戦争が急に終わったせいで無職になった元兵士の女の子が路頭に迷ってしまった話   作:エルカス

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世間は今日明日から春休みらしいのでそんな読者ニキネキの為に毎日投稿をしたいと思います。
ストックが枯渇したら週2に戻します


81死者の尊厳、生者の業

「白、赤の順番だ。間違えるな」

 

「分かっていますよ、でもこんな事して本当に・・・・」

 

 

真夜中、わざわざ光源になる全ての物を限りなく減らし、光量のあるライトを照らし続ける10組程度の集団がいる。

彼らは空にライトを向けており照射機の前の前に色のついた透過性のある板を挟み込んでいた。

赤色と白色がありそれを交互に入れ替えたりライトのスイッチを切る事を繰り返していた。

 

 

「何だ?私達を疑っているのか?」

 

「いや・・・協力者への合図って・・・そこら辺に人なんて見当たらないし・・・・」

 

「信じよう、彼らなしでは我々は戦えないのだから、一蓮托生だ」

 

「議長がそう言うのなら・・・・」

 

 

厚着をしたローン・パーペンも合図を送り続けられる姿を見守っている。

半信半疑で照射を続けるアルデアルの住人を見てアズトナーシャは終始顔をニヤニヤさせていた。

時折、袖の下にある時計を確認しており、ある時を過ぎたら彼女は空を注意深く観察し始めた。

 

 

「・・・・・・・お、来たぞ、灯はもう消さなくて良い、色付き札を交互に差し替えろ」

 

「同志アズトナーシャ・・・一体何が来たというんですか?」

 

「聞こえないか?耳を澄ましてみろ」

 

「・・・・・・―――――」

 

「―――――ブ、・・・オ・・・・・ブォ・・・・ブォオン・・・・ブォオオオン」

 

「この音は・・・・」

 

「ぎ、議長何ですかこのお、音は・・・・誰も辺りにいないのに音だけが・・・・!」

 

「こ、怖いです何だか・・・・」

 

「皆慌てるな、これは・・・・飛行機の音だ」

 

 

 

 

「あ、右に5度です、も、もうちょっと!ああ行きすぎです!左に4度修正してください!」

 

「おい観測係ィ!もっと的確な指示は出来んのか!」

 

「この上なく的確な指示ですよ!?」

 

 

機首の真下にある空間で、地面までは千メートルある為、観測員は全力で目を凝らして光を捉え続けていた。

事前に示し合わせた通りの点灯色が確認出来、それが積み荷を届ける友軍であると分かる。

正確にその光源に向かおうとしているが機長への指示が上手く通らずに機体は左右に振れている。

 

 

「何度とかよく分からねえんだよ俺は!」

 

「革命のエースパイロットですよね機長!?」

 

「俺は感覚で飛んでんだよ!荷物係ィ、あと1分ぐらいでハッチ開けるぞ・・・ヒック・・・・荷物の最終点検をしろ!」

 

「了解であります!」

 

「こちら渡り鳥04、渡り鳥04、受領地点を発見、座標は――――――――――」

 

 

通信士が他の輸送機に向けた無線通信をする中、副操縦士かと思われた男は荷物係として急ぎ後ろの積み荷があるスペースに急ぐ。

積載量やよく分からない航空力学の観点から酷く狭い作りの通路を器用に通り抜ける。

 

 

「密閉よし!落下傘装着よし!自動展開処理・・・・よし!固定装置解除・・・・・よし!全て問題ありません!」

 

「よぉしよし!おい観測係!落とす時が来たら合図を送れ!俺が栄えあるハッチ開閉レバーを回す役割を引き受けてやろう」

 

「間違えて機首窓の開閉レバーを回さないでくださいよ!」

 

「っへへ!俺を誰だと思ってる、ヒック・・・・さっきは間違えてこっちを回してハッチが開いたから・・・・こっちだな!ぐへへ!」

 

「機長そっちじゃないです」

 

「お、おっとといけねえいけねえ・・・!」

 

「機長ぉお!!」

 

「よし!抜かりはない・・・抜かりはないぞぉ!」

 

