「痛っ! まただよ」
リックが食べていたリンゴを手放した。このところリックの左奥歯でものを食べるとずきりと鋭い痛みが走っていた。痛みを我慢するためにしばらく反対側の歯で咀嚼したり、桃などのやわらかい木の実で食べていたが、だんだんと億劫になってきた。
それにそんなことをしても歯の痛みはなくならない。
「はぁ、どうするかなぁ。歯が痛いと何も食べられねえ」
途方に暮れるリックだが体のけがのように水をかけて放置すれば治るが、歯の痛みは放置しても収まる気配もない。こうなればウィスピーウッズに知恵を借りようと頬に手を当てながら森に入ろうとする。
「チリョ、チ……リョ」
「ん? なんだ」
「チリョー! カイシー!!」
突如森の中から二本の腕が伸びて、リックの体をつかみ上げると森の中に連れ去ろうとする。
「な、なんだコイツ!?」
突然襲われたリックは謎の手に抵抗できず、森の中に連れ去られた。
目が覚めると、目の前に巨大なドリルがリックの目の前に突き付けられていた。そしてギュイイーンと金属音と共に迫りだしていた。
「た、助けてくれー!!」
この年のププヴィレッジは虫歯の豊作年であった。子供たちは皆親に手を引かれて、ヤブイ先生のところへ歯の痛みを我慢しながら抵抗していた。
「い、痛くないよぉ」
「水を飲んだだけで痛い痛いって喚いていたじゃない。ほら痛みがひどくなる前に治すのよ」
「ハニーも一緒に診に行くんですよ」
「いやだいやだ」
ホッヘたちがヤブイのところへと連れていかれるのを見送っていたのはブンとカービィだ。いつもならブンが助けに出るところであるが、今回は手助けしないことにしていた。以前ブンも歯の治療が怖くて逃げだしていたが、虫歯の痛みがひどくなり結局治療を受けざるえなくなった経緯がある。ハニーとホッヘのためにも虫歯の治療は早く済ませておいた方がいいのだ。
「こどもたち、早く治さないといけませんぞ」
「「やだやだ」」
広場で嫌がる子供たちに 責するのはレン村長だ。
「村長さんもそんな余裕でいられなくなるぜ。いつ虫歯になるか」
「ワシはこれですから虫歯にはなりませんぞ」
ブンの疑問に答える形で口に手を入れると、取り外した入れ歯を取り出した。
「ケケケ」
「ポヨ~ケッケッケ」
カタカタと入れ歯を揺らす様子にカービィは大笑い。
「ちぇ年寄りはのんきだな。ん?ボルン署長何やってんだ」
「あー、その。落とし物がないか調べていたところだ。あははは、いでで」
家のそばにあった樽の物陰に隠れていたボルン署長が一驚すると、手を頬に当てて痛がるそぶりを見せた。ははぁとブンが勘付いた時に、ぬうっとボルン署長夫人のサトが憤怒の形相でやってきた。
「あなた。やっと見つけましたよ。また虫歯になったんですから、早く治さないと」
「サト。それだけは勘弁してくれ」
「謝っても、虫歯は治りません!」
樽の中に隠れようしていたボルン署長を女の腕とは思えない力で、無理やり引きずり出した。以前も歯の治療を怖がりヤブイの診療所から抜け出したボルン署長は、懲りずまたも逃げ出していたからサト夫人はたいそう怒り心頭であった。
「どうせ後でもっと痛い目にあうのに」
大の大人が早く治療しないから、子供たちも怖がって行きたがらないんだと心の中で愚痴をこぼすブンであった。
患者たちがそぞろと浮ついた歩きで診療所にやってくると、扉が一人でに開いた。中から医者のヤブイが冷却シートとマスクを被って出てきた。
「ごほごほ。すまん、医者の不養生で診療できん」
「「ええー!!」」
「ヤブイ先生しかお医者さんはいないんです。なんとか治療できませんか」
「できんものはできん。は、ハグション!!」
母親たちの訴えも虚しく、ヤブイは診療所に籠ってしまった。子供達はほっとするが、虫歯が治ったわけでもない。
「どうしましょう。この村に歯を治せるのはヤブイ先生だけなのに」
「なら、古典的ではありますが。こんな手はいかがでしょうかな」
