戦争が急に終わったせいで無職になった元兵士の女の子が路頭に迷ってしまった話   作:エルカス

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ガンマニアニキネキからしたら「ん?」な場面が多いけど許して・・・・


29酒酔いの人間の言葉はあんまり信じれない

人間にとって、最も苦痛な刑罰とは穴を掘らせそれを埋めさせる事を繰り返す事だと誰かが言った。

お高くとまった知識人は人間の創作性とか発展性が云々と自慢げに語るがそれは所詮そいつらのいち感想に過ぎない。

知能がない劣った人間はそんな高尚な悩みを持ち得ないのだから。

 

 

「そうら、ここが貴様の弱点だぁ・・・」

 

「ぐぬぬ・・・・なんてことをしてくれるんだぁ、・・・・だがそれなら俺にも考えが・・・・」

 

 

どうかしていると思う、頭がおかしいのは承知している、一人でチェスをして一人芝居をしているんだから、誰に見せるでもなくそれを空虚にやり続けるのだから病気だ。

話を戻すが俺みたいな世間一般の劣ったクソカスみてえな奴でもインテリ共と同じく穴を掘って埋めるのは酷く苦痛だ、何故か?

それは『意味がないから』だ。

 

別に穴掘りに限った話じゃない、馬鹿で愚鈍な奴は他よりずっと他者の何気ない行動を恨み妬ましく思う。

例えば一日かけた解いた数式を、天才が1分で解けばそれは自身の意義の否定と同義だから苦しく辛い。

加えて悪い事に、云われない恨みを天才が受けることになるからだ。何処知れぬ凡人からの恨みを。

痛みが重なればそれは心を壊し、恨みを抱き続ければ自分という人間は歪になる。

元々整った形をしてはいないのだが、それでも魂を失い、自分を忘れるのは恐い。

 

 

「ふはは!起死回生、逆転の一手!」

 

「なに!?貴様天才か・・・・・」

 

 

壊れ、もう元に形を思い出せない自身が取る行動は限られている。

この人生を終わらせるか、自分の世界に引き篭もるかの二択だ。

そして人生を終わらせる勇気を持ち合わせる馬鹿はとうの昔に絶滅したので今日も俺は狂ったように生きている、この呪われた大地で。

 

 

「ゼクトさん、いますか!」

 

「・・・おらぁ・・・・あ?こらぁ、夢か!ははぁ!」

 

 

夢に酔ったまま俺は扉に近づく、鍵に手をかける。

だけど錠前の冷たさは俺を現実に引き戻しにかかる、程よい泥酔感は感情の昂りに作用し快楽は不快へと反転する。

誰だ俺を夢から起こした奴は、俺に残された唯一の夢すらも奪うクソ野郎を探し出して殺したくなる。

 

 

「いったいいったい誰だ何だ!俺を誰だと思ってるぅう!」

 

 

扉を蹴とばして外に出る、散弾銃を構えて片手にボトルを持って。

俺は精一杯に空に叫ぶ、この悪魔の大地を威嚇し俺はここに俺がいる事を証明する。

 

 

「風邪、引きますよ。」

 

「あ~っははは!・・・・はぁ、・・・・ああ誰なんだ手前は、何者だ!俺を呼ぶ声はお前か!死神か!天使様か!誰も彼もクソ野郎には変わりねえ!その頭ぶち抜いてやるぜぇ!」

 

「ゼクトさん、ゼクト『教官』」

 

 

夢から醒めそうになる、曇天の景色から目を地上に降ろし、ずっと降ろし、俺の胸ぐらいの位置の高さまで降ろす。

俺の名を呼ぶ忌々しいガキ、何もかも持っているくせに何者にもなろうとしない退廃的で堕落した人間もどきども。

 

 

「教官はなぁ!今はお昼寝中なんだよぉ!邪魔した罰として貴様に痛みで教育する!」

 

「ペシ!」

 

「ッぅ・・・・・!」

 

「その痛みは俺の痛みだ!心に刻み次が、次がないように心にかけて心!返事はないのかこのクソ共がぁあああ!」

 

「戦争は終わったんですよ、ゼクト教官。」

 

「ああ?ああ・・・。」

 

俺が殴った頬が少し赤くなった新兵の顔に向けて叫んでいると、生意気な新兵が口答えをする。

だけれどその言葉には拳よりも理性が勝ってしまった。

辛うじて見ようとした夢が少し消える。

酔いが醒めていく、夢が消えていく、何も残らず空虚な自分自身がそこに在るという事実だけが残ってしまう。それは空っぽだ。

嫌だ、せめて夢ぐらいはみさせてくれ。

 

 

