【完結】推しのレネ・コスタさんが実は地雷系だった件   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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序章【レネ・コスタは可愛い】

 

 

 人生とはなにが起こるかわからない。

 そして運命とはほんの些細な動きで変わる。

 

 ある時間に水を飲んだり、小石を蹴り飛ばしたり。今日のご飯は肉にしようと思ったが魚にしようと思い直したり。

 こんな些細なことで運命は分岐する。

 

 偶然とは恐ろしい。

 僕は満面の笑みを浮かべる美少女を見てひしひしと感じたのだ。

 

 おお神よ。僕は何か悪いことをしたのでしょうか? 

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「よぉジーク! 相席するぞ」

「お邪魔するわね」

「ウィリー、エリザ。2人揃って来るなんて珍しいね」

「たまたま鉢合わせてな。ってんだよお前少食だな! 食べねえとパイロットやれねえぞ!」

「あんたと比べたらみんな少食だよ」

 

 山盛りの昼ご飯が盛られたトレイがドカッとテーブルに乗る。衝撃で唐揚げが一つ皿から溢れたがトレイの上なら問題なしと金髪の少年はフォークをぶっ差した。

 

「今日午後なんだっけ?」

「宇宙物理学」

「うぎゃー! あの堅物ババアの授業じゃねえかよぉ。いいよなぁジークとエリザは気に入られてて」

「ジークは真面目だから」

「エリザには負けるよ。僕はただ与えられたことをやってるだけだから」

「というかあんた宿題やったの?」

「え、そんなのあんの? 嘘だよな! 嘘といってエリザちゃん!」

 

 アスティカシア高等専門学園。

 

 宇宙に点在する宇宙都市番号73宇宙居住区(フロント)

 世界的巨大複合企業ベネリットグループ総裁、デリング・レンブラン主導の元に建造された高等教育機関である。

 

 広大な敷地はモビルスーツが歩けるぐらい大きく。

 ベネリットグループ傘下組織に推薦された生徒は大きくパイロット科、整備科、経営戦略科の三種類に分けられ。

 その中でもパイロット科はエリートとして注目される存在だ。

 そして成績ランキングが高いほど人気も高い。

 

「なあ、あそこ見ろよ。ペイル寮のスチュアート先輩だぞ」

「ねえねえ、あそこに座ってるのゴルドライン先輩とハーク先輩だよ」

「学園トップ4のうち3人かぁ。絵になるよねえ」

 

 食堂のあちこちから視線が集中した。

 3人とも目立つ髪色をしてるから集まれば当然といえば当然だが。

 

 大盛りのご飯を持ってきた男子はウィリー・ハーク。

 ジェターク寮所属のパイロット科三年生。学園ランキング4位。遠距離から一方的に撃ちまくる戦法を好む。

 金髪のオールバックに犬歯持ちというワイルドな見た目で可愛い女の子に目がなく。学園の美少女を軒並みチェックしてるらしい。

 

 隣に座るのはエリザ・スチュアートという赤毛ロングの女子。

 ペイル寮所属のパイロット科三年生。学園ランキング2位。ペイル社モビルスーツらしい高機動に物を言わせた一撃離脱を得意とする。

 燃えるような赤毛とは裏腹にクールな性格でそれがまた学園の男子の人気を獲得しているのだとか。

 

 2人は容姿も整ってるため学園の人気者である。

 そんな中、学園3位の僕も例外ではなかったりする。

 

「ゴルドライン先輩!」

「むっ?」

 

 ご飯を頬張ったタイミングで女子生徒に声をかけられた。頬張ったハムスター状態のまま応じるのは失礼だから急いで水で流し込んだ。

 

 一年生なのだろう女の子は後ろ手にしばらくモジモジしたあと。意を決して手を前に出した。

 その手にはハートマークのシールで止められたいかにもな手紙が握られていた。

 

「こ、これ! 読んで下さい!」

「あ、えっと」

「ここに置いておきます! 待ってますから!!」

 

 と、手紙をテーブルに置いて全速力で食堂から離脱した。

 

「おーおー。モテモテですなぁジークさぁん。流石大富豪の息子」

「アスティカシアの銀髪王子」

「学園3位のハンサムボーイ」

「それでいて一人称僕という反則要素」

「「よっ。校内一の告白お断り男子」」

「二人ともそれ以上言うなら決闘を申し込もうじゃないか」

 

 即座に視線を反らした二人に溜め息を吐く。

 

 グラスレー寮所属。パイロット科三年。学園ランキング3位。

 名前をジークフリート・ゴルドライン。

 

