戦争が急に終わったせいで無職になった元兵士の女の子が路頭に迷ってしまった話 作:エルカス
「なっ・・・・何やってるんですか皆さん!」
「うるせえ!こいつらが俺達から退職金名義で金をたかるんだ!」
「不当解雇の違約金を払えと言ってるんだ!」
「どうかしてますよ!銃なんて向けないでください!兵士の皆さんも落ち着いて!」
「落ち着けるか!というかお前は・・・・政府の犬のクソ兵士じゃねえか!死ねよお前!」
「たんまり金貰って癒着して人生イージーなお前には俺達の気持ちは分からねえだろうよ!」
「や、やめて―――――――――っぐぅ・・・・!?」
「あ・・・・っ!」
俺達普通の人間が食らったら間違いなく死ぬ威力の投石をカフカの嬢ちゃんが顔面に受ける。
血飛沫が舞い上がり、顔の肉片が辺りに飛び散る、眼球の水分とかと混ざった血がポタポタと滴る。
地面を赤く染める。
「テメェらなんてことを!」
「づ、ぅ・・・・だ、大丈夫です!私は・・・・ぁ、・・・だ、いじょうぶ・・・・ですから!」
「まだ喋るかクソ売女――――――お、おい何すんだよ!」
「相手はまだ子供だぞ!殺す気か!」
不幸中の幸いか嬢ちゃんがまだ幼い見た目のおかげでそこまで頭に血が上ってない奴が石を投げたクソ野郎を静止してくれた。
当の嬢ちゃんは負傷した部分を押さえながら俺達と暴徒の前に立った、おぼつかない足取りで、まだ細いその小さな体で、守るように・・・・。
「こんな、事は・・・・やめませんか?・・・・誰も幸せにならないじゃないですか!」
「お前には俺達の気持ちが分からないのか!折角戦争が終わって仕事も見つけたのにそれすらをも取り上げられて・・・この惨めさがお前に分かるか!」
「分かりますよ!私だって前に働いてた所は銀行とかの倒産のせいでクビになったんです!戦争が終わって生きるために、食べ物の為とかに必死に探して見つけた仕事を急に失くしたんですか分からない筈がないですよ!」
「ならどうしてだ!お前は良いよな仕事がまだあるんだから!」
「っ・・・・私は、・・・私。」
「ほら見ろ!俺達と話がしたいなら、俺達と同じ視点に立て!上から見ろすんじゃなくて対等な場所で話をしろ!」
「・・・・・・・・・私は。」
さっきまで胸を張って抗議者相手に啖呵を切っていた嬢ちゃんは貧血とかのせいか少し俯いて声にも力を失くした。
一瞬は嬢ちゃんの気迫とかで圧されていた馬鹿共はまた盛り返して熱を帯び始める。
「どうにか言ったらどうだ!」
「どうせ体とか売ったんだろ!羨ましいな女は!」
「戦争で泥水啜って必死に生きて来た訳でもないくせに!」
誰かの一声で嬢ちゃんがピクリと動く。
そして俯かせた顔を上げて抗議者を直視する。
息を再び吸い、言葉を紡いだ。
「・・・・すぅ・・・・・ええ、そうです私は戦争には行きませんでした。」
「ほら見ろ!所詮は夢見がちな子供の臭い理想論だ!争いを通じてしか勝ち取れない物があるんだ!」
「俺達は何年も戦争続けてこのクソ共の為に戦ってきた!俺達のおかげで勝てたのにこいつらと来たら俺達の足を引っ張るだけ!邪魔な存在!」
「邪魔・・・?邪魔なんかじゃない!」
「邪魔だろうが!」
「皆さんが戦争をしてる間、食べる物は誰が作るんですか?皆さんが兵士になった時に貰った服は誰が縫ったんですか?皆さんが大切に握りしめる銃は?銃弾は?武器は?・・・・私達は決して私達だけで戦争は出来ない・・・・皆がいたから今があるんです!邪魔な人なんていない!」
「う、うるせぇ!第一今は戦争関係ないだろ!」
「いや戦争の話題切り出したのお前だろ・・・・。」
「お前はどっちの味方だぁ!」
「折角の平和を・・・・一体何人が人生を犠牲にして、命を犠牲にして、勝ち取った平和だと思ってるんですか・・・・!皆さんの戦友や・・・お母さんお父さんが・・・今のこんな光景見たら・・・・どんな気持ちになると思うんですか・・・・!」