「開閉まで5・・・・4・・・・3・・・・あ、もう開閉してください急いでください!」

 

「まだカウント3じゃねえか?」

 

「いいからやってください!通り過ぎちゃいますよ!」

 

「おうおうおう・・・・ぐんぐんに回すぜ!」

 

 

酔った勢いでレバーを高速で回す機長。

機体後方のハッチが開かれ外の風が機内に吹き込む。

 

 

「ガコ」

 

「おっとと・・・開けたらお前の機嫌も変わるんだな、手籠めにしてやるぜどんな(機体)だろうとな・・・・」

 

 

ハッチにより一瞬傾いた機体はすぐに水平に戻される。

積み荷を見張っていた積み荷係兼副操縦士は滑るように夜闇に身を投じていく積み荷を見守る。

四角く纏められたそれは萎んだ気球の様に上に布切れを伴っており、地面に近づけば展開する仕掛けをしている。

1000mも遥か下に落ち行く積み荷を最後まで見守る事が出来ない彼らはただ成功している事を祈る事しか出来ない。

 

 

「同志に届け・・・・・・・ッ!」

 

「う、うぉおお・・・・何だあれ・・・・空を飛ぶ飛行機も初めて見るが・・・・・す、すっげえ・・・・」

 

「大きいダンデライオンみたいでしょ」

 

「ダンデライオン・・・・・何だそれ?」

 

「え、ダンデライオンを知らないのか!?」

 

「花の一種で種子を風で飛ばす植物だ、図鑑で見た事はあるが、こんな感じなのか」

 

「へぇ~議長物知りですね・・・・」

 

「私も知ってたのに・・・・」

 

「あはは、同志アズトナーシャが拗ねていますよ」

 

「あ、え~っと同志も物知りだなぁ・・・!凄い、あっぱれ!ダンデライオン(たんぽぽ)博士!」

 

「う、うるさいなぁ!もうさっさと回収に行くぞ!落ちた場所をよく覚えていないと夜通し探し回る羽目になるぞお前達」

 

「うげぇ・・・」

 

 

物資の投下、空中からのそれはエアドロップと呼ばれた。

まだこの段階では黎明期であった為、技術やノウハウも粗雑で投下された物資が破損する事も珍しくなかった。

 

 

「あぁ!?地面に激突して荷物がそこら中に散乱してる!?」

 

「かき集めましょう、破片の一個が兵士の弾丸となる事があるのならやるべきです」

 

「とほほ・・・・違う意味で夜通しだなこれは・・・・普通の人の議長を差し置いて出遅れる訳にはいかない、やるぞおお!!」

 

 

黒海からの輸送ルートが封鎖された為の代替案としての空中投下だったがその効果は船舶輸送で得られた筈の効果に負けず劣らず絶大だった。

アルデアルの反乱軍に多くの装備類と物資を届ける事に成功し、彼らの反乱強度が万全なる物に整いつつあった。

反乱は間違いなく成功するとアズトナーシャは確信した。

だが、戦って勝つ上での勝利と反乱の勝利は似て非なる物だと理解していた人物多くはなかった。

そして理解していない人は多いと把握している者も同時に少なかった。

 

多くの人間は戦って勝てばそれだけで良いと浅はかな気持ちで戦争に身を投じるのだった。

 

 

 

 

 

「嫌よ嫌よ絶対に無理!私には出来っこない!」

 

「えぇ・・・じゃあシャルロット君お願いできますか?」

 

「・・・・こんな形で女の子に素肌に触れたくなかった」

 

「ごめんない、自分じゃ上手く出来ないから」

 

 

姿が見えなかったけど三人とも生きていた、ダルマン君、シャルロット君、ヴォアナさん。

早い事にヴォアナさんはすっかりいつもの調子に戻っていたけどダルマン君はまだ怯えていた。

ダルマン君とヴォアナさんは怖くて突撃には同行していなかったようで、シャルロット君は途中ですっ転んで私を見失ったらしい。

その後は何とか敵の塹壕に飛び入って戦っていたらしいけど前に進む事ばかり意識していたせいで合流する事は出来なかった。

 

