戦争が急に終わったせいで無職になった元兵士の女の子が路頭に迷ってしまった話   作:エルカス

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感謝っ・・・・圧倒的感謝・・・・!!誤字報告本当に助かります。


79血と肉のぶつかり合い

最先鋒を務めた私達は奇襲性の担保の為に敢えて十人数で前進をしていた。

なので後詰の本隊よりは人の数が少なかった。

それを頼りないと表現するのかは一考の余地があるけれど、とにかく今は目の前の惨状に震える他ない。

 

 

「畜生ォ、畜生ォ・・・・あがっ!?」

 

「いやぁあああ!!!あ――――――」

 

「あ、あははは、あはははは!!」

 

 

味方の第二陣が突撃を開始する、私達の時と同じく次々とひき肉にされていく様をここからただ眺めることになる。

ごめんなさい。私達に勇気が足りないから、考えとか力が足りなかったから、死なせた。

罵倒する言葉、悲鳴、気が触れた笑い声が頭にいつまでも私の頭に響く、死者が発する怨嗟の言霊だ。

 

 

「50・・・・52・・・」

 

 

中隊長は必死に数を数える、それは敵の機関銃に倒れずに地面が盛り上がって出来た死角に到達できた人の数だ。

声を上げて走り始めた本隊の人は200人ぐらいいたというのに、殆どが道中で肉塊と化した。

 

 

「そっちの中隊長は!中隊長は何処だ!」

 

「知らねえよ!とっくに死んじまったよ、知るかよバカァ!あああああ畜生、ゴミみたいに殺しやがって、畜生、畜生ォオオ!!」

 

「なら俺達に合流しろ!俺が合図したら・・・突撃をするんだ、敵へ!」

 

「嫌だよ!何でだよ!」

 

「死にたくない、死にたくない!」

 

「このままここで怯えていたらまた次の奴らが馬鹿みたいに殺される!俺達が塹壕に切り込んで敵の防衛陣地を一刻も早く破壊しないといけないんだ!」

 

「知るかよぉ!知らねえよそんなことぉ・・・・」

 

「このままじゃ負ける!全部奪われる!だから頼む、言うとおりにしてくれ!」

 

 

伏せたまま大声で説得をしているけれど皆は変わらず地面にぴったりくっついて顔をあげる人は少ない。

何か運命のイタズラで敵の銃が都合よく故障したりしないか祈るけれど、今も尚、鳴りやむ事無く稼働し続けている。

 

 

「ッ・・・3分後に味方の第三波が突撃を始める、それに合わせて俺達も前に進むんだ!」

 

「ぅうう・・・・!!」

 

「分かったか!?分かったなら返事をしろ馬鹿共!」

 

「っわ、分かりました中隊長!了解・・・・です・・・・!」

 

「りょ、りょ・・・・っひぃ・・い、いやだぁ・・・・いやだよぉ・・・!」

 

「み、皆さん良いですか!三分後の突撃です、それに、それに合わせるんです!」

 

「無理よぉ・・・無理なのよぉこんなの、出来っこないぃ・・・・」

 

「無理じゃなくてやるんです!ダルマン君、起きてください、顔をあげて!良いですか!?」

 

「嫌だ嫌だ!やっぱり僕には無理だ、こんな場所なんか無理だ、怖いよぉ、怖いよ隊長・・・僕死にたくない・・・・!」

 

 

ヴォアナさんは顔こそ上げているけど爆音が鳴るたびに震えて顔が泥とか血とか涙でぐちゃぐちゃになっている。

いつも強気なのに弱音を吐いて幼子のように縮こまっている、・・・・いや、幼子なのだ、忘れがちだけどこの三人はまだ子供だ。

ダルマン君はもうすっかり地面に密着して顔をあげようとしていない。

 

 

「シャルロット君!」

 

「わ、分かっている隊長、付いて行く、付いて行くよ俺は・・・やるしかないんだ」

 

