戦争が急に終わったせいで無職になった元兵士の女の子が路頭に迷ってしまった話   作:エルカス

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注意*仕事とか兵役をこなしたりしましたがカフカちゃんはまだ14歳の女の子です


41良心のない人間に慈悲は期待できない

一体何を何処で間違えたのか、農場から去るべきではなかったのか、抗議活動に介入なんてせず一目散に帰ればよかったのか。

それとも戦争なんて終わらずにずっと続いて私も冷たい泥に埋もれて死ねば良かったのか・・・・・今となってはもう後悔しか出来ない。

 

 

割と後腐れなく港町を去る事になったけど道中を行く中で、清々しい心は朽ちていった。

出発してから1日2日はまだ許容できたけど町中を銃を持った兵隊さん達が徘徊して因縁をつけて来るのに遭遇して私はより急ぎ足で家に帰ろうとした。

幸いにも絡んできた兵隊さん達からは兵士ご自慢のフィジカルで逃げたので大した事にはならなかった。

 

 

「よい、っしょ・・・わぁ、沢山実ってる、アスパラ・・・レタス、こっちは玉ねぎ、ふふ、アレンもリーリスもしっかりしてるなぁ・・・いや、おばあちゃんが教え上手なのかな」

 

 

自分の家の耕地が見える場所まで帰って来た。

家が燃えてたりなくなってたりはしなかったので一先ずは胸を撫でおろした。

立派に育って収穫期を迎えた野菜たちを撫でながら畑の中に誰かいないか探した。

 

 

「もう今日は切り上げたのかな、でも今は6月だから仕事終わりには早いし・・・今日は休息日だったかな・・・はは、曜日感覚すっかりなくなってるや私」

 

 

てっきり畑で刈り入れをしているとばかり思っていたけど人影は見当たらなかった。

熟してる作物とか沢山あるのに全然収穫できてないので明日はたんまり手伝おうと決心して畑を後にした。

 

 

「うふふ、変わってないなぁ・・・・・・・ん、っ・・・・」

 

 

家が見えて来て私は思わず歩みを止めてしまう。

自分の故郷に戻って来たという嬉しさと怖さが混ざった感情に動きが鈍くなる。

 

 

「え、ええい迷うな私・・・ちゃんと話し合うって決めたんですから・・・はい・・・・・・すぅぅう・・・よし!」

 

 

意を決して私は一歩踏み出す、そして家のドアを開けて中に入った。

 

 

 

家の中にはおばあちゃんはいなかった。

リーリスもアレンもいなかった。

いたのは―――――――――

 

 

「チェルナー・カフカで良いな?」

 

「え」

 

家には泥棒にでも入られたみたく荒らされており、二人組の警察が我が物顔でそこで寛いでいた。

私の存在に気付くと二人は座ったまま気だるげに話しかけて来た。

 

 

「な、何ですか人の家で!警察だからって・・・家を荒らしたんですか?!おばあちゃんは何処ですか!」

 

「っち、るせぇなぁ~帰って来るのが早ぇんだよ、・・・もうちょっと仕事サボれるのによぉ・・・」

 

 

机に足を乗せ偉そうに私にぶつぶつ文句を言う警官。

落ち着け私、堂々としろ、相手の挑発に乗るな。

いやでも・・・一体何だというのか、意味が分からない。

 

 

「え~一昨日に行政命令第102号の強制執行に訪れた際に執行官に対する業務妨害及び暴行罪、殺人未遂罪で君の祖母ブレハンズ・カフカは現在拘留中・・・」

 

「は、え?殺人、え・・・おばあちゃんが?え?」

 

 

頭が理解を拒む、一体目の前の警官は何を言っているんだ。

行政命令第102号?あの確か兵士を強制解雇する、強制執行?いやおばあちゃんは普通の人間で・・・。

 

 

「クチャ、クチャ」

 

 

頭がいっぱいの中、思考の渦から私を現実に引き戻したのは今なお足を机に乗せてこちらを見ている警官のガムか何かを噛んでいる音だった。

その態度についに私は許せなくて声を荒げて叫ぶ。

 

