戦争が急に終わったせいで無職になった元兵士の女の子が路頭に迷ってしまった話   作:エルカス

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34それでも親切な人はいた

「グス・・・・う゛・・・くぅ・・・・こんの・・・・づぅ・・・こなくそ・・・ッ・・。」

 

 

色々流れ出そうな物を堪えて怒り半分で荷造りをしていた。

結局、この場所も半年しかいる事が出来なかった。

まあ前回の四か月と比べれば長い方だったのかもしれないけど。

やはり私達兵士には普通の人のように安住の地はないのかな・・・。

 

 

「もうアズニャンさんやリッペ船長とも・・・・・船長にはお別れ言わなきゃ・・・・船の操縦は最後まで教えて貰いたかったな・・・・。」

 

 

前向きに考えようと思っても将来とか思い描ける程に心は強くないし、妄想の域に浸れるぐらいの夢は見れない性質をしている。

結局は暗く苦い現実を噛みしめながら、こうやって泣き続けるしかないのだ。

私は脆く弱いから他のやり方は分からないし分かったところで出来ない。

 

ここを去ったらおばあちゃんの所に帰るべきか、本当は帰ってアレンの言った通りにけじめをつけるべきなんだけどアルバさんの言っていたことが引っかかる。

 

『――兵士を労働者として扱う場合の法律が改正されて――』

 

教養も無くて、まして法律なんて意味ぐらいしか知らない私だけど、今まで普通の人と兵士を仕事に使う時、何か違うように扱う法律があったかと言われると、ないと断言できる。

連邦が何か私達にとって苦しい法律を作ったのならその内容を事細かに知らないとこの先も煮え湯を飲まされる可能性がある。

 

 

「昨日・・・・あんな事言わずにちゃんとどんな事か聞いておけばよかったな・・・・。」

 

 

貰った退去勧告と解雇通知書にはどんな法律でどんな部分に抵触して何てご丁寧に書いていない。

所詮は大半が学校にも行ったことないスレッシャーには必要ないし寧ろあっても煩雑なだけと判断されて削られたのだろうか。

もし内容が内容であれば農場にも帰れないかもしれない、頭がいっぱいで辛くてしょうがない、色々思い悩む私を現実に引き戻したのはノック音だった。

 

 

「コンコン、いるかー、出てこーいカフカ。」

 

「カチャ」

 

「お、出て来たな、ひっでぇ顔してんな、そんなんじゃお嫁にいけないぞ。」

 

「なんですか、リッペ船長。」

 

「いや~・・・・お前の様子を見に来たんだよ、・・・・なあお前―――――――」

 

「大丈夫です、すぐにでも出ていきますから。」

 

「・・・・お前は結局、人の話をよく聞かない癖は治んないな。」

 

「聞きません、何ですか?出ていく前にやって欲しい仕事ですか、それとも何か約束事ですか?この仕事を始める時の約束事なら何も破ってないですよ。」

 

「いいや、破ってるね。」

 

「仕事の事は家族にも言ってないし仕事はちゃんとしました。」

 

「そうだな、だけど辞める時にはちゃんと相談しろって言ったよな?」

 

「自分から辞める時はでしょ、私は・・・・辞めたくない・・・・ここが好きですから。」

 

「何だ言えるじゃねえか、辞めるにしても・・・・喧嘩別れは辛いだろ?せめてちゃんと別れようぜ、したくてもな、出来ない奴らが殆どなんだから。」

 

「・・・・・・・・。」

 

「そら、少し歩こうか、お前も一晩中一日中かけて不機嫌に荷造りするのは酷だろ?仕事でこき使った時よりも顔酷いんだぜ今。」

 

「これは・・・・っ・・・・はい、そうですね、きっと酷い顔してます。」

 

 

軽く外套を羽織って外を歩く。

同じように建てられた労働者の為の家々で、同じように荷造りをしている人が何人も見える。

軽々しくタンスとか持ち上げて放り投げている風景から彼らも全員そうだと分かる。

 

