戦争が急に終わったせいで無職になった元兵士の女の子が路頭に迷ってしまった話   作:エルカス

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今回の話は冗長に感じるニキネキが多いと思うけど許して・・・


21向こうに良い顔をすればこちらが立たないというジレンマ

「月間インフレ率はピーク時の40%から大きく下落して今は10%前後を上下している、これも皆さんの昼夜を問わない勤勉な仕事の成果です、この場を借りてお礼を申し上げる」

 

「首相殿のご尽力あっての成果ですよ。」

 

「しかしこのご時世に我々企業人を集めてどのような話し合いをするのですかな閣下?マスコミの政党叩きのタネ作りですかな?」

 

「それも良いでしょう、新聞を買う人々が増えて消費が促進されます、しかしスクープ以上に我が国は大きな難題を抱えてしまいました。」

 

「負債の事ですか?」

 

「いえ、それも確かに大きな問題ですが・・・・この難題を解決策を私達はついに考え出す事は出来ませんでした、つきましては我が国を支えてくださった皆様にこのような提案をする事を先に謝罪致します。」

 

「これは・・・・・・・・」

 

「『雇用機会均等法』『賃金格差是正法』・・・・・女も同じぐらいに雇い払う金をもっと出せと?」

 

「いえ違います、皆さんには兵士・・・所謂スレッシャーと呼ばれる方々の雇用制限を設けさせていただく法案です。」

 

「困るよヨシップ君、ブラックマンデーで大打撃を受けて傾きかけた会社を文字通り力技で盛り返してくれた彼らを手放せだなんて」

 

「当方は彼らのおかげで人件費を80%近くも削減できた上に今では従業員の7割を占めているのですよ。」

 

「皆さまのご意見は最もです、しかし削ぎ落した分の労働者は苦難を強いられているのです、法案は兵士の使用を禁じる物ではありません、あくまで普通の人間と兵士を平等に雇う機会を与える法案なのです。」

 

「だがねぇ・・・一般従業員100に対して兵士1の割合はどうにも・・・・」

 

「中小企業では多少緩い10、1の割合ですがこれでは・・・・」

 

「しかしこの難題の唯一の解決策として断腸の思いで提案させて頂きます、どうかご理解の程を・・・」

 

「う~ん・・・・」

 

「どうか・・・・・・!」

 

 

難色を示す企業側との交渉は長時間に続き、多少の割合緩和と法案の一部修正を以てブロズ・ヨシップの改革案は一応の賛同を得た。

法案が可決された暁には100万の失業者と引き換えに2000万の雇用が生まれるこの法案は後世に賛否両論の論争を巻き起こす難題として残る事になる。

この改革が多くの可能性と危険性を持っている事をヨシップは十分に理解していた。

 

 

「ふぅ、何とか企業の方の納得は取り付けたよ、陸軍省の方はどうかな?」

 

「外国から暴動鎮圧用の武器類のライセンス生産を取り付けました、雇用を生み出すと同時に兵士たちが暴れ出した時の対応がより充実します。」

 

「よろしい、さて後回しにしていた農地再分配法の話をしよう。」

 

「首相殿、再三の忠告ですがこの法案の提出には反対です、首相の理念は理解できますが早急です。暫くの時間を置くことをお勧めします。」

 

「だが職を失った兵士たちもチャンスを与えなければならない、外国人の土地所有制限を緩和すれば外国人割合の高い兵士たちを農業に投入できるようになる」

 

「変わらず私は代案の国営農場法を首相閣下にお勧めします」

 

「何度も言ったが国家だけ雇用割合の原則を適用しないのは示しがつかない。」

 

 

バルカン連邦においては従来、外国人(特に避難民)は開墾した土地の所有に関しては非常に厳しい制限が設けられる。

最低納品量と買い取り設定価格が同国の人間よりも何倍も不公平だからだ。

例えば避難民が1tのライ麦を国に納める時、半分は税分として徴収され残り半分を国が設定した安い価格で買い取られる。

私的に販売する場合は納品量が倍増し余程の努力と投資をしなければ利益が出ない搾取体制になっているのだ。

同国の国民が同じ1tを納める場合は1割が税分として徴収され残りは国に売るか私的に売るかは完全に自由と言うまあ見事な依怙贔屓ぶりだった

 

