戦争が急に終わったせいで無職になった元兵士の女の子が路頭に迷ってしまった話   作:エルカス

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首相の名前の由来は・・・・もうまんまチトーでした。


39三歩進んで二歩下がる

「簒奪者に死を!オーストリア帝国万歳!我々は―――――」

 

「バァン!」

 

「――――きゃぁあああああ!?」

 

「銃を持った狂人がいる!」

 

「殺される!逃げろぉおおお!!!」

 

「首相が撃たれた!?」

 

 

静まり返った集会には下手人の勝利宣言が木霊する。

そして追いかけるように警備の発砲が続き呼応したように来賓客や誰も彼もが一斉にパニックになって逃げ始める。

呆然としていた私は椅子に座ったままだけど同伴者に立たされて人の波を受けながらずっと壇上を見つめた。

どれだけ願いを込めて祈っても倒れたあの人は動かない、胸から流れ出る鮮血は留まる所を知らない。

 

 

「なん、で・・・・どうして・・・・」

 

「そんな・・・・ッ、残念だよアルベルタ、ここに居ても仕方ない、もう帰ろう。」

 

「嫌・・・あれ、え?・・・・今日はめでたい日で・・・私達の問題が解決する突破口に・・・・。」

 

「それはもう現実じゃない、理想が現実として産み落とされる事はない、流産してしまったんだ。頼む、しっかりするんだ。」

 

「嘘、うそ・・・うそでしょ、・・・・・だ、だって・・・あの人そんなに悪い人じゃないし・・・・撃ち殺されるべきなのは・・・もっと他に・・・・ね、ねえ・・・助けてあげ・・・。」

 

「もう死んでるよ、彼は行ってしまった、どうにも出来ない、君達ならいざ知らずこの星元来の脆い器じゃあ・・・。」

 

「はぁ、ぁ・・・うぁ・・・・ぁう、え・・・・・え・・・・。」

 

 

動悸が激しくなる。視界が暗く沈む。

ああ、随分と久しぶりに見る夢だ、私の輝かしくも最も暗い戦いの記憶だ。

 

 

『医者になるだぁ!?馬鹿な事を言うな!スレッシャーの中でも最高傑作の貴様がそれ以外の道を選ぶなどあり得ない!死ぬまで戦い続けるんだ!』

 

『戦争が終わった後の事だよ、ほら、将来の夢とかあるじゃん?・・・・・考えた事も無い?それは驚きだ、考えるだけ辛いって言う人もいるけどその為に頑張り続けれる人もいる。』

 

『話し合いなんて10年も前に終わったんだ!俺達は偉い奴の下らねえ茶番で戦争をずっと続けてきたんだ!俺達を利用する敵には降伏か死のみだ!』

 

『ごめん・・・・僕間違ってた・・・もっと早くこうするべきだったんだ、許してくれ・・・・許してくれ・・・・。』

 

『君には生きて欲しい、だからこれは僕の我儘だ、好きな人だったら一つぐらいわがまま、聞いてくれないかい?』

 

 

理想を現実にする為に戦い続けて来た戦友たちはみんな墓に入る事すら叶わず、誰かと混ざり合った肉塊になり果てて今は建物の下に埋まっている。

弔う事すら叶わず消える事のない後悔に苛まれ続ける日々、失敗続きの人生でも良い方向に向かう未来をこの目で見る事があるならこの心の病気は治るだろうと信じていた。

だけど病気じゃないかもしれない、失敗は約束され、無念の死は計画された物のように思える、あの戦争然り、私達の戦い然り、志半ばで凶弾に倒れた彼然り。

暗黒の時代は永遠に繁栄を続ける、犠牲の山を築かない限り夜明けは訪れない。

 

 

 

 

「先刻にベオグラード軍病院で首相閣下の死亡が確認された。」

 

「何という事だ・・・・」

 

「下手人は重体です、許可があれば非合法な尋問も可能です。」

 

「誰が許可をするのかね。首相閣下はもういないのだ・・・。」

 

「実行犯の身元特定は済んでいる、背後にある組織を洗い出した結果はこの通りだ。」

 

「犯人は難民系と自国民の間に生まれた兵士の血筋、兵役拒否や連邦の正当な国民へも徴兵の拡大を主張していた筋金入りの不穏分子・・・。」

 

「支援組織は『ブラックハンズ』・・・・分離派の極右共が何故こんな奴を支援するのだ・・・・。」

 

「毒を持って毒を制すという事ですかな、もっともその毒を除去するのが目的だと言うのに意味の分からない・・・。」

 

「公式発表は如何なさないますか?」

 

「首相の政策に不満を持った兵士の独断と言う事でよろしいでしょう、分離派の存在を明るみ出せば彼らのメディア戦略を助長するだけですから。」

 

「ちょうど兵士達が首相に恨みを持ちそうな状況だったのは不幸中の幸いですかな。」

 

「問題は首を切り落とされた我々です、守旧派と改革派の折衷案である首相の逝去は多大な損失です、代わる存在を選出できるか・・・。」

 

「旧政権の関係者は失踪ないしは職務怠慢でクビを切った結果影響力は大きく削がれた、最近の失政と国難で国民人気も急落しているせいで我々の派閥も大きく弱体化している。」

 

「寧ろこれは転機と捉えましょう、新たな腹案と視点を持った頭脳が違った切り口で国を変えていく機会になりますからな。」

 

 

 

1952年6月28日、バルカン連邦首相のブロズ・ヨシップは遊説中に過激派テロリストの凶弾に斃れた。

犯人は難民系の兵士であり首相の昨今の政策に不満を持っていたとされる。

兵士であったため首相の護衛隊の銃撃を受けても生き延びたが翌々日に銃殺刑に処された。

 

事件当日から下手人が兵士である事、犯行動機は大衆に多少の歪曲や誤認をされつつも広範囲に伝わり全国的な暴動に繋がった。

兵士を雇う小売店や兵士やその家族の家の焼き討ち、吊し上げが行われたが兵士側も抵抗し両者共に多大な被害を負う事となった。

特に7月に入ってからの暴動に対する兵士のカウンター暴動は苛烈さを極め主要都市では戒厳令が敷かれ正規軍が出動し公に銃撃戦に発展する事もあった。

 

バルカン連邦議会は新たな首相を選出しようとしたものの与党内の不安定な連立が仇となり任命拒否が続きついに議会が解散してしまう運びとなった。

暴動に続く暴動の中で選挙が実施された結果は民主主義を全く無視した出来レースの様相を呈していた。

まず投票場は連邦構成国の地方首都に一つしか設置されず距離の問題で投票が出来ない人が多く発生した。

そして投票場の前には検問所があり、武装した民兵らしき人物らが投票者の身分を確認し、兵士であった場合は投票を阻止すると言う事態が頻発した。

選挙期間は僅か5日間、電報などの情報伝達インフラが発展していない僻地などにはそもそも知らせが届く頃には選挙が終わっていたりもした。

 

そして7月の中旬に新たな議会が誕生した。

 

 

崩壊の序曲が奏でられる。




政情の不安の時に出しゃばって来るのは・・・「ぐ」から始まる組織と「か」から始まる団体だね!

軍隊(大日本帝国)過激政党(ドイチェスライヒ)に決まってるよなぁ!?
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