 

「それで・・・・はい、辞めることになりました、法律が変わるらしいですけど私にはよく分かりません。」

 

「俺も良く知らねえが兵士の奴を雇いたきゃ普通の奴を何人も雇わないといけないんだとさ、横柄な決まりだよな。」

 

「しょうがないですよ、抑えつけないと格差が広がるんです。薄々感じてはいました、兵士が普通の人の仕事を奪ってるんじゃないかって。」

 

「そいつは違うな。」

 

「・・・・違いませんよ?」

 

「いいや違うな、産業が発展した時に、機械に仕事を奪われた奴らがいて散々喚き散らしたらしいが、今の世の中を見てみろ?一体誰が機械をぶっ壊そうとするんだ?結局は付き合い方と変化への許容と少しの苦労を受け入れれば丸く収まるさ、俺はそう考えてる。」

 

「私達は機械みたいにお利口じゃないんです、働いたらその分お金だって要求しますし機械と比にならないぐらいに器用に何でも出来ちゃいます。」

 

「ああ、船を漕いで進める事しか出来ない未開文明から見たら蒸気エンジンは器用が過ぎるな。」

 

「どう言い繕っても上の人はそうは考えなかったんです、だからこの話はお終いです。」

 

「・・・・・・・・・・これからどうするんだ?」

 

「実家に帰ります。」

 

「帰った後は?」

 

「農場を手伝います、無理だったらまた何処か遠くまで行って仕事を探します。」

 

「つまり当てがねえって事だな。」

 

 

行く当てはあるかないかと言われると正直ないに等しいけどそれをはっきりと言われると腹が立つ。

一体私とこれ以上話をして何の得があるのか。もうこれ以上嫌な気持ちとか味わってここを嫌いになりたくないから家に戻って去る準備に戻るべきだと思っている。

 

 

「アズトナーに相談して向こうで仕事を貰うって手もあるんだぜ?」

 

「外国じゃないですか、法律が許さないですよ。」

 

「今更何だってんだ。これまで平気で横流し品を密売して不法密輸してたんだ今更だろ?」

 

「ついに言葉に出しちゃいましたね・・・・やっぱり、密売だったんですね。」

 

「ああ、軍の管理職が中抜きしたモノとかを卸してたんだ、まあ国も黙認してたんだけどな、何せこの港にはそれぐらいしか産業が残されてなかったからな、漁業も禁止されちまったし。」

 

「それは・・・・初耳ですね。」

 

「正確には取って食っても良いが売ったり港の外に持ち出すのはいけないんだ、病原菌に感染してる可能性があるってな、でも俺達は今もこの通りピンピンしてるが。」

 

「・・・提案はありがとうございます、でも・・・ちょっとこの国から離れるって考えると何だか気が引いちゃいます。」

 

「離れる必要はねえよ。」

 

「え、でもアズトナーシャさんの所でって・・・・。」

 

「んまぁ・・・アズトナーがお前を雇う、俺の船専用の在籍水夫として、俺があいつにお金を払う、あいつがお前に金を払う、何も問題はねえ、お前は外国の奴に金で雇われてるお手伝いさん。」

 

「詭弁じゃないですか・・・あはは、面白い発想ですね・・・うふふ。」

 

「お、やっと笑ったな、お前はその顔が似合ってるよカフカ、涙は似合わねえ女だ。」

 

 

割と相談したらアズニャンさんも「おう!私に任せとけチェルッち!」とか言ってノリノリで協力してくれる光景が容易に想像できる。

考えると面白くて笑ってしまう、先程までは沈んでいた心が急に飛び跳ねるようなギャップに襲われて大したことない話でもとっても感じ入る。

 

 

「良いんですかそんな事して?」

 

「俺も結構年だからな、今まで散々放置して来た国に一発ぐらい小さな反抗をしてみてえんだ、勿論お前には迷惑になる可能性もある、だから・・・・まあ何だ、断ってくれても全然良いんだ。」

