戦争が急に終わったせいで無職になった元兵士の女の子が路頭に迷ってしまった話   作:エルカス

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この前のアンケートでカフカちゃんが1位になったので公約通り短編(加筆)の話です。
時たまに「もうやめましょうよおぉ」が優勢になってたんですけど・・・・
読者ニキネキはハッピーエンド至上主義と曇らせ至上主義の心を同居させているんですかね?
読者ニキネキもいっぱい苦しんでね♡


47借金なき差し押さえ

遠出用のバッグに物を詰める。

何処かに出かけるためのバッグなのに、私はもう帰る所を持たないから放浪用のバッグと言った方が適切だ。

自分の部屋を出て、おばあちゃんの部屋に行く。

 

 

「っ、ひどい・・・・」

 

 

おばあちゃんの部屋は特に酷く荒らされており、部屋の壁まで剥がされていた。

ガラスとかそういう物も割られてて破壊の限りが尽くされていた。

もう何度も湧き上がる怒りを鎮火する。

踏み場のない地面に膝まづいて落ちた思い出を拾い集める。

 

 

「こっそり物を持っていこうだなんて考えるなよ」

 

「泥棒はダメってお母さんにちゃんと教わってるよな?あ、すまねえな!お前にお母さんはいなかったんだよな、教えてくれる前に死んじまったから!」

 

 

地面を片付ると出てくる・・・・写真立ての数々。

一枚一枚を丁寧に取り出して手に収める。

これはおばあちゃんの生まれた家族の写真、これはおばあちゃんの旦那さん・・・・おじいちゃんの家の写真、これはおばあちゃんの晴れ着姿

そしてこれは、私のパパの子供の頃の写真、パパが少し大きくなった頃の写真、パパと私のママの写真・・・・・・・・。

 

 

「う、ぐす゛・・・・うぅ、あ゛・・・・ぐぅ」

 

 

私とおばあちゃんの写真、そして・・・・おばあちゃんとリーリスとアレンの写真。

最後に、何も入っていない写真立てが一つあった。

 

 

「・・・・・・・・おばあ、ちゃん・・・」

 

「ああもうったく面倒くせえな!さっさと持ってくモンもってけ!だらだらすんな!」

 

「痛・・・づぅ・・・・」

 

 

一つだけ写真がない写真立てに気を取られていると、今一度後ろから蹴られてごつごつした床に転んだ。

尖った瓦礫が皮膚を突き刺して痛い。

私は立ち上がって、部屋のもっと奥に行く、まだ大切な物は足りない。

おばあちゃんの服、おばあちゃんのスカーフ、おばあちゃんのペン、おばあちゃんのかけていた眼鏡

探しても、探しても足りない、満たされない。

 

 

「あ・・・」

 

 

一つ、私でも初めて見る物があった、それは恐らく金庫だった。

開けられていない、外観を見れば無理に壊して開けようとしたのかボロボロだったけど、ついに中身に到達させなかったように見える。

そんな強く守り切った金庫を撫でる。

 

 

「あぁその金庫か、開けれても中身はお前の物だと思うなよ」

 

「開け方を知っているのか?なら都合が良いな、バンガーのばばあに分捕られる前に俺達で頂こうぜ」

 

「声が大きいぞっ・・・!まあそれも良いなぁ!」

 

 

彼らは私がこれを開けられると期待しているようだけど開け方なんて知らない。

ダイヤル式じゃなくて取っ手をくるくる回すよく分かんないタイプで・・・・

私は、この中身を永遠に知る事なく、失うのか。

 

 

「嫌だ・・・・そんなの」

 

取っ手を持つ手に力が入る。

 

「ミシ・・・ミシ!」

 

 

金属の軋む音、まるで私の荒んだ心の音だ。

中身を知りたい、おばあちゃんの物だ、他の誰かになんて渡したくない。

ここは私達の家だ、他の誰にも居座らせたりしたくない・・・・ッ!

