する。

ならば企業の兵士採用数を制限するか?

もしそんな事をして兵士が暴動を起こしたらいよいよ手が付けられない。

軍の解体で残った正規軍は何故か全く兵士の人種がいない。

彼らに1000万の怪物は止められない。

かつて隣国のアドリア国で発生したローザンヌ大反乱では僅か1万人にも満たない兵士たちが中央から派遣された精鋭機械化部隊を返り討ちにした上に900km先にある首都に一週間で進軍し時の首相を殺害している。

僅か三年前の話だ。技術の進歩で武器の殺傷能力が上昇したとは言え兵士を殺すには不十分過ぎる。

 

 

「どうしたものか・・・・本当にどうしたものか・・・・・」

 

 

私はこの件に関して長く思い悩むこととなった。

 

 




負債を貯めこむだけ貯めて逃げて別の人に丸投げをする灰皿大臣は間違いなくクソ野郎。
きっとこういう悪人はしぶとく生き延びるのが得意だから亡命先でも生き延びてるんやろなぁ。

???「じゃあ、死のうか(暗黒微笑)」
灰皿大臣「ちょ、ちょっと待って下さい!待って、助けて!待って下さい!お願いします!アアアアアアアア!」
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