戦争が急に終わったせいで無職になった元兵士の女の子が路頭に迷ってしまった話 作:エルカス
「・・・・・・・・・・・で、何でここに来たの?」
「そりゃお前の様子を見に来るためさ、リーリスもおば様も気にしてんだからな」
「え?そうなの・・・手紙届いてなかった・・・?いやこの場所に来れるなら届いてるか・・・・。」
「何言ってんだ、手紙一つで安心なんて出来るか!まして俺ですら歩いて数日かかる遠方にいるんだから猶更心配だろ!」
「リーリスそんなに私の事を心配してたの?」
「ちげぇよ!おば様、お前のばあちゃんだよ!」
「それはないって」
「何でだよ!お前どんだけ自分のばあちゃんの事嫌ってんだよ!いい人だろうが!」
「嫌ってないよ私?」
「???????」
アレンは何か勘違いしているのか、祖母が私を心配する訳ないからきっと祖母がアレンをこっちに寄越したのは何か考えがあるはず。
大方、二人は養えないからアレンは頼むぐらいの意味合いか・・・・リーリスだけでも保護してくれるなら大感謝だけど。
「アレン今日からこっちで暮らすのか・・・・」
「何言ってんだお前?」
「やっぱり二人は無理だったかな・・・・大丈夫!こっちは仕事も多いよ、多くなるよ!」
「いやいや何日かしたら帰るから、考えを言葉にしろお前、会話が跳躍する所はお前のばあちゃんそっくりだな・・・・」
「う~ん?・・・アレンをわざわざ私の所に来させたって事は二人雇うの厳しいからお前でけじめをつけろ、って事かなって」
「お前・・・・馬鹿か?俺最初にここに来た理由・・・言ったっけ?・・・言ったよな?お前の様子を見に来たんだぞ・・・・・・お前・・・実は馬鹿なのか?」
何故か馬鹿と二回も連呼されて少しむっとする。
いやだが待ってほしい、これはアレンが馬鹿なだけで祖母の真意を理解できていないだけだきっと。
所詮は3、4カ月の付き合い、14・・・13年の付き合いの私の方の解釈が当然優先される。
「馬鹿じゃないよ、私の祖母が私を心配して様子見に来させる訳ないじゃん、まして手紙ちゃんと届いてるなら猶更。残念だけどアレンは農場を左遷されたんだよ・・・・」
「やっぱお前馬鹿だろ、話聞いて・・・・・・ン?」
「どうしたの?」
「俺にも・・・・分かったぞ!理解した、心で!」
「おお凄い!成長したねアレン!出来れば言葉で理解して欲しいかな」
「カフカ、お前やっぱり馬鹿だ!」
もし立っている状態だったらがっかりして膝から崩れ落ちただろう、私は。
しかし人を助けたのだからこちら側にも責任という物もある。
一体どうしたらアレンに祖母の意思を分からせることが出来るか、考えるが私の足りない頭では彼を導く事は難しい。
「お前・・・・おば様に嫌われてる・・・と、思っているだろ?」
「思っていると言うか事実だよ?」
「っふ馬鹿だな、そう言う事か、俺にも・・・・・・こんなバカな俺にも見通せる真実が、あったんだな・・・・・」
「何気取ってんの」
「まあ大方は・・・理解した、・・・俺達二人はすれ違っている事が分かった・・・そしておば様とも、ニアミス大好きかよお前」
「ニアミスはないとして、アレンと話がかみ合っていないのは最初から分かってたでしょ?」
「まあ何だ・・・・ずばり勘違いをしているんだカフカ・・・おば様はお前を嫌ってなんかないぜ」
何を馬鹿な事をと思うけれどアレンが言った通りならと期待してしまう。
いつからだろうか、祖母が私を疎ましく思っている事に気付いたのは、アレンの声が遠のいて行く
昔の自分を思い出す、畑の収穫で力加減を間違えて作物を台無しにして怒られたりしてたっけ、でも時間が過ぎていくと段々と上手になって怒られることも無くなった。
11歳ぐらいの時だろうか、国の統計調査か何かがあった時の事だ。
『お嬢さんは問題なく兵士になれるでしょう、良かったですね、国のために戦えますよ。』
お医者さんにそれは喜ばしい事だと言われたけど私にとっては嫌な事だった。
平和に暮らすのが一番で変わらない日常はそのもどかしさも含めて愛しい時間だった。
だから何もかも捨てて行く事になる戦争は嫌だった、怖かった。だから思わず私は弱音を零した。
『ねぇ
『あんたは強い人間として生まれたんだ、だから行くんだよ、弱い人達に出来ない事を代わりにしてやるんだよ』
『やりたい人達だけじゃダメなの?』
『・・・・・・・そんな人、いる訳ないだろ』