「・・・・出廷はしないぞ、帰れクソ共が・・。」

 

「話は終わってません教官、そんなに私達の事が嫌いでしたか?」

 

「一体何の用なんだ!お前は!・・・・お前は・・・・カフカ?」

 

「今日は酔いが引くのは早いですね、話が早くて助かります。」

 

「俺は、お前を・・・・いや、何でお前がこんな場所にいるんだ、・・・・・せ、戦争は終わったんだろ?俺達の負けで・・・・お前は帰った、お前たちは帰った・・俺はここに来た、・・・・・お前は、現実か?」

 

「卸売業者のゼクト、あなたの商品を買ってくれる『お友達』からの紹介です。」

 

「・・・・・・ああ、お前も結局そう言う仕事をするんだな、密輸に手を染める何て、これで仲良く社会のゴミ仲間だ!」

 

「ええそうですね教官、・・・そんなに私達の事が嫌いですか?それとも怖いんですか、私達が?」

 

「怖くない訳無いだろ!お前達にはな永遠に分からないんだ!普通の人間はどれだけ努力しても片手で頭蓋骨は握り潰せないし戦車の装甲をパンチで貫く事は出来ない!畏怖するべき存在だよお前たちは!って、あ!こら俺の酒を返せ!」

 

 

散弾銃をカフカに投げつけて俺はもう一度酒を飲もうとする、だが生意気な新兵に酒を横取りされた。

思いもしない反抗で俺は一瞬硬直した、夢だけじゃなくて俺の唯一の生き甲斐まで奪うのか、この悪魔と。

 

「酒なんて飲んでないで、真っ向から話しないんですか!仕事中でしょ!どこに昼間っから酒飲んで働いてる人がいるんですか!」

 

「うるさいうるさい!知っているんだお前の事を俺は知っている!殺しに来たんだろ、憎い俺を無惨に殺して快楽する為に来たんだろ!お、お前は出来る奴だったから、特にしごいたから恨んでるんだろ!」

 

「殺す?・・・・私に殺されるかもしれないって怯えてる?」

 

「あ、ああそうだ!怯えちゃいけないか!どれだけ怖かったと思ってる!6歳のガキですら大人を惨殺できるお前らをどうして!」

 

「そんなに臆病なのに、よくもまあ恨みを買って・・・・」

 

「返せよ!死ぬ前ぐらい酒飲ませろよクソォ!!!」

 

「こんなモノがあるからいつまでも現実逃避を!」

 

「ああ馬鹿辞めろ!やめてくれ、それは俺の最期の晩―――――――――――」

 

「こんな物なんて・・・・!・・・っゴクゴクゴク」

 

「って何飲んでんだオメェエエエ!!!!」

 

 

叩き割られるかと思ったら一気飲みされて怒りが再燃してそのまま殴ってしまった。

黄金に輝く酒の飛沫が空に舞い上がり全てが地面かあいつの口の中に消えていった。

 

 

「うわぁああああ!!俺の酒、酒がぁあああ!!!」

 

 

親友の欠片を集めるように俺は地面に散った酒を集めようとした。

だけど同じで幾ら集めても元には戻らない、失ったものは未来永劫失われる。

絶叫と嗚咽と共に俺は地面に蹲る。

 

 

「中に入りますよ。」

 

「放せ、放せよクソガァア!!!一思いに殺せクソ!俺を殺せよゴミカスがぁあ!!!」

 

「ほら一緒に入りますよ!体冷やしますよ!」

 

「ズズズ」

 

「イテテテ!?禿げる!尻が禿げる!」

 

 

無様にも力負けして家の方に引きずり込まれる俺。

落ちてる散弾銃を拾って反撃しようとしたがどこかに消えて行ってしまった銃、あれも夢だったのか、これもそもそも夢なのか。

軋む体に悶絶しながら俺は目を開いて目の前のクソを睨む。

 

 

「教官、私はただ一つだけ答えて欲しい事があるんです、そのためにここに来ました。」

 

「答えたら俺を殺すんだろ、そうなんだろ!そうだいつもそうだ!説教なんか聞いてやるもんか聞く価値もない!いつも上から偉そうに、お前達が言う程俺は簡単にできるつくりはしてないんだ!」

 

「リーリスが死にました」

 

「・・・誰が死んだって?」

 

「リーリス・シュタインホフです。」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

「銃撃を加えられた後に焼死体になっていました、警察は自殺と決定し捜査は打ち切られました、彼女に何があったかは分かりませんが、教官、あなた日頃から立てついてきたリーリスを良く思ってませんでしたよね?」

 

「お、俺じゃないぞ!俺な訳あるか!」

 

