戦争が急に終わったせいで無職になった元兵士の女の子が路頭に迷ってしまった話 作:エルカス
1.曇らせる人物は心身ともにある程度正常である
2.作中人物が曇らせという概念を知らない、自覚しない
3.多くの読者に観測され、情緒を動かす事
この三要素により
*個人の意見です、曇らせとは個々の心に存在し、人によって異なる物です
「調子はどうだカフカの嬢ちゃん?」
「最悪ですよ、・・・・ああもう痛ったぁ・・あの馬鹿共に慰謝料を払って欲しいですよ、クソ!」
「おいおいお上品じゃないぜその言葉、目は大丈夫なのか?」
「ええ一昨日ぐらいに新しいのが生えて今日は辛うじて嵌りましたよ、痛みも峠は越えたって感じです。」
「すげぇな・・・。」
「アルバさんはどうなんですか?暴徒たちとの交渉はどうなりましたか?」
「全員に一週間分の給金を支払う事で合意した、お互いに罵り合うのは変わらずだったが・・・・ああこれはお前の分だ。」
町の皆と暴徒の間に割って入った時にどこかの投球自慢馬鹿に目玉を吹き飛ばされたせいで私は一週間入院する事になった。
失明は覚悟してたけど、どうやら兵士は目玉ぐらいなら軽く生えてくるらしく特別な心配は必要なかった。
でも目玉の生えポジションとかの調整で猛烈な体験をしたけどあんまり話したくない、本当に。
「それでだカフカ、お前・・・本当に・・・・出て行っちまうのか?」
「・・・・あんな事言っちゃったんですから、はい船長・・・・ごめんなさい、でもこれが私なりのケジメです、反故には出来ません。」
「そうか、残念だな・・・・・ほらアルバァ!しゃんとしろお前!一週間ずっと仕事とか交渉でごねやがって、やる事やれぇ!」
「づぅ・・・叩くなよリッペン・・・・・・・カフカの嬢ちゃん。」
「はい、アルバさん。」
「す、すまねえ!・・・・騙して酷い事しちまった・・・・誤魔化そうとしてすまなかった・・・許してくれなんて虫の良い事は言わねえ、だけど・・・・他の奴と―――ぅ?」
私は喋り続けるアルバさんの口にそっと指を押し当てた。
ぎょっとして狼狽えている姿はちょっと面白かった、空気を読んでリッペ船長は必死に笑いを堪えていたけど動きが赤信号だった。寒い時もああ活発に動いてほしかったな。
「許します、嫌ったりしません、アルバさんは変わらず私の良き隣人です、ここを去った後も変わりなく、です。」
「すぅ、カフカ゛ァ・・・お前・・・・許していいのかよこれェ・・・。」
「うぇ!?な、泣いてます!?」
「ないでねぇよバカァ・・・・・」
「うはぁははは!?泣いてるぞ!アルバ泣いてるぞおお!?」
「だっでよぉ!?嫌われるだろうがぁ!?どんな理由でも銃向けられてはい許しますって言ってくれると思うかぁ゛・・・!?」
「兵士ですし普通の人ほどでは・・・。」
「馬鹿野郎ぉ!普通の人だとかじゃねえ!銃向けたら誰だって許されないんだぞ!耐えられるかどうかじゃねえんだ!それでも許してくれるのか・・・・!」
「だったら許そうか迷うな~。」
「そんなぁ・・・・!?」
「ぶはははは!!!」
「嘘ですよ、許します。はい許しました、これで仲直り!」
ちょっと遊んだら膝から崩れ落ちたアルバさんの両手を握りしめる。
リッペ船長はもう色々無理なようで大爆笑しながら部屋から退出した。
「ああ、ああ!仲直り・・・・!仲直りだな・・・!」
「はい、でもちゃんとご飯には連れて行ってくださいね。」
「分かった、連れて行ってやる!何度だって連れて行ってやるよ!」
「楽しみです、えへへ、やった、これからはここに来るたびに御馳走してもらえるんですね。」
本当は帰る前にもう一度ご飯を食べたかったけど、色々あったから残念だけどご飯はまた今度になった。
次にいつこの町を訪ねるか分からない、でもきっといつかここに来よう、問題はまだまだ山積みで私の将来は不鮮明なままだけど前よりずっとずぅ~っと・・・・・。
晴れ晴れしい気持ちでここに別れを告げることが出来た。
「さようなら~!さようなら!また来ますから!皆さんありがとうございました!」
「元気でねカフカちゃん、体には気を付けるんだよ。」
「今度来たらまた船に乗せてやるよ!ただ乗りだぞ!」
「いつでも飯に連れて行ってやるからな~!」
普通の人が少し寒さを忘れ暖かな風を感じる6月の半ば、私は半年間も暮らした第二の故郷から旅立った。
親しい人たちに見送られ少し重いけれど沢山の餞別と共に歩き出した。
「あ、やばい・・・・郵便物、んん・・・また今度でいいかな。」
ちょっとやり忘れた事もあったけどこんな雰囲気の中引き返すのはちょっと恥ずかしかったのでまたの機会という事にした。
家に帰る途中に通る街々では鉄の箱に乗った警察や軍隊の陣地とかがあって怖かった。
やっぱり兵士を雇う法律が出来て色々問題が起きたんだ。