「よし、大丈夫そう・・・はぁ、あ・・・うぅ・・・・はぁ・・・・あと2分・・・っ」

 

「武器を持て!落とした奴は後ろから付いてこい!死んだ仲間の武器を取って進め、あと2分だ・・・・!」

 

「ヒュウウ―――ボン!」

 

「ああああ!?」

 

「ぐ、あああ・・・・ああ腕があぁ、俺の腕がぁ!!」

 

「どこから、何処から狙われてる!?ここも安全じゃない!」

 

「おい馬鹿迂闊に動くな!」

 

「もう沢山だこんな所、俺は逃げ・・・・・・・ア、・・・ぅ」

 

 

今まで安全だった筈のこの安全地帯で誰かが殺される。

爆発だ、手榴弾ではない、射線も通っていない、安全なはずなのに。

 

 

「ヒュウウ―――ボン!」

 

「うわああ!?まただ、またこれだぁ!」

 

「俺達皆死んじまうよぉおお!」

 

 

風を切る音の後の爆発。

頻度は機関銃よりは少ないけど加害範囲は広い、精度はないように思う。

だけどその攻撃の正体は分からない。

 

 

「ヒュウウ――――ボン!」

 

「も、もう沢山だ!」

 

「こんな場所もう嫌よぉ!」

 

「まだ突撃の時間じゃないぞ、おい戻れ!逃げ戻っても死ぬだけだぞ!!」

 

 

見えざる脅威に晒され、耐え切れずに逃げ出す人が何人も。

今動いても機関銃の餌食にされるだけだ、でも四肢が爆散する恐怖と板挟みにされればその行動を愚かとこき下ろす事は出来ない。

一人、また一人と爆散して死ぬか、逃げ出して射殺されるかの光景は見るに堪えず、私は夜の癖に明るい空を見て息を整えようとした。

 

 

「ヒュウウ―――」

 

「あ、」

 

 

撃ちあがった照明弾が照らすのは何も私達だけではない、空に弧を描く弾頭すらもその姿を露わにした。

それは曲射のように撃ちだされており、丁度私達の潜む死角に落下して来た。

 

 

「私達、迫撃砲に撃たれていた・・・・・」

 

 

 

 

「ポン」「ポン」「ポン」

 

「撃ち続けろ!死角に隠れたクソ兵士を爆殺しろ!」

 

 

第14師団が構築した塹壕、その前面は機関銃陣地が張り巡らされており馬鹿正直に前から突撃して来る敵を肉塊に加工していた。

布陣をした際に彼らは当然、敵がどのように攻めて来るかの検討をつけ、可能な限りの遮蔽物を排除し射撃視界の確保に努めた。

だが毎日の積雪と、どうにもできない自然の障害物によって必然的に遮蔽は出来上がってしまう。

遮蔽に隠れた敵を安全に排除するには塹壕の100m近く後方に設けられたスペースに布陣している迫撃砲部隊の出番である。

 

 

「次弾の装填急げ!」

 

「今やってる、あ・・・っ」

 

「危ないだろ!落とすな!」

 

 

7つの小型投射筒が設置され20人近くが慌ただしく発射作業に従事していた。

構造が単純で小型故に多少破壊力が物足りないものの、取り回しの容易さが確保され6秒に1発撃ちだされるその連射性は火力としては十分だった。

 

 

「狙いが狂っているぞ!」

 

「本体は動かしてねえよ!」

 

「排熱で下の足場の雪が溶けているんだ!クソ!」

 

 

しかし環境のせいで彼らは思わぬ問題に直面する。

彼らの使っている迫撃砲は発射時、弾頭を撃ちだす衝撃は真下に逃げる構造だった為に、短時間の連射は支えとなっている雪を溶かして投射筒の狙いを狂わせた。

急ぎ修正をするが、既に温まった地面の雪は容易に溶け、迫撃砲の照準を狂わせ続ける。

厳冬期での使用経験の乏しさが招いた初歩的なミスだった。

 