「私達の退職金を着服して、引き返すガソリンを抜いて業者に売った、別に私は気にしてません、でも真面目で皆の母親分だったリーリスに問い詰められ口論になった、激情に駆られ殺害した、十分にあり得ます。」

 

「違う!あいつとは会っていない!頼む違うんだ・・・・俺はクソ野郎だけど、あいつを殺したクソ野郎じゃない・・・・」

 

「・・・・・・・」

 

「お前もリーリスも目に掛けていたんだ!」

 

「目に掛けていた!?私達の幼さに付け込んでその有り余る社会的地位を利用して憂さ晴らしをしていただけでしょう!?」

 

「その通りだ!だけどお前達には期待をしていた!他のクズとも違って!」

 

「話にならない・・・・何が言いたいの?」

 

 

頭が混濁して言葉が纏まらない、色々釈明する事を考えていたはずなのに纏まりのない言葉のせいで頭が爆発しそうな痛みに襲われる。

夢を見すぎて現実の言葉も忘れてしまったのか、それとも最初から俺に言葉を喋る力なんてなかったのか。

 

「俺は何にもない!」

 

「・・・・」

 

「そうだろ!尊敬してくれる人も!歴史に残る行いも!何もない!何も成せなかった!誇れる偉業もお前達みたいな量産英雄に辱められ、知の結晶は多くの天才の存在で陳腐化して・・・俺は何者にもなれなかった!」

 

「そんなの、皆そうだよ。」

 

「だから俺は英雄を、天才を見つけたかった!・・・・お前たちにそれを見たんだ!」

 

「迷惑この上ない・・・・。」

 

「お前を煽った!奮い立たせた!でもお前は無能な働き者だった!その知力があって他人を使わず自分で全てをこなした!俺が押し付けた備品管理、運転、後片付け全部!」

 

「・・・・・・」

 

「力があるのに何で使わない!何でだよ!俺はなぁ、どれだけ望んでも手に入らなかった!ないものはどうあがいてもないんだからな!ゼロにどれだけ数字かけたって変わらないし、人間がどれだけジャンプしたって月に届かないようになぁ!」

 

 

自分でも何を言っているのかよく分からなかった、ただ魂が叫びたい言葉を片っ端から吐き出しているだけだ。

それに意味なんてないのにどうしてか、あれだけ俺を恨んでいるはずのカフカが俺の散弾銃を降ろして黙って話を聞いている。

その目は、その目は・・・・・・共に冒険をしに行き夢を見た親友たちと似たような目をしていた。

 

 

「俺には何もないよ!あいつが何を言ったって俺があいつを殺せるはずがない!あいつが俺を殺すんだからな!俺はお前達天才の英雄に殺されるんだから!」

 

「もう、分かった。」

 

「分かった!?お前に俺の何が分かるんだ!」

 

「・・・リーリスは死んでない、ごめん、嘘をつきました。」

 

「はぁ!?・・・は、はぁ!?」

 

「でも銃撃を追って大火傷をした、見るに堪えない傷を負った。」

 

「・・・・・・・・・・・・俺を騙して何がしたいんだよカフカお前はァ!!!」

 

「私は教官が犯人じゃないかって思った、だから試した、それだけ。」

 

「俺を殺しに来たんじゃないのかよ!」

 

「人を殺すのはいけない、絶対にしませんよ。」

 

「・・・何だよ、お前・・・・。」

 

「ゼクト教官、これは・・・・・リーリスから摘出された弾丸の破片です、教官が座学で銃弾は種類によって使う銃が大きく異なると言いました、そして銃も組織によって使用傾向が大きく分かれると、これはどの銃の弾丸で、どの組織が使う物か、分かりますか?」

 

「知らねえよ!」

 

「いいえ知っている筈です!思い出してください、私達を思い出せるならそれだって思い出してください。」

 

「知らねえよ、知らねえよ・・・・何なんだよ・・・・急に俺を叩き起こして滅茶苦茶にして、体ボロボロだよ・・・・。」

 

「体がボロボロなのは日頃の不摂生とパンツ一枚でマイナス10℃の外に出たからです、それと最初から起きてましたよね?」

 

「うるせえ知ってるよ!悲しませるぐらいさせろよ!じゃないとおかしくなっちまうんだ!愚痴らせろ!」

 

「じゃあ好きなだけ悲しんでください!愚痴ってくださいよ・・・・もういいですか?じゃあ教えてください。」

 

「お前まだ全然文句言って・・・お、・・・あ、っくぅ・・・・・これは・・・9mmパラベラム弾、はは・・・・変わらねえな・・・・軍用のフルメタルじゃない・・・どこから摘出された?」

 

「表面に近いけど、皮膚の中にありました。」

 