 

 

「ミシ、ギ、ギィイ・・・ガキン!」

 

「うぉ!?金庫空いた」

 

「怖、馬鹿力(マスターキー)ってか」

 

 

静かに燃える感情が指先を力ませて、思わず金庫の扉を引きちぎってしまった。

私は驚きのあまり持ったままの金庫の扉を地面に置く。

 

 

「おい退け!」

 

「中身は何だ、中身は!」

 

「え、いっ・・・・ま、待・・・」

 

 

押しのけられて、餌に群がる獣のような奴らに大切な物が奪われていく。

胸が締め付けられて呼吸をする事すらままならない。

動悸が激しくなって私はもう死ぬんじゃないかという程に体が熱くなる、いっそこのまま死んでしまいたい。

でも私は、死んでいない。

 

 

「うひょ~中身中身ィ・・・・って服?小せえな、って軍服かよ面白くねえ、勲章の一つもねえのかよ、それなら売れるってのに」

 

「何だこの・・・・お菓子の箱か?中身は・・・・・お、見ろよ見ろよ!こっちは金が入ってるぞ!」

 

「やったぜ!って・・・何だこれ?」

 

「外国の金だよ!うぉ下には・・・貴金属!」

 

「最高じゃねえか!」

 

「あ、・・・あ、・・・・あの・・・・ッ!」

 

「あ、何だ?」

 

 

大切な物は奪わせない。

私は、私は間違っていない、行動をする事は間違っていない。

決して縮こまって痛みに耐えるだけが正しい事ではない筈だ。

だから、だから・・・・私がおばあちゃんを殺した訳じゃない。

そう言い聞かせて、私は懲りもせずに、立ち上がってしまう。

 

 

「それ、は・・・・私が、働いてた稼いだお金、で・・・・」

 

「あ゛?」

 

「私の・・です」

 

「おいおい聞いたかお前のお金だって?・・・・・ふざけてんのかクソガキ!俺達を舐めるなよ!」

 

「ザワークラウト野郎は金にうるさいらしいが、国無しになってもその悪癖は治んねえか!」

 

「この家は・・・あなた達の物じゃない・・・わた、私の・・・おばあちゃんの家だ!返せ、それはお前達のじゃない!」

 

「このクソアマ!これは俺達のだ!」

 

「返せ、返してください!私の・・・・思い出を!」

 

「放せ!くっそ馬鹿力がぁああ!!」

 

「わた、私のだ!・・・この、泥棒!」

 

 

色々入っていた箱を取り返した私。

意外にも逆襲に出た私に恐怖しているのか、相対する盗人は緊張で動いていない。

私も頭がいっぱいで次に何をするべきなのか分からなかったけど、取り合えずバッグに入れるだけ入れて背負って出て行こうとした。

 

 

「し、失礼します・・・・っ!」

 

「ッ・・・クソが!」

 

 

急ぎ足で二階を降りて出て行こうとした。

他にも持っていくべき物がある場所に行こうとしたけど、この分だと無理という事は何となく分かった。

そしてその予感は正解だった。答え合わせとしていつの間にか消えていた盗人が銃を携えて私の前に現れたから。

 

 

「おっとクソアマ、俺の金品持ってどこに行くんだ?」

 

「カチ」

 

「じゅ、銃なんて・・・兵士には怖くないですよ」

 

「そうか?分かってるんじゃないか、ここらは熊も珍しくない、熊用の猟銃じゃ流石のお前らも・・・・な?」

 

「ッ」

 

「何で持っているかって?そりゃあ憎くも愛すべきクズの権化たるバンガーのババアが念のため持っとけって俺達に持たせたからだよ!」

 

「最初から私を殺すつもりで・・・・!」

 

「人聞きの悪い、護身用だよ護身用、ほら怪我をしたくなければ金品は置いて行って――――――――――」

 

「思い通りになんて、なるものかぁああああ!!!」

 

「は?おい本気かよ!?クソ!」

 

 

バックを投げ捨てて私は銃を持った敵を無力化する為に走り出す。

私が迷わずに突っ走ってくるとは思っていなかったようで、慌てて銃を構え直して、撃つ。

 

 

「バァン!」

 

「ッ!?」

 

「俺は本気だぞ!おい、いいのか!」

 

 

銃弾を避けるために柱の陰に隠れる。

次の瞬間、柱の半分以上が銃撃で削れた。

間違いなく高威力のライフルで、兵士と言えど当たり所が悪ければ命に関わる事間違いなしだ。

その恐怖を理解させようと敵は無意味に私に叫ぶ。私は柱の陰からテーブルや椅子を見た。

 