 

「射撃位置を変えるぞ!装填手は今のうちに予備の弾薬箱を持ってこい!」

 

「了解です!」

 

 

隊長格の指示で一時射撃を中断し、地面の安定した場所に迫撃砲の再設置を試みる。

その間に欠乏気味の弾頭の補充の為に装填手は後方の弾薬貯蔵庫に走る。

そしてそれとすれ違うように後方に待機していた予備兵力がやってくる。

 

 

「こっちに手伝いはいるか!」

 

「いらん!前線に行って機関銃組を手伝え、さっさと行け!」

 

「りょ、了解だ!」

 

 

塹壕戦は基本的に兵隊全員が最前線で今か今かと待機している訳ではない。

半分以上が後方の塹壕、ないしはちゃんとした地面の上で待機をしている。

彼らは敵の襲撃報告を受けて急ぎ展開している後方の待機組だった。

迫撃砲部隊は、彼らが前線に到着し展開が完了したら戦いはさらにこちらに有利に傾くだろうと希望を抱いていたところ・・・・

 

 

「ピー!ピー!」

 

 

甲高く突撃笛が鳴る。

それは彼らも良く知る、歩兵の突撃の合図に使う一斉突撃を号令する笛だった。

訓練で幾度と聞き、少し大きな暴動でも暴徒を鎮圧する際にそれを号令に突撃した記憶を彼らは思い起こす。

そして不安に駆られる。

 

 

「て、敵が来るぞ、急げ!」

 

「ああ分かってる!」

 

 

後方に待機していた兵隊たちは急ぎ人一人分しか通れない狭い塹壕の通路をひた走る。

最初こそ威勢よく音を響かせる機関銃の音よってにまだ味方は健在だと確信していたが、やがてその銃声は沈静化し、短い発砲音が増加し、悲鳴の声量が勝り始めた。

 

 

 

「うわぁあああ!?」

 

「よくも皆をッこの人殺し!」

 

「あ、が!?」

 

「な、舐めるなクソ兵士ぃいい!」

 

「敵の機関銃陣地を制圧しろ!勢いを維持するんだ、俺達は勝てる!」

 

「「「うぉおおおお!!!」」」

 

「何でだよ!何でだよ!こっちは100人もいるのにどうして20人ぽっちに―――あああああ!?ア・・・ガ・・・」

 

 

狭い塹壕ではライフルの長さでは取り回しが難しく、その性能を十全に発揮できないと直感で分かった。

だから撃つよりも先に敵の懐に走り込んでこの手で仕留める方が理にかなっていた。

一つの通路に三人も並んでいたから一人に全力でぶつかって持ち上げてそのままその人を盾にして二人目、三人目をなぎ倒した。

 

 

「こ、の!」

 

「ああ!ああ!」

 

「あ、ぐ、お・・・・やめ、あ、いや・・・・ァ」

 

 

真っ先に動いた二人目の人に馬乗りになって、脱げた一人目の鉄兜を掴んで顔面に叩きつける。

1発目でその人の鼻が折れて、2発目で体が痙攣し始めて、3発目で眼球が破裂する。

 

 

「ぐ、痛っ・・・・ッ!?お、お前よくも!」

 

「ぬ、あぁああああ!!!」

 

「あああああ!!!」

 

 

人を殴り殺した感触に動揺している内に、三人目が起き上がって私の所業に怒り、ぐちゃぐちゃに殴れた仲間の仇を取るべく応戦しようと傍にあったシャベルを持つ。

間違いなく私の顔を捉えたその殴打を手で受け止めるけど痛みは誤魔化しようがない。

じんわり痛む腕を顧みずに私は持っていた鉄兜をその人に投げつける。

 

 

「クソ兵士がぁ・・・!!あ、・・・があああ、俺の顔があああ!!!」

 

「ッ・・・・はぁ、はぁ・・・っつぅ・・・・」

 

 

