戦争が急に終わったせいで無職になった元兵士の女の子が路頭に迷ってしまった話   作:エルカス

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73死を呼ぶ音

「―――バババババ!!」

 

 

トラックに積まれていた木箱が穴だらけになって中にある物がそこら中に散らばるか、勢い止まらぬ銃弾にバラバラにされて散乱するかして荷台は物でごった返しになった。

唐突に伏せる事を強要された為、俺は顔に再び出血し始めた怪我人の血を浴びる事となった。

生温かい感覚と共に視界が赤く染まり、自分がこの世から去る一歩手前なのかと錯覚する。

 

 

「シュウウウ・・・・」

 

「何だクソ!」

 

「撃ち過ぎだ!銃身が熱でイカレちまうんだ馬鹿!冷やせ!」

 

「じゅ、銃撃が止んだ今がチャンスよ!撃ち返してやる!」

 

「バババ――」

 

「ああもう何よこれ!跳ね上がって狙いなんか付けられないじゃない!これならライフルの方が良かったわ!」

 

 

ジュリーは恐らく、さっき隊長が使っていた一度に何発も撃てる銃で敵をハチの巣にしようと考えていたようだけど、見た目以上に扱いが難しかったようだ。

同時に何発も撃てるという事はその分、反動も段違いでライフル銃しか撃った事のない俺達には早すぎたのだ。

使い物にならないと判断するや否や、ジュリーはゴツイ銃を放り捨てて落ちていたライフルを拾った。

 

 

「バン!バン!」

 

「く、クソォ!銃身の交換を急げ、早くしろ!」

 

「ちょこまかと左右にィ・・・!!動かないでよ、当たらないじゃない!」

 

「なっ、皆さん気を付けてください!新手です!」

 

「バン!バン!」

 

「なんて!?聞こえないわよ隊長!」

 

「敵の増援です!!!」

 

「はぁ!?」

 

「不味ッ!?皆伏せろぉ!!!」

 

 

真後ろばかり見ていたせいで横から飛び入って急に現れたもう一台の敵には驚かされた。

そしてジュリーを無理に押し倒して伏せさせた直後に・・・・。

 

 

「バババババババ――――――――」

 

 

新たに現れた方の敵が容赦のない銃撃を浴びせて来る。

障害になっていた木箱などは軒並み破裂して何発もトラックの金属板に命中して金属音を打ち鳴らしている。

 

 

「きゃぁああああ!!もう嫌ぁああああ!!何で向こうのはこんなに当たるのよぉおお!!!」

 

「あ、銃が・・・・・ッ!!」

 

手が震える、落ちている銃を拾おうと手を伸ばすのに銃が逃げていく。

いや違う・・・震えるこの手が弾き飛ばしているのだ、戦う事から逃げている。

 

「クソ!こんなに撃ち込んでもまだ足りないか!」

 

「ッ、う、は、は、は・・・・止んだ?銃撃が・・・・敵は・・・?まだいる・・・・ッ!!」

 

「お前達は左から回り込んで運転席を撃て!俺達は右から行く!」

 

「ま、不味い、次撃たれたら死人が出る・・・!ジュリー反撃を・・・・ジュリー?」

 

「いや・・・イヤァ・・・っひぃ・・う、う怖いよぉ・・・・誰かぁ、誰かぁ・・・・・!」

 

 

ジュリーはさっきの銃撃で怖い思いをしたせいか、伏せたまま怯え切っている。

負傷した人はもう血が流れ出過ぎたのか呻き声を出しながら半目になっている。

今ここで確かな意識を持って動けるのは他にいない、隊長は運転で忙しいしグリースは・・・そもそも運転席は無事なのだろうか。

 

 

「ダルマン君運転変わって!」

 

「む、無理ですよぉお!!」

 

「ぶつからないように進み続けるだけで良いですから!」

 

「無理です、絶対無理です・・・・色々破壊されて・・・サイドミラーだって・・・!これじゃあ運転できない・・・・!」

 

「トラックには四つも六つもミラーがるんです、一つ二つ吹き飛んだって問題ないですよ!それに前に進むのに必要なのは自分自身の目だけですよ、後ろなんて見なくて良い!」

 

