【完結】推しのレネ・コスタさんが実は地雷系だった件   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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 水星の魔女終わりましたね。
 いやーガンダム見たかと思ったらコードギアスでした。最推しのボブエルの安否が心配です。そしてダリルバルデの出番はあるのでしょうか。

 4ヶ月後に期待ですね、色々と。


前編【レネ・コスタは怖い可愛い】

 

 

「ねえウィリー。東洋のことわざに知らぬが仏ってあるでしょ。僕はそれを座右の銘にして生きて行こうと思う」

「なあラウダ後輩。朝から脳が破壊されてる親友を目のあたりにしたとき。どんな顔すればいいと思う」

「笑えばいいんじゃないですか?」

 

 アスティカシアの空は今日も晴れやか。というより晴れしかないんだけど。

 

 食堂でご飯も食べずに机にくたばってる僕を見てウィリーと後輩のラウダ・ニールくんはなんとも言えない目で見下ろしていた。

 

「あっ、ラウダくんおはよう。お兄さんは?」

「先生に呼