 なんともイケイケな名前で、分不相応だし恥ずかしいから皆には縮めてジークと呼ばせている。

 マタニティハイって怖い。

 

 銀髪に紫の瞳で、二人曰く整ってる顔立ちだから3人の中で一番人気があるのだとか。個人的に勘弁してほしい。

 数多の女子を相手できるほど、僕は要領よくないのだ。ゼネリの御曹司とは違うのだから。

 

 ちなみに3人の寮であるジェターク、ペイル、グラスレーはベネリットグループを代表する三大企業、通称『御三家』と呼ばれ。学園内でも派閥として通っている。

 

「しかしベタベタにラブレターだな」

「結構可愛い子だったけど。どうするの?」

「あー駄目だ駄目だ。こいついま絶賛夢中の子いるから望み薄だ」

「ちょっとウィリー!?」

「へえ初耳。誰なの?」

「それは」

「おい! レネちゃんが来たぞぉ!!」

 

 突然食堂が騒がしくなり皆立ち上がった。

 先ほどこちらに向けられた目線は幾つかの女子だけとなった。

 

 食堂に入ってきた女の子に、9割の男子が目を輝かせ。5割の女子が嫌そうな目線を向けた

 

 現れたのは。一年生の女の子。

 

 ボリュームのある薄茶の髪を二つに絞ったビッグテールはフワフワのモフモフで。

 クリっとした髪と同じ色の瞳は小動物を思わせ。そのマスコット感ある顔と低身長とは対照的に白のトップスを押し上げるように突き出したバストは黒いヘソ浮かしインナーと合わせて絶妙な隙間を生み出し、半ズボンの左右非対称なブーツとの間に二種類の素肌領域を産み出す。

 

 小動物でかつトランジスタグラマー。

 そして顔も声も、いや彼女を構成する全てに可愛さがあり。

 まさに男の子の好きをこれでもかと詰め込んだ女の子が。

 

「あ、みんな! おはよー!」

「「「レーネちゃーーん!!」」」

 

 レネ・コスタという女子なのである(byウィリー談)

 

 笑顔一つで食堂が一瞬でお祭り状態。

 入学から3ヶ月で学園の男子を虜にした彼女の魅力はとどまることを知らず。

 校内に存在するファンクラブの内、彼女のファンクラブはその中でも最大規模を誇る。

 

「朝からレネちゃんに会えるなんて最高だ!」

「私もみんなに会えて嬉しい! 今日も頑張ってこうね!」

「勿論だぜレネちゃん!」

「今日も可愛いよー!」

「レネちゃん宇宙1ーー!!」

 

 彼女のその姿は一言で言えばあざとくて媚びているブリッ子と呼ばれるものだろう。現に女子からはそれで煙たがれている

 だがそれを悪印象に感じさせないのは単純に彼女が完成されてるからだ。

 彼女はただただ可愛い。男たちは可愛い以外の感想が出てこないのだ。 

 

「可愛い………」

「ふーーん」

「なに?」

「これまで色んな女の子に告白されて相手にしなかったジークの好みがあんな感じだなんて」

「悪い?」

「ううん。意外だなって思っただけ」

 

 僕もここまで入れ込むとは思わなかったよ。

 彼女を認識した瞬間。胸が熱くなって仕方がなかった。

 一瞬にして全てを奪われたような、あの感覚は忘れられない。

 

「でも少し心配だ。あれが本当に彼女の本質なら良いのだが」

「レネちゃんが性悪女だって言うのかよ!」

「そうじゃないわウィリー。でも人の内面なんて誰にもわからないものよ。現に私たち入学からずっといるけど。お互い知らないことや秘密にしてることはあるでしょう?」

 

 私も2人が知らない秘密あるしね。

 コーヒーを口に含む彼女の言葉を飲み込みつつも、やはり認められないものはあった。 

 

「だからってレネちゃんに至っては有り得ねえよ。俺話したこと何回もあるけど。あれは天使だ」

「うん。コスタさんは良い子だよ」

「ベタ惚れってわけね。悪かったわ」

 

 お手上げとばかりにエリザはコーヒーを飲み干した。

 彼女も彼女で本気で思ってるわけではなかったのだろう。

 

「心配してくれてありがとう。でもエリザが心配することはないよ。別に告白するわけでもないし」

「あらそうなの? ジークぐらいの物件なら食いつくんじゃないの?」

「いやいや。彼女はみんなのアイドルだし」

「それに告白したとして、それがレネちゃんのファンにバレた暁には」

「学園生活終了ね」

 