「無理ですぅ・・・・!!」

 

「もうぅう!!」

 

 

どうやら隊長もグリースも無事なようだ。

 

 

「ッ・・俺が、やらないと・・・・やらないと・・・ッ!」

 

「もっとスピードを上げろ!運転席はまだ先だ!」

 

「無理言うな!山中だぞ!」

 

「く、クソォ・・・・どうしてだよぉお、逃げる足はある癖に、立ち向かう手はないのか・・・・・・・動けよ俺の手・・・ッ!!」

 

もう敵は真横まで来ていた。

幸いにも接近してきた敵は、荷台はもう無力化していると勘違いしているのか銃撃させる事はなかったが、このままでは運転席にいる隊長とグースが・・・。

分かっていても銃を拾い上げることは叶わない。

 

「畜生、またかよ!また・・・・・逃げる事しか・・・・・ッ・・・・逃げる・・・・逃げる、足があるなら・・・・・」

 

「う、うわぁ敵がすぐ横に!?」

 

「こっちにもッ!挟まれてる・・・・!」

 

「逃げる足があるなら俺は――――――――――」

 

 

 

 

 

「―――――――――――――敵に向かって逃げてやる!」

 

 

 

 

 

「うぉおおおおおお!!!!」

 

「何だ!?」

 

「荷台から人が飛んで―――――――――」

 

「バリン!」

 

「うわぁあああ?!兵士が、兵士が飛んできた!?」

 

「う、撃ち殺せ!」

 

「ぐ、ぉ、ぉおおおお!!」

 

 

助走をつけて地面に落ちずに飛びつく事だけを考えたせいで、想定以上のスピードで車に激突し、意識が朦朧とする。

そんな中でも手を伸ばせば掴める距離にある敵を迷うことなく鷲掴みにする。

 

 

「うわぁあああ放せ放してくれ!、お願いだ、た、助けてくれぇえええ!!」

 

「落ちろぉおお!!」

 

「あぁあああああ!?」

 

「パリン、ボン!」

 

 

ガラスを突き破って乗っていた敵を掴んで車から投げ出す。

人が出入りしたおかげで入れるぐらいにガラスが割れてくれた。

 

 

「後はお前だぁあああ!!」

 

「く、来るなぁあ、化け物、来るなぁぁああ!!」

 

「バン、バ―――――――」

 

「あ――――――」

 

 

こちらに恐怖している敵は狭い車内の端っこに逃げて狂乱しながら拳銃を抜いて発砲してくる。

撃たれる前に決着をつけなければとのめり込もうとした次の瞬間、体が宙に投げ出された。

視界が一回転、二回転する、その中で隊長達のトラックが残ったもう一方の敵の車に体当たりを仕掛けている風景が見えた。

 

 

「あ・・・・みんな、無事でい―――」

 

「グチャ!」

 

 

 

 

「バン!・・・・バン!・・・・・ガゴン!」

 

「っひ・・・っるぅ・・・い、や・・・怖い・・・もう、終わった?」

 

 

弾け飛ぶ荷物、吹き飛ばされる木片、幌に空く無数の穴、凄まじい轟音が私の心を犯す。

頑張って立ち向かおうとしたけれどあの迫りくる鉄の嵐には立ち向かえなかった。

怖くて動けなかった。

 

 

「シャル?・・・・た、隊長?グース・・・・みんな?」

 

 

か細い声で皆の名前を呼ぶ、酷く散乱した荷台には私と怪我をした人しかいなかった。

シャルは何処にもいなくて、私は恐る恐る外を覗いた。

 

 

「シュウウ・・・」

 

 

エンジンの過熱音以外に目立った音はなく、敵の姿も消えていた。

それが分かった瞬間、体が一気に軽くなった。

 

 

「あ、あはは・・・生きてる、私生きてる・・・・あ、あなた大丈夫?!しっかり!」

 

「う、う゛」

 

「今血を止めて・・・・っ」

 

「ガタ」

 

「だ、だれ!?」

 

