IS 蒼き者の生き様 作:妖刀
それではどうぞ
それから蒼也からISが格納され、生身の蒼也が地に放り出された。
「さて、さっさと回収するか……」
千冬は蒼也を掴もうとした。だが、首から下げられていた二つのドッグタグから出たオーラが、その手に触れられるのを拒むかのように打鉄の腕を弾いた。
「何っ!?」
千冬はそれに驚き、後ろに一回下がって様子を見た。オーラは蒼也を守るかのようにうねうねと蠢いていたが、少し時間が経つと消えて行った。
「な、何だ今のは……」
千冬は先程の出来事に驚きながらも、再び蒼也に触れようとした。だが再び現れた赤のオーラによって阻まれ、再び後ろに下がった。
「くそっ……、これでは連れて帰ることもできんぞ……」
千冬はそうするか悩んでいたが、それを打ち破るものがいた。
「ん?何の用だ、更識」
簪である。簪は蒼也に打鉄二式を纏ったまま近づくと、首と膝の裏に手を近づけた。この時赤いオーラが現れて、簪の手を弾いた。
この時簪は少し悲しい顔をした。
「更識、邪魔だから下がってろ」
千冬はそう言って簪をさがらせようとするが、全く動かなかったため苛立ちが募った。
「蒼也、怖がらないで……。私が、いるから……」
簪がそう言った時、蒼也を護るかのように出ていたオーラが消え、簪は蒼也をお姫様抱っこをしてピットの方へと連れて行った。
「何……だと……!?」
千冬は簪がいとも簡単に蒼也に触れることができたことに驚いて、その場に立ち尽くしていたのであった。
そしていろいろなことがあった。他の教員が、ブルーディスティニーの待機状態である蒼のドッグタグを生身で触れようとしたら赤いオーラによって指を切られて怪我をしたり、簪が触っても何もなかったから、簪に取らせてそして触れようとしたらやはり怪我をしたり、マジックハンド的なのを使って取ろうとしたら、やはり赤いオーラによってマジックハンドが切り刻まれたり。そんなことがあってブルーは回収されることなく、蒼也の首から垂れ下がってるままだった。
あれから十数日後
ここはIS学園に設置されている病院。とある病室に簪は向かっていた。そこは一般病棟とは違い危険人物等を幽閉するような病棟であり、一般生徒が入れるかのようなところではなかったが楯無に許可を取ってもらい、簪はその病室に向かっていた。
そもそもIS学園に危険人物などいないためほとんど使われることのなかったところだが、数日前の事件でそこに入院することになった人物がいた。
そして病室の前に着いた簪は扉をノックするが返事はなく、小さくため息を吐いた後扉を開けて病室に入った。
病室は個室になっており、白で基調された部屋の奥に一つベッドがあった。そこには一人の男子が腕に点滴を付けた状態で眠っていた。
「蒼也……」
簪はベッドの近くにあった椅子に座って蒼也の顔を見た。前は肩甲骨ぐらいまで伸びていた髪が無造作に切られてとても短くなっており、あちこちが傷だらけで、左目には連れていかれる前にはつけていなかった眼帯がつけられていた。
簪は蒼也の左手をギュッと握るが何も反応はなく、少し悲しそうな顔をした。
「蒼也、あのね、今日お姉ちゃんが退院したんだ。とてもね、嬉しかったよ」
この時簪の声が震えており、涙が頬を伝った。
「だからね……、蒼也……、早く元気になってよ……、お願い、だから……」
簪の声は嗚咽交じりになっていき、そして涙がボロボロと溢れかえってきた。
ただ部屋には、簪の泣き声と心電図の音だけが響いていた……。
この時、蒼也の首から下げられていた蒼のドッグタグと、赤で縁取られた蒼のドッグタグから僅かに赤いオーラがユラリと出たのであった。
昼休み
「織斑先生、聞きたいことがあるのですが」
「何だ、更識」