レン村長の提案の提案は、虫歯の歯を糸で括り、それを体ごと木に縛り付けて引っ張るというものであった。被験者はボラン署長だ。
「歯が痛いのなら、虫歯になった歯を取ればいい」
「ほ、本当にするのですか」
「今痛みをなくすにはこれしかないわ。あなたがんばって」
「ではいきましょう。いっせーので」
ぎゅううと大人たちが一斉に糸を引っ張る。
「いたた!! 口が口が抜けます!!」
「怖い」
「あんななされるなら、痛いままのがいい!」
見た目と痛々しさに耐えきれず、ホッヘは逃げ出してしまった。ちょうど入れ違いになるようにホッヘがフームの脇を通り過ぎた。
「どうしたのブン」
「姉ちゃんホッヘを捕まえてくれ。虫歯なんだ」
「なんですって!」
フームと共にホッヘを追いかけていく三人は、いつの間にかウィスピーウッズの森にまで来てしまった。
「ホッヘ止まれ。そこはウィスピーの森だ。帰れなくなるぞ」
「帰らなくてもいい」
「歯が痛むのならヤブイ先生が治るまで薬を飲んで」
「やだ! 絶対歯の治療なんてしない!」
さっきの一幕で歯医者嫌いが悪化してしまっていた。このまま放置するわけにもいかないものの、今治療する手立てもないとブンたちはお手上げ状態だった。
「チリョ。カイシー」
突如森の奥から黄色の手袋をした手がホッヘをつかみ森の奥にへと連れ去ると、キュイイインと金属が高速で回転する金属音が耳朶を貫く。三人は耳を押さえながら、ホッヘを連れ去った手の正体を突き止めるため奥に入った。
そこには巨大な口を歯の治療に使うデンタルユニットのように倒して、大きなドリルをハンドピースのごとくホッヘの口に入れて歯の治療を行っていた一体の魔獣がいた。
「デンタル魔獣のハーデー! カービィに吹き飛ばされたと思ったら、こんなところにいたんだ」
「うがががが。いひゃああああ」
かつてデデデが自分の虫歯を治療するために呼び寄せたハーデーの治療はほんの数秒で完治させる凄腕である。ただし、麻酔なしであるためドリルで研削するときに歯の神経がダイレクトに痛みに来てしまうのだが。かつてハーデーの治療を受けたブンはあの時の治療のことを思い出して、思わず治療したところの頬を手に当てた。
そしてドリルの回転が止まり、アームで空いた穴に詰め物をすると「チリョウ、カンリョウ」とホッヘを解放した。
「あ、もしかして。虫歯治った?」
「そうさ。あいつ魔獣だけど、一流の歯医者なんだ」
「おやカービィ、おまえもハーデーさんに歯の治療してもらうのか」
背後からやってきたリックは、野生の生き物にあるはずの警戒感を目の前にいるハーデーに対してみせず
「リック。知ってたの」
「ああ。ハーデーさんずっと森の奥地に隠れていたんだけど、森の動物たちの歯が悪いのに居ても立っても居られないず治してくれているんだ。俺もおかげでリンゴが食えるようになったのさ」
ハーデーの周りにはイノシシのヌラフとネリーが自慢の牙を見てほしいと寄り添い、肩には小さなリスが自分から奥歯を見えるように口を開けていた。誰が見ても、ハーデーは森の動物たちに慕われていた。
「そうか。動物の歯医者さんなんかいないもの、大事にされるわ」
「ぽよ!」
「チッチリョ」
「なあ、ハーデー。俺たちの村の人たちが虫歯だらけなんだ。治療してくれないか」
「チ、チリョー。デキナイ」
「治療できないって、さっきホッヘを治していたじゃないか」
「森から出たくないんだとさ」
口を噤むハーデーに代わって、リックが代弁する。
「歯の治療のために呼び出されたのに、患者は怖がり。挙句遠くに飛ばされて人のいるところに近づいたら怖がれるだけじゃないかってさ」
「悪いことしちゃったわね」
ハーデーにトラウマを植え付けてしまった張本人であるフームは責任を感じてしまった。自分がハーデーを倒すように指示してしまったのに、村人たちを治してなど都合がよすぎる。
「ハァー、デー」
その頃デデデ大王は村で歯の治療ができないことを愉しんでいた。
