戦争が急に終わったせいで無職になった元兵士の女の子が路頭に迷ってしまった話   作:エルカス

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32子供なのを良い事に騙して利用するクズに成った

「え?・・・・私も・・・え、何で?・・・行政、命令、だからですか?」

 

「そうだ、兵士を労働者として扱う場合の法律が改正されて、ここに居て貰う事は出来なくなった。」

 

「・・・・・・・・どうしても?」

 

「カフカの嬢ちゃんには世話になった、だけど町全体で話し合っても・・・・13の少女と20や30の気力溢れる若者兵士どっちを必要とするかって言われると・・・・」

 

「私は必要ないんですね。」

 

「・・・必要だ、ただ、優先順位が・・・・。」

 

「なら、・・・・ならどうしてですか、・・・私に、もうどうせ追い出す私にこんな事させたの、どうしてですか?」

 

「それは・・・・・・・・・。」

 

 

意地汚い質問だと自分でも思う、さっき散々解雇される人に優しさが欠如していると言っていたせいで全部自分に跳ね返って息が詰まる思いをする。

今まで訪ねた人たちが全員兵士だとは思わなかった、というか気付かなかった、気付いていたらもっと彼らの罵詈雑言に共感していた。

 

 

「ねえ答えてよアルバさん!・・・・・私も、都合よく利用して・・・・。」

 

「違う、・・・君を利用するだなんて・・・・。」

 

「私の優しさに付け込んだんですか!他の残る兵士の人に頼めばよかった!何が嫌だったんですか!・・・・ねぇ!」

 

 

寒くない筈なのに体が冷たい、痛くない筈なのに、胸が締め付けられて苦しい。

どれだけ押さえつけても湧き上がる感情は止められない、私は言葉を吐き出さずにはいられない。

 

 

「何とか言ったらどうなんですか!」

 

「嬢ちゃんの事は好きだ、・・・信頼だってしてる、だから本当に申し訳な――――」

 

「信用してるなんて嘘言うな!」

 

「ッ・・・」「カチ」

 

「・・・・・・・・・・・・・ほら、信用してないじゃん」

 

 

わざとらしく、とは言いつつも半分は本気で、アルバさんに詰め寄ろうとした。

構えていたかのように私に返してもらった銃を私に構えるアルバさん、心臓が止まった、恐怖とか驚きではなくもっと別の何かに止められた。

喉の奥が渇く、息をする事を一瞬忘れた。

 

 

「結局、信用してないじゃないですか、・・・・だからこれを渡す前に私から銃を・・・・私はアルバさんの事、好きだったんですよ?兵士の私でも他の人と分け隔てなく接してくれて・・・・とっても嬉しかったんですよ?」

 

「っ・・・違うんだ、これは・・・・・・俺は・・・」

 

「一緒に森に狩りに出かけたり、他の人とのお肉パーティーに誘ってくれたり・・・・お父さんみたいに思ってました、私お父さんがいなかったので・・・本当みたいに思って・・・・あ、あはは」

 

 

彩られた輝かしい思い出が色を失い、光を失い、欠けてゆく。

怒りの後には悲しみの波が押し寄せ握った拳は力なく解かれる。

それでも銃口は私に向いたままで悲しみの波が私の心の防波堤を容赦なく破壊しつくす。

 

 

「私が勝手に期待して、勝手に喜んで、勝手に失望しただけ、ですから・・・・はい、分かりました、・・・・・出ていきます、・・・・・・・・今まで、お世話になりました。」

 

「ま、待つんだカフカちゃ―――――――――」

 

「うるさい!大っ嫌いだ!」

 

 

背を向けて暗闇に走る、これ以上悲しまないため、これ以上苦しまないため、情けない涙を人に晒さないため。

私は冷たく暗い夜を走る、獣の遠吠えのように抑えることなく彼方まで嗚咽の叫びを轟かせた。

脳裏にいつまでも焼き付く、私を、私達を恐れ、優しく握り交わしたその手を引き金にかける、友人だと思っていた心なき者達の姿。

 

 

「大っ嫌いだ!みんなみんな大っ嫌いだ!だいっきらいだあああああ―――――――」

 

 

 

 

 

 

『ですからこれは法律の問題です、筋だとか道理は介在しません、議会の決定が何よりも優先されます。』

 

「あのねぇお偉いさん、それじゃあ何だ?アンタはわざわざアンタ達が貿易の為に俺達に集めさせた野郎共をクビにして放り出さって言うのか?」

 

『そうですね、集めた人達が悪かったですね、しかし彼らを手放して余る失業者が求人に飛びつきますよ、作り過ぎた労働キャンプもこれで全部埋まって万々歳ですね。』

 

「ふざ、ふざけてんのか?相手は兵士だぞ?少なくとも1年は雇えるって確約したんだこっちは、それが1カ月でクビにしたら明日には俺の生首が晒されるだろうが!」

 

『殺人衝動に駆られた兵士が10人20人死体になったところで誰も貴方を責めたりしませんよ、銃や仲間でも引き連れて解雇通知をすればいいじゃないですか?』

 

「・・・・・・っ」

 

『もし暴動に発展した際には即応の()()部隊を投入する準備がありますがその際は生活圏が少々・・・壊れますがご了承ください。』

 

「出来れば()()()()部隊を送って欲しいんだがね。」

 

『その人手はありません。』

 

「っけ、鎮圧は出来るのに治安維持は出来ねえってか!」

 

『退去を拒否する者がいた場合は後日に武装した警備を伴った役人が伺います、先方が退去勧告を実施しなかった場合は最悪解雇もありますのでどうぞご自愛ください。』

 

「ふざけんな!通るかこんな――――――――――」

 

『ツーツーツー』

 

