戦争が急に終わったせいで無職になった元兵士の女の子が路頭に迷ってしまった話 作:エルカス
曇らせの末にハッピーエンドを見る事を望むカタルシス派と
曇らせの合間に挟まる崇高な幸せを絶対にする為にバッドエンドで終わらせる原理派が。
ちょっとした冒険を終えて港に帰ったら特に変わりない日常がまた戻って来た。
貿易が再開した事で港も大忙しで沢山の船と人の往来が出来た、閑静なこの場所も好きだったし賑やかな今も同じく好きだ。
山岳共和国の人も僅かだけど遊びに来たりして町にレストランが復活した、昔はあったけど過疎とか色んな理由で潰れて20数年ぶりの復活、という歴史情報は今私を食事に誘ってくれたアルバさん談。
「今日はありがとうございますアルバさん!ここの料理美味しいですね、食べないんですか?」
「ああ・・・ちょっと酒とか飲み過ぎたかもな。」
「勿体ないですね、まあお酒も美味しいから仕方ないですね!」
冬も超えて貿易が円滑に出来るようになったので食糧不足は一先ず解消された。
食料に限らず色々価格は高いままだけど特にお金をあちらこちらに使わない限りは空腹に悩むことはない。
悩んだとしてもこの街の近郊は野生動物が多いので最悪狩猟で食いつなげる。
「それでだカフカの嬢ちゃん、頼みたい事なんだが・・・・。」
「はい!何ですか?人に言えない事でも・・・出来る限り頑張ります!」
「恥ずかしい話だけど、あー・・・・俺が仕事をしている間、俺の身を守って欲しいんだ。」
「仕事って言うのは?お酒を一緒に飲む仕事ですか?」
「そう簡単だったら良いんだけどな、まあ何て言うか、クビを切るっていうか、ああ切断じゃないぞ、そういう・・・行政用語というか・・・・・。」
「知ってますよ、解雇ですよね。・・・私に身を守って欲しいという事は、成程そう言う事ですか!任せてください、不肖チェルナー・カフカ、戦場にすら出ていない新兵未満ですけどお役に立ちましょう!」
美味しい食べ物と親しい人に頼られる事が嬉しくて大袈裟に了承してしまう。
気を良くした私は気付けなかったけどアルバさんは私が快く了承してもあまり素直に喜んでいなかった。
レストランで食事を終えたらそのまま役場に直行した。
「大変ですね、人に解雇通知を突きつける仕事なんて、嫌われるでしょうね・・・・。」
「そう、だな・・・・銃を・・・持ってくれるか?」
「はい、撃つつもりはありませんが銃弾はしっかり装填させて貰いますね、一発目は警告にしますか?」
「好きにしてくれいい、少し長くなるんだが・・・。」
「大丈夫ですよ!体力と腕っぷしだけは誇れるんですから、仕事とかこの後ないですし、それで何人ぐらいですか?」
「これぐらいだ。」
紙の束を見せられた、役所の人が担ぐに相応しい量だった、つまりとっても多いと言う事だ。
一人一枚だとしたら300人ぐらい解雇され・・・・一人2枚か3枚ぐらいかな。
「随分と多いですね、皆で揃って何か悪い事したんですか?」
「悪い事は何もしてないさ、悪いのは・・・こっちだ、役所の失敗だよ。」
「あぁ~怒って襲われそうですね・・・・その時は逃げてくださいね。」
「分かっている、分かっているんだ。」
確かに嫌な仕事な上に緊張する気持ちも分かった、私も緊張してきた。
銃は使わないと言ったが持つ手に力が入ってしまう。
「コンコン!」
「何だぁ・・・ああ、役所の人・・・どうかしたんですか?」
「行政命令第102号により君との労働契約が全て無効となった、明後日までに退去するように告知しに来た。」
「は、え・・・・いや何言ってるんですか、ここ来てまだ一週間ですよ?お、おれ、あいや僕・・・何かやっちゃいけない事でも・・・。」
「何も悪い事はしていない、国の定めた法律のせいだ、明後日までにだぞ、いいな?」
「いや、・・・・・いやいやそんな横暴な!わざわざこんな所まで来て急に帰れだなんて!通りませんよ!」
「文句は地方政府に言ってくれ、俺みたいな伝令役人にはどうしようも出来ない。」
「ふざ、ふざけるな!おい待てよおっさ―――――――――」