 毎日毎日ファンから睨まれて針のむしろのような日々を過ごす。

 そして過激派が出た日には。

 ブルッ。なにもないはずなのに寒くなってきた。

 

「僕は遠くから眺めるだけでいいよ」

「イケメンフェイスが泣くねぇ」

「やろうと思えば複数人囲えるスペックなのにね」

 

 そんなスペックはない。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「す、好きです! わ、わわ私とお付き合いしてください!!」

 

 毎度のことながらこのシチュエーションは苦手だ。

 相手を悪くない。この子もどういう理由であれ自分にアプローチをしてきた。

 

「ごめんなさい」

 

 それを断るというのは何度やってもなれないもので。あっさり引き下がるならいいんだが。

 全部が全部そうとは限らず。

 

「ちょっと! この子が折角勇気だして告ったのに速攻で振るって!」

「少しは悪いと思わないの!?」

 

 こうして取り巻きがいるのは本当に最悪。

 

 あまり思いたくないが。一方的に予定をねじ込まれてドタキャンが出来ないうえ断ったらサイドが捲し立てるのってどうにかならないのかな。

 

 2人は善意でやってるのだろうけど。真ん中の子はそれを望んでいるのかという。

 もし望んでたら、又はそれも織り込み済みでやってるならなおのことたちが悪い。

 

 そう思いたくはないな。

 だがいちいち構ってられないのも事実だし。

 

「言葉が足りないのなら謝る。だけど、僕が言葉を並べて傷つくのは彼女のほうだ。お望みなら彼女と付き合えない理由を10個並べてみせるが」

「あなた人の心がないの!?」

「どうだろうな。少なくとも僕はそこまで冷血ではないつもりだ」

「っ! 決闘よ! 私が勝ったらこの子と!」

「も、もういいよ! ごめんなさい! 失礼します!」

「あっ、ちょっと!」

 

 真ん中の子が頭を下げて走り去った。

 取り巻きの子はこっちを睨んで後を追う。

 

 思わず息を吐いた。

 真ん中がグルという最悪のパターンはなかったみたいだ。

 

 大体ね。

 

 こっちもこっちで何が楽しくて断んなきゃいけないのか。

 告白なんてYesかNoの二つなのにYesしか認められないって理不尽だよ。

 

 僕にも選ぶ権利ぐらいあって良いんじゃないかな。

 

「はーー」

 

 僕だって好きでモテたんじゃない。

 

 パイロット科として良い成績を取っているのは軍に入るときに有利になるため。

 学生の内に経験を積めば軍属としての道は遥かに近くなる。

 顔なんて生まれつきだし。個人的にペイルの『氷の君』の方が整ってるし。

 

 それにウィリーとエリザ。2人と切磋琢磨していく関係は非常に心地良い。だから恋愛にはそこまで必要性も感じないし、現状に満足していた。

 

「もしコスタさんだったら」

『ゴルドライン先輩、私と付き合ってください』

「ふひゅ」

 

 ………いけない。我ながらキモ過ぎる声が出てしまった。

 

 断った理由の半分、いや3分の2は彼女だ。

 話しかけたことすらない癖に告白される度に彼女と比べてしまう。

 目の前の子が陰ってしまう。

 

 ウィリーに度々「ジークならワンチャンどころか確定一発狙えるんじゃね」的なことを言われるが。僕と彼女がそんな関係になるわけ………

 

『せんぱーい! お弁当作ってみました!』

『私先輩といる時間凄い好きです!』

『私以外に優しくしないでください』

『ジークさん。そろそろ関係進めてみます?』

 

 ゴン! 

 

 気付けば壁に頭を打ち付けていた。

 

 バカバカバカバカ。

 

 気付けば妄想を繰り広げてしかもニヤケてる。いま凄いニヤケてる。

 ギャルゲーヒロインも真っ青な彼女との甘いひとときを妄想すると自分でもテンションが上がってしまう。

 今の僕最高にキモい。

 

 僕も男なんだなぁ。みんなみたいに騒げないだけで。

 

「帰ろう」

 

 帰ってシャワーでも浴びて冷静になろう。

 このままだと妄想がエスカレートしてRに突入する。

 

「だぁぁぁ! あのクソセクハラ教師! 毎度毎度鼻の下伸ばしやがって!!」

 

 ガン! ガン! ガン! 

 

 なんだなんだ? 