 

「ありがとうございます、でも・・・他の皆の事を考えると卑怯な気がします。」

 

「卑怯なモンか、お前はこの町が寂れた時に選んでくれた、他の奴は言っちゃ悪いが金欲しさにここにやって来た、お前にはここに居続ける権利があるんだ、その権利を不純に思ったのなら俺の為にこの提案を受けてくれ。」

 

「船長の為?」

 

「あぁ!今更普通の奴を雇う何て考えられない、お前は荷物を横領したりしないし勝手に食い物を食べたりしないし急に亡命したりもしない、それにきれい好きだ。」

 

「ふふ、褒められると照れちゃいます、もし居続けるとして私は何処に住めばいいんですか?」

 

「船にでも何処にでも、アルバに相談すればあいつがどうにかしてくれるよ。」

 

「アルバさんが?」

 

「あぁ、アイツはお前を特に気に入ってたからな。」

 

「・・・・・・・・・。」

 

 

嘘だと否定する心と、やっぱり本当はと、期待せずにはいられない馬鹿な自分がいる。

このまま船長の言う通りに残り続けるのも悪くはないと思うけど喧嘩別れしたアルバさんとこれからも会い続ける気まずさをも受け入れなければいけない。

過ぎ行く時間がこの深い溝を埋めてくれると期待するのは無駄なのか、ふと彼の事を考えてつらい現実の方に引き戻されてしまう。

 

 

「アルバがどうかしたのか?」

 

「・・・・聞いてませんか?」

 

「いや、何も。」

 

 

私はリッペ船長に昨日の事を話した。

 

 

「・・・・成程ねぇ、あいつも何やってるんだか、そりゃあ嫌われてもしょうがねえな。」

 

「仲直りしたいです・・・・。」

 

「えぇ?!ここは一発ぶん殴るとか誠意を見せて貰うとかじゃねえのか」

 

「普通の人を殴ると死にますし誠意って何ですか?」

 

「金、土下座、ケジメ」

 

「ん、んん?・・・・いやぁそういうのは・・・でも、もう一回レストランに連れて行って欲しいな、美味しかったから。」

 

「・・まあ俺がアイツを呼び出して腹割って話すとかで何とか―――――――」

 

「パァン!」

 

 

ゆっくりと歩いて沢山の船が停泊している埠頭で悩ましく話している最中に背後から乾いた音が響き渡った。

港で羽休めをしていた鳥たちが一斉に飛び立つ。

音は聞きなれた代物だったけど町中では聞きたくなかった音だ。

 

 

「今のは銃声か?」

 

「何が・・・。」

 

「どこからだ?」

 

「多分役所の方です・・・・」

 

「パァン!パァン!」

 

「ま、また二発・・・・熊とかが出たのか?いやもしかして・・・・。」

 

「まさか怒った皆が暴れて・・・・!」

 

「あ、おい待てカフカ!一人で先走るな!おい!」

 

 

家からここに来る途中、荷造りをして出ていく兵士たちの間でかなりの数集まって話し合っている集団がいた。

直感とかそう言うレベルで何か良くない話をしているのは分かっていたけどこのタイミングで役所から発砲があると思うと想像せずにはいられない。

私に身を守ってくれるように頼んだあの不安げな顔を思い出す、最悪の想定が現実になる前に、もう遅いかもしれないけど私は全速力で走った。




~もしもリッペ船長が筋肉モリモリマッチョマンの変態だったら・・・・~

カフカちゃん「無許可の外国就労は犯罪だぞ!もしバレたりしたら・・・」
リ(ッペ)ンクイスト「いつも平気でやってる事だろうが!今更御託を並べるな!やるんだ」

ちなみにこれはコマンドー語録ではなくトゥルーライズ語録です。
吹き替えの帝王でブルーレイ化してくれないかな~チラチラ
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