硬いものが途轍もないスピードで飛来したので三人目の人は顔を抑え込んで蹲ってのたうち回る。

私は私が殺した二人目の人が落とした拳銃を拾う、そして引き金を引く。

 

 

「バン」

 

「――――――――――――」

 

「はぁ・・・・はぁ・・・・」

 

「チャッキ、フリンス、ゲンダー!敵は仕留めたか、敵は・・・・」

 

「「ッ!?」」

 

 

遅れてやってきた敵は殺された仲間を見て一瞬、動きが止まった。

急に敵が現れた恐怖で私も動きが止まる、一瞬の静粛の内にお互いが取る行動は同じだった。

私は手に持った拳銃を構え、敵は上に向けていた拳銃を私に向け、お互いに引き金を引く。

 

 

「「バンバンバン!!」」

 

 

自分の体に命中する銃弾は服の繊維とかを小さく粉の様にまき散らす。

対して敵は血飛沫をまき散らし命中箇所を赤く濡らす。

 

 

「お、・・・ご、・・・ごおぉお・・・ぁ」

 

「あ、いっ痛・・・ぐぅ・・・」

 

 

撃たれた衝撃で敵は塹壕の壁に寄りかかり片膝をついて項垂れる、そして耐え切れなくなり口から血を噴き出す。

事切れて地面に伏せる、私達とは違う普通の人間。

私は胸を刺す痛みに悶えながら荒く呼吸をして顔をあげる、敵の弾丸は服に穴を開けて皮膚を抉っただけで大したダメージじゃない、大した・・・っ痛。

 

 

「まだ・・・痛っ・・・・皆の為に、頑張らないと・・・ヴォアナさ・・・・あれ・・・・あはは・・・・一人じゃん、私・・・」

 

 

直前の事なんてよく覚えていない。

合図の笛に合わせて起き上がってがむしゃらに走った。

退路は断たれ、進む事しか許されなかったのだから。

迷いは死に直結する、だから・・・。

 

 

「あは、・・・は・・・・はぁ・・・・よし、頑張れ私、・・・やるぞ、やり遂げるんだ」

 

 

私が殺した人達の武器を拝借する。

塹壕内に敵はまだ残っている。

そして平和の為に打ち倒す敵はまだまだ残っている。

私は止まる訳にはいかないんだ、今更。

 

 

「弾薬・・・・弾薬、どれがどれ・・・・」

 

 

急ぎ倒れた敵から弾薬を漁る。

拳銃なんて訓練では殆ど扱わなかったせいであまり知識がないのが不安だ。

威力が低くあの戦争では大して役に立たないと言われていたけど人同士の戦争だと全然役に立つ。

 

 

「急いで、急げ・・・・」

 

 

震える手でクリップに纏められていない単体の銃弾をかき集めて拳銃に装填する。

訓練の時は物珍しさで、偉い人が持つ象徴とも言える拳銃を触ってみたい気持ちもあったけど今はそんな憧れをこれっぽっちも感じない。

永遠に触る事なく惜しみ続けている方が遥かに良かったと思う。

6発あるシリンダーの内、空になった4つに弾丸を装填しようとした

 

 

「何これどうやって装填する・・・中に薬莢残ってるし・・・ッ!欠陥品・・・っ!」

 

 

この拳銃の弾倉であるシリンダーにどうにか弾丸を装填するためにこじ開けようとしたけど、開け方が分からなかったので仕方なく開けずに微妙に隙間がある横から装填をしようとした。

だけど弾丸を突っ込んでも何かに引っかかるので指で探ってみたら薬莢が中に残っていた。

一刻も争う事態なのに無駄に手間がかかる機構に口が悪くなった。




塹壕戦に興味を持ったニキネキはBF1プロローグをプレイしよう!
それでも物足りないトレンチマニアと化したら「ヴェルダン」「イゾンツォ」をプレイしよう!
戦場は君を必要としている!(キッチナー並感)

人殺しNGのピュアニキネキはバリアントハートもお勧めだゾ!
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