楯無は病院を退院した後、最初に向かったのは千冬がいる職員室だった。千冬は楯無の顔を見たとき、一瞬だが嫌そうな顔をした。
「織斑先生。単刀直入に聞きますが、蒼也を研究所送りにするか否かの問題ってまだ決まってなかったですよね。どうして決まってないのに無理やり送ったのですか?」
それを言った時、周りにいた先生が二人の方を一気に向いた。
「更識、その話は応接室でするぞ」
千冬はそう言って応接室の方へ向かった。そして二人は備え付けられていたソファーに向かい合うように座った。
「では改めて聞きますけど、蒼也を研究所送りにするか否かの問題ってまだ決まってなかったですよね。どうして決まってないのに無理やり送ったのですか?」
それを聞いた千冬は、やはりかみたいな顔をして小さくため息を吐いた。
「前にも行った筈だ。賛成意見が多かったからさっさと送っただけだとな。どうして今更それを聞く?」
「織斑先生、賛成意見が多かったと言いましたが、実際は半々のはずです。そもそも学園長は反対してましたよね。そこはどうなんですか?」
この時千冬が一瞬だけ顔をしかめた。
「……学園長と黒城は親戚同士だからな、情が働いて反対してるのだろう」
それを聞いたとき、楯無はニヤリと笑った。
「そういえば織斑先生。話によると織斑君を研究所行きから庇って、蒼也を研究所送りにしたって聞きましたけど?」
「な、何だそのデマは!?」
この時千冬は大きく狼狽した。それに対して楯無は黒い笑みを浮かべており、目の前にICレコーダーをテーブルの上に置いた。
「こ、これは何だ?」
「これはですね……」
そして楯無は再生ボタンを押した。
『アンタハイッタ。セイトヲマモルノガシゴトダト。ナノニウラギッタ。シッテルヨ。アンタガケンキュウジョニオクルノヲキョカシタッテ』
この時、ノイズ交じりだが会話が聞こえ、千冬は額から汗が一筋流れた。
『そ、そんなことはしてない!』
『ウソダ。オリムラトオレノドチラカヲセイフニワタセッテイワレタトキ、チュウチョナクオレヲエランダッテケンキュジョノヤツラガイッテタ』
『そ、それは……』
そして楯無がストップボタンを押して再生を止めた後、千冬の方を向いた。このとき千冬は冷や汗をだらだら掻いており、何か呟いていた。
「さ、更識!何故貴様がそんなのを持っている!」
「これですか?あの時のアリーナの通信記録を調べた結果、これが出てきたのでそれをICレコーダーに読み込ませました」
この時千冬は奥歯をギリリと鳴らしていたが、そのときだった。
キーン、コーン、カーン、コーン
授業が始まる十分前のチャイムが鳴ったのだ。
「あ、チャイムが鳴ったから教室に戻りますね」
楯無はそう言って席を立ち、扉に手をかけてそこで立ち止まった。
「織斑先生」
「な、何だ?」
「明日もこのことで話し合いましょうか」
楯無は笑顔でそう言ったが、一瞬だけ出た殺気に千冬は鳥肌を立たせた。そして楯無が応接室から出て行き、千冬は背もたれに背中を預けるかのようにぐったりとした。
「くそっ……、あんなのを持ってたとはな……。通信記録を消していなかったのが誤りだったか……。っと、いかんな。次の授業に遅れる」
千冬はそう言って応接室から出て行くのであった。
チャイムが病室に聞こえたとき、簪はすでに泣き止んでいたが目を赤く腫らしていた。
「蒼也、また、来るから……」
簪は寂しい笑顔を浮かべて、病室を出ていた。
そして簪が出て行った後、蒼也の手がピクリと動いた。そして目を薄らと開けた後、手を扉の方へと向けた。
「待っ……て……、かん……ざ……し……」
そして意識を再び失い、蒼也は眠りについた。
そして蒼也は夢を見た。学園に入ってきてから今までの起きた出来事の夢を。
次回から原作第一巻の話に入っていきます。多くても20話ほどで終わらせて、この話の続きに入っていきます。