連行される血だらけの人達を見れば現実に対する認識の甘さを痛感する。今はただ見る事しか出来ないけど、近い将来にもっと違った形にする事を固く心に誓った。
「今月のインフレ率は40%前後となる見込みで来月には60、再来月には70~80代を維持し年末まで続く見込みです、その後は30%台を維持し緩やかに低下していく見込みです。」
「・・・・では分かりやすく、パーペン君、来年の年末と今を比べて物価はどれだけ上昇するのだ?」
「約100倍です。」
「・・・・・・・・・・」
予め知らされていた事とは言え予想される事態より深刻である事には変わりない。
企業は今まで兵士人材を使い利益以上に価格維持の努力をしてきたが、此度の法律でその努力を粉々に砕いたのだからこうなるのは必然だった。
ハイパーインフレーションへの対策は幾つか案があるが、果たして国家が破綻しないレベルまで効能があるかと言われれば微妙である。
「前回の試算より悪化しているな。」
「貿易赤字と企業倒産の試算を改めた結果です・・・失礼ですか首相殿はこれらの問題をどのように納めるつもりで?」
「君達の部署・・・というよりは君個人が兵士の雇用制限の制定を強く反対していたのは理解している、この破壊的なインフレ対策は有史以来前例がない難題だ、慎重に検討して対策をするつもりだ。」
「具体的な対策案は現段階ではないと?」
「口が過ぎるぞ。」
「申し訳ありません。」
「・・・・気持ちは分かる、対策を取ろうにも閣議の間でも意見の相違が目立つ。我々としては浮いた兵士労働力を活用して最低限の国家維持をするつもりだ。全ての国民に今日と明日を食っていける糧があれば経済は最悪死んでも構わない。」
「皆が食べていける国が維持できたのなら首相殿の勝利です。経済はそれだけで循環します、死にはしません、問題はこの国がそのような苦行を許容できるかに限ります。」
「してくれなければ困る、30年続いた戦争だ、平和は皆が望んでいる、少し貧乏になったから争いを起こす馬鹿者はいないだろう、いたとして圧殺される、多数の平和を愛する市民たちに。」
「そうであればいいのですが・・・・。」
報告をくれる官僚が退室し私は溜息をつく。
彼には虚勢を張ったものの政権運営は崖っぷちに立たされていた。
元々二歩三歩で奈落の底だった政権だがここに来て本当の本当に際に立ったように思える。
兵士の雇用制限と賃金制定をしてから国の治安は悪化しインフレーションは息を吹き返したように滝登りを始めた。
「失敗だったか・・・・切り捨てるべき人々を間違えたか・・・・多くを救おうとしたが結局は自重で潰れ・・・・はぁ・・・・」
改革の先には目を覆いたくなるような未来が待っていた。もちろん今から勇気ある決断をし可及的速やかな対処を講じれば辛うじて連邦は体裁を保てるかもしれないが博打にも等しかった。
閣僚の意見を無視すれば政権内で不和が起き瓦解、閣僚の意見を尊重すれば企業との関係が破綻し国が行き詰まる。
時間をかければ連邦の脆弱な国家基盤が自重に耐え切れずに崩壊。嫌な未来図しか描けない、妄想の一つも出来ない程に苦しい現実がある。
「難しく考えるな・・・インフレは詰まる所お金が多く使われるからいけないのだ、少ししか使われないように節制をすれば・・・・。」
などとは言うけど眼前にある100倍の物価高騰の書面を見ると焼け石に水が等しい、一体なぜ我が国はこんなにも運営が難しいのだと愚痴りたくなる。
隣国のアドリア国や遠方のイベリア連邦では新大陸やアジア資本が介入し辛うじて存続できている、が生憎わが国は対外債務不履行を宣言したため信用格付けがDとなり外資による救済は見込めない。
温情だとかで格付けが回復してもCあるいは破綻懸念先レベルで20世紀初頭の瀕死の病人並みに財政悪化の様相を呈している。
「出来る事は少ない・・・・当たって砕けるなら後悔のない砕け方をするべきだな・・・・。」
「ピー」
「ああ私だ、予定通り明日の昼間に・・・ああそうだな、兵士や各種職業の方達を招待して・・・・一般参加?立つところがあれば幾らでも構わない、あまり豪華さはいらない、私の声が良く響けば青天井でも・・・・ああ、頼んだ。」
時計を見れば時刻は12時を回ろうとしている、もっと言えば日を跨ぐと言った方が分かりやすいか。
明日の一世一代の大博打に向けて私は少し目を瞑る。
後の事はあまり考えたくないが今月いっぱい仕事をしたら休暇を取ろう、最近は省庁に入り浸って家に帰れてもない。
家族の顔も随分と懐かしく感じてしまうのは夫としても父親としても失格だ。
「もう少し・・・・・・頑張ろう。」
首相先輩「やめたくなりますよ~政権」
インフレ「どうっすかな~俺も(急上昇中)」
自国民の不満が溜まればクーデター
避難民の不満が溜まれば政情不安
企業が倒産し過ぎたら経済が死ぬ
さらに政策を打ち出したら保守派、改革派、文句しか言わない奴らの批評に晒される。