「ほうほう、歯の治療ができんとは。クラゲに刺されて眼医者ばかりしかない状態か」
「あの人口に対して医者が一人だけとは、限界集落もいいところでゲスな」
「人が苦しむのは楽しいもんゾイ。が、わが臣民を助けるのが為政者の務め」
「は? どうしちゃったの陛下、床に落ちたものでも食べたのでゲスか」
「人民どもを国民皆保険による一億総非入れ歯実現するゾーイ!!」
なにやら怪しい施政を施そうとたくらむデデデ。
一方村では病床にいるヤブイに代わって、フームが医療本を片手に虫歯になった村人たちを診ていた。
「ひぃ、染みる」
「痛み止めよ。しばらくしたら痛みがなくなるわ。はい次」
森の中にいるハーデーを治療できなくした罪悪感から、市販の薬を使って痛みを和らげていく。だがこれはあくまで一時的な処置、専用の歯の治療器具を使わなければ虫歯は治らない。
フームの診断を待っている村人たちを横目に、カービィは痛みを緩和させるための氷を袋に入れる手伝いをしていた。がそこは食いしん坊のカービィ、こっそりと氷を一つつまみ食い。
「こらカービィつまみ食いはだめ。それは医療用よ」
「ぽよ」
「いいなあカービィはのんきで、歯の痛みとか知らないんだから」
「カービィはちょっと特殊だから。次はハニーね」
「あたし歯がぐらぐらしているの。これって虫歯? 痛いのやだ」
「ちょっと見せてね」
ハニーの口を小さな手鏡で見ると、小さな歯が歯茎から浮いていた。
「これは、乳歯ね」
「乳歯?」
「子供の歯、自然に抜けて永久歯という歯に生え変わるの。自然に取れるけど、少し血が出るからその時に消毒する必要があるわね」
「よかった」
「いいなあハニーは治療しなくていい。ホッヘは治ってしまっている。ボクだけ歯の治療だなんて嫌だよ」
「何言ってんだ。俺は無理やり治療されたんだぞ。ヤブイ先生は麻酔ありでしてくれるけど、俺麻酔なしでされてすっげー痛かったんだから」
「麻酔なしって、痛いの我慢したの!」
「ホッヘすごい度胸ある」
「え、えへへ。そうかな」
ちょっとしたヒーローになったホッヘであるが、大人たちは深刻な表情である。特に歯医者嫌いのボルン署長は歯を研削されるわけでもないのに村の中心にある大木にしがみついてフームの診断を受けようともしない。
「あなたいい大人なんだから、フーム様の診断だけでも受けなさい」
「や、やはり怖い」
「私は無力ね、こんなことしても一時的なごまかしでしかないわ。やっぱりハーデーに治してもらう方が一番なんだけど。あの様子じゃあねえ。それにしてもブンったら、どこに行ったのかしら」
そのブンはというと、ウィスピーの森にいるハーデーのところに赴いていた。
「今日も治療かハーデー」
「チリョ」
ちょうどハーデーは森の動物たちの歯の治療をしていた。麻酔なしで痛むものの、一瞬で終わるのとハーデーの腕を動物たちは信頼して我慢して治療を受けていた。魔獣ではあるが治療をする姿に悪意もなく真剣な表情をしている。
「なあハーデー、村は今大変なんだ。わがままかもしれないけどさ頼むよ」
「チリョ」
「そりゃ俺もお前に治療される寸前、すっげー怖かったぜ。歯医者なんて嫌いなのに麻酔なしでされるんだから、死ぬと思った。でも一分もかからずに歯を治してくれて、俺初めて魔獣にお礼を言ったんだ。でももう歯の治療は受けたくないけどな」
「チ?」
「そりゃ虫歯の痛みも嫌だけどさ。一分でも歯の治療は嫌だもん。今でもハーデーの顔とドリル音が思い出してさ、ちゃんと歯磨きしなとって毎日歯を磨いているんだ。まあ、なんだ。怖いから虫歯にならないようにするってのもちゃんと効果があるってことだな」
ハーデーが振り向きかけた時、村の方から悲鳴が上がった。
「「いやああ!!」」
村にデデデカーがやってくると、乗っていたデデデが拡声器を片手に村人たちに呼びかけた。
「あーあー、虫歯に苦しむ貧しき人民ども。ワシからの歯医者を用意してやったゾイ。感謝せい」
「おお、さすが太っ腹の陛下」
