戦争が急に終わったせいで無職になった元兵士の女の子が路頭に迷ってしまった話   作:エルカス

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25知らない方が幸せな事を私はまだ知らない

息を深く吸う、ここはまだ新築なので所々に使われている材木から漏れ出す自然の香りがよくする。

その心地よい呼吸に助けられ昂った感情は沈静化した。

 

 

「もう大丈夫か?」

 

「うん、らしくなかった?」

 

「ああ、でも誰だってそんなもんだろ?」

 

「そっか・・・・アレンはいつぐらいにこっちを出発するの?」

 

「明日にでも出ていくよ、ちゃんと問題にはケリつけろよ。今すぐじゃなくても。」

 

「うん、分かってる。今日一日は休んでいって。」

 

「じゃあ・・・・・俺はここで寝かせて貰うな!」

 

「ベッド使っていいよ?」

 

「なーに言ってんだ!人ん家で人よりいい暮らしするなんて罰当たりだぜ、屋根があるだけで十分さ。」

 

「わ、・・・・それ寝袋?」

 

「おう、リーリスに作って貰ったんだ良いだろ?お前・・・持ってないのか?」

 

「私は葉っぱが枕で服が布団だよ、軍隊式」

 

「今度帰ってきたらお前の分もあるぜ」

 

「それはくれないんだね。」

 

「リーリスが俺に作ってくれたんだ、やるもんか」

 

「むむ、これは・・・・・・恋?」

 

「ちげぇよ!・・・・・恋じゃねえよ、断言する。」

 

「そっか、やっぱりリーリスだなぁ、編み物とか・・・・色々作るの上手だったもん」

 

「そうなのか?」

 

「うん」

 

 

訓練時代にリーリスは他の沢山の子に世話を焼いていた。

例えば雑に剃られた髪の毛が伸びてボサボサになっている子の為に美容師さんになったり、ボロボロで使い物にならない備品を修理したりしていた。

少し恥ずかしい話だけで私も着ていたズボンが破れた時は彼女に縫って貰った、すっかり変わってしまった彼女も根っこの部分は変わらないんだなと感じ入る。

 

 

「リーリスはどう?」

 

「火傷は・・・出来る限りの事は尽くしたらしい、医者もリーリス自身もおば様も」

 

「どれくれい消せたの?」

 

「・・・・・」

 

 

首を横に振るアレン。

 

 

「でも、記憶の方は今も心配だけどお前の知ってる昔のアイツに近づいてるなら問題ないと思うぜ、医者も何かをきっけにして戻るから根気強く待つ必要があるってさ」

 

「どれくらい待つの?」

 

「一か月から半年、または1年から10年・・・・・。」

 

「それ冗談で言ってる?」

 

「このまんま告げられたんだ、馬鹿にされているのかな?」

 

「気を遣ってくれたんだよ、きっと・・・・他に何か問題はある?」

 

「あぁ、あったんだそう言えば、お前とリーリスは同期で戦争には行ってないんだよな?確実に。」

 

「ええ、それがどうかしたの?」

 

 

首肯するとアレンの表情が少し曇る。

戦争に行っていないと何か不都合な事があるのだろうか。

何にせよ良い話ではないとの確かだ。

 

 

「リーリスの体から銃の破片が見つかった、お前ん所の訓練じゃ実銃で撃たれる訓練してたのか?」

 

「いくら教官が人でなしのクズでもそんな事はしてないよ、たぶん。」

 

「お、おう・・・たぶんか・・・そっか・・・・」

 

「火傷と一緒に銃撃も負ったって事?気付かなかったの?」

 

「だってよ俺達兵士だぜ?そんな余程の長物か鉄板用の銃じゃない限り打ち込んでもピンピンするんだぜ?」

 

「そ、そうなの?」

 

「ああ、ハンドガンなんて目じゃないぜ?まあ目に撃ったら流石にやばいけどさ、大抵は撃ちこんでから1分で血が止まってさらに10分する頃にはかさぶたが出来て、もう100分したら一応は治るんだぜ?111分の法則、知らない?」