 

「そうだとしてあなた達がどうして人の家に我が物顔で居座る事が出来るんですか!」

 

「君の捜索の一環だ、所在が掴めないからね、家に張り込むのは当然さ」

 

「じゃあ何でこんな泥棒に入られたみたいな事になってるんだ!」

 

 

もう丁寧口調も崩れて目の前の野郎二人を睨む。

全く顔色を変えないどころか私の言う事を適当に右から左に流している。

 

 

「さぁ、君の祖母を連行して二日ぐらい家を空けていたからね~その間にでも入られたんじゃないの?」

 

「っ・・・・・・張り込むって、許可はあるんですか許可は!」

 

「我々は警察だよ、何をするにしても何故いちいち君の了承を得なければいけないんだ」

 

「私のじゃない!さっきの令状をもう一度見せてくださいよ!警察だからって不法侵入にならないと思うんですか!」

 

「カチ」

 

 

令状を見せろと言って徐にそれを私から隠す警官。

無理にでも奪い取ってやろうかと一歩踏み出したら今までの緩慢な態度とはうって変わって手慣れた手つきで拳銃を私に付きつけた。

私は怒りを抑えつけて立ち止まる。

 

 

「・・・・・どういうつもりですか?」

 

「いちいちうるせえ餓鬼だな、あ?分からねえのか?お前は晴れて犯罪者予備軍、俺達はお前をどうとでも出来る、権利主張が出来ると思うか?ん?」

 

「この・・・・クソ野郎共・・・!」

 

銃を向けられる、下種な笑みを浮かべた警察は机からやっと足を下ろして席を立つ。

そして私の方に近づいてくる、拳での殴り合いならこんな奴アリ未満なのに社会というフィールドでは私に力は行使できない。

 

「ッ、・・・すぅ・・・・ぅう・・・ぐ、う・・・クズ・・ッ!」

 

「ふん、弁えるぐらい頭は回るんだな」

 

「何が、目的ですか・・・・・ッ」

 

「目的と言われてもねぇ、仕事だよ、君の祖母が法律の定める罰金を払えないから君に催促しているんだよ、お金さえ払えば我々は出て行くさ」

 

「・・・・・・どれだけ、ですか。」

 

 

いくら?と聞いて警察はにんまりとした笑顔を見せて書類を渡してくれる。

それには市の判子とか偉そうな奴の洒落たサインと判子があった、知識がないから正確な判別は出来ないけど野盗が偽造できる品質ではなかった。

彼らは本物の警官で、何であれ金を回収しに来た借金取りを遥かに凌ぐ害虫だ、何故なら国家権力を盾に出来るのだから。

・・・・いや、害虫じゃない、こいつらは悪魔だ。

 

 

「こんな額・・・あると思うんですか?」

 

「ないのかな?」

 

「ないですよ、人が一生で稼ぐような額を持ってるわけないじゃないですか」

 

「そうか、残念だよ、まあどちらにせよ我々は君を連行するがね」

 

「私も逮捕するんですか。」

 

「ああいやいや、少し座って物好きな人たちとお喋りをするんだ」

 

「・・・・・でも私がいなくなったら誰がこの家を――――――――」

 

「バン!」

 

耳のすぐ隣で拳銃が発砲する、身震いの後にに背後の食器棚が粉砕される音が聞こえる。

飛び散るガラス片、見慣れた食器が砕かれる。

 

 

「口答えはいらない、妙な動き一つも見せない、ただ君は通達を聞きそれに従えばいい」

 

「・・・・・」

 

 

男は舐め回す様に私の耳元で囁く、私の中の気色悪い人間ランキングが更新された。

さようなら教官、あなたはまだ優しい部類だったのですね。

 

 

「ふん、兵士の癖していい服じゃないか、それに髪も・・・・・似合わない」

 

「ブチ!」

 

「・・・づっ・・・・」

 

「そうら!お前等には貧相な格好がお似合いだぜ!」

 