 

「グチャ」

 

「う、・・・・どう?」

 

「な、ないです・・・・あ、これか・・・」

 

「痛っ・・・?!」

 

「ご、ごめんなさい・・・慎重に引き抜きます」

 

「よろしく・・・・お願いします」

 

 

もう多分着れないのでボロボロの服の袖を咥えて痛みに耐える。

本当はちゃんと治療できる人にやって貰うのが最善だけど、怪我をした人が多すぎてお医者さんの手がこっちまで回ってこない。

だからお腹にすっかり刺さっている銃剣、ナイフを自分で抜こうと思ったけど自分ではやりにくかった、間違えて自分の体のモノを引き抜きかけた時は精神的に参った。

 

 

「っ・・・痛くないですか?」

 

「ものふ(す)ごく・・・・ッっくぅ・・・・」

 

「ひぇえ・・・ッ」

 

 

ヴォアナさんに取り除いて貰おうとしたけど、どうやら人の体の中に手を入れるのは難しかったようで全力で断られた。

怖がっていた割には今一瞬たりとも目を逸らさず私の傷の方を見ているけれど・・・瞬きを忘れる程の怖いもの見たさならやってくれともよかったのに。

 

 

「・・・・よ、よし取り除いた」

 

「ありがとうございます、はぁはぁ・・・・ああ・・・ではもう一個の方を・・・・」

 

「了解・・・」

 

 

失神をした経験はないけれど恐らくする時はこのような感触なのだろうという体験をした。

緊張とか怖さとかで頭が回らない時にする怪我はあんまり痛くない事が分かった、いやもちろん十分すぎるぐらいに痛いのだけれど。

でも完全にそこに集中できる環境だったら痛覚は最も過敏になる、何かと治療前に注射を打つ意義がやっと分かった。

かなりの痛みと引き換えに二個目も何とか取り出して貰えた。

 

 

「ありがとうございます・・・・・さあ皆さん、仕事に取り掛かりましょう」

 

「隊長はストイックね・・・・な、何をするのこれから?」

 

「私達の仲間・・・・いえ、戦争で命を落とした人を弔うんです、敵も味方も関係なく」

 

「・・・・・多そうだな、仕事」

 

 

シャルロット君は付近を見渡す。

塹壕を制圧した後は敵の本陣への攻撃で、こちらは・・・・塹壕の機関銃に向かって走るよりはずっと簡単だった。

もう既に先に突入した味方によって敵が壊滅していたのもあるし、大した問題なく敵を排除できた。

 

 

「グース行くわよ、・・・・どうしたのグース?まだ怯えてるの、敵はもういないわよ」

 

「ッ・・・・僕・・・・僕」

 

「しっかりしなさい、・・・・私が言えた口じゃないけど、怖いのは分かる、でもやるべき事は最低限やりましょう」

 

「・・・・・・・・そうだね、そうだよね」

 

 

一人の遺体を二人がかりで運ぶ。

腕力的には一人で二人も三人も運べるけど、それだと遺体に傷が付くし最悪壊れる。

だからこうして丁寧に運んであげないといけない。

 

 

「っへへ、こいつ金歯なんかあるぜ」

 

「引き抜け引き抜け!戦利品だ!」

 

「何やってんのアンタ達!退きなさい!」

 

「お、何だお前、やらねえぞ、この死体の金歯は俺が貰うんだ」

 

「はぁ!?・・・・・卑しすぎでしょ、口の中まで確認するの・・・・」

 

「るせえなぁ!あっち行ってろ、これは敵だからなぁ好きにしても、どうしても良いんだよ!」

 

「・・・・・・ッ」

 

 

登ったばかりだと思っていた朝日が真上に来て昼間になってようやく塹壕の一区画が終わった。

この分だとまだ随分とかかりそうな予感がする。

どんどん後詰めの人達も来ているし、治療が終わった人にも手伝って貰うかと思った所で、私達は死体に群がるハイエナと遭遇した。

 

 

「やめてください、あなた達」

 