 

「私の目は胸にねえっての! 可愛いのは胸だけか!? 私は全身可愛いんだよ!!」

 

 誰かがドスの聞いた声で何かを蹴り続けている。

 

 こっわ。アスティカシアって結構治安悪いからなぁ。

 理事長のデリング総裁がそもそも弱肉強食を是としているから校風もそっちよりになる傾向があるし。

 

 しかもこの声。女の子かな。

 同じ女の子でもコスタさんとは雲泥の差だな。コスタさんはそれはもう可愛いを突き詰めたような声だし。

 

「陰険! ハゲ! 妻子持ちの癖に生徒に色目使いやがってクソが! クソが! クソが!!」

 

 それに引き換えこっちはなんだ。刺々しいとはこのこと。品性の欠片もなし。

 

 さっさと通りすぎよう。目を合わせず真っ直ぐだけを見て。

 触らぬ神に祟りなし。

 もし絡まれても全力疾走で逃げよう。

 

 よし。

 

「死ね! 死ね! 死ね! 死ね!」

 

 よーい………

 

「死んじまえクソがぁ!!」

 

 ドっ………

 

 ガシャーン!! 

 

 けたたましい音に思わず足を止めてしまった。

 そして条件反射で顔を向いてしまった。

 

「あ?」

「………………………???」

 

 ………………………??? 

 

 

 

 

 

 フリーズ。機能停止。

 

 俺の細胞が脳からの命令を全てシャットアウトしてしまった。

 

 視線の先には蹴り飛ばされて散乱したであろうゴミ箱の中身があって。

 それを蹴り飛ばした女の子はレネ・コスタに似た女の子で。

 

 ………………レネ・コスタ? 

 

 

 

 

 

 脳の一部が再起動する。

 

 夕日時間に設定されたフロントの空の下。

 ゴミ箱を蹴り飛ばした女の子は薄茶のビッグテールで。スタイルが良くて。顔は可愛いけど凄い怒ってて怖い。

 

 外見的特徴はレネ・コスタなのだが。

 まるっきり別人ってぐらい雰囲気が違った。

 

 僕が知ってるコスタさんは例えるなら愛嬌のあるチワワで。

 目の前にいるレネ・コスタそっくりの女の子は例えるなら小さい熊だ。

 

 身体がまったく動かない。

 彼女も何処か焦った表情を浮かべて汗を垂らした。

 こっちは滝汗が止まらない。

 

 僕たちはしばし目を合わせ続けた。

 合わせ続けて、合わせ続けて。

 

 僕は………

 

 何を思ったか蹴り飛ばされたゴミ箱を直していた。

 

「あれ?」

 

 あれあれあれ? 僕は何を? 

 

 いつの間に僕は此処に? 

 

 時が飛んだ。そう錯覚するぐらい無意識の行動だった。深紅王発動した。

 空き缶をゴミ箱に戻して元の位置に置いた。これで元通り。

 

「………」

「………さよなら!」

「待てコラ!」

 

 ヒィィ! ドスの聞いた声! 

 

 外見からはまったく予想つかないほど強気なボイスにまたも身体が硬直する。

 

「見ただろ?」

「見ましてません」

「どっちだよ。あーー、しくったぁ。迂闊だったなぁ」

 

 ガジガジと頭をかく女の子。やはり似てるレネ・コスタに。だけど全然知らないぞこんな女の子。

 

「あのー」

「なに」

「つかぬことを聞きますが」

「だからなんだよ」

「もしかしてコスタさんの双子のお姉さんですか?」

 

 そうだ。双子の姉妹だ。

 なんで気付かなかったかな。世の中双子なんか珍しくないし。良く見たらコスタさんより少し大人っぽく見えるし………

 

「ジョークで言ってる?」

「え?」

「私がレネ・コスタ以外の何に見えるって言うんだよ」

「………………二重人格だったので?」

「違う! これが素! なんでわかんないかな!」

 

 双子の姉妹でもなければ二重人格でもない? 

 そしてレネ・コスタと名乗っていて。

 

 つまり目の前にいるのはレネ・コスタ本人? 

 

 あの可愛らしい小動物な学園のアイドルが? 

 みんなにレーネちゃーん! って呼ばれてるあの娘? 

