雄英の合格通知から二週間後、ホシグマは八百万と共に登校のため雄英の校舎に来ていた。
「いつ見ても大きい校舎ですね」
「ええ。それにしても早く来すぎてしまったかもしれません……大丈夫でしょうか」
八百万が心配そうに言う。それもそのはず現在は学校の定刻の20分程前。なぜこんなに早くなってしまったかというと理由は八百万の母親にあった。八百万の母親は少し、親バカというか八百万のことを過度に心配することが多々ある。今回ももしも遅刻したら大変だからと言って急かしたのである。
「大丈夫ですよ、お嬢様。早いにこしたことはありません」
「そうでしょうか……」
二人はそんなことを話しながら雄英へと入ってゆく。雄英の校舎は大きいだけあり、中も広大であったが、A組のクラスには早く着いた。クラス分けについては事前に通知があり、運が良かったのか二人は同じクラスだった。
「大きいですね……」
「え、ええ。ドアも大きいとは流石雄英ですわね…」
A組のドアの前に立つとその大きさがよく分かる。ホシグマも身長が184cmと大きいが、このドアはそれよりも一回り大きい。各々の個性に合わせたバリアフリーなのだろう。流石である。
教室のドアを開けて教室の中へ入ると中にはあまり人は居らず、いる人も座って大人しくしている。そんな中教室に入った二人に話し掛ける者が一人。
「む、君は試験会場が同じだった鬼女子!君も合格していたのだな!それと君は……」
二人に話し掛けたのはメガネを掛けた身長の高い男子生徒だった。身長が高いとは言ってもホシグマとは一回り身長が低かった。ホシグマは不本意な呼び方に少しムっとしたがすかさず八百万が答える。
「初めまして私は八百万百と言います。これからよろしくお願いいたしますね。それとこちらは…」
「星熊勇と申します。呼ぶ際は鬼女子ではなくホシグマとお呼びください」
「これは失礼した!ボ・・・俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ。よろしく頼む。ああ、そうだ。席は出席番号順になっているぞ」
男子生徒、飯田天哉は二人と同じように実に丁寧に自己紹介をし、席までの案内までしてくれた。出身中学からも分かるように相当に育ちが良いようだ。
「おや、分かってはいましたがやはり離れていますね」
「そうですわね…では先生が来るまで席で大人しくしていましょうか」
「そうですね」
ホシグマが自分の席に行こうとした時、八百万がホシグマを小声で呼び止める。
「それと…ここでは私のことをお嬢様と呼ばないように…!」
「何故です?」
「そ、それは…!いいから呼ばないでください…!ここでは私のことは八百万と…!」
要は恥ずかしいのだ。只でさえ中学ではお嬢様と呼んでいたためにやれ、執事とお嬢様だの主従関係だの散々もてはやされてきたのに雄英でも同じ二の舞を踏む訳にはいかない。そんな八百万の心情を察したのかホシグマはそれを了承する。
「かしこまりました。お嬢様」
「っ!今のはわざとですわね!」
「ああ、これは失礼。つい癖で……」
「と、とにかく!ここでは八百万と呼ぶように!」
一応補足しておくがホシグマと八百万の間には主従関係というものはもっぱら存在しない。ホシグマが勝手に呼んでいるだけである。
そして八百万はここでミスを犯した。些細なミスではなくとても大きなミスであった。
((((全部…丸聞こえなんだけどなぁ……))))
先ほどの問答でつい熱くなってしまった八百万はつい声量を普段と同じような感じで喋ってしまった。結果、ホシグマと八百万の関係は教室にいた数人に知られてしまったのである。
さらに八百万は悲しいことにこのことに全く気付いていないようで澄ました顔で席に戻っていってしまった。
そのような人間に全部バレているとは言いにくく、飯田やそしてホシグマですら沈黙をするしかなかった。
(やはり楽しい方ですね、お嬢様は)
そんな八百万のことが面白くて内心笑っていたホシグマだったが八百万も席についたのでホシグマも自分の席に着く。ホシグマの前には爆豪という生徒と後ろには緑谷という生徒がいるようだ。
スパァン!!