「……なんか怪しいわ」
「ワシは国民健康保険による八十二十運動を推奨しておるゾイ。ではいでよバッシー」
デデデカーの中から飛び出してきたのは、真っ黒の体に二本の角、そしてその手にはペンチを持っていた。見た目は絵本に出てくる虫歯菌のような医者だ。バッシーはまず近くにいたハニーを目につけると、持っていたペンチをカチカチと威嚇するように歯をかみ合わせて迫る。
「な、なに?」
「バッシー。カイシー」
ペンチを大きく開けて、ハニーの口の中に突っ込んで取れかけていた乳歯を抜き出そうとした。ハニーが悲鳴を上げるが、口を押さえられてしまっているためかすれ声しかでない。
「ハニーを放しなさい!」
「ゲッシー」
フームがハニーを助けようと止めようとするが、バッシーはフームを一蹴して抜歯を続行する。そして乳歯の根元が歯茎から引き剥がして、血と共にハニーの乳歯を口から引き離した。バッシーは満足したようにペンチに挟まった歯を自分の口元に運ぶとポトリと落として、歯をうまそうに咀嚼し始めた。
「ウマシウマシ」
「わたしの歯がぁ。取れたら記念に残そうと思っていたのに!」
「ゲヘヘ。ツギツギツギ」
「おれやだ。無理やり抜かれたくない」
「わわわ。ワシもごめんだ」
「見ているこっちまで歯がかゆくなってくる」
「ゼンイン。バッシー!!」
村人たちが怯える中、バッシーは構わずペンチをカチカチを歯を鳴らして村人たちに襲い掛かった。
「ぽよ!」
そこに立ちふさがるのは、星のカービィ!
が、何もコピーをしていないカービィではバッシーのペンチに挟まれるしかできなかった。
「バッシバッシ!!」
「ゆけゆけ。カービィを叩いて潰して、骨の髄まで抜き出せ!」
「あの準軟体動物に骨があったっけ?」
一瞬の隙をついて、カービィがバッシーのペンチから抜け出すとデデデカーのボディへ駆け上がった。カービィを追いかけるバッシーはデデデカーのボンネットの上でペンチを開閉させてカービィを捕まえようと奔走する。
「おい、こっちに来るでない。これ、バッシー! こっちに来るな!」
「バッチコーン!」
捕まえたと思ったそれは、デデデカーの先端にあるデデデの体を模したフードクレストマークだった。しかしバッシーはそんなことお構いなく、無理やりペンチに力を入れてフードクレストマークを真っ二つにしてしまった。
「あ゛あ゛!! ワシの体が、真っ二つ……」
「一時退却。城に避難でゲス」
「ワシの体を忘れるでない。ちゃんと修理せいエスカルゴン!」
フードクレストマークを壊されて戦意喪失したデデデたちは車を動かして、自分たちだけ退散してしまった。
「デデデったら。来てワープスター!」
フームが呼び出した星の形をした乗り物『ワープスター』がカービィを助けにやってきた。
「ぽよ!」
カービィがワープスターに飛び乗ってバッシーから離れようとした。が、魔獣バッシーは簡単に逃がさず、ワープスターの端をペンチで掴み上げるとワープスターを飛び立たせまいと押さえつける。
「ぽよ!?」
「デヘヘ、バッキバキ」
ワープスターを壊そうとバッシーの腕に力を籠めだす。さすがのワープスターもナイトメアが作り出した魔獣の力にはかなわず、メキキと嫌な音を立て始めた。
「やめろ!!」
森から戻ってきたブンがカービィを助けるためにバッシーに体当たりした。ブンの体当たりのおかげでワープスターはペンチから抜け出して危機を脱したが、バッシーのペンチはブンに向けた。
「バッキバキ、ダ」
「た、助けてく、むぐっ
地面に押さえつけられたブンの目の前に、ペンチが迫る。むろんペンチの矛先はブンの歯だ。邪魔をされた怒りで、腹いせに全部抜こうとしていた。
「むううう。ううんううう!!!!」
助けてと声をあげることもできない中で、恐怖が迫る。カービィは空中をUターン中、このままでは間に合わない。
「イホーチリョー!!」
叫び声と共にペンチの刃先にドリルが挟まった。ブンを助けに来たのは、なんとハーデーだった。あんなに森から出るのを嫌がっていたのにと、フームは驚きで開いた口が塞がらない。