「死んだ奴が墓から蘇って泣くと思うか!ありもしない事を考えてないで生きてる奴の事考えろよ!」
「ええその通りです!だからどんな理由があったって、生きてる人を墓に放り込むことは断じて許しません!スレッシャーだろうとノーマルだろうと、私が許しません!」
嬢ちゃんは顔を押さえていた手を離す、血が垂れる、傷が痛々しいものなのか、抗議者が顔を歪ませる。
離した手はピンと張るように伸ばされる、もう片方の手も・・・・・その後ろ姿はお互いを守る壁のようにも見えた。
そしてふらつくまま振り返り俺達職員を見る。
「・・・お願いします、銃を下ろしてくれませんか?・・・・・お願いします・・・・歩み寄れば皆同じ人間だって分かるんです・・・・普通の人でも悪い人はいるしいい人もいる、兵士にだっていい人もいれば悪い人もいる・・・・だからチャンスを下さい・・・お願いします。」
ずっと向こうにあった嬢ちゃんの姿がこっちにある、愛嬌があって可愛い顔をした嬢ちゃんは血に濡れて・・・美しい瞳は欠けている。
残った瞳もこの惨状を嘆き血を流している。一人一人に訴えかけるも誰も構えた銃を下ろそうとはしない、降ろそうとする奴もいたが・・・躊躇し結局は・・。
そして最後に俺を見る、嬢ちゃんは俺を見ていた。
「・・・あ、お、おいアルバ・・どこに・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
俺は銃を持ったまま前に進む、嬢ちゃんと相対するまで進んだ。
近づいて分かった、嬢ちゃんの震え、荒い息遣い、酷い怪我・・・・。
「・・・・・。」
「お願い、します・・・・・。」
「――――――――――――」
俺は、銃を両手で持ち・・・・・嬢ちゃんの向こう側に投げた。
重量のあるそれはそんなに遠くにはいかずすぐ近くに重い音を立てて落ちた。
そしれ俺は嬢ちゃんの横に立つ。
「すまなかった・・・・俺は・・・・本当はきちんと話をするべきだったのに、冷淡にお前たちに接した、・・・虫のいい話だが・・・・今は矛を収めてくれ・・・」
俺は深々と頭を下げた。
視界は地面しか見えず次には無防備な後頭部を破壊されるかもしれない恐怖と戦いながら俺は頭を下げ続けた。
そして後ろから重々しい音が次々と鳴った。
「まあ・・・・・・・俺達も度が過ぎたんだ、・・・悪か―――――――――」
「下らねえ茶番だな!」
「おい何だよ空気読めよお前!」
「話聞いてんのかお前ら!俺はなそこのクソ見てえに澄ましたバカ女に同じところに降りて来いって言ったんだ!所詮あいつはクビにされなかったお上品な売女だ!皆あいつの見た目に当てられてびびってんじゃねえよ!」
「そ、そうだ・・・同じ兵士だがお前はここに居続けられるんだからいいよな!」
「おいやめろって・・・。」
「結局は争いたいのか・・・野蛮人!!」
「っ・・・・私、私は・・・・・・・・・・・・・私もこの町を去ります!」
「嘘つけ!でまかせ言うな!」
「本当です、これが証拠です!」
「解雇通知と退去勧告・・・・・え、本当なのか!?」
「嘘だろ・・・じゃあ何で隣で銃構えて俺達に圧力かけたんだよ!お前はこっち側だろ!なんでそっちにいるんだ!」
「兵士だろうと普通の人間だろうと・・・・私には関係ありません・・・この町が好きだから、この港の人にはお世話になったから・・・・!・・・・・ここにいるんです、この町を好きになっちゃったから、それが全てです!それ以上何がいるんですか!」
最後まで抵抗していた抗議者も周りに叩かれて黙った。
話の場を設ける約束を書面で残してこの騒ぎは収束を迎えた。
発砲されて負傷した兵士とかはいたが、誰一人として死者は出なかった、俺達は都合よく利用して捨てようとした・・・たった一人の少女に助けられた。
稲荷はもうちょっと待ってください・・・必ずお届けします。