戦争が急に終わったせいで無職になった元兵士の女の子が路頭に迷ってしまった話   作:エルカス

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それでは次回から週2投稿とさせて頂きます。


68辛い事ばかりじゃなくて楽しい事もある

「ハァ、ハァ・・・・うぅ疲れたぁ・・・」

 

「だらしないわねぇグース、ほらもう少しだから頑張りなさいよ」

 

「おんぶしましょうか?」

 

「え?い、良いんですか――「ボコッ」―――痛ったぁ!?」

 

「良い訳ないでしょうが!チェルナー隊長もこいつを甘やかしちゃだめよ!」

 

「賑やかだな偵察小隊は、まるで遠足だ!」

 

「お遊び気分が抜けてねえんじゃねえか?これから俺達は殺し合いをするんだぜ?」

 

「子供はさっさと帰ってママのおっぱいでも吸ってな、ぎゃははは!」

 

「ッ・・・・うるさいわね、後ろに気を取られてると前から頭を撃ち抜かれるわよ、無駄にデカいその体だから私達に当てるよりよっぽど簡単だし」

 

「ぶはは、手厳しいな、まあ足手纏いになってくれるなよ」

 

「しかし防戦の方針だったのに急に前進になったのはどういう事なんだ?」

 

「何言ってんのよシャル、防衛戦はね、守るだけじゃないの、攻めるのも防衛なの」

 

「そうなのか?」

 

「そうよ!」

 

「ジュリーはさっき隊長に同じ事聞いてたからね」

 

「言わないでよグース!せっかく格好よく決まっていたのに!」

 

「「はははは」」

 

「ふふ・・・」

 

 

防衛の時も攻撃に打って出る事は確かにあるけど今の所、敵に攻撃をするとは一言も伝達されていない。

ただ前進するだけでと言われ、陣地から私達を含め100人ぐらいが今移動をしている。

昨日・・・12時間前に偵察した場所と同じ方向に。

 

間違いなく攻撃だろうとは思うけれど周りの仲間を見てみれば銃を持っているのは・・・四人に一人だ。

昨日の威力偵察とかの時は全員が銃を持っていたのにどうしてと思わずにはいられない。

もしかして命令を出している人はどうしようもない馬鹿なのではないか、それとも自棄になって無謀な命令を出しているのではないか。

いやそんな筈はない、命令を出している頭いい人集団はアリンシャスお姉ちゃんやローンおじさんも参加してるからそんな事はない、絶対に。

 

 

「ただ信じて前に進むだけ・・・」

 

「ん、どうしたの隊長?」

 

「ちょっと怖くて」

 

「怖い?大丈夫よ、腰を抜かして動けなくなったら今度は私が助けるから、大船に乗ったつもりで助けられなさい!」

 

「泥船・・・・ェ?」

 

「な~ん~て~?」

 

「うわぁ?!ご、ごめんジュリー、許して!」

 

 

ダルマン君は失礼な軽口を叩いた罰として頭をぐりぐりされている。

仲間内からの仇名がグースなのはまあこのようにちょっと弱虫気質があるから臆病者を揶揄するチキンに近いからという理由で鳥仲間のグースになったらしい。

私は最近まで周りの同年代の兵士がいなかったからこういう光景は物珍しく、微笑ましく思ってしまう。

皆元気にしてるかな、・・・・リーリスは、アレンは・・・―――――――

 

 

「―――全体止まれ!」

 

「「「・・・・・」」」

 

「よし、もう見えているとは思うがこの物資の山は敵が俺達にプレゼントする為に置いていった宝の山だ」

 

「宝の山?!」「見ろ、銃が沢山あるぞ!」「あの箱の中身は何なんだろうな!」

 

「なんたってこんな物を置いていったんだ」「知るかよ、罠じゃねえのか?」

 

「本日未明に俺達が選抜した腕利きが敵を襲撃して物を持っていく暇もなく敵を駆逐した!お前達はこれを俺達の陣地まで運べ!」

 

 

先頭を行き、指示を出す連隊長の後ろには少なくとも30台近くの車両があり積み下ろされた木箱がかなりの数あった。

一人で一回、三つ持って行くとすれば二往復で全て片付けられるだろうけど・・・・

果たしてその内に敵が来ないという保証はあるのだろうが、片道1時間で、5時間近くも無防備に物運びをする余裕はあるのだろうか。

 

