戦争が急に終わったせいで無職になった元兵士の女の子が路頭に迷ってしまった話 作:エルカス
皆も何かする時は計画をしっかりと立ててかけてから実行しようね!(114514敗)
「ガタ・・・・ガタ」
「ありがとうございます、乗せて貰って・・・」
「助け合いですよ、困った時はお互い様です、それにしてもこんなにボロボロな服を着て、酷い目にあってきたんでしょう・・・・」
「いやー助かりました、もう足の感覚がなくなる所でした」
ローンのおじさんが足の限界で歩けなくなった所に、荷馬車で移動をしていた人たちに拾って貰った。
ダメだったら私がおんぶをして前に進む予定だったけどおじさんが凄く嫌がっていたので代案が叶って良かったと思う。
「ったく母ちゃん!ただでさえ過積載なのに乗る人数増やしたから禄に進まねえじゃねえか!」
「泣き言うんじゃないよ!あんたがあれもこれも持っていきたいからこんな荷物が増えたんでしょ!」
「まあまあ二人とも、お嬢ちゃん、男物だけどこの靴何てどうだい?サイズは・・・・」
「何もいらないです、気にしないで、迷惑なら歩きます、でもローンおじさんは乗せてあげてください、無理に歩き過ぎて爪割れてるんです」
「あーこらこら勝手に降りるんじゃないよ!人の好意をそう無情に断るんじゃないよアンタ!黙って貰いな!靴も服もね!」
「おいそれ俺のだぞ!」
「もう履けないなら人様にあげても問題ないでしょう!」
荷馬車を操縦していた子は歓迎していない、ごめんなさい、私のじゃない物を身に着けて。ごめんなさい、人の物を取って。
「ごめんなさい、ごめんなさい・・・」
「あ、こら!アンタが乱暴に言うからこの子泣いちゃったじゃない!」
「はぁ!?それくらいで泣くなよ!?」
「怖い思いをしてきたんだろうね・・・もう大丈夫だよ~ここには誰も酷い人はいないんだから、よしよし」
その優しさと温もりが私にとっては猛毒だ、今となっては家族という形態を見てしまうだけで吐き気がする。
視界がぐるんぐるんになって呼吸が下手糞になる、思考が硬直して何も考えたくない。
「あんたさん、ローンさん?」
「はい」
「あの子は・・・・一体どうしたんだい?あんたの親戚?」
「えーっと・・・・知らない子です・・・路地裏で再定住なんとかの人達に殴られていた所を連れ出して今に至る訳ですけど・・・・」
「あんた・・・・凄いね・・・下手したら巻き添えで一緒に叩き殺されるのに」
「まだ理性的な人達だったんで・・・それに私が普通の人間だった事もあるんです」
「ふーん、ん?・・・ローンさんじゃあ何であんたここにいるんだい?」
「この子が放っておけなくて、小さな子一人も助けなくて何が文明人だって馬鹿みたいに熱くなったは良いんですけど・・・いやぁどうにも足が動かなくて」
「まあ・・・・情に厚い・・・・感激します・・・」
「おい母ちゃん、小声で喋ってるけど全部聞こえてるぞ兵士には、耳良いんだからな」
「何だって!バカ、あんたはそう言う事はもっと早く言いな!」
「ボコ!」
「痛ってぇえ!?殴るなよ忠告してやったのに!」
「気にしなくて大丈夫だよ、ずっとは難しいけど新天地までは責任もって一緒に行くからね、お腹空いてないかい?パンあるよ?」
冷静な忠告をした息子はその母に拳骨を落とされる。
少し冷や汗をかきながらお父さんらしい人が私の事を慰めながらパンを差し出してくる。
パン・・・おばあちゃんと余ったライ麦で沢山作った・・・・う、おぇ・・・
「・・・・・・・やっぱり歩きます」
「あら、あらら・・・・」
「お前変な奴だな!心の病気って言うのか!気難し―――」
「バチン!」
「また殴った!」
「今のはお前が悪い」
「ほらもう手綱は良いから話し相手になりに行きなお前は!」
「おーい返事しろお前、名前なんていうんだ~」
「一緒に隣を歩いてやるんだよ!」
「ウォエ!?蹴り落す事ないだろ!それに歩くの疲れるんだよ!」
「積載過多なんだろ!お馬さんの為に歩きな!」
「この独裁ババア!畜生!お前のせいだぞ・・・・俺の名前はキシナ、お前の名前を教えろよ」