「ソフトかホロー・・・・どっちだったか・・・・だがスレッシャーの表皮で留まるならハンドガン、なら・・・・・・・ならソフトポイント。」

 

「確かなんですか?」

 

「使用銃はハンドガン、過貫通を防ぐ警察用のソフトポイント弾、だけど()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、恐らく偶発的遭遇・・・・いや違う、ソフトポイントはライフル弾、でもだったらホローだとしたら弾丸が壊れ過ぎだ・・・・」

 

 

頭が纏まらない、やはり分からない、俺には分かりようがない。

ダメなんだ何をやらせても何も成しえないゴミだ・・・・・・。

 

 

「落ち着いて教官、説明してください一つずつ、一緒に考えましょう。」

 

「ハンドガンは確かだ、表面に留まるなら威力が弱い銃に違いないからな、破片が砕けているなら柔らかいソフトポイント弾で間違いない、でもソフトポイント弾はハンドガンには使わない、どうしてだ?」

 

「ホローポイント弾は?」

 

「ホローは壊れない、キノコの形になる、整った形に・・・・・狩猟用でハンドガンにも使われる・・・・・いや使われてたか・・・・。」

 

「銃は距離が離れると威力が変わります、ハンドガンで確かなんですか?」

 

「違う・・・・・遠くならライフルだってあり得る、何か銃弾を受け止める・・服でも着ていたら尚更にあり得る。」

 

「服は着てて当然です、ライフルは誰が使うんですか?」

 

「・・・・皆、使うさ・・・・()()()誰かを特定するのは無理だ」

 

 

結局を何も分からない、浅はかな知識では何の進歩もない、無為に時間だけが浪費される。

ああそうだ、いつもこうだ、顔を上げれば私を見下ろして蔑んだ眼をして去っていく、皆過ぎ去っていく。

そうだ、今回もまた・・・・・・。

 

 

「『問題を起こして出動するならもっと火力は高い』教官、もし私達が問題を起こして出動したら警察の火力はもっと高いんですか?」

 

「ああ・・・・・三年前に法律が、あたらしく出来たからな。」

 

「・・・・・・・・・なら状況は絞れる、教官、我儘ですけど、出来なくてもいいですけど、・・・・良いですか?」

 

 

どうしてか、どうして俺に期待をさせるんだ。

俺を蔑んでくれないのか、どうしてこうも前向きに考えて歩んでゆけるのか。

どうしてお前はそこまで愚直で真っすぐだったんだろうか。

 

 

「リーリスのプロファイルを覚えていませんか?出身や、出自。」

 

「・・・・・・覚えていない。」

 

「そう、ですか・・・・・。」

 

「だけど、いつでも見ることは出来る。」

 

「お願いできますか?お金は払います、可能な限り。」

 

「時間がいる、2カ月は・・・・。」

 

「はい、私の・・・・住所です、それと・・・・お金は・・・これぐらいで・・・・。」

 

「・・・・・・・・俺に金くれるのか?」

 

「社会常識、ですよね?」

 

「・・・・・・・・・非常識だよ」

 

「教官には常識でしょう?私、もう行きますね、教官は私達の事を見ていると苦しいでしょうから、ありがとうございました。」

 

「あ、おい・・・・待てよ!」

 

「何ですか?」

 

「何で・・・・教えてくれ、何でだ・・・・・・・・・何で酒を割らずに飲んだんだよ!お前いつからそんな悪い子ちゃんになったんだよ!まだ飲む年じゃないだろうが!」

 

「・・・・・・・・・お酒、おいしかったですよ」

 

「あ、おい待てよお前!情報代以上に酒代おいてけよ!俺これから何飲んでいけばいいんだよ!水じゃ喉が渇くんだよ!オイ!」

 

 

俺の声を無視して生意気なカフカは去る。

背中と腕の痛みが和らぐと同時に寒気が強く襲ってきた、俺は服を着て、もう一度夢を見ようとした。

だけど一人じゃチェスの駒は動かせなかった、見ていた夢も思い出せない、仕方ないので俺は銃を担いで外に出た、仕事をするのはもう随分と久しぶりな気がした。

眼前に広がる忌々しい戦場から目を逸らせばそこから去っていく生意気な新兵の後ろ姿が見えた。




教官はカフカちゃんみたいな『兵士』出現前から戦争で必死に人類を守って来た一人の兵士でした。
『兵士』の登場により兵士の立場も追われ、役立たずの烙印を押されて心が折れた人の一人です。
心が折れて酒に逃げて、それを買うお金の為に汚職に手を染めて、自分たちを隅に追いやった『兵士』に妬みと羨望の感情を向けながら教官をしていました。
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