「切りやがったクソ高官がよォ!!!」

 

 

受話器を叩きつけたかったが壊れたら不味いので不本意に丁寧に戻す。

収まらない怒りを地面に叩きつけながらデスクに積み上がった書類を見て戦々恐々する。

遺書を書いてから望むべきかと弱気な考えになるが、クソ高官の含みある言い方を訳せば多少の暴力は伴っても問題ないと容認している。

 

 

「出来るだけの人手を集めて一斉に通知・・・いや集めたらそれこそ手をつけようがない、・・・家に投函して知らんぷり・・・・いや翌日に徒党を組んで殺される・・・・。」

 

 

どうにか最小のダメージで済むように考えを絞る、街の偉い奴とか港の管理者とも相談して一日が過ぎた。

成果と言う成果はまあ少しはあった、業者の方が普通の労働者を増やし解雇される兵士の数を抑制したが如何せんそれでも解雇の書類は全体の1割も減らなかった。

 

 

「大勢で一人ずつ訪問・・は不審がられて集まってきたら危険だな、・・・・やっぱり少人数で一人ずつ平和に訪問するのが一番だな。」

 

「人数を削るとなると腕が立つ奴を使わないと・・・。」

 

「俺は嫌だぞ・・・・」

 

「アルバ、お前と随分懇意にしている兵士がいたよな、そいつを使えばいいんじゃないか?」

 

「え?いや・・・あの嬢ちゃんは・・あの嬢ちゃんも解雇されるんだから使えねえよ・・・・。」

 

「その人だけ一番最後に解雇通知を渡せばいいんじゃないか?使うだけ使ってさらばって感じで。」

 

「てめえもっかい言ってみろ?兵士共がお前の前歯へし折る前に俺が砕いてやるよ。」

 

「落ち着けアルバ・・・出来ないのか?命に係わる事だ、下手をこくと街が火の海になるんだぞ?」

 

「恨みを買いたくないのは分かるがそれ以上に処理するべき事だ、この街が折角立て直すチャンスを得たのに規約違反で全部滅茶苦茶になるのは・・・・・嫌だろ?」

 

「残す奴を護衛に使えばいい、その方が腕も確かだし合理的だろ?」

 

「そこそこ年を食って腕も立つ奴に借りは作りたくない、まして兵士だろ?」

 

「これが一番合理的ですっきりだ、それに女で子供だったら怒り狂う兵士も手を出しにくいだろ?はは―――――――えぐぅ!?」

 

「俺は警告したぞこのクソ野郎!」

 

「おい落ち着けアルバ!」

 

「抑えろ!」

 

 

人を人とも思わないクソ野郎を殴っても状況は変わらない事は分かってても殴らずにはいられなかった。

結局、俺とカフカの嬢ちゃんの関係を利用して護衛に引き入れる事となった。

事情を直接話せば勘繰られると悪知恵を働かせた誰かの案で詳しい事は言わずに仕事を依頼する事になった。

 

 

「コンコン」

 

「は~い、アルバさん、何の御用でしょうか?」

 

「あ~実はな・・・・。」

 

「・・・・・・・・どうしたんですか?」

 

 

気品がある立ち振る舞い、丁寧な言葉使い、年上や目上の人に対する礼儀、若いのによく出来ていると思うし、年相応の少女らしさもある。

こんな飲んだくれの酒カス相手でも分け隔てなく接してくれる愛嬌はまるで・・・孫の様な可愛らしさがあった。

食い物に困って狩猟に出た時、こいつのおかげで町の皆は腹を空かせる事無く満足な日々を送る事が出来た。

ただ俺はこいつに危ないと分かっていながらも仕事を紹介しただけなのに釣り合わない恩返しを受けた。だから・・・・・

 

 

「何でも・・・・ない。」

 

「えぇ~実は・・・・って深刻な顔してたじゃないですか!本当はどうしたんですか?・・・・もしかして何か困ってるんですか?それなら私相談に乗りますし頼りなりますよ!自分で言うのもなんですけど、えへへ。」

 

 

背を向けてそのまま去ろうとした、だけど待ち受ける恐怖がその足を止める。

頭では分かっている筈なのに抗いようのない原初の習性、自己保身に従い俺は真のクソ野郎に成り下がりゆく。

 

 

「実は・・・・実は新しく出来たレストラン、気品って奴か?一人で入るには気が引けちまってよ、

一緒に行かねえかなって?俺の奢りで。」

 

「アルバさん。」

 

「な、何だよ?」

 

「悩み、ありますよね?隠そうとしてます?」

 

「そんな事は・・・・・・。」

 

「ご飯も良いですよ、悩み聞きますよ、どうですか?」

 

「・・・・・・・・・・・・・お願いとか、頼みなんだ、お前への。」

 

「私への! なら大丈夫です、待っててくださいね、着替えてきますから、ああ、寒かったら上がってても大丈夫ですよ!」

 

「ここで・・・・・大丈夫だ。」

 

「頼られちゃった、ふふ!期待に応えられるように頑張らなくちゃ、私も!」

 

 

本当は凍える寒さだったけど俺はここに居続ける。

あの無邪気な笑顔を利用して幼い親切心を裏切った自分が嫌になる。

最低なクソ野郎にだけはならないように話を全部素直に切り出そう、切り出そうと試みたが俺も結局クソ野郎の一人でついに・・・・何もかもこの子に隠したまま利用した。

暗闇に広がる無垢な少女の嗚咽に俺は耳を塞いで蹲るしか出来なかった。

 

 




聡明な読者ニキネキは察していると思いますが、作者の曇らせ癖ドストライクはカフカちゃんみたいな大人と子供の狭間みたいな少女ですグヘヘ。
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