ヨシップ首相が提案した農地再分配法では外国人だろうと同国の人間だろうと平等に作物を買い取り自由な売買を可能とする法案なのだが、様々な諸問題が発生する。

一つは至極簡単な問題で同国の農家が困窮してしまう事、外国人を優遇すれば彼らの反感を買いかねないのだ。

二つは外国人に土地を与えると民族主義者や同国の人間の支持を失う可能性がある事、現在の不安定な連立を損ねて内閣の崩壊を招くかもしれないリスクが生じる。

三つは国が管理できる農作物が減り市場操作の力が損なわれる事、インフレ抑制が瀬戸際で成功している今、その力を弱めるのは事態の悪化を招きかねいのだ。

 

最後に閣僚が代案として提言している国営農場法について、これは難しい事は少なく至極簡単な事で国の名で農場を作り、国が人手を雇い入れるという案だ。

ただ特筆するべきなのは先の『雇用機会均等法』が例外的に適用されないと言う点だ。

国の管理下に置けば企業の扱いになるが上記の法律が適用されれば失業した兵士の再就職先としての設定が破綻し元の木阿弥になるため特別例外にしなければならない。

だけどそんな事をすればただでさえ『雇用機会均等法』『賃金格差是正法』に難色を示す企業に不信感を与え反感を買う事になるのだ。

 

 

「大臣は連邦の真髄をお忘れになっている、元々この地は混迷を極めた民族対立で数百年も争いを続けて来た血の大地なのです、そこで民族独立を促進するような法律を通せば連邦は崩壊します!」

 

「連邦は避難民と彼らの中に多く生まれた兵士によって今日まで存続できたのだ、我々は彼らに返しきれない恩義があるのですよ!恩を仇で返す畜生と化したらそれこそ国民に示しがつきません。」

 

「元はと言えば彼らが欧州で大戦争なぞ引き起こさなければここまで我々は追いつめられなかったのです、お若い首相閣下には先祖の血で贖われた今この瞬間をご存じないのです!」

 

「理解している、だから両者とも平等に扱わねばなりません、かつてのハプスブルク家の失敗を見れば明らかでしょう?支配では多民族国家は存続できないのです、共生共栄が我々を一つの国にとどめる唯一の接着剤となるのです!」

 

「彼らは連邦の国民ではなく難民です!少々言葉が悪いですが不法入国をしている犯罪者です!犯罪者と無辜の民を同列に扱うのは通りませんよ首相!」

 

「難民と言う言葉でしか彼らを形容できませんが多くは自身のアイデンティティーすら失った子孫たちです、十分に連邦の国民足りえます!」

 

「未だに故郷への帰還を唱え我々への感謝の言葉一つない彼らが国民になどなれない!」

 

「彼らが本気で汚染されたあの大地に帰るつもりと思っていらっしゃるのですか!ただ祖国と自身の祖先を懐かしむことすら許さないのですか!」

 

「首相殿は少し彼らに同情的過ぎますかな・・・・」

 

 

前回と同じく閣議決定は紛糾し収拾がつく事はなかった。

比較的似たようなイデオロギー(政治的思想)の持ち主が集まった話し合いですらこのレベルなのだから議会に提出した時の事をあまり想像したくないブロズ・ヨシップだった。

決断は下されずただ時間だけが過ぎていく、タイムリミットは刻一刻と迫っている。

 




月間インフレ率10%前後とか言ってるけど一年したら物価は3~4倍になるんだよなぁ。

市民「つまりまだ不況は脱してないってコト!?」
国「そうだよ(便乗)」
市民「ふざけんな!(豹変)俺は今までお前の我儘(効果がよく分からん政策)を我慢してきたんだ!」
国「それがどうした」
市民「お前みたいな無能政治家が運営する国(三流タレントの世話)はもうごめんだ(クーデター)」
YSP首相「と、なる前にさっさと不況を脱しないといけない訳なんですね~」


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