戦争が急に終わったせいで無職になった元兵士の女の子が路頭に迷ってしまった話   作:エルカス

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加筆が・・・・止まらない・・・ッ!
体がボロボロになったし次は・・・そうだね、精神()だね!



46「たられば」は後悔を助長する

「う、あ・・・・あ・・・」

 

 

震えが止まらない、涙はもう出ない筈なのにまだ涙を流しているように感じる

私はただ目の前の写真を見つめる。おばあちゃんが最後まで握りしめていた写真、私がいる、おばあちゃんがいる。

おかしいなぁ、どうしてだろう、私はここにいる、おばあちゃんも「ここ」にいる。私と一緒にいるのに。

 

なのにどうしてかな、おばあちゃん一言も喋らない、小さかった時みたいに頭を撫でて欲しい、ちょっと厳しくても優しさを含んだ口調で話しかけて欲しい。

そうしたら私は昔みたいに元気に返事をして仕事を手伝ってあげるんだ。

ねえおばあちゃん、どうして何も言わないの?

 

 

「おばあちゃん、喋ってくれない、おばあちゃん、おばあちゃん、私の事、やっぱり嫌いなの?」

 

 

『おばあちゃん』に私は話しかける、しわが沢山あったけどおばちゃんはこんなに硬かったけ?それに随分と背も縮んで・・・私の胸に収まるぐらいに・・・・・

どんな姿になっても私には分かる、私にしか分からない、だから返事をして欲しいな・・・声を聞かせて。

 

 

「ねえおばあちゃん、話したい事、いっぱいあるんだよ?私ね、沢山の人を乗せて町中を走り回るの、雲の上にいるお金持ちの人やとっても奇麗な人、たまに嫌な人もいるけど知らない世界の話を皆よくしてくれたの。」

 

 

チップって言って、感謝の気持ちで沢山お金をくれる人もいた、見たことも無かった外国のお金をくれる人もいた、そうだ見て・・・おばあちゃん、この外国のお金、お空に飾るとおじさんの顔が出てくるの

ふふ、一体誰なんだろ、そうそう、私外国にも行ったの、おばあちゃんには寒いかもしれないけどとっても凄い場所だった。

8月になったらおばあちゃんと一緒に行ってみよっかな、船を持っている船長さんと知り合いで・・・私少しはお金持ちだから、向こうに行って一晩か二晩泊まるの。

外国には友達もいる、外国の友達、とっても可愛くて、優しくて、小さいのにとっても力持ちの子がいるの。

観光て言ってね。知らない場所の有名な建物を見たり美味しい食べ物を食べたりするの、楽しみだなぁ、きっと楽しいよ、その子に案内を頼んだらもっと楽しませてくれること間違いなしだよ。

 

 

「ねえねえおばあちゃん・・・・・・どうして・・・・・・・・」

 

 

生きている時には何て言葉をかければいいか分からなくて、いくら考えても出てこなかった。

会うのが怖くて、話すのが怖くて、少し離れたかったのにどうしてかな。

今はどれだけ近くに居ても、その体に触れても・・・・。

 

 

「沢山話したい事もある、謝りたい、ありがとうって、言いたい、どれだけ時間があっても足りない程に一緒に居たいのに・・・・どうしてなの」

 

 

今となっては言葉を交わす事も出来ない、幾ら紡いだって私の言葉は届かない、おばあちゃんの言葉はもう私には聞こえない

近くに居るのにずっと遠くに感じる、この胸に抱いているおばあちゃんはおばあちゃんの筈なのに・・・・。

 

 

「あれ、あはは・・・・あ、あはは・・・・・ははははははははは」

 

 

一体何を何処で間違えたのか。

 

農場から去るべきではなかったのか。

ずっと家に居ればこんな別れ方はしなかった。

リーリス達なんて助けずに二人だけでずっと暮らしてたら・・・・・・。

 

抗議活動に介入なんてせず一目散に帰ればよかったのか。

真っすぐに帰っていればこんな酷い事にはなる前に私がいた、どうにか出来たかもしれない。

アルバさんなんて許さずに見殺しにしていたら・・・・・・。

 