 

 再び脳がフリーズしそうになった。

 これはどんな夢だ? 情報が完結しない。

 

「あの、コスタさん。もしかして、普段は猫被ってる?」

「そうだけど」

「なんで?」

「あっちの方が男子の受けがいいから」

「なんでそんなこと」

「そんなの決まってるじゃない」

 

 コスタさんは腕を組んで真っ直ぐに僕を見上げた。

 腕を組んだ時、胸が揺れたのを視界に写らないように。

 

「私はチヤホヤされたいの!!」

「はぁい?」

「男の子に可愛いね、素敵だよーって褒めちぎられたいの。みんなに愛される女の子でいたいの。どんな言動をすれば男が喜ぶか。どんな仕草をすれば男が盛り上がるか把握してるの。現に私って可愛いでしょ?」

「えっ、と」

「か わ い い で しょ?」

「可愛いです! 凄く! 学園一!」

 

 でしょー? と笑う彼女に不覚にもドキッとした。

 これは何に対するドキッなのか。

 恐怖なのか、驚きなのか。

 

「そういえばどっかで見たことあると思ったら。あんた三年のパイロット科じゃん。名前は確か、ジークフリート・ゴルドライン」

「僕のこと、知ってるんだ」

「校内の有力株はチェックしてるの。特にパイロット科はね。エラン・ケレスだったり、ジョン・ヴァン・シモンズだったり。勿論先輩もね?」

 

 ニヒッと笑う彼女の笑顔はいつも校内で見る彼女だ。

 だが素の彼女を知った僕から見るとそこには底知れぬ怖さが垣間見えていた。

 

「ねえ、ジークフリート先輩♪」

「ヒェ。な、なんでございましょう」

 

 突然の猫撫で声。

 嫌な予感だけする! 

 

「私と付き合ってくれます?」

「はぁ!?」

 

 告白された!? なんで!? 

 嬉しいよりもう恐怖がまさってる! 

 もうほんと意味わからない! 

 

「あ、付き合うといっても恋人って訳じゃないから勘違いしないで下さいね?」

「ええ!?」

「あれー? もしかして先輩私と本気で付き合えると思ってましたー? 付き合ってあーんなことやこーんなこととか想像したり。キャースケベー!」

「してない! てかそこまでイメージする余裕ない!」

「あっそ、つまんな」

 

 やめて! その絶対零度の対応やめてくれ! 

 これ以上学園のアイドルのイメージ壊さないでくれ! 

 手遅れ? まてまてまだかき集めればなんとか! 

 

「で、話を戻しますけど。先輩には私のキープ君になってもらいます」

「キープ君?」

「所謂お気に入りの男子って奴です。ちなみに先輩は3号ですよ」

 

 僕の他に2人もいるの!? 

 

 ガラララ。最後の壁が崩れた気がした。

 

 僕が好きになっていた純真無垢なレネ・コスタはもういない。

 いや初めからいなかったのだ。

 絶望が僕のゴールだった。

 

「でも先輩は特別なキープ君ですよ。キープ君の中で素の私知ってるの先輩だけですし」

「う」

 

 嬉しくない。

 とは言えない。

 

「先輩にはこれから私の愚痴とか聞いてもらいますね、いやー丁度いい掃き溜めがなくて私困ってたんですよー。あっ、そういえば先輩って世界的大富豪の人ですよね。きゃーどうしよっかなぁ。色々お願いとか聞いてもらったりして」

「あ、えと、えとそのえと」

「因みに拒否権なしですよぉ。もし拒否したら学園中に先輩に乱暴されたーって言い触らします」

「そんなことしてない!」

「でもみーんな信じてくれますよね? 可愛いレネちゃんのことを」

 

 ヒュッと全身の血液が冷えた気がした。

 

 いままさに、僕の生殺与奪はレネ・コスタに握られたのだから。

 こんな2歳年下の後輩に。

 

「あと。もし私の本性をバラしたら………学園にいられねえようにしてやるからな?」

「はい」

 

 人生とは数奇なものだ。そして数多くの偶然で出来ている。

 

「乙女の秘密を見た責任、取ってもらいますからね」

 

 でもこれはあんまりだと思う。

 

 おお神よ………僕は何か悪いことをしたのでしょうか? 

 

「これから宜しくお願いしますね。せーんぱい☆」

「はい………」

 

 僕はこの日。満面の笑みを浮かべるレネ・コスタを決して忘れることはないだろう。

 

 だって。本性を知っても彼女の笑顔は本当に可愛かったのだから。

 怖いぐらいに………

 

 

 

 

 






 水星の魔女第一期がもうすぐ終わるので波にのって短編を書きました。
 3話、4話構成で終わることが目標かな?
 というか原作キャラがレネちゃんしか出てないという。
 一年前だから水星タヌキもいませんし。

 次はモビルスーツだします。

 作品作るのにレネちゃん調べまくったりイラスト見て情報収集してたらいつのまにかレネちゃんが推しになってました。
 おかしい、少し前はサビーナ様推しだったはずなのに。

 レネちゃん、恐ろしい子!


 
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