「ハーデー、どうして」
「奴が治療の専門家だからだ。強引だが歯の治療にかけてプライドを持っている。ただ歯を抜くだけの抜歯魔獣とは相性が悪い」
「メタナイト卿」
歯の治療の専門家魔獣と抜歯を執拗に行う魔獣。この二体はまさに水と油の間であった。そしてハーデーのドリルがペンチを壊そうと回転を始める
「治療は痛かったけど、無理やり歯を抜くなんてことはなかったもんな。いけーハーデー先生!」
「チリョー、カイシー!!」
「バシシシ、シネ!!」
ハーデーの思い通りにさせまいと、ペンチの持ち手に力を入れて歯を放す。ガキンと両者が離れると、バッシーがハーデーのドリルの根元に狙いを定めて、ペンチを挟む。バキッとハーデーのドリルが折れた。
そこに拾い上げるようにカービィがドリルを吸い込んだ。
ドリルを吸い込んだカービィは、巨大な黄色いドリルと排気口がついたヘルメットを被った姿に変身した。
「何あれ? 前にドリルを吸い込んだときはトルネードカービィだったはず」
「うむ。成長してコピーの幅が広がったようだな。あれは『ドリルカービィ』だ」
前方にあるドリルが大きく回転を始めると、カービィは地面に潜る。バッシーが地面にペンチを突き立てて動きを止めようとするが、ドリルカービィの掘る速度に追い付けず空っぽの穴に無意味に刺すだけ。
ぐるりとバッシーの周りを一蹴するように地面を掘り進むと、急に内側が揺れだし地面が盛り上がってバッシーにダメージを与えた。
「グラウンドーン。縁で囲んだ範囲内の地面を盛り上がらせて敵を倒す。強力な技」
「カービィ、あなたは本当に無限の力を持つヒーローなのね」
バッシーが起き上がる前に再び地面に潜ったカービィは、バッシーの真下にまで潜ると頭のドリルの回転速度を最大に上げた。
『つきあげドリル!!』
バッシーのいた地面の真下からカービィの必殺技が繰り出された。ハーデーの強力なドリルの回転と威力の突撃にバッシーは耐え切れず、空中で爆発四散して倒されてしまった。
「「やった!!」」
魔獣を倒して喜ぶフームとブン。
「ねえ、フーム。その魔獣、大丈夫なの?」
隠れていたハニーが、恐る恐るハーデーを警戒していた。
バッシーが倒されたと、隠れていた村人たちが顔を出すとそこには別の魔獣がいたものだから警戒するのも当然だ。
「みんなこの魔獣はいいやつなんだ。みんなの歯を治してくれるんだ」
「でも麻酔なしなの。でも腕は確かよ」
麻酔なしで治療なんて……と戸惑っていた。
「あーその。ワシは」
「いいわ。お願いします」
「え!?」
「おれだって、男だ。ホッヘだけにいいかっこさせるか」
虫歯の村人たちは、待望の歯の治療を受けることを選んだ。そのことに喜ぶブンとフーム。そしてわなわなと腕が奮い立つハーデーが雄たけびを上げた。
「ゼンインノチリョー、カイシー!!!!」
バッシーが倒されたその夜、デデデはデデデ城の食堂でワドルディたちが料理を配膳している間今回注文した魔獣のことに文句をつけていた。
「まったくあの魔獣め。高い金を払ったというのにカービィをやっつけることも、人民どもを国民皆保険による虫歯の治療もできぬとはとんだ役立たずをつかまされたゾイ。税金の無駄遣いゾイ」
「あ、治療と言えば。陛下前に治療してから、一度も歯の診断に行ってないでゲスが。大丈夫でゲスか」
「そんなもの不要ゾイ。ワシの歯は超合金でできている故問題ないゾイ」
そんなもの関係ないと手元にあった肉の塊をかぶりつく。
砕かれた肉の塊を奥歯ですりつぶそうとした途端、突如歯の奥にトゲが突き刺されたような激痛が襲われた。その激痛にデデデは椅子から飛び落ちて、のたうち回る。
「イッッッッッッギャアアアア!!!! ヒーヒーヒラリヒラリ。ヒーラリヨー*1」
「なに踊っているんでゲスか。ってまさか虫歯の再発?」
「何!? 虫歯!?」