教室の扉を足で開けて大きな音をたてながらガラの悪そうな男が入ってきた。髪は金髪で髪型は爆発したかのようにツンツンしている。制服はかなり着崩しており、ポタンは胸元まで開け、ネクタイもしていない。こんなあからさまな不良は見たことがなかったのでついびっくりした。彼は教室をしばらく見回した後、私の前の席に机に足を乗せて座った。だがそんな行為を彼が見逃すはずがなかった。
「君!」
「机に足をかけるな!雄英の先輩方や机の制作者方に申し訳ないと思わないか!?」
明らかな委員長キャラの飯田君がその不良生徒に臆することなく話し掛ける。
「思わねーよ、てめー、どこ中だよ端役が!」
どこ中だよ、とか言う不良のテンプレみたいなことを言っていた。こんなあからさまなセリフ吐く人いるんだなとホシグマは思ってしまった。
そのあとも二人はなんやかんや言い合っていたがある生徒が教室に入ってきたことによりこの口論は終結する。
おはよう!ボ…俺は私立聡明中学出身の…」
「い、いや、聞いてたよ…」
焦っているような口調で応えたのは入試で試験会場が同じだったモジャモジャ頭の少年だった。
「君は試験の構造に気づいていたんだな…。」
「へ?」
(ん?)
「俺は気づけなかった。君を見誤っていたよ…。君のほうが上手だったようだ…。」
(あの二人はあの時は険悪だと思っていたのだが……
心配するほどでもなかったですね。少し安心です)
そんなことを考えていると違う生徒がまた入っていた。入ってきた生徒は茶髪の女子生徒。またもや試験会場が同じだった麗日お茶子だった。彼女はホシグマとも面識がある生徒だ。
そんな状況にホシグマも席を立って挨拶をしようとするがある一人の男の声がそれを阻む。
「お友達ごっこがしたいなら他所に行け。」
ボソボソとした声でそう言ったのは寝袋にくるまった小汚ない男だった。
「ここはヒーロー科だぞ。」
「な、なんかいるー!!!!?」
(そんなところに寝袋なんてあったのか…全然見てなかった…。)
「はい、静かになるまで8秒かかりました。君たちは合理性に欠けるね。」
緑谷の足元にいつの間にか転がっていた寝袋から顔を出した相澤は続ける。
「担任の相澤消太だ。よろしくね。」
「早速だがこれ着てグラウンドに出ろ。」
相澤が差し出したのは雄英高校の体操服であった。これから入学式やガイダンスが予定されているというのに何をするのだろうと疑問に思いながら生徒たちは体操服に着替えグラウンドへと繰り出す。
「「「「「個性把握テストォ!!!??」」」」
「入学式は!?ガイダンスは!?」
「ヒーローになるならそんな悠長な行事出てる暇ないよ。雄英高校は自由な校風が売り文句。そしてそれは教師も例外じゃない。」
言ってることが正しいような間違ってるようなことを言って相澤は続ける。
「お前たちも中学の頃からやってるだろ?体力テスト。実技入試成績のトップは星熊だったな。中学のときソフトボール投げ何メートルだった?」
「97メートルです。」
「「「でかっ!?」」」
「そうか、お前の個性は異形の個性だったな。じゃあ爆豪……」
「いえ、力は抑えておりますので本気でやればもっと飛ぶと思います」
97メートルという驚異的な数字を先聞かされて驚いていた生徒たちだったがまだ本気を出していないという発言に再び驚いた。
「よし、じゃあやって見ろ。円から出なきゃ何してもいい。はよ。思いっきりな」
「はい」
そう言われるとホシグマはソフトボール投げを行うため円へと入る。
「ふーーーっ……」
ボールを手に持つとホシグマは深く息を吐いて少し精神統一を行う。
そして足から腰へ、肩から腕へ力を一身に込める。そして手に持ったボールを力一杯握りしめ、遥か上空に投げ飛ばすイメージでボールをぶん投げた。
「ふんっっ!!」
投げたボールが空を切る。そしてホシグマのイメージ通りボールは遥か上空に飛んでいき、徐々にその姿が見えなくなると相澤が持っていた端末に記録が表示される。
952メートル。それがホシグマの記録だった。
「まずは自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段。」
「「「「「「おおおー!!!」」」」」」
「952メートルってマジかよ…。」
「何コレ!?超面白そう!」
「個性自由に使えるってさすがヒーロー科!」
「面白そう…か。ヒーローになるための3年間そんな腹積もり過ごすつもりか?」
「よぉし、8種目トータル最下位のやつは見込みなしと判断し、除籍処分としよう。」
「「「「「はああああああ!!?」」」」
「ようこそ。これが雄英高校ヒーロー科だ…」
思ってたより早くやって来た最悪過ぎる試練。しかし、ホシグマの表情は明るく余裕が感じられた。
(個性使用自由の体力テスト……面白い……!勝負ですお嬢様…!)
麗日さんとか緑谷くんとかと絡ませたかった…。
次回は体力テストです。ちょっと盛り過ぎなぐらいやってみます。
さて、今回も投稿が遅れましたが次回からはもう少し早くなるかなと思います。いつも読んでくれる方、誠にありがとうございます。今後とも見ていってもらえると嬉しいです。
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