 

戦争が終わってから伸ばせるようになったので少しお洒落したくて伸ばして束ねていた髪。

男はバレッタを掴んで乱暴に髪と引き離した。

何本かの髪が一緒に抜けて痛かった、身震いが大きくなって息も震える。

 

 

「ふん・・・」

 

 

私から引き剥がした髪飾りを少し吟味した男は一瞬私を見て面白くなさそうに溜息をついて投げ捨てた。

地面に叩きつけられた結果、もう多分使えない壊れ方をした、ごめんなさいアズにゃんさん、大切にするって言ったのに。

 

 

「お前、よく見れば可愛い顔してるな?っふ、俺の相手―――――――――――」

 

「おい」

 

「っち、何だよ」

 

「日が沈む、遊びは終わりだ」

 

「クソ!」

 

 

相方に忠告されて男は不機嫌になり地団駄・・・私の足を踏む。

まだ比較的善良なのか相方の男は投げ捨てられたバレッタを拾い上げる。

そして私の方にやってくる。

 

「そんなに惜しいのか、これ」

 

「・・・・・・・」

 

「無視するのか?」

 

「・・・・・大切な、物です・・・・・・」

 

「そうか」

 

「ポト」

 

「グシャ!」

 

「・・・・づぅう・・・!!」

 

 

善良かもと一瞬でも期待した自分が馬鹿だった、その男はわざわざ私の眼前まで持ってきて落として念入りに踏み砕いた。

ずっと服を握って緊張していた手が拳を作る域にまで達して、この人間の悪い所を煮詰めて出来上がった悪性灰汁を体現した奴らを取り除かねばと心が叫んだけど抑えた。

抑えなければならなかった。

 

「づぅ・・・う・・・っくぅ、」

 

悔しさとかから鼻水とかが出て来て肩が震える。

今すぐにでもこいつらを肥溜めに突っ込んで母なる大地に回帰させてやりたかったけど・・・そんな事は出来っこなかった。

 

 

「・・・・・・・」

 

「・・・・・・っ」

 

「っち、本当に面白くねえ」

 

 

しばらく息を荒げていた私を見下ろした二人は、時間が過ぎても私が一切動かないのを見て呆れた。

そして一人が先行して後ろの一人が突くように私に移動を促してくる。

私は何者で、この世界はこんなにも苦しく、生きづらい場所である事を再び思い出してしまった。

 

 

 

「命令通りに前を歩け!止まるなクソ共が!」

 

「反抗的な兆候が見られた際には射撃許可も出ている!妙な真似はするな犯罪者!」

 

 

私は警察署に連れてこられた、生まれてこの方、入ったこともない場所だ。

近くを何度か通る事があったけど、今以上に賑わっている時なんて見た事なかった。

多くの兵士達が逮捕され、手足に鎖をつけられ、叩かれて歩いている、さながら鞭うたれる奴隷の様相を呈している。

私も次にはこの奴隷の一団に加わるかもしれない、そう思うと鎖に繋がれる前に・・・・・・

 

 

「ここで待っていろ」

 

 

と決心するには遅かった。気付いたら窓一つない牢獄のような場所に入れられた。

あるのは机と三人分の椅子、取調室というのだろうか?

片手で椅子を投げるように引いて私は座った。耳を澄ませば悲鳴、怒号、発砲音が聞こえる。

 

 

「おばあちゃん・・・・リーリス、アレン・・・・どうか無事で・・・」

 

 

何もない場所に来ると怒りが静まり不安感情が増大する。

ゴミ二人組の言う行政命令第102号は恐らく兵士を雇う規則関係の話、リーリスとアレンがおばあちゃんに雇われ・・・・ていた事に付け込まれたのか・・・

だけど二人の存在を市政は知らない筈だ、何処かで知られたとしても何であんな馬鹿みたいな違反金を取られるのか私には分からなかった。

 




警察「張り込みするので経費ください」
偉い人「おかのした」
警察「張り込み先の家の食い物で経費浮かすんゴ~www」
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