戦争なんて終わらずにずっと続いた方が良かったかもしれない。

私が冷たい泥に埋もれて死ねば、沢山のお金になってもっと不自由なく暮らせていた

いや、もう私なんて生まれてこなければおばあちゃんはずっと幸だったのかも・・・・・・・。

 

浅知恵で強がらなければよかった。

私が一日であの人たちの思い通りになっていてすぐにおばあちゃんを迎えに言ってたら死ぬ事なんてなかった。

兵士だからって普通の人と同じような権利を勝ち取ろうとしたのがいけなかのか・・・・。

 

結局は私が道を間違えた、そしておばあちゃんが死んだ。

なら私が殺したようなものだ、いや・・・私が殺したんだ。

私が少し距離を置いたせいだ、私が話を聞かずに先走って働きに出たせいだ、私がおばあちゃんを頼ったせいだ、私が帰らなかったせいだ、私が弱かったから、私が馬鹿だったから、私が、私が、私が私が私が。

 

 

「ポタ・・・ポタ・・・・・・ザー」

 

 

雨が降る。

乾いた唇に水滴が垂れる、濁った瞳が洗い流され見たくもない現実が見える。

どれだけ水滴が濡らそうと渇きは消えない。

 

黒や赤や黄色の屋根が目の前を右往左往する、地面に垂れ下がった腕が出来上がったばかりの雨だまりに浸される。

口を少し開いていたのか歯や舌にも水滴がやってくる。

やがて髪の毛からも水が垂れ顔を洗い流す水流が出来る、雨は続く。

 

ああ、何で私は世界がこんなにも昏いものだと言う事を忘れていたんだろう。

悪人は正義の名を借りて世に跋扈し、善人は法の名のもとに裁かれる。

あは、あははは、何でだろうなぁ、こんなに暗いって分かってたはずなのに、どうしてああも眩しく見えてしまったんだ。

 

 

「酷いなぁ皆、皆が私に優しくしてくれるから、勘違いしちゃったじゃん。本当の世界は少しの優しで変わる程に簡単じゃないのに、夢見ちゃったんだ。皆のせい、皆のせい・・・・皆のせいだ」

 

 

私のせいじゃない、私が簡単に夢を見てしまう子供気分が抜けなかったせいじゃない、私は悪くない私は悪くない、私じゃない。

どれだけ考えて否定しても言葉に出してもかき消せない理性が私を説き伏せている。

 

 

馬鹿馬鹿しい

何を考えているんだ私は。

疲れた。

眠るように死ねたら。

すぐそっちに行きたい

ねえおばあちゃん、聞こえる?

灰になり

箱一つになった

おばあちゃん

 

 

 

おばあちゃんは、もう返事をしてくれない。

 

 

 

 

 

「連邦議会は新たな主席宰相として国民国家党よりゲオルギー・ウォーロックを任命する!」

 

「「「「パチパチパチ」」」」

 

「加えて昨今の連邦内の看過できない内紛状態を加味し、ウォーロック新首相殿に非常大権を付与する議決をここに提案する!」

 

 

万雷の拍手と共に新たに選出された連邦議会議員は議決賛成の表明の為、一斉に起立する。

首相に選出されたウォーロックはその圧巻の光景を一番の特等席で見ていた。

自身の国家改造の始まりの号令であり変革の始まりを象徴とする今は彼の長年の政治活動の集大成ともいえる物だった。

 

 

「では、全会一致によりゲオルギー・ウォーロック首相殿に非常大権を付与するものとする!」

 

「ウォーロック!ウォーロック!」

 

「「「「ウォーロック、ウォーロック、ウォーロック!!」」」」

 

 

登壇した彼は志を共にする仲間のシュプレヒコールに出迎えられた。

久々に心の底からの笑顔で人々に手を振りこの場に立っている事を彼は誇りに思った。

そしてこれはゴールではない、ここからが始まりなのだ、と気付いた。

 