 

「多くないか?」

 

「全員で運びきれるのか?」

 

「車使えばいいじゃないか」

 

「燃料が凍っているから動かせない、お前達が往復して物資を運びきるんだ、敵が取り戻しに来る前にな!」

 

 

ならば尚更、愚直に力任せに運ぶのは得策ではない気がしてきた。

凍った燃料を溶かすのは難しいけれど1時間もあれば出来ない事はない気がする。

まだ戦争が終わってからしばらくの時に車のエンジンを誤って切ってしまった同僚がいて皆で頑張って温めて溶かした事もあるし。

・・・・懐かしい事を思い出してしまった、ルードヴィッヒさんは元気にやっているだろうか。

 

 

「皆で頑張って凍った燃料を溶かした方が効率的じゃないですか?」

 

「どうやって溶かすんだ、火でもつけて炙るのか?」

 

「水を沸かして蒸気をぶつけます」

 

「・・・・・」

 

「この場の指揮官は私だ、貴様らの後先考えない行動を容認する気はない」

 

「はぁ?うっざ、じゃあ何でやり方聞いたのよ、最初からそう言えばいいじゃない」

 

「ちょ、ヴォアナさん?」

 

 

昨日の一件で一歩大人になったと(私が勝手に)思っていたヴォアナさんが、出会った当初の頃の様な尖った言い様で連隊長さんを批判した。

それ以上嫌味な事をいう予定はなく、話も切り上げようとしていた連隊長だったけど、目を細めてこちらを睨んでいる。

不味い、何かフォローしなければ。

 

 

「こ、凍った燃料を溶かして車を動かせたら車も手に入ります」

 

「必然だろう?わざわざ言う必要があるか、ん?馬鹿にしているのか」

 

「いや、その・・・・・え、まさか車を手で押して陣地まで持って帰れって事ですか?」

 

「おい嘘だろそりゃ?」「ありゃ重いんだよ」

 

「黙れ!誰が車まで持って帰れと言った、俺はここの物資を運べと言ったんだ、ああクソ時間が惜しいというのに、そこの口が過ぎる小隊・・・・あの時の使えない偵察小隊か」

 

「っひ、顔覚えられてる」

 

「良いだろう、お前達は馬鹿みたいに頑張って燃料を溶かせばいい、だが車を持って帰るまで貴様らはここにいる事を命令する、例え敵が来ても、俺達が全員撤収しようとも、勝手に動く事は許さない」

 

「はん!良いじゃない、あんたより私達がスマートに出来るって証明してやるわ」

 

「ちょ、え、なに勝手に言ってるんですかヴォアナさん・・・・?」

 

「あんたこそ何言ってんのよチェルナー隊長、正しいなら堂々としていればいいのに、何を急に自信なさげに、私に鉄拳制裁した時の豪胆さはどこに行ったのよ?」

 

「あ、あの人上官だよ?偉い人なんですよ?」

 

「あっそ、でも同じ人間じゃない、下手したら馬鹿かもしれないし、イエスマンみたいに全肯定するのは馬鹿のする事よ、そして私は馬鹿じゃないわ!」

 

「・・・・・」

 

「ギロ」

 

「あ、あはは、どうもです・・・・」

 

 

無遠慮に喋り続けるヴォアナさん、横を通り過ぎる連隊長に酷く睨まれた。

いやまあ正論というかそのレベルで語れば正しいのかもしれないけど何というのか、訓練で軍隊式に毒された私にはとんでもないルール違反だと思えて仕方ないのだ。

絶対に連隊長から目を付けられているし気が小さい人だったらこの事を覚えて妬んでくるかもしれないし――――――――

 

 

「なーにしてるのたい、ちょ!」

 

「は、はい!」

 

「それで、どう溶かすんだ?」

 

「あ、え・・・えっとですね、火を焚いて・・・・」

 

「え、火を焚くの?敵に位置バレるんじゃ・・・・」

 

「グースあんた馬鹿?隊長の事だからそこんところ全部考えてくれてるわよ、でしょ?」

 

「う、うん、まあ元々敵がいた場所だし火煙を多少出しても大丈夫かなって」

 

「・・・・あんまり考えてなかった?」

 