 

「知らない、でもちょっと待って、そんな早くに傷が塞ぐとしてどうやってリーリスから弾丸を摘出したの?腹にもう一回穴でもこじ開けたの?」

 

「・・・火傷をしたら俺達は111分の法則を手放すんだ、普通の人間かそれ以上にダメージを負う、だから・・・・何だ、腹に穴何てあけなくても空いてたんだよ・・・小さい穴がスポンジみたいに。」

 

 

苦虫を噛みつぶすしたような顔をするアレン、私も思わず眉をひそめる。

大怪我を負った部位をいじくり回されて何個もある破片を何回も引っこ抜かれた時の気持ちを想像すると・・・最悪な気持ちになる。

 

 

「まあでも遅かれ早かれ破片は摘出する必要はあった、この破片がリーリスを傷つけた奴の手掛かりにもなるからな。」

 

「その手に持ってるのが?」

 

「ああ、馬鹿な俺には分からねえけどお前の知恵も借りれば・・・・あるいは、これはおば様にも言ってない俺がここに来たかった理由の一つだ。」

 

 

アレンはいつもの素行からは考えられない程に丁寧に袋を扱って机の上に置く。

中には20数個の破片、多くは落としたら見つけるのに苦労するサイズで銃弾の原型は留めていなかった。

 

「どうだ・・・・何か分かるか?」

 

「・・・・・分かんないよ、私銃弾の専門家じゃないんだから・・・・。」

 

「分かんないの!?・・・っくぅ・・・やっぱりそうかぁ・・・111分の法則知らないあたりで嫌な予感はしていたが・・・・」

 

「分からないけど、分かる人なら分かる」

 

「警察は勘弁してくれよ」

 

「何でよ・・・・。」

 

「あいつらが兵士絡みの事件でこっちに味方してくれる訳ねえだろ?」

 

「・・・・・・。」

 

 

小さい頃から今に至るまで兵士にまつわる事件で兵士が被害者側になった事は多分ないと思う。

大きな力を持つ私達兵士は先に殴られても正当防衛だとしてもやり返してはいけないのだ。

理不尽な暴力に対抗したらこちらが殺人犯で、嵐をやり過ごしても泣き寝入りをするしかない。

普通の人間を殺す暴力でも私達は一日足らずで治してしまうばかりに。

 

 

「じゃあ知ってる人を知っているかもしれない人がいるからその人を頼ってみる。」

 

「ありがとう、犯人をボコボコにしに行くんだったら俺も誘ってくれよ。」

 

「あんたを誘ったらこっちが加害者よ・・・・・もし見つけたらその時はまた考えるから何かの間違いで自力で犯人を見つけても一人で突っ込まないでね。」

 

「目の前に居てもダメなのか・・・。」

 

「ダメ、分かるでしょ?ちゃんとした手順を踏まないとこっちが不利になるんだから、というかこの前まで追いはぎしてたんだから警察とは関わるべきじゃないよ絶対に、だからダメ。」

 

「っぐ・・・・・ぐうの音も出ない正論・・・・あ、おい何処行くんだ?」

 

「善は急げ、知り合いを頼ってみる」

 

 

アレンに見栄を張って人脈があるみたいな雰囲気を醸し出していたけど今の私の手に届く範囲に頼れる人は10人もいない。

でもその10人の中に100人ぐらいの伝手を持っている知恵者がいる事を私は知っている。

 

 

「ゴンゴン」

 

「あ~い・・・何だよ酒代のツケなら払え・・・・どうしたカフカ?」

 

「お肉のお裾分けです、ちょっと帰るには天気が悪いので暫く中でお邪魔して良いですか?」

 

「そう言う事は本当に天気が悪い時に言うもんだぞ、あと男の家に軽々しく上がらない方が良いぞ、ま、並大抵の男を片手で捻り潰せるからあんまり関係ないか、ほらさっさと入れ、寒いんだよ外の空気は。」