 

「「「「・・・・・・」」」」

 

「正直、議会から首相の任命に際し承認を躊躇いました。しかし有権者の皆様や支持者各位の皆様方の切実な願いと、この国を憂う私の愛国心が決断を下しました」

 

ウォーロックが手をあげると示し合わせたように議会は静粛に包まれる。満足そうに頷き、彼は議会と支持者に向かって語り始めた。

縁側で余生を過ごす老人の様な哀愁を漂わせる始まりの挨拶が進む。そして熱と力強さが勃興し彼の真髄が露わになる。

 

「悲しい事に現在我が国は多くの国民が不法滞在者による暴力を被っています。私の友人の妻は街に買い物に出た際に、彼らにいわれのない暴力を振るわれ体に一生消えない傷を刻まれました。

 彼らは満足気に穴倉に帰りましたが友人の妻は今に至るまでその日の恐怖を忘れることなく一歩も外に出ななくなってしまいました、家からではありません、自身の部屋からすらも。

 私は断じてこの所業、この蛮行、この背信を許しません。この国家の国是が五国協和だと言う事を認識したうえで敢えて言いましょう。」

 

「バン!」

 

「「バンバン!」」

 

 

話の途中であるのにも関わらず抑えきれない議員の面々は早くも机を叩き始めていた。

その様子を見たウォーロック首相は敢えて一呼吸を置き焦らした。

 

 

「「「バンバン!!」」」

 

 

過熱した議会に響く打撃音、ウォーロックは手を再び上げた。

台に立った彼の動き一つで無秩序な煩さはリズムへと変貌する。

彼は今この議会の指揮者であり、そこを飛び交うのは音楽である。

 

 

「敢えて、言いましょう。非常大権の行使一号として公職における外国籍及び無国籍、同化国籍、帰化国籍者の追放『公職追放』を迅速かつ徹底的に行います!国家の運営に携わるのは自国民だけであるべきだ。」

 

「「「「パチパチパチ」」」」」

 

「続けて大権二号としてスレッシャー、所謂『兵士』と呼ばれる者達の居住区の制定『公共追放』を!国民皆様方と国家安全保障の為の隔離を速やかに実施いたします!」

 

「「「「パチパチパチ!!」」」」

 

 

歓迎と声援を受け、彼の最初の政策は速やかに実行に移された。

ウォーロックの支持基盤の高い地域では大いに歓迎される政策だったが戦争による避難民を大きく抱えた地域にとっては横暴この上ない中央政府の裏切り行為であった。

特に元同盟国のよしみで避難民を多く受け入れ、旧国土内で半分以上が外国人になってしまったブルガリア地方政府は大いに混乱した。

 

首相就任の初日から各省庁、官公庁ではダンボールを抱えて去る事を強要された公務員で溢れかえっていた。

統計によればバルカン連邦の総人口は7000万人近くであり内避難民は50%強の4000万人近くを占める。

公職においては若干現地民の就職率が高いが、それでも公務員全体で20%~30%が首を切られる事となった。

 

また戦争終結時に連邦が抱えていた軍属数は700万人に上り『兵士』と呼ばれる人間は内訳で600万人になる。

徴兵適齢期ではない子供や様々な理由で軍属にならなかったり除隊した人間を加えると800万人、総人口の約11%。

決して少なくない数の人間を隔離するのは至難の技で――少なくても困難だが――円滑な業務の為に警察や正規軍が動員され多くの衝突を生むことになった。

 

この外国人の追放と兵士の追放による動乱は『追放暴動』と呼ばれ、現地民と避難民の対立を深める一因ともなった。

かつてヨーロッパを地獄に叩き落とした戦争の引き金となったこの地で再び火の粉が舞い上がり、過ちが繰り返されようとしていた。

 

 

 

 

ただ一人の家族を抱いて私は家に帰る。

知らない人がいる、何人も、何人も私の家だった筈の場所にいる。

 

 

「うおすっげぇなこの農作機械!」

 

「何から何まで揃ってやがるぜ、こっちは俺が貰っていくぞ」

 

