戦争が急に終わったせいで無職になった元兵士の女の子が路頭に迷ってしまった話   作:エルカス

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95初めての市街戦

南地区の避難場所は旧行政所で周りの建物よりは堅牢な作りをしている。

今は行政体制なんて崩壊して機能していないのでただ掃除と手入れが大変な目印と子供たちが言っていた。

行政所の入り口は廃材やトラックなどの急造バリケードに遮られており隙間から銃を持った住人が顔を覗かせていた。

 

 

「止まれ!止まらないと撃つぞ!」

 

「撃たないでください!味方です!」

 

「ここの住民以外は入れない!さっさとクソ政府軍隊と殺し合いでも何でもしに行け!」

 

「ええ言われずとも行きますよ!でもその前にやる事があるんです!」

 

「何だぁ!」

 

「ここが戦場になるかもしれませんから、皆さん北の方に避難してください!」

 

「はぁ!?もっと早く言えよそういう事は!」

 

「だから言ったんだろうが!敵は南から来るからこんな所にいるべきじゃないって!」

 

「知るかボケェ!ああったく、クソ!折角築いたバリケードが邪魔くさい障害物に早変わりだ!」

 

 

教会で遭遇した敵対予備軍のような人達かもしれないと少し構えていたけど純粋に安全を求めて避難している人達ばかりのようだった。

バリケードの向こうで方針違いの口論が始まっていた。

 

 

「喧嘩は後にして下さい!この障害物は退けるの手伝いますから早く避難を!」

 

「ああ分かったよ!ったく、おい!そっちは退けなくて良い!裏手の方が撤去が簡単だ!そっちに行って外の方から退けてくれ!」

 

「分かりました!」

 

 

トラックを持ち上げる気満々だったけどその必要はなく、裏手に回ったら廃材で雑に組んだバリケードしかなく大して撤去には手間取らなかった。

釘で打ちつけられた木製の板を千切って千切って引き裂けば簡単に撤去する事が出来た。

 

 

「皆移動だ、ここはじき危険になる!北の方に行くんだ!」

 

「そんな、ここには物資がたんまりあるってのに!」

 

「物より命が大事だろ!せっかく生きられる希望が出て来たのに粗末な事で死ぬな!」

 

「分かったよ畜生!でも出来るだけ持って行ってやる!」

 

中から出てくる人達は揃って大荷物で前後に何かを背負って両手には何かを引き下げて、熟練者は首からも何かをぶら下げて運んでいた。

何だか人間の底力を垣間見ているようで凄みを感じた。

 

「これで全員ですか!中にはもう誰も残っていませんね!」

 

「ああ!ここで戦うのは良いがあの家は壊すなよ、俺の家だからな!壊したら弁償代払えよ!」

 

「可能な限り努力します!壊れてもきっと敵の砲撃のせいでしょう!」

 

「上手な言い逃れだな!っは!じゃああばよ!」

 

 

最後まで指揮を執っていた人も退去して行政所はもぬけの空になる。

中途半端に食料や物資が残っているけど人はちゃんと全員退避している。

先程までがやがやとした声がしていたけど今は何処かに飛んでいく砲弾の風切り音しかしない。

 

 

「おいそこの!」

 

「っ・・・!」

 

「お前だお前!来い!」

 

 

重みのある声で叫ばれた為、構えてしまったけど普通に仲間だった。

しかもよく見たら立場的には上官だったので全速力で呼応して駆け寄った。

 

 

「来ました!」

 

「よし!どこの所属か知らんが暇なら俺達に合流しろ!」

 

「了解です!通訳要因ですから今は手が空いているので!」

 

「通訳係か!だがこれでも戦力はアップだ、些細だがな!」

 

「任務は何でしょうか小隊長!」

 

「出撃した偵察部隊から敵の情報が入って来た、主に街の南地区を目指して進撃しているらしいが東地区に回り込んでいる奴らも確認された!」

 

 

どうやら道端で会ったこの部隊の任務は側面に回り込んでくるであろう敵に対応するために急遽展開中のようだった。

通訳係に転属してから指揮系統がよく分からないけど、取りあえず上官なので命令に従い部隊に編入された。

 

 

「それでお前、名前は何て言う!」

 

「カフカです!」

 

「よしカフンカ!俺の事はヴォルス小隊長と呼べ!」

 

「了解です!それでどの辺りに布陣する予定ですか!」

 

「東地区の何とか工場だ、名前は知らねえ!地図に書いてある言葉が読めなかったからな!!そうだカフンカは通訳係だったから予備の地図を渡しておく!」

 

「ありがとうございます!」

 

 

独特な喋り方をする小隊長にこの街全体が記された地図を渡される、広げると四方1メートルもあるかなり大きな物で、折りたたんでもそこそこの厚みになった。

急ぎ胸ポケットにしまって前進する部隊に追随した。

周りには弾薬箱と弾薬ベルトを持てるだけ持ってひた走る人や、巨大な銃・・・固定兵器を背負って移動する仲間がいる。

戦争が激化するためにつれ私達は日常から遠ざかり軍隊色に染まってしまった気がした。

 