 

「そら怖くなったか!はは!両手を挙げて膝まづけ、そうすれば許してやるか考えてやる、ダムダム弾の威力を味わいたくなかったらな!」

 

「・・・・・ッ!」

 

「本気で殺されてえようだな!」

 

「殺せるものなら殺してみろ!」

 

 

私は敵に向かって・・・・ではなく真横のテーブル目掛けて走る。

突発的な動きは相手の判断を惑わせて照準を狂わせる事もあるが日常的に狩猟をしている相手には効果はなく、しっかりと銃口は私を捉えていた。

しかし、トリガーが引かれるよりも早くこちらの足蹴りが机に作用したのが早かった。

 

 

「ドン!」

 

「な、机――「バァン!」―――ああああ!?」

 

 

私は机をありったけの力で敵に向かって蹴った。

宙を舞う机は発射される銃弾に貫かれながらもちゃんと敵に向かって真っすぐ飛び、命中した。

同様に、敵が撃った銃弾も机という障害物がありながらも飛翔し、私の肩を抉った。

 

 

「ぐぁあああ!?」

 

「――あ!?がぁ、うぅ・・・・は、あぁ・・痛っ・・・・痛、痛い・・・・っ・・・ふぅ、すぅ・・・づぅ・・うぅ」

 

 

目を潰された痛み以上の激痛に悶絶する。

歯をくしばって自分を誤魔化すけど撃たれた方の腕が動かない。

 

 

「づぅ、ぅうう・・・・おばあちゃん・・・・うぅ゛・・・あぁ・・」

 

「お、おい大丈夫か!?」

 

「何があっ・・・・・ッ!?」

 

「ッ、動かないで!」

 

 

動くだけで撃たれた腕が激痛を走らせるけど私は無理に動いて、机に潰されてやっと黙った男が落とした銃を取る。

そしてそれを変な気を起こす前の盗人二人に向ける。

銃を片手で構えた事なんてないから撃っても当たらないだろうけれど、向こうはそんな事情は察していないようで素直にピタッと立ち止まった。

 

 

「お、おい正気かお前」

 

「わ、悪い事は言わないから銃を下ろせよ、な?」

 

「うるさいうるさい!・・・・づぅ、痛っ・・・・・・いた、ぁ、づう・・・はぁ、はぁ・・・!」

 

「殺したの・・・・か?」

 

「たかが机をぶつけただけ・・・・痛っ・・・っぐぅ・・・・この・・・クズ共・・・私の家を、おばあちゃんの家をよくも・・・・ッ!」

 

「ま、待ってくれこの通りだ!」

 

「お、俺達だって好きでこんな事してる訳じゃないんだ!許してくれ、殺さないで!」

 

 

わざわざ狙いやすいようにじっとしてくれるこいつらにも同じ痛みを味合わせてやろうかとも思うけれど、呆れるぐらいの命乞いをしている。

本心なのか媚びているのか、まあ十中八九媚びているだろうが私の邪魔をしないのならそれに越した事はない。

 

 

「・・・っ、足だけでも撃って」

 

「ま、待ってくれやめてくれ!」

 

「死にたくねえよぉおお!!」

 

「都合の良い事ばかりッ・・・・!クソ、クソォ!」

 

私は片手で持っていた猟銃を床に叩きつける

 

「クソ!クソォ!」

 

「っひ!?」

 

「や、やめてくれぇ・・・・!」

 

「さようなら、・・・・さようなら・・・・ッ!」

 

 

銃身が曲がるまでに叩いて銃を放り出す、そしてさっき放り投げたバッグを掴んで走り出した。

人を半殺しにした私に、果たして行く当てなんてあるのだろうか。

右も左も、東西南北も、看板も、道も気にすることなく私は走り続けた。

さらば愛しい私の故郷、いつか帰って来たとしても、もうあなたは私の故郷ではないのでしょう。




金庫の中身はおばあちゃんの旦那さん、息子、息子の嫁の遺留品です
見た事のない勲章はこの世界にはもうない国の勲章って事です
お菓子の箱の中身は当時の紙幣とか切手ですね、貴金属は結婚指輪とかです。

いや~そんな物を見ず知らずの人に取られる前に奪い返したカフカちゃんは運がいいですね!
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