「カフカ」
「そうやって普通に口聞けばいいのにさ、・・・・・それにしてもお前本当にボロッボロだな、家族居ねえのか?」
少しこの子と距離を取った
「な、何で離れるんだよ!・・・・わ、悪かった、気にしてたなら謝るよ・・・・・ごめん」
「・・・・・・家族は大事にして」
「はぁ?嫌だよあんな独裁ババア・・・」
「大事に」
「お、おう・・・わ、分かったよ・・・・本当に変な奴だなお前」
それから暗くなるまでキシナ君と話し続けた。
私に気を使ってくれたのかそれとも若さゆえに自分の話ばかりをする性質なのかは分からなかったけど踏み込んだ話をあんまりしてこくて助かった。
顔を俯かせて誤魔化すにも限度があるから。
暗くなってからの移動は普通の人にとって危険なので大方は控えられた。
先を急ぐ人や問題ない集団は止まらずに進み続けるけど。
「う、ぬぅ・・・・ぐぉおおおおお!!」
「バキ!」
「あ」
「力掛け過ぎて木の棒が折れてるじゃないかい!」
「力が足りなくて火が起きねえって言ったのは母ちゃんだろうが!」
「諦めて近くの人に火を借りてこようか?」
20分くらい四苦八苦しても火は起こせていなかったようだ、多分経験がないんだろう、大きな木の枝をそのまま使って火を起こすなんて私でも無理だ。
ゴテゴテした木の枝と不安定な地面とのバランスを保ちながら回転数を上げるなんて人間業じゃない。
あんまり近寄りたくなかったけどこのままだと凍えて可哀想だから吐き気を我慢して中に割って入った。
「・・・・・貸してください」
「え?お前できんのか?すっげぇむずいぞバランスとか」
「シュバ、シュ」
「うわぁ凄い、手斧って言うのかな、あんなゴツゴツした枝が板材みたいになった」
「手とか大丈夫なのかい!?」
「慣れてます・・・・」
平たく割った枝を足の下に設置して私は手頃な小さい枝を取り寄せる。
そしてボロボロの衣服の袖を引っ張る。
「ビリ・・・・ビリビリ」
「ちょ、ちょっと何してるんだお前!」
「火を起こしてます」
「それが何で服を千切ってんだよ!裸になるぞお前!」
「え?裸なの?」
「こら何人様の裸見てるんだい!」
「ゴツン!」
「痛ってぇええ!?」
「正直暗くてよく分からない」
千切った袖を糸にするように引っ張ってそれを回して火を起こす棒に巻き付ける。
何度もやり慣れた事で今更迷いなんてないけどやせ細った手と波状に押し寄せる吐き気の中では少し手間取ってしまった。
「シュ・・・シュンシュン・・・・シュン!」
「す、すっげぇ・・・何か分かんねえけど凄い速さで棒が回ってすげぇ・・・」
「音しか分からないけど凄い気がする」
「ボ」
「あ、火がついた!」
「まだ火種です・・・・落ち葉とかに引火させてから薪に放り込めば大丈夫です・・・・」
「凄いなぁカフカちゃん!次やり方教えてくれないかい!?」
「私達にも教えてくれないかい!あんた凄いねぇ!」
「お前変なくせに凄いんだな・・・」
「・・・・・・・大袈裟です・・・・わ?な、何ですか?」
「火おこしのお礼さ!着てる服を使ってくれたんだろ?ならこれはお礼だよ!返品は不可だよ!」
そう言って私に毛布をかけてくれる。
外に曝け出した肩が何かに覆われて安心感を覚えると同時に私に向かって微笑む顔と感謝の気持ちで・・・もう無理。
私は走り出した。
「ッ・・・・・バ」
「あ、おい!礼の一つもなく逃げやがって・・・・」
「照れ隠しって奴じゃないかな~」
「私見てきます、すいません失礼します!」
「ごゆっくり~ローンさん」
「カフカちゃ~ん、あ、いたいた、だいじょ――――」
「お゛・・・え゛・・・・うぅ・・・ヴォェ・・」
「カフカちゃん!?ど、どうしたんだい気分が悪かったのか!?お腹でも冷やした!?それとも変な物食べたり・・・」
「ちが・・・う、んです・・・・う、・・・うぅ゛・・・」
「しっかり!」
吐き気の次には惨めさに襲われる、考え付いた言葉を思い通りに口に出来ない、頭が歪んで視界がぐるぐるする。