『じゃあ皆で・・・やろうよ・・・・何で私達だけ・・・・』
『アンタ達がやるのが一番いいからさ』
『おばあちゃんは私に戦争に行って欲しいの?』
『アンタ達が戦場に行くのが一番なのさ、アンタ達が死ぬまでに敵を沢山殺す事で沢山の人が戦争から遠ざかるんだ、だからアンタは戦争に行って沢山の人を救うんだよ。』
『じゃあパパやママが死んで良かったって思ってるの?』
『・・・・・・・・・・ッ』
祖母が私の手を強く握った時、とても痛かった、兵士の体は普通の人よりずっと丈夫なのにとても、とっても・・・・・痛かった。
思い出そうとすると自然に今も手が痛くなる、そうだ、この時からだったかな、おばあちゃんに嫌われてるんじゃないかって思い始めたのは。
『行って、・・・・行ってきま、す・・・・』
『・・・・・・・・・・・』
もう二度と帰ってこないのに何も言ってくれない、おばあちゃんは私を愛してくれていなかったのか。
死地に行く事をこれっぽっちも嫌がっていないのは私を嫌っているかなのかな、でももう帰ってこないから清々してもらえるならそれでもいいのかな・・・
『不肖チェルナー・カフカ、帰ってきました』
『あぁ、帰って来たのかい。』
1年も会う事がなかったのに顔すら見て貰えない
そんなに私の事が疎ましかったのかな。
『帰って来るとは思わなかった?。』
『期待なんてしなかったさ、してもしょうがないからね。』
心の中では死んで欲しかったとか思われてるのかな、いや・・・・おばあちゃんはそんな事は思わない。
でもきっと良くは思われていないに違いない、愛した伴侶より、お腹を痛めて産んだ子より、その子が選んだ最も愛した人より、繋がりが薄い孫が帰って来たって、しょうがないんだ。
私なんかが居てもしょうがなかったんだ。
「――――――だからお互いの行き違いで本当は・・・・・・・・おい、カフカ」
「あ、・・・・あ、・・・あはは、おかしいな、どうしてだろ、・・・・・私、ちゃんと一人でも・・・うぅ、どうしてかな・・・・・」
涙なんて沢山流して来た、一生分流して来た。
辛い訓練も、頭にくる教官も、暴力的な同期に対して流しきったはずなのに
湧き上がるように瞼を通り私の頬を流れる。
「だ、大丈夫か本当に?も、もしかしてデリケートな関係だったか!?そ、そうだったらごめん!本当にごめん!だ、だから・・・・ど、どうすればいいんだ!?」
「わたし・・・、私ね・・・・怖かったの・・・・本当は
「お、おう!・・・怖いのはしょうがない!何が怖かったんだ?」
「心ではね・・・おばあちゃん私の事嫌いだったらどうしようって、聞いて嫌いだって言われたらどうしようって・・・・怖くてね、ずっと聞きたいのに聞きたくなかった、怖くて怖くて・・・戦争に行ってそこで死ぬとばかり思っててね・・・・だからこうなるとは思わなかったの・・・」
「よ、よしよし・・・・怖かったんだな、一人だと猶更そうだよな、分かるぜ」
「ひっく・・・私・・・ずっと逃げて来た、・・・私が素っ気ない態度だったら・・・本当に私を愛してくれたなら、おばあちゃんもっと違う接し方してくれると思った、・・・・でも何もしてくないからもういよいよ怖くて・・・そうだとばかり思って・・・」
「おば様はお前の事愛してるよ・・・・俺みたいなガサツ野郎も、リーリスだって愛娘みたいに溺愛して、他人ですらこれだけなんだぜ?お前に向ける感情は猶更重いよ、だから素直になれなかったんだ」
「そう、なら・・・・いいね・・・でも他の人みたいに・・・小さい頃仲の良かった子がいて・・・普通の子だった・・・いい子だったんだけど私が兵士だって知ると・・・・私、私怖いの・・・人って簡単にあんなに残酷になれるんだって・・・・」
「・・・・・・・・・・・カフカも、兵士として、苦しんでいる事、あったんだな。」
ずっと逃げて来た過去に追いつかれたような感覚だった
目を逸らし続ける事は出来ない事実をついに直視しなければならない時が来たのかなって
良い結末かもしれないし悪い結末かもしれない、でも先に進まなければ喜ぶことはなくても悲しむことも無いのだから永遠に止まったままでいたかった。
私の手は今も昔も握りしめられている、あの時からずっと、痛いままだ、決着をつけなければいけないのか。
涙はまだまだ流れ出てていた。
おばあちゃんは孫を
カフカちゃんは罪悪感に苛まれて、人が変わったおばあちゃんから
勘違いをしてしまい、すれ違っていたんですね。