戦争が急に終わったせいで無職になった元兵士の女の子が路頭に迷ってしまった話 作:エルカス
『バルカン連邦の常備軍(地方政府軍)』
バルカン連邦では中央政府が持つ常備軍(中央軍)の他に地方政府が持つ地方政府軍も常備軍として数えられる。
徴兵軍である『兵士』達の間では意思疎通の為に語学教育が統一されているが、この常備軍に関しては地方政府ごとに使用言語、服装、武器弾薬類等が全く異なり連携は取れない。
常備軍は対外的な脅威よりも内在している潜在的な脅威に向けた軍隊であり、地方政府によってその性格は大きく異なる。
『中央軍』
主な業務は徴兵軍の監督であり督戦任務を担う、戦争終結後は連邦議会の意向で大規模な人事整理、リストラが行われた
残った人員はスノース生息域付近に隣接する国境の警備を担ったり省庁や政府の所有地域の治安維持を任されている。
『セルビア地方政府軍』
主な業務は同地の治安維持及び他の地方政府軍に対する監視任務。
『兵士』雇用を忌避し、ウォーロック支持者を最も抱えている。
『ギリシャ地方政府軍』
主な業務はセルビア地方軍と相違ないが同国の海外領土(飛び地)であるイオニアの国境警備にあたっている。
他地方政府に対する感情はいずれも険悪だがウォーロックの支持者は少ない。
『ブルガリア地方政府軍』
主な業務は上記二国の監視任務、他地方政府軍と違い『兵士』の採用に関しては好意的に受け止めていた。
元中央同盟国出身者の多い『兵士』に関しては比較的穏当な姿勢を見せているためウォーロックの不支持者が多い。
また同地方政府は避難民の受け入れが連邦内で最多の為、今回の追放政策には武官文官問わず猛反発の姿勢を見せた(移住に莫大な費用が掛かる上に外国人をクビにしたら人手不足と需要崩壊で自国産業が壊滅するため)
「こ、これが『街』!?」
「あら、私にはゴールドラッシュの間に合わせキャンプ地に見えるわね」
「だから母ちゃんたちは付いて来なくて良いって言ったんだ・・・」
一週間の軽い旅で辿り着いた新天地は間に合わせで開墾された狭い森の一画に押し込まれたような様相だった。
布切れの覆いを建物と言い張ってそれの集合を町や街だと言い張るのは一周回って感服する、見習いたい白々しさだ。
とてもここで暮らしていけるとは思えない。
「どこに行けば良いんだろうねぇ、もっとこう管理している人とかいないのかね」
「お前ら今着いたんだな、開いている所で適当に暮らしな、管理人は一昨日から見てねえな、まあ流刑地みたいなモンだから何をしても大体は文句言ってこねえぞ」
「適当って・・・・・」
ここから街づくり物語を始めるにしても絶望的な地盤である。
個人個人が好き勝手に線引きして土地を決めたら衝突が起こるなんて当然なんだから、明確なルールが必要と言う事は猿でもわかる。
この政策を立案した担当者は余程の新人か脳みそが足りない名誉ホモ・サピエンスである。
まあこんな政策を本気で実行する段階で期待など出来ないが。
「取り合えずここにしとく?」
「場所の良し悪しはよく分からないから任せるよ」
「良いんじゃねえか?分からないけど」
「じゃあここにしましょう」
「おぅおぅお前ら!ここは俺達の土地だぜ!ここを使いたかったら食べ物を寄越しな!」
「何だお前ら!あっちにいるの見てたぞ、こんな離れてる場所なんて使ってないだろ!」
「強請の集団だぁ・・・ここはやめときましょう」
「出て行くなら通行料を払いな!食料で!」
言わんこっちゃない、どうやらこの土地では法律が機能していないようだ、政府は人為的にこの状況を作り出して兵士同士で争わせて数でも減らしたいのか。
見るからに腕の立ちそうな兵士三人に囲まれた、周りを見ても助けてくれる雰囲気はない。大してこっちはとてもじゃないけど殴り勝てそうには・・・・
「どうしたんですか?」
「ちょ、ちょっとトラブルが・・・・」
「おうおう一人隠れていたのか!俺達の恐ろしさで隠れていられなくなったか!?」
「怖かったらずっと隠れますよ?」
「喧嘩売ってんのかテメエ!」
「喧嘩売ってんのはお前らだろうが!やるなら俺一人とタイマンだ!母ちゃんと父ちゃんとおっさんとこいつには手を出すな!」
「おチビちゃんがよく吠えるぜ、あと要求が多いなぁ・・・・・!俺達は食料を貰えれば大人しく解放してやるのに戦うかぁ・・・!!」
「・・・・・周りは森だから動物捕まえて食べればいいのに」
「そ、そんな簡単に出来るか!」
「『兵士』ならとっても簡単だよ?習わなかった、訓練で?サバイバルした事あるでしょ?」
「「「・・・・・・」」」
「ん?・・・・お前ら兵士じゃないな!さては普通の一般人だな!」
「そ、そんな事はねえ!俺達は泣く子も黙る兵士だ!」