 

「前方に敵!前方に敵影ィイ!!」

 

「伏せろ!全員伏せろ!」

 

 

先行していた人の合図で小隊長達と一緒に砲撃で出来た穴の窪みに飛び込む。

前にいた人達は建物の中か、小さな路地に身を隠した。

早すぎる会敵に驚かざるを得ない、敵の動きが早すぎる気がする、前進していた人が市民と敵を間違えて認識したのではないかと疑う。

 

 

「畜生嘘吐け!まだ東地区の中心だぞ!敵の展開まで半時間ほどの猶予がある筈だ!」

 

「でも小隊長!目の前に敵――――――」

 

「―――ヴォォオン!」

 

「ファッツン!?クソ、身を隠せお前等!」

 

 

倒壊した建物を背にこちらとコンタクトを取っていた仲間が瓦礫越しに銃撃を受けた。

銃の発砲音とは思えない狂気的な音が響いた後、撃たれた仲間は倒れ込んだ。

完全に遮蔽があったのにも関わらず攻撃が貫通した事から、薄い障害物は遮蔽として機能しない事を意味した。

 

 

「あ、・・うぅ、あ、あれ・・・」

 

「すぐにその馬鹿を引っ込ませろ!」

 

「何ださっきの音は!じゅ、銃の音なのか!?」

 

「敵は何人いる!!報告しろ、ここらじゃ見えん!」

 

 

倒れ伏した仲間を傍にいた人が引っ込んで退避させる。

レンガ造りの家の陰に隠れていた人が慎重に通りの向こうにいる敵を確認しようと顔を覗かせる。

 

 

「て、敵は6、7・・・た、沢山だ!」

 

「ちゃんと数えろ!お前は数字を7までしか数えれんのか!」

 

「しゃ、車両から沢山降りて来てる!車両は5台あって後ろに何台もいる!1台から少なくとも7人は降りてい――――――――」

 

「パシュ」

 

 

勇敢にも顔を出して報告をしてくれた仲間の顔が陥没する。

目と鼻が抉られ撃たれた衝撃と大きく痙攣した後、ふらふらと立って・・・・倒れた。

 

 

「ブンダン!しっかりしろブンダン!」

 

「め、目が・・・割れてる・・・世界が、割れてる・・・あれ、よく見えない、報告、報告できない・・・・」

 

「スナイパーだ!どこから狙撃された!」

 

「し、しっかりしろ今傷の手当てをして―――――」

 

「パシュ!」

 

「――――――――――」

 

「あ、あれ、おいどうした・・・手当、してくれよ、・・・寝てんじゃねえよ・・・・目に水が入って、痛え・・・・痛え・・・」

 

 

顔を銃撃された人は辛うじて致命傷にはならなくて、すぐさま仲間に路地裏に引き込まれた。

だけどその直後、引き込んだ仲間の人も銃撃された。

 

 

「隠れてるのに何で撃たれるんだ!?」

 

「し、死にたくないよぉお!撃たないでえええ!!」

 

「ブンダン!どこから撃たれた!そこから敵は見えるか!敵は!」

 

 

小隊長は銃撃された地点に残留している・・・というか動けない人に銃撃手の位置を訪ねた。

顔を撃たれた人はその声を聞いて必死に周りを見渡す。

見渡してついに見つけて――――

 

 

「あ、・・・あ。・・・・横の建物です!建物に敵がいてう――――――」

 

「ババン!」

 

 

――――見つけてしまったからなのか、息の根を止められた。

 

 

「建物かァ!?建物だなぁ!全員建物を撃て!撃てええええ!!!」

 

「ブンダンの仇ぃいい!!」

 

「死に晒せクソ共がぁああ!!」

 

「「「バババババ―――――」」」

 

 

仲間を殺された怒りか、殺されるかもしれない焦燥感に突き動かされて部隊の殆どが通りの左右に広がる建物に銃撃を始めた。

間近で濃密な弾幕射撃音を聞いているせいで鼓膜が悲鳴を上げる。

建物という建物は土煙をあげて穴だらけになる。

窓は割れて補強で使われた板は吹き飛び一部壁も剥がれ落ちた。

 

 

「―――――――カラン、コロン」

 

「や、やったかぁ!?」

 

 

各々満足できる程に銃撃をしたのか射撃音は止んで自動で排出された薬莢が転がる音が聞こえる。

地面は金色の空薬莢塗れだ。

 

 

「よし!ファンスの分隊は右の建物に侵入して前進だ!俺の分隊は左の建物から制圧する!残った奴は通りだ!」

 

「了解した」「任されました」

 

 

敵の死体の一つも確認できないけれどそこに敵がいたと言われると制圧するように進撃をしなければいけない。

私が同行していた小隊長の分隊は左側の建物を制圧していく事になった。

 

 

「ダァンツとチャンリーは下から進め、俺と通訳係は二階から見ていく!」

 

「「了解しました」」

 

「先導しますヴォルス小隊長!」

 

「無理すんなよ!」

 

「お気遣いありがとうございます!」

 

 