「あ、何だよくそアマ!アマが二人に増えやがって、どうして金は増えねえのに煩わしいのは増えるんだよ!」

 

「お金お金って、そんなにお金が大事なんですか?もう少し他の誰かの事を考えてあげれないんですか?」

 

「分け前が欲しいのか?『私達も頑張りまちゅたぁ』ってか、失せろってんだよ、ッペ!」

 

「話し通じてないわよ隊長・・・・」

 

「・・・・・もういいです、勝手にするならこっちも勝手にします」

 

「あ、おいコラ勝手に触るんじゃねえ、俺んのだぞ!」

 

 

無理に遺体を持って行こうとする私の肩にハイエナが手を乗せる。

わざとらしく強く握ってこちらを威圧する。

確かに痛いけれど、この痛みに怯えて退散するとでも思っているのだろうか。

 

 

「怪我ァしたくなかったら、とっとと失せろ」

 

「人を大切に出来ない人は、許せません。私はあなたに負けるかもしれませんが一秒でも長く争う事の馬鹿らしさを味わわせる為に無駄に噛みつきます」

 

「あ?」

 

「戦うなら相手になってやる、かかってこい、という意味です」

 

「・・・・・」

 

「「「・・・・・」」」

 

「おいもう行こうぜ、金歯頂いたしな、あばよクソアマ共、せいぜい汗水たらして俺達英雄戦士の後片付けをしてくれよな」

 

「ハァ!?何よどうせ戦えもせず怯えて―――――もごご!?」

 

 

関わるのが面倒だと思ったのか、それともこの遺体を漁り終えたのか、彼らが引いた。

捨て台詞が癪に障りそうな文言なのでヴォアナさんの口を早々に塞ぎに行って正解だった、噛みつくという読みは当たった。

 

 

「もごぉ・・・隊長う!あんな事言われたままでいいの!」

 

「争うのはもう十分ですから、・・・・良いじゃないですか今は」

 

「っ・・・・・」

 

「この人、頭が吹き飛んでる・・・識別札もないし誰か分からない・・・」

 

「誰であっても、・・・・・名前は分からなくとも、あなたの行いは不滅です」

 

 

騒乱のアルデアルにようやく静けさが訪れる。

始まりは移住民の絶望と不満によって満ちていた。

やがて悪感情は消えてゆき、熱気と活気がこの山々を包んだ。

そして凶暴で危険な炎に晒され、ようやくそれが立ち消えた。

これで終わると考えるのは楽観視が過ぎるけれど、喉元に突き立てられたナイフは弾かれ、私達は私達が生きる権利を掴み取った。

アルデアルの戦いは私達の勝利で終わったのだ。

 

 

 

 

「しゅ、主席宰相閣下・・・・」

 

「・・・・・」

 

 

今日も今日とて報告者はウォーロック首相に悪い知らせを持ってきていた。

だがその内容が内容であるので報告者は体からスコールの雨の如く激しく汗を垂らしていた。

いつもはある程度取り繕っていた報告者だが、今日に限っては盲目だろうと挙動不審さが伝わってくる狼狽ぶりだった。

ウォーロックは顔色を変えずに報告者を凝視する。

 

 

「何かな?」

 

「あ、アルデアル地域に派遣していた・・・・第14師団が・・・・殲滅されました」

 

「ほぅ、殲滅・・・・殲滅とは?」

 

「ぐ、軍隊では・・・・兵員の欠乏が30%近くになると全滅と表現し、しますが・・・・半分程度の損耗で壊滅・・・・殲滅は・・・・あ・・・・あぁ」

 

「7割ぐらいか?」

 

「・・・・・・10割かそれに近い場合を指し、ます・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

 

執務室は沈黙する。

ウォーロックは無言で立ちすくむ報告者から報告書を奪い取りその中身を確認する。

羅列されている将兵の名前の横には決まって戦死か行方不明かの表記がされている。

 

 

「前回第14師団の責任者と連絡をした際には万事順調と報告を受けたのだが?」

 

「・・・・・・ですが、間違いようのない、じ、事実です、これは・・・・閣下っ」

 

「・・・・・・・」

 

「も、申し訳ありません!」

 

