「やはり見えない………」
USJ襲撃からその日に問題なしとして即日帰宅となったホシグマは自分の部屋で掌を見つめる。
USJで脳無との戦闘であの時ホシグマには全てが視え感じ取れた感覚があった。しかし現在はその感覚は消え失せ、いつもと同じになっていた。
(あの感覚は、なんだったのだろうか……。勘違いか……?いや、だとしてもリアル過ぎる……それにあの時思い出した父との記憶から考えると……)
(父はいつもあの感覚があった……?)
「まだまだだな……私も……」
部屋の天井を見上げながら一人で小さく呟く。父親と自分との大きな差がホシグマには確かに感じられた。
「全てを視る…か………」
◆
「どうしたイレイザー、浮かねぇ顔してよ」
「……いや、ちょっとな……」
辺りもすっかり暗くなった頃イレイザーヘッド、プレゼントマイクの二人はUSJ襲撃の事後処理に追われ勤務時間外まで作業をしていた。
「俺はあの時守るべき生徒に逆に守られてしまった……。俺にはどうにもならないような力を持ったヴィランに対して何も出来なかった……何もしてやれなかった」
USJから帰ってきた相澤を取り巻くのは後悔だった。自分を庇い、ヴィランと単身で戦ったホシグマは命に別状はなかったものの重症、他の生徒は無事だったものの重症だったホシグマに対して自分は無傷。命を投げうってでもホシグマの安全を守るべきだったと相澤は思っているのだ。
だが考えれば考える程あの時あの状況ならあれが最善だったと思ってしまうのだ。あのヴィランと戦っても自分はすぐに負けてしまっただろう。そうなればあの後ホシグマがヴィランと戦うのは変えられないことだった。
戦えば彼女はそのままヴィランを打ち倒し勝っていた。そう勝っていた、確信がある。自分など彼女の勝利には関係などなかったのだ。
「……俺は無力だった……。命に代えても守ると誓った生徒が危険な時も、俺は見ていることしか出来なかった……」
「なあ山田…俺はあの時どうすればよかったんだろうな……」
「……珍しいなお前がそんなこと言うのも」
プレゼントマイクが小さく溜め息を吐きながら言った。
「………あんまり考え過ぎるのも良くないんじゃねぇか?自分に出来ることをやれれば良いじゃねぇか。それにホシグマも無事だったんだしよ」
「………」
「……一杯奢ってやるよ。こういう時は酒飲んで忘れるのが一番だぜ?」
「………いらない」
「空気読めよイレイザー!!!」
明日は事後処理が重なっているので生徒たちは臨時休校だが教師陣は普通に学校がある、そんな日に酒を飲んで明日に影響が出るのは合理的ではない。相澤は仕事の前日に飲みに行くような人間ではなかった。
◆
「それであのヴィラン……脳無のことだけど……」
同時刻、校長室にてオールマイトと校長である根津が二人で話していた。オールマイトは固唾を飲みながら校長の話を聞いている
「先程警察の迅速な調査によって色々分かったことがあった」
「まずあれからは複数の人間の遺伝子が検出された。一人の人間をベースに複数の人間の遺伝子が混ぜられている」
「では複数個性というのは……」
「そうだね、その影響だと見て間違いない。相澤君たちの報告で明らかとなった『ショック吸収』と『超再生』の個性」
「明らかに君の相手を想定して組み合わされている。それに加え、ワープの個性と崩壊の個性の二人のヴィラン…」
「………正直、君でもかなりの苦戦を強いられたんじゃないかな」
「でしょうね…。恥ずかしながら生徒たちに被害がほぼ無かったのは星熊少女のおかげです」
「……自分の不甲斐なさに腹が立ちます……。私がもっと早く着いていれば星熊少女が怪我をすることなど無かったと言うのに……」
骸骨のように萎んでいるオールマイトがうつ向きながら話す。
「しかし彼女の力には驚かされた。まさか単独で脳無を制圧していまうとは……。彼女は将来有望だね」
「相澤君によれば脳無から一度攻撃を受けたあとからまるで別人のように雰囲気が変わったと言っていた。まるで父親の『アカシ』のようだったとも言っていた」
「まあなんにせよ彼女の底は我々はまだ把握出来ていない。近々行われる体育祭は注目だね。それに君の弟子の活躍も気になるし」
「彼も頑張っていますよ、初めて会った頃とは比べ物にならない程成長している。私も楽しみです」
◆
時は変わり、とある薄暗いバー。突然虚空から黒いモヤが出現した。すると身体を引き摺るようにモヤから出てきたのはUSJを襲撃した手だらけのヴィランだった。
「クソッ……脳無がやられた……!手下共も瞬殺だ……子供が強かった……!!何が対平和の象徴だ……子供にやられちゃ意味がない……!」
「どういうことだ……話が違うぞ先生……」
『違わないよ。ただそうだね見通しが甘かったね』
バーに設置されている小さなモニターから男性の声が発せられる。スピーカーから出されているせいかその音声はどこかくぐもっている。
『ところでワシと先生の共作は?回収していないのかい?』
同じモニターから別の男性の声が発せられる。今度の声は老齢の人間の声であった。
「時間がありませんでした……時間をかけていれば対平和の象徴がいないままオールマイトと相対することになっていた……脳無を回収している暇は無かった………」
『せっかくオールマイト並のパワーにしたのに……』
『まァ仕方ないか…残念』
「パワー……そうだ……あいつのせいだ……角の生えた女のガキ……あいつが脳無を倒さなきゃ……ガキ…ガキッ……!!」
『………へぇ。あの脳無をただの学生が』
「ああ、そうだ……確か……ホシグマって呼ばれてた…あいつのせいでッ………!!」
『……子供がいたのか』
「なんか言ったか先生」
「いや、何でもないよ。それに、悔やんでも仕方ない!今回だって決して無駄ではなかった筈だ。精鋭を集めよう!じっくり時間をかけて!我々は自由に動けない!だからこそ君のようなシンボルが必要なんだ。死柄木弔!!次こそ君という恐怖を世に知らしめろ!」
これから待ち受ける事件はホシグマたちを大きく巻き込み膨れ上がっていく。
遅れました……。ヒロアカ6期最高だったね。
·USJでのホシグマ
死の淵へ行ったことであらゆる感覚が過敏になり、一時的に脳無の行動も全て分かるくらいになった。所謂ゾーンに入った状態と同じなのかもしれない。この状態になるとホシグマの背中に般若の模様が表れ、血のような赤いオーラを纏うようになる。
相澤先生には自分が無力な状態で生徒が為す術なく殺されて曇ってほしい。
次回からは体育祭編です。頑張ります