「ま、待って僕だよグースだよ!」

 

「はぁ、あぁもう声を、かけなさい!近づくときは・・・・」

 

「ご、ごめん」

 

 

背後から忍び寄る誰かに心臓が飛び出しそうな程に驚いたけど、敵じゃなかったので大事には至らなかった。

グースは貧相な拳銃を片手にびくびくしていた。

 

 

「手を貸してグース、この人の止血をするから」

 

「わ、分かった・・・・よし」

 

「キュ」

 

「何してるの?」

 

「縛って圧迫しているんだ、こうすればずっと押さえておく必要がないから」

 

「あ、あぁ・・・・頭いいわね」

 

 

激戦の終わりだから頭が上手く回らないけれどグースがやってる事がとても賢いやり方だとすぐに理解できた。

これじゃあ怪我人にも協力させて三人がかり止血をしようとした私達が馬鹿みたいに思える、実際馬鹿なのだろう。

いやでも・・・・走行中の車で縛る動作が上手に出来るか分からないから一概には言えないのかもしれない。

 

 

「よし・・・これで後は傷口を抑えて・・・・」

 

「ね、ねえ・・・・隊長は?」

 

「あ、無事だよ、ところでシャルは・・・?」

 

「シャルは・・・そっちにいないの?」

 

「来てないよ、え・・・・」

 

「シャル、シャル・・・・あ、え・・・そんな、いや、え・・・」

 

 

慌てて立ち上がって荷台から降りる。

右を見ても左を見ても姿はない、あるのは木に突っ込んで仄かに煙を立ち昇らせている敵のヘンテコな車だけだった。

 

 

「ヴォアナさん、無事でしたか」

 

「隊長、シャルが・・・た、隊長そのケガ・・・!?」

 

 

いなくなったシャルを探していたら隊長はもう車から降りていたようで地面に座ってぐったりしていた。

半身が夥しく赤色に染まっており、明らかに重症に見えた。

気力なく座り込んでうとうとしている点もその考えに拍車をかけた。

 

 

「私は大丈夫です。怪我には慣れてますから、血も止まりましたし・・・・」

 

「で、でも大丈夫じゃ・・・・」

 

「いや本当に大丈夫です。ただ・・・体の中がまだぐちゃぐちゃで治りきってないので動くと痛いんですよ、この上なく」

 

「そう、なの・・・?」

 

「はい、アリンシャスお姉ちゃん・・・ああ、助けた人は大丈夫ですか?」

 

「え、ええ、止血にも成功した・・・あ、しゃ、シャルがいないの・・・ッ!」

 

「分かっています、身を挺して敵のアエロサンに飛び込んだ所までは見たんですけど・・・」

 

「て、敵の車に飛び込んだ!?」

 

「はい・・・轍を辿って歩いて・・・10分ぐらいだと思います。」

 

「す、すぐに助けに行くわ!あ、でも隊長は動けないし・・・・・」

 

「・・・・・ごめんなさい、肝心な所で・・・」

 

「ッ、わ、私一人でも行く!グース、ここで隊長とけが人を守りなさい!」

 

「あ、わ、分かったよ!」

 

「ヴォアナさん・・・・」

 

「止めても無駄よ隊長、私は行くわ」

 

「・・・・・気を付けて」

 

「ええ、ええ・・・すぐにシャルを連れて戻って来るから、その間に怪我を直してエンジンかけておきなさい!」

 

「了解・・・・っ、あはは、手厳しい、傷を治すのは・・・・っくぅ・・・ぅうう、ああ、痛ったぁ・・・もぅ・・・」

 

 

荷台に放り投げていたライフルを手に取る。

コッキングレバーを引いて中身を確認する。

先程の車に何発も発射したせいで装弾数が心許なかったのでクリップの半分ほどの弾を押し込んで薬室を閉鎖する。

準備が出来たのでタイヤ痕を辿って走ってきた道を遡った。

 

 




乗り物に飛び移って乗っている人を引き出すのは怪力キャラ達のテンプレ行動ですね。
作者は書いててガンマ線を浴びる緑の人を思い出しました。
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