「ああいやいや、私は別にこの報告の真偽を疑っている訳ではない、こうなった原因を聞きたいのだ、我々には何が足りなかったのかと」

 

「・・・・は、敗走原因は未だちょ、調査中ですが、主に・・・・冬季装備への更新の遅れと、師団が山岳戦闘に不慣れだったと・・・・考えられます」

 

「なるほど、成程」

 

 

終始怒りもせず冷静に質問を投げかけて相槌を打つ首相に報告者は安堵しかけたが、寧ろいつもと比べて態度が異質なのでやはり緊張し続ける事となった。

一度報告書を流し読みした首相はもう一度最初に立ち戻って熟読を始めた。

この待機時間は10数分程度だったが報告者にとっては拷問に等しいひと時だった。

 

 

「この反乱鎮圧を推し進め抽出する戦力を計画した将軍達には追って罰を受けて貰おう」

 

「りょ、了解であります主席宰相閣下」

 

「さて目下の問題はこの愚かな反乱軍共だ、奴らの鎮圧は必須事項だ」

 

「閣下・・・・・・もう既にわが軍には時間が・・・・」

 

「ああ食料の事か?」

 

「はい・・・・・・」

 

「それなら心配は要らない!我が優秀な閣僚が量にして100万トン分を確保した!」

 

「は?」

 

「兵糧に困る事は当面ない!急ぐ必要はない・・・・着実に敵を滅する事を目指せばいい、私は急ぎ過ぎていたのだ、忘れていたよ、我々は一人ではない事を」

 

「は・・・・は?」

 

「今度の反乱鎮圧計画の策定は私も出席しよう、すぐに新しい将軍達との話し合いの時間を設けなければ、おっとそうだった今は報告を受ける時間だ、他には?」

 

「・・・・・ぐ、軍の備蓄食料が残り3日分しかない事と、我が方の左翼側では食糧不足によりブルガリア国の民間人への略奪行為が横行して秩序が崩壊しているとの・・・・」

 

「些事だ、もうすぐ食料は届く。ちょうどいいではないか、愚かなブルガリア国の豚共には我々の苦しみを引き受けてもらえるのは丁度いい、前線の兵隊の息抜きもなるだろうな!」

 

「・・・・・・・・・・・問題は、ないと?」

 

「寧ろあるのか?」

 

「・・・・・いえ、・・・・報告は、以上です」

 

「では君も君の仕事に戻りたまえ」

 

「は、はっ!・・・・失礼しました、主席宰相閣下」

 

 

突然何処から食料が湧いてきたのか理解できない報告者は思わず詳細を問いただそうとしたが、下手な事をして怒りを買いたくなかったので大人しく話を流した。

報告者は安堵の息を吐き、次の報告が来ないように、今日が永遠に繰り返される事を祈りながらまた明日を迎える事となった。

所変わって執務室、報告者からの報告書を横に退けたウォーロックは代わりに何倍もの厚みのある巨大な書類の束を嬉々として自分の目の前に持ってきた。

 

『当該国への借款規約』

 

と題された書類をウォーロックは開く。

そこに記載されているのはこの国の頂点に上り詰めた彼でさえも手にするのは難しい品々が載っていた。

最新の重火器、戦車、戦艦、使用用途がまるで分からない新時代の兵器。

貧しい家庭に生まれた子供が初めて格式あるレストランに招かれたように、彼は目を輝かせてメニュー表を吟味していた。

あれもいい、これもいいと。

食べきる事もまるで考えていない、払われる代金の事もまるで考えていない、そう言う意味では彼はこの上なく子供の様に無邪気だった。

 

 

「戦車、臆病者も鉄の箱に入れば多少は役に立つだろうか・・・石油は・・・・わが国には腐るほどあるな、他国の格安品に価格競争で負けて売れない物が倉庫に腐るほど、取りあえず1000両程の納入を検討して貰おうか」

 

 

結局その後、ブローカーによって戦車の納入数は300まで減らされてウォーロックは不機嫌になった。

その様はおもちゃを買って貰えなかった子供のようだった。

 

 

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