慎重に制圧するのもいいけど、あれだけ濃密な弾幕の射撃を受けたのだから気の休まらぬ内に速攻をかけるのが最善と判断して足早に二階に駆け上がる。

扉と言う扉を蹴破って・・・蹴とばしてしまい誰かの家を破壊してしまう。

家中は先ほどの銃撃で壁が穴だらけで外の光が漏れていた。

 

 

「こちらの建物は二階異常なしです!」

 

「よし!ファアアンス!そっちはどうだぁああ!!」

 

「こっちの家もクリアです!小隊長顔は出さないでください!通りの向こう側に敵の車両が布陣して機関銃がこちらを見張っていますから!」

 

「それじゃあ通りの部隊が前進できないか!」

 

「向こうもこちらが睨みを聞かせている内は前進は不可能です!勝負の分かれ目は建物の制圧って事ですよ!」

 

「なんてこったぁ!足並みを合わせるぞ!お互い前進しすぎるなよ!反対側の家から滅多打ちにされたくなければなぁ!」

 

「分かりましたあ!」

 

 

通りを挟んで反対側の家々に居る分隊に隊長が叫んでいる。

先程通りを横断してこちら側の家に侵入する時に見た光景を思い出す。

今いる場所の家々は全部二階建て以上で途中にえらく長い集合住宅があった。

 

 

「ヴォルス小隊長、両隣の家を制圧するには人手不足です!増員が必要と思います!」

 

「確かに勝負の分かれ目をたった4人8人で奪取するのは重荷だな、よし・・・・おい通りの待ち伏せ野郎共!」

 

「何ですか小隊長!前進命令なら拒否します!」

 

「左右の建物に二つずつ分隊を送れ!通りを見張るのは五分隊で十分だ!」

 

 

増援として二分隊、8人がやって来て12人3分隊で制圧を行う事となる。

通りは二十数人が見張りとして残っている。

 

 

「よし!次は隣の建物の制圧をするぞ!お前等は一階から馬鹿正直に入っていけ!俺達が二階に飛び込んだと同時にな!」

 

「了解だ小隊長!」

 

「ヴォルス小隊長、この建物と隣の建物に連絡路はないですけど・・・どうやって飛び込むんですか?」

 

「馬鹿野郎カフンカ!お奇麗なスポーツじゃないんだこれは!俺達は兵士!なら全速力で走って壁を突き破って侵入するに決まってるだろ!」

 

「出来るんですか!?」

 

「出来らぁああ!お手本を見せてやれダァンツ、チャンリー!」

 

「俺に続いてこいよ!」

 

「小隊長と通訳係の道を切り開くぜ!」

 

「俺も行くぞおおお!」

 

「パリン!ボゴン!」

 

 

部屋の端っこから小隊長とその部下二人が全力疾走して隣の建物に飛ぶ。

勢いそのままに隣の建物の壁が突き破られる。

そうだった、私達は人より頑丈で力が強い兵士・・・・こういう一見無理そうな戦術的行動も出来るんだ。

 

 

「勉強になります!私も行きまぁああす!!」

 

 

後に続くように私も限りある助走ゾーンで加速して飛ぶ。

手は顔の前で交差させて破片から目を守る。

硬い壁に激突するも衝撃で柔らかく変形して崩れる。

進む勢いをそれに遮られつつも何とか足場のある場所に落ち着いた。

 

 

「今度はなんだ―――――――――」

 

「っ――――――――」

 

 

小隊長達とは違う部屋に到達したけど、そこには敵がいた。

片膝立ちをして窓枠に乗せるようにしてライフルを構えている。

今まで戦ってきた敵とは格好が違う、だから反応が送れた。

 

 

「敵!?」

 

「急に現れやがってッ!!」

 

 

反応が遅れた。

銃をすぐさまにでも構え、この敵を撃ち殺すべきなのに迷いが生じた。

すぐさま取り回しで有利な拳銃を構える。

 

 

「カチ、カチカチ」

 

「なっ撃てな――――――」

 

「馬鹿が!死ね!」

 

 

トリガーを引くけど、弾丸は発射されない。

当然だ、本来なら撃鉄を自分で起こしてから発射しないといけない拳銃なのにそれをしなかったから。

慌てると普段何となく出来ている事すらも覚束なくなる。

 

 

「死、ぬ――――――」

 

「バババン!」

 

 

銃声の後に倒れたのは私、ではない。

敵だった。

 

 

「大丈夫か通訳係!」

 

「知らねえ男の声が聞こえたが・・・知り合いだったか?」

 

「あ、・・・ありがとう、ございます・・・・」

 

 

壁越しに発射された銃弾が敵を襲って息の根を止めた。

すぐさま隣の部屋に繋がるドアと壁が破壊されて先に飛び込んだ仲間が駆けつけてく

れる。

 

 

「これで一つ貸しだな、息を吐いている暇はないぞ!制圧を続けろ!」

 

「は、はい!」

 

 

命を助けられたから目一杯の感謝をしたかったけど軽く流れて戦争に舞い戻る事になった。

目を開けたまま動かない敵を確認してその先の部屋部屋を制圧していった。

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