 

我が物顔で家を物色している。

ありとあらゆる所をひっくり返して価値になる物を簒奪していく。

ただでさえ荒れていた家がもう見るも無残な姿に変わってゆく。

 

 

「あ、何だお前?」

 

「・・・・・」

 

「オイオイオイ勝手に入るな、ここはカミンスキー・バンガーさんの私有地だぞ、部外者は立ち入り禁止だ」

 

 

こいつの顔は知っている、10km先にある農地の所有者だ。

何回か収穫を手伝わされておばあちゃんが足を捻って手当をして欲しいとお願いした時に適当な理由を付けて断った野郎だ。

そいつに肩を押されてのけぞってしまう、おかしい私はそんなの関係なく自分の家に帰るつもりだったのに、体に力が入らない。

 

 

「・・・・・」

 

「っち、何だよこの不気味な・・・・あーお前はここのババアの娘じゃないか!」

 

「・・・・・・・」

 

 

私の事を思い出したようで、そうしたら入る事を妨げはせずにすんなり通してくれる。

私は彼に背を向けているから顔は見えなかった、見る必要なんてない、私はただ膝まづいて放置されていた大切な物の破片(髪留めだった物)を拾う。

 

 

「残念だったな、ここはもうお前の家じゃない!俺達の手に戻って来たんだ、感謝してくれよな、今まで行き場所のないお前達に土地を貸し付けていた俺達に」

 

「・・・・・・・」

 

「おい聞いてんのかクソアマ!」

 

「あ・・・・・」

 

 

背中を押されて・・・いや蹴られて私は前に転ぶ。

でも手に収めた大切な物は握りしめる。

取り零さないように、もう誰かに奪われないように。

 

 

「おいおいどうした」

 

「何を騒いでんだ?ん、そのガキは誰だ?」

 

「ここのザワークラウト野郎共の娘だ、大方荷物でも取りに来たんだろうよ、俺達の物を盗んで行かないように見張ってやらなきゃな!」

 

「みすぼらしい格好だな、お似合いだよ」

 

「くっさいなコイツ、早く出て行ってくれないと服に臭いが移りそうだ」

 

 

地面に転んで、起き上がって再び歩く。

後ろに足音が二人分する。

自分の家すら自由に往来できないのか、惨めさで死にたくなる。

 

 

「カチャリ」

 

 

案の定、私の部屋も酷く荒らされていた。

ベッドのシーツはビリビリに引き裂かれていて枕の羽毛が地面に堆積していた。

幸いにも、家族写真は割れずに地面に落ちていた。

 

 

「・・・・・・・・・・ッ」

 

 

もういっその事、ぐちゃぐちゃに壊して貰った方が気も楽だった。

写真を見るだけで静まり返った心を荒波が襲って感情を制御できなくなったから。でも、捨てられない。

私は拾い上げた思い出を一つしまった。

 

 

「カチャリ」

 

「おっと待ちな」

 

「・・・・・・」

 

「このタンスの中から持って行っていい服は一つだ」

 

「っ」

 

「文句は言うなよ、この家はもうお前のモンじゃねえんだから、これでも優しいんだぜ俺達?」

 

 

看過できない条件を出されて感情が沸騰する、でも私はそんな煮え湯を飲み切らないといけない。

どれを持っていくべきなのか、・・・・最初はこれを他の誰かの手に渡るのが腹立たしくてしょうがなかったけど・・・

違うだろう?

 

 

「・・・・・・これに、しよう」

 

 

本当に大切な物を取りに来たんだ。

私は私の足りなさで抱くこの怒りを暴力で沈めに来た訳じゃない。

だから私が選ぶのはこれだ、おばあちゃんがよく着せてくれた服を、今はもう着れないかもしれいけれど。

これで、良いのだ。




小さな女の子が兵隊になっているのは作者の趣味ではなく根こそぎ徴兵の賜物です。
まあ皆軍服を着た若人(特に女の子)は好きだから徴兵されるような世界観作ってもいいよね!
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