 

「はい。」

 

「さっぶ・・・・それで何の用だ?」

 

「リッペ船長の知り合いで銃に詳しい人はいますか?」

 

「・・・・・・・買いたいなら山岳共和国だぜ?」

 

「銃弾より拳ですよ私達は。」

 

「でも銃を使えば疑われないぜ?」

 

 

全くこの人は私を何だと思っているのか、しかし自然に銃を買うならこことアドバイスしている辺り可能性は大きい。

・・・・私達が犯罪をするときは敢えて銃を使うと疑われない、何だか本当に暗い底の闇を感じる発言で少し怖かった。

 

 

「とにかく銃に詳しい知り合いです。」

 

「まず一番有力なのはそうだな・・・そいつは急に仕事をしたいと現れて急に肉を対価に家に上がり込んでくる小娘だが、どうだ?」

 

「私に銃を買って欲しいんですか?」

 

「はは、冗談さ。真面目な話だが俺の知り合いは碌な奴がいないぜ?」

 

「碌でもない人には耐性がありますから。」

 

「っふ、それもそうだな、一番手っ取り早いのが武器密輸の仕事仲間、気長に仕事してたらいつか会える、いたらお前に教える。」

 

「国際的に詳しい必要はないんです。」

 

「そうか?地域的な知識だと・・・・やっぱり軍属だな、詳しい所在は分からんが凡その出没場所と名前は知っている」

 

「その人でお願いします。」

 

「ぁー本当にこいつにするのか?多分お前が行くと渋い顔して門前払いされるぞ。」

 

「なら大人しく武器を売る人と会えるその日まで首を長くして待ってます。」

 

「・・・・・・肉だけじゃ代金として足りねえな」

 

「一か月ただ働きでどうですか?」

 

「あのなぁ・・・・違うだろ?」

 

「二か月・・・・分かりました二か月で・・・・!」

 

「・・・・話を聞け」

 

「二か月半!限界です!」

 

「俺がそんな守銭奴に見えるか?」

 

「お酒のツケが何とかって言ってたのでお金に困ってるのかと」

 

「困ってるがな、お前は俺の船の従業員だ、お前が元気に出勤するために食べる食い物とか日常の営みをする為の金を要求する訳ないだろ?」

 

「まさか借金・・・・!」

 

「・・・・その発想は安直だが普通に思いつかなかった、いやいやだから違うぞ、こんなアングラな俺の交友関係を頼った理由を教えろ。それを駄賃にする。」

 

「・・・・・・・・・・・・友達が銃撃されたんです。」

 

「それは・・・・災難だったな、無事だったのか?」

 

「生きてはいます、だけど何も分からない、手掛かりはあるけど私には・・・・・詳しい事は言えません、私の友達の為にも。」

 

「ああ、・・・んん、まあお前は友達思いで他人に優しそうだなとは思ったが・・・変な事に首突っ込みやがって・・・・。」

 

 

暖炉の傍にずっと横になっていたリッペ船長が立ち上がって私の目の前にやってくる。

私は動かずに船長と真っすぐに相対する。

面倒をかけているから殴られるかなと覚悟していたけどそんなの杞憂だった。

顔に素早く到来すると思っていた船長の手は寸前で開花した花のように柔らかな軌跡を描いて私の頭の上に乗った。

 

 

「あ、・・・う・・・え」

 

「殴ると思ったか?そんな訳ないだろ、お前は素直過ぎるんだよ、・・・・・・・気を付けろよ、何にするにしてもお前みたいな性格はな、生きにくいんだからこの世の中。心配だよ俺は。」

 

 

こうして私はリッペ船長から銃に詳しい人の情報と1週間の休暇を貰った。

帰ってからはアレンと近況について話し合いながら翌日には出立できるように荷造りを手伝ってくれた。

向かうは果ての世界、半年前に行き損ねた地獄にとって一番近い場所だった。

 

 




カフカちゃんが殴られると身構える癖は主に訓練時代のせいです。
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