深夜の村に、爆音をあげてエスカルゴンが操るデデデカーにデデデを乗せて爆走する。行き先はヤブイの診療所だ。
「今回はやけに大人しくついてくるんでゲスね」
「行かなくても、キサマに強制連行されるのであれば。自分から行ってやるゾイ」
「しかし今ヤブイは療養中。虫歯の治療してくれるでゲスかね。しかも診断時間外」
「緊急外来として無理やり患者を受け入れさせる。この国の国民は富めるものであるとも貧しきものであろうとも、治療を受けさせるのが我が国の方針ゾイ」
診療所の前に停車させると、不思議なことに周りの建物は明かりが消えているというのに診療所には明かりが灯っていた。デデデたちが下りると、診療所からフームたちが出てきた。
「フームにブン? なんでお前らがこんなところに」
「デデデあなたのために、歯を治療してくれる優秀な先生が来てくれたわよ」
「なに?」
「宇宙一の歯医者だぜ。たった数秒で痛みが治まる村人たちにも実証済みだ」
「デアハハハそりゃ好都合。さっそく受けるゾイ」
自分ためと気分がよくなったデデデは誰が治療するか知りもせず、診察室へと上がり込んだ。フームに案内されるがままデンタルユニットに腰かけると、医者がまだ来てないにもかかわらず椅子が倒され、ライトがデデデの前に照らされる。
「まぶし」
「チリョ」
「チリョ? あ、あわわわ。お前はデンタル魔獣ハーデー!!」
かつて自分を麻酔なしで治療しようとした魔獣の顔を、都合の悪いデデデでもハーデーの顔を忘れてはいなかった。しかしデデデは逃げられない。バッシーのペンチを素手で止めるほどの力があるハーデーなのだ。デデデの握力では逃げられない。
「ニガサナイ。コンドコソ、チリョーカイシー!!」
「い゛、いやああああああああ!!!!」
ドリルを擦り切れるほど高速回転で稼働させてハーデーは
「ほうほう。こりゃ腕は確かだ。わしが虫歯治療をする手間が省けるな」
「だろ、ヤブイ先生のところでハーデーを住まわせてくれないか」
「歯の治療は年中起きるからな。面倒な治療が減って楽になる」
「これでハーデーもププヴィレッジの一員ね」
「ぽよぽよ!」
「|ほ、ほれ。わひをさひおひて、めへはひにするへはい《こ、これ。ワシを差し置いて、めでたしにするでない》」
「あぁ、陛下。住民どもにこんな情けないお姿を晒されて嘆かわし、うぅ。ふふ、げひゃひゃひゃ!」
「|えふかるほん、ひひゃまはへ、ひょっへいひょい《エスカルゴン、キサマまで、極刑ゾイ》
「ウゴクナ。オトナシクシロ」
首を傾けて抵抗するデデデの顔を正面に向けて治療を再開させるハーデーは、容赦なくデデデの虫歯をドリルで研削を再開する。
すると治療をしていたハーデーのとなりにカービィが飛び乗る。
「ぽよ。くぁ」
次はぼくもと言いたげに満面の笑みで自ら口を開けて指を指す。しかしかつてカービィを治療しようとしたハーデーには、カービィの口には歯がないため治療すること自体できないことを知っているため、大弱り。
「チ、チリョーデキナイ」
「ぽよ?」
みんな、『星のカービィWil』がニンテンドースイッチに帰ってきたよ!
懐かしいステージだけでなく、カービィに新しいコピー能力も追加されてもっともっと楽しめるようになったよ。
そしてカービィたちの仲間マホロアのエピソードも新収録。これでカービィの世界がもっと広がるね。
さあ、近くのお店。もしくはニンテンドーeショップで『星のカービィWilデラックス』を買って、カービィの世界に繰り出そう!
『次回予告』
このプププランドはカービィのようなおかしな外星人が来訪するでゲス。エイリアン、オバタリタン、ベジタリアンとまー迷惑極まりない輩らばかりでゲス。
しかし我が城にいる陛下に比べたら、カワイイもんでゲス。
おーいエスカルゴン、なにやらヴィーガンという輩が来たから来るらしいゾイ。豪勢に羊の肉料理を用意せい。
はぁ、まったく無茶振りに付き合わされるこっちの身にもなってほしいでゲス。
次回はとても肉が食いたくて仕方がない話ゾイ。