USJ襲撃の翌日、雄英高校は臨時休校となり、全生徒が休むこととなった。
だが、その中でも特にA組の生徒たちの気は休まらず、すぐに登校日となった。
「ホシグマさん…大丈夫かな……」
「だよな……あの後意識なくなったって言ってたし……」
生徒たちの心配は勿論、USJ襲撃で唯一負傷、そして意識を失う程の重症を受けたホシグマのことであった。
ただ命に別条はない傷だった、というのは聞いていたので生徒たちは過度な心配はしていない。
「俺はあんとき何にも出来なかったからな……」
「まあまあ、切島!そんなに悲観しててもしょうがないって!それに命に別条はないって言ってたんだから大丈夫だって!」
「でもよォ……」
熱血漢であり、言動からヒーロー根性が感じられる切島が悲観を漏らす。そんな切島を励ます芦戸は切島の背中をバシバシと叩いた。
「そうだぞ切島。それに意外とさらっと来るんじゃね?怪我とかものともしなそうじゃん」
瀬呂がそう言うと周りの生徒たちから否定の声が流れる。
「いやいや、流石にいくらホシグマさんとは言え今日と明日くらいは休むんとちゃうかなぁ」
麗日がそう言うと、先程ホシグマがさらっと来るのではないかと言っていた瀬呂も納得したように頷いた。
「……確かにな!意識失うくらい怪我してたのに1日2日で学校に来れるわけないか!」
「そうだぜ、瀬呂。流石に……」
それに同意するように上鳴も同調する。ここにいる誰もが今日はホシグマが休むだろうと考えていた。
そして、予鈴がなる直前、教室のドアが開かれ、ある人物が教室へと入ってきた。
「あ、皆様おはようございます」
額から生えている大きな一本の角、深緑のような髪、全てを射抜く黄金の瞳を持った人物は教室全体に衝撃を与えた。
「「「ホシグマ(さん)復帰早えええ!!!!」」」
ドアから挨拶をしながら入ってきたのは話の中心となっていたホシグマだった。そのあとからは同居している八百万も教室へと入る。
「おはようございます皆さん」
「八百万さん!ホシグマさん大丈夫なの!?」
八百万が自分の机に荷物を置こうとすると麗日が勢いよく話かけた。
そんな様子の麗日とは対称的に八百万は呆れたような落ち着いた声で話す。
「えぇ……びっくりするくらい元気でこちらも驚きました……」
「どうしてそんなに呆れてるんですかお嬢様」
「意識が戻ったその日に身体が鈍るからとトレーニングを始めた人がいれば呆れもしますわ……」
事実である。
ホシグマは意識が戻り、帰宅した直後から身体が鈍るからと、日々の日課のトレーニングをいつもと同じように行った。
当然その光景を見た八百万からは1時間の説教が行われた。
「「「えぇ……」」」
その話を聞いた生徒たちからは八百万のような呆れと先程まで心配していたのはなんだったのかという気持ちが溢れ出した。
その時予鈴が鳴り、担任である相澤が教室へと入室する。
「予鈴が鳴ったら席に着け」
そう相澤が言うと生徒たちは即座に自分の席に戻り、話を聞ける体勢を作った。
「お早う。星熊も無事来れたようで何よりだ」
「いえいえ、先生もご無事のようで何よりです」
「俺の安否はどうでもいい。それよりまだ戦いは終わってねぇ」
「雄英体育祭が迫ってる!」
「「「クソ学校っぽいのきたああああ!!!」」」
戦いと聞き、身構えていた生徒たちの身体から歓喜の声が一気に溢れ出る。
雄英体育祭。
全国放送で特番を組まれ、平均視聴率は二十パーセントを越える、国民的な一大イベント。体育祭とは謳っていても、スポーツというものが昨今さほど流行りではない。
理由は個性そのものにある。
例えば、最強のパワーの個性を持つ格闘技の選手がいたとする。個性を制限されたらどうなるだろうか。 簡単である。つまり素の力が一番強い者が勝つ。要するに異形型の個性の人間が一番強い環境になってしまったのである。
当然、そんな物はエンタメとして全く盛り上がらない。個々の努力や技術よりも個性が強ければ勝てるような世界。スポーツは最早必然の流れで衰えてしまったのである。
しかし、雄英体育祭は別だった。高校の体育祭では破格である視聴率20%代を叩き出し、旧時代のオリンピックに変わるスポーツの催しとして現在もっとも注目されているのである。
「当然、トップヒーローも見るイベントだ、スカウト目的でな。当然トップヒーローの事務所に入ったほうが経験値も話題性も高くなる。時間は有限プロに見込まれればその場で将来が決まるわけだ。」
「年に一回、合計三回のチャンス。ヒーローを志すなら絶対外せないイベントだ。その気があるなら準備は怠るな!」
「「「はい!!!」」」
◆
「体育祭楽しみー!」
「ええ、プロヒーローからスカウトが貰える貴重な機会ですからね。お互い頑張りましょう」
「わーヤオモモ真面目ー!」
時は変わり、昼休み。八百万とホシグマは珍しく学食で食事をしていた。また、耳郞と芦戸も二人に同行しており、雑談に勤しんでいた。
「にしても体育祭か~……。私ちょっと自信ないかも」
「えーなんでー?」
「いや私昔からこういうのあんまり得意じゃなかったし……それに個性も競技に向いてないし」
「大丈夫ですよ。まだ競技の内容も分からないんですから、耳郞さんの個性が生かせる競技もきっとありますよ」
「そうかなぁ……」
「そういうホシグマは体育祭とか得意そー」
「まあ、それなりに得意ですよ、それなりに」
「本当にそれなりかよ」
「まあ、やるからには全員喰い殺す気でやりますよ」
「ヒェッ……」
ニコニコ微笑みながら言うホシグマに対し、二人は戦慄していた。どうやら冗談と受け取れなかったらしい。
「冗談ですよ、お二人共」
「アンタが言うと冗談に聞こえない」
「確かに……熊と生身で戦ってそう……」
「ははっ熊と生身は無理ですよ。流石に。……多分」
「え、この質問で多分って着くことある?」
「…………」
「いやー、なんとなく出来そうみたいな顔しないで?」
ホシグマのボケを耳郞は冷静にツッコんでいく。それを見て芦戸は「ホシグマって結構ボケるんだー!なんか意外!」といい、八百万はため息をついた。
「勇さんはいつも意外とこんな感じですよ……」
「わー、苦労してそう」
八百万のため息を見て芦戸は苦労してそうと思った。
その後、暫く雑談をしながら昼食を食べていると昼休みが終ろうとしていた。皿などを返却口に返すため、片付けをしていた。八百万とホシグマが返却口へと向かうため歩いていると八百万がおもむろに口を開いた。
「体育祭、お互い頑張りましょうね」
そう言う八百万の口調は落ち着いていたが、その目には確かに"熱"があった。
ホシグマもその熱に乗せられるように片方の口角を小さく上げて少し微笑みながら応えた。
「ええ、勿論ですよ。お嬢様」
体育祭の前日らしく、他の生徒たちもどんどん熱をあげていく。
それはこの二人も然り。
体育祭の当日は二人は幼なじみとしてではなく、優勝を争うライバルとしてあいまみえるだろう。
なぜこんな遅れたかといいますと、ここ最近めちゃめちゃ忙しくて続き書けませんでした……。あとそのせいで期間が空いて小説の書き方忘れました。
言い訳を並べましたが遅れてしまいほんっっっっとうにすみませんでしたっ!!