震えた声でアルバさんは言葉を言い切る、寒さではなく緊張で震えた彼は書類を扉の近くの机に置いて次の目的地向かおうとする。
書類を受け取ろうとせず対抗の構えを見せていた労働者はついに怒りで口調が崩れアルバさんにつかみかかろうとする。
「カチ」
「な、何だよお前!人の心ねえのか!?あり得ないだろこんなの!」
「怒る気持ちは分かります、でも暴力に頼ったって、状況は悪くなるだけです、お互いの為にも・・・・お願いします。」
アルバさんと労働者の間に割って入って銃を胸に向ける、それにぎょっとした労働者は動きを止めて恐怖と怒りの狭間で聞くに堪えない言葉を私にぶつける。
食事一回分の労働にしては随分と過酷だ。
銃を握る手が一層力んでしまって自分で紡ぐ言葉も重く、心に圧し掛かる来る、重圧だ。
「ッ・・・・ああクソ!クソが!このクソノーマル!俺達を良いように利用して!死ね!クソが!」
労働者は受け止めきれない現実と理性の狭間でやるせない怒りを発散するように周りの物を蹴散らす。
汚い言葉で私達を罵り地面を蹴とばし家に戻っていった。
「ふぅう・・・・はぁ、・・・。」
「ごめんな、カフカの嬢ちゃん。」
「いえ、・・・・次行きましょう、日が沈めば寒くてアルバさんも厳しいですから。」
「・・・・・ごめん、ごめんな。」
軽い気持ちでお願いを引き受けたけど正直言ってもう帰りたい気持ちでいっぱいだった。
でもここで帰ってアルバさん一人にしたらきっと酷い目に合っちゃうだろうから帰ってはいけない。
もう二回ぐらいレストランに連れていってもらったら割に合うかなと考え二件目、三件目と訪問を続けた。
『ふざけんなクソ役人が!』
『そうやって簡単に捨てるんだ俺達の事』
『人権なんてないんだな』
四、五件目・・・・・と訪問を続ける。
雇われた人は皆生活が苦しいのか素行が悪いのか揃って結構キツイ言葉で罵られる、心労が溜まって目元が歪む。
アルバさんも同じようで目の下の隈が酷くなっており疲労困憊で今にも倒れそうな見た目をしていた。
「あんなに・・・怒らなくても良いですよね、少しは・・・。」
「え、あぁ・・・・仕方ないさ、辛いならもう・・・いや・・・どうしたもんか。」
「私なら大丈夫です、ささ、次行きましょ、アルバさんが続ける限り、でもお食事にはもう二回ぐらい連れて行って欲しいですね。」
「・・・・考えさせてくれ。」
「期待してますよ。」
また怒鳴られる現実から少しでも目を背けるように世間話をして誤魔化す。
レストランを出た頃はまだ正午だったのに書類の束を消化しきったのは日が落ちてから2時間ぐらい後の事だった。
「っつぅ・・・はぁ・・・疲れたぁ!」
「お疲れ、ありがとうカフカの嬢ちゃん。」
「アルバさんも大変な仕事ですね、夜道とか刺されそうで怖いですよ、私はともかくとして大丈夫なんですか?」
「その時は死に物狂いで抵抗するさ、・・・銃を返してくれないかい?」
「あ、はい、重いですから持ってますよ?」
「いや、いいんだ・・・・これが・・・・。」
「あれ?まだ残ってたんですか?」
「・・・・・・・」
「アルバさん?」
解雇すると言って渡す紙がまた一枚残っていた。
私から銃を受け取ったアルバさんは急に黙り込んで歩き始める、話しかけても返してくれないので仕方なく付いていく。
暗くて少し柔らかな道を進むとガス街灯に辿り着いた、明るい場所ではお互いの姿や照らされている周りがよく見える。
背中を向けて歩いていたアルバさんが振り返って私の顔を見ると酷く悲しそうに狼狽えた。
「どうしたんですか?」
「落ち着いて、聞いてほしんだ、カフカの嬢ちゃん。」
「はい?」
真剣でいてどこか悲しそうな眼差しと小刻みに震えている彼の手には一枚の紙が握られていた。
その紙には私の名前が書かれていて、私が仕事をする事を禁止する紙だった、要は解雇通知に等しい物だった。
受け取ってその文字を読んでも実感が湧かないしどういう事なのかさっぱりだった。
「これが最後の一枚だ」
「君も・・・・・・出て行ってもらう事になる、この町から。」
カフカちゃん「私を騙して、都合よく利用するだけして捨てるんだ!」
アルバカ「ち、違・・・!私そんなつもりじゃ・・・!」