四つん這いのバランスも取れずに倒れ込んだところをローンおじさんにキャッチされた。
「う、あ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「落ち着いたかい?」
「は、い・・・・」
「良かった・・・・何か気分が悪かったりしたのかい?」
「・・・・・幸せそうな家族だなって」
「あ、ああ確かにそう見えるね」
「・・・気持ち悪くて、・・・・嫌いとかじゃない、思い出したくない・・・・見たくない・・・・羨ましい・・・・あれ?私なに喋って・・・頭が痛い・・・・痛いよ・・・」
「か――――ちゃ――――っかり――――――――――――――」
うずくまって頭を抱える、車と地面の間に挟まれたかのような軋みで締め付けられる
今まで見てきた情景が早送りで頭に再生されて脳の回路を焼き切るような痛みを私に与える。
結局、私はその痛みに負けて意識を失った。
「本当に心の病気かもしれないな」
「・・・・・・・」
「日常的に無気力でこちらの呼びかけへの反応は薄く反芻した言葉を頻繁に呟く、対象者のいない会話、医者ではないからはっきりとは言えないが・・・・」
「しっかりしなアンタ、一番正解に近そうな答えを出せそうなのはアンタだけなんだから」
「そう言われてもね・・・・ローンさん、出会った時のあの子は具体的にはどんな感じでしたか?」
「値打ちの物を私に渡そうとしてきました、その次には寿命が縮むから煙草を吸わせてくれと、その後は殺して欲しいと・・・その後に政府の人間が現れて自分から殴られるように無視して・・・・」
「まるで死にたがりだな、ってうぉ!?」
「避けんじゃないよ!」
「いや、本当に死にたがっているのかもしれない・・・・」
「最初こそですが、もう死にたがっているとは・・・・」
俺が付いて来てくれと頼んだ時に、確かにあの子ははっきりと答えて自分の足で俺の方に歩いて来てくれた。
その意思を見たからこそ、死のうとしているなんて到底思えなかった。
心の病気である事は確かに同意するが、果たして何も知らない部外者が触れて良い部分なのか・・・・。
「人間の意思は必ずしも一つではないと言われています」
「そんなバカな」
「いえ、れっきとした事象もあるんです。凄惨な経験や耐え難いストレスに晒された時に、自身の人格を保護するために分離したり全く新しい性格を自身に覆いかぶせたりと」
「作り話みたいだね」
「死んで逃げようだなんて・・・・・極端だな」
会話は途切れて焚火の音だけで満たされる。
近くに寝かせているあの子を見る、まるで悪夢にうなされているように寝顔は険しく体中に夥しい量の汗をかいている。
そう言えば出会ってから今日に至るまで一回も食べ物を食べて・・・・・次に目を覚ましたら無理にでも食べさせよう。
「それにしても、こうなる前はどんな子だったんだろうね」
「きっと逞しい子だよ、5分ぐらいで火を起こせるんだから」
「実はとんでもない金持ちの愛人の子だったりし「ガキン」――――――いっでぇえええ!?鍋で叩くか普通!?」
「二発分だよバカ息子」
本当に良い人たちに拾って貰ったと思う反面、この優しさがこの子にとっては猛毒だと思うといたたまれない。
きっとこうなる前は家族思いでとっても優しい子だったんだと思う。
時代や環境を作った俺達大人のせいでこんな目に合わせたと思うと胸が苦しい、自分の今まで頑張りで一体何人の人達を不幸にしたのだろう。
省庁での仕事は人々の暮らしと安全を守る手助けだと信じてやり続けてきたが、果たして俺は一体何を彼らに彼女たちにしてあげたのか。
何もしない以上に寧ろ追いつめているかもしれないと思うと・・・・本当にやりきれない。だけど今は目の前の女の子一人ぐらいは助けよう。
例え自己満足だとしても、責任からの逃避だとしても・・・・。
家族を守れなかった罪悪感に苛まれている中
眩しい程に家族している人達を見せられて吐き気を覚えるカフカちゃん、可愛いね。
そんな内情を親切にしてくれてる人達に言えるはずもなく一人苦悶しているのもグッド。