「お恥ずかしながら・・・・私達の存在が露見して敵が急行してくるより先に車動かして逃げれば良いかなって・・・・」

 

「あ、あぁ成程・・・・もしかして私達だけが燃料溶かす流れは不味かったり・・・・?」

 

「とっても不味いと思う」

 

「で、出来るだけ煙が立たないようにすれば大丈夫よ、きっと!」

 

 

他の仲間に横目に見られながら、私達は猛スピードで燃料を溶かす準備をした。

火で直接炙るのは色々と危険だからワンクッション挟んで温める。

 

 

「本来なら水を入れる器から探す所だけど、シャルロット君?」

 

「・・・・鍋なら俺に任せろ」

 

「ゆ、雪をかき集めてきたよ」

 

「布切れ持って来たわよ、火ならマッチで起こせばいいのに何をするの?」

 

「え、マッチ持ってるんですか?」

 

「マッチなかったらどうやって火を起こすのよ」

 

「棒と木の板と枯れ葉で、常識ですよね?」

 

「どこの原始人よ」

 

「・・・・・・」

 

 

そうか、私は原始人だったのか。

いやだが待ってほしい、私達が僻地に追放されてからマッチなんてどこから仕入れていたのか。

もうここに来てから4ヵ月は経過している、マッチ棒も無限じゃないから手で火おこしをするのは特別珍しい事ではない筈だ。

 

 

「マッチ棒だって無限にある訳じゃないんですからいつかはなくなりますよ」

 

「なくならないわよ、定期的にくれる人がいるの」

 

「だ、誰から?」

 

「さぁ、いつもグースがくれるからよく分からない、グースはいつも誰から貰ってるの?」

 

「え、え~っと・・・・・」

 

「もしかして盗んでたりします?」

 

「そ、そんな事はしてないよ!・・・そ、その・・・・本当は秘密だよって言われてるんだけど、・・・・皆にも内緒だよ」

 

「お前隠し事する度胸あったのか・・・・見直したぞ」

 

「えっと・・・・知らないお姉さんがくれる」

 

「うん、・・・・・うん?」

 

「あ、いやだから・・・・ある時、森の中を迷子になって、それでその人と出会って・・・・『困ってるなら助けてあげる、何かいる物はある?』って言われて・・・・」

 

「ボ」

 

「あ、火ついてる、凄いわね!?マッチ棒なしに・・・・・」

 

「マッチ売りのお姉さんの話はまた今度にして今はやるべきことをしましょう。」

 

「そうね、送風係は任せなさい、火の粉を大空までまき散らして見せるわ!」

 

「引火すると危ないから程々にしろジュリー」

 

「分かってるわよ、そうれ!」

 

 

ダルマン君が何か幻想的なお伽噺を始める前に着火に成功したので現実の方が優先された。

ヴォアナさんは着ていた服を脱いでそれをぶんぶん振って風を送っている。

早速、轟轟と燃え上がる火の上に雪をたんまりと入れた鍋をおく。

 

 

「っ、結構煙が目立つからもう車の下に入れます、慎重に移動させて・・・・・っ、よし」

 

「あ、いい感じね、立ち上る煙もあんまり見えなくなったわ!」

 

「で、でもまだちょっと・・・・・き、消えろ消えろ・・・・!」

 

「お、扇いだら意外と消えるな、ナイスだぞグース、俺達も扇ぐぞ!」

 

「え、え?お、おっけ!」

 

「私は火の調節をします、三人ともそれぞれお願いします!」

 

「任されてるわよ!・・・・うふふ!案外良いコンビじゃない!」

 

 

やがて雪は全て溶け切り、鍋に水の膜が張る。

小さな気泡が一つ二つ、徐々に勢いを増し水面を荒く振動させる、沸騰だ。

立ち上る湯気が車の燃料タンクに浴びせられ、冷やされた蒸気が再び水となり垂れ落ちて来る。

刻一刻と燃えて消えていく小枝を急ぎ足で集めて逐次投下する私。

絶え間なく空気を送り、強く、丁度良い具合の火を維持し続けるヴォアナさん。

立ち上る煙を扇いで消して、隠蔽をしてくれるダルマン君とシャルロット君。

 

・・・・意外と、悪くないかもと、私は童心に戻り、その時を楽しんだ。

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