「まーた失敗してら、あんたらの想像通りそいつら三人は一般人だぞ~」
こちらが本当かどうか疑いの目を向け始めてから、目の前の三人衆は見るからに動揺し始めて早口になった。
見苦しかったのか近くにいた人が苦笑気味にこちらに援護の声援を送ってきた。
「おいバラすなクソ野郎!クソクソ!」
「「「・・・・・」」」
「く、クソ覚えてやがれお前ら!」
「夜道に気をつけろよ!」
「おめえらが気をつけんだよ!」
勝手に出張って勝手に自爆して謎の一般三人衆は退散した。
しかしここは兵士が追放されてくる場所だと言うのに何故あのような一般人まで来てしまっているのか・・・
だけれど今の自分たちに人の心配なんてしている余裕なんてなかった。
「では私達はこちらを使わせて頂きますね」
「今日から隣人同士!困った事があったら助け合いましょう!」
「テント張りますね」「カンカン」
威勢よくカフカちゃんを助けると言ったけれど多分俺なんていなくてもこの子は一人で立派に生きていける力を持っている。
説明書とか道具も必要とせずに手のひらで杭を地面に打ち込んで10分足らずでテントが出来上がってしまった。
「凄いなカフカちゃんは・・・・ん?今は何を?」
「弓を作っています、銃がないので」
「何か手伝えることは・・・?」
「刺さると痛そうな大きめの枝でも拾ってきて貰えばとても助かります」
張りつめた弦に人差し指で触れる。
正直こんな間に合わせの物じゃサイズの大きい獲物を仕留める事は出来ない。
殴り合いをしても良いけど貰い物の服をすぐ壊すような真似はしたくない。
「じゃあローンおじさんはゆっくりしていてください」
「一人で大丈夫なのか?」
「おじさん熊と殴り合っても勝てる自信あります?」
「失敬、でも気を付けて、変な輩に絡まれたらすぐに逃げるんだぞ」
「・・・・・はい」
テントを出て自然に出来た道を歩いて外れの森に入っていく。
進む途中で何匹かの獲物を仕留めた人たちとすれ違った。
周りに気を配ると何十人もの人が散策している、この調子じゃすぐに一帯の動物がいなくなって・・・・・。
「バァン!」
銃声と共に木々が揺れる。
鳥が一斉に飛び立つ、最悪鳥を捕まえて食べればいいかとも思うけど普通の人は火を通したぐらいで鳥を食べれるのだろうか。
近場だと取り合いになる事は必至だから少し深い場所まで入り込んだ。
銃を持っている人たちが羨ましい、弓なんて滅多に使わないから自信がない・・・頑張らなきゃ今日のご飯にはありつけない。
「はぁ・・・・ふぅ、体鈍ってる・・・鍛えないと・・・・」
3時間近くが張り込んだ成果は小さな猪一匹とウサギが二頭、羽休めをしていた鴨の合計四体だった。
100人ぐらいの競合者がいる上に狩猟装備が粗悪な弓で出した成果にしては上々だ。
「ねえそこの君、少しいいかな」
「・・・・何ですか」
「その獲物全部君が取ったの?」
「だったらどうするんですか?」
「い、いや疚しい気持ちとかはないんだ、でも余裕があるなら分けて貰えないかなって」
「人に声をかける前に自分でどうにかする努力をしては如何ですか?」
「ご、ごめんなさい・・・・」
居住地に戻る道中でこちらを見つけて怪しそうに近づいてくる人がいた。
訝しく睨みつけて冷たくあしらうと意外と大人しく身を引いた。
私は気に留めずに前に進ん――――――――
「あのすいません」
「何だオメエ?」
「良ければちょっと分けてもらえませんか?」
「ふざけんな、退けよ、邪魔だ」
「あ、痛っ・・・・・・うぅ、ダメか・・・・」
何で立ち止まるんだ私、そのまま前に進んで帰りなよ。
あのよく分からない奴に良くする義理何てないんだ、情けは人の為になるけど自分の為になるように世の中は出来ていない、下手をすると自分すらも不幸にする。
だから耳を塞いで前に進んで・・・・
「ねぇ」
「あ、・・・ど、どうしたんですか?行かないんですか?」
「これ」
「え?」
「いらないの?いるの、どっちなの」
「い、要ります、欲しいです!」
「じゃあ落とさないようにちゃんと持っていてください、それじゃあ私はこれで・・・・」
「あ、ま、待ってくだ――――――――」
有無を言わさずにウサギを一頭押し付けて私は走った、一体何をやっているんだ、私の馬鹿。
痛いほどに分かったはずだ、意味もなく人に親切にしても意味なんてないんだ、自分や周りの人達ですら不幸なのにそんな事をする暇があったら・・・・
遠ざかっていく私を呼ぶ声、その声から逃げた、逃げ帰った。
今更過ぎるけど国名をダイレクトに使うんじゃなかった・・・・
セルビア→ベオグラード
ブルガリア→ソフィア
ルーマニア→ブカレスト
見たいな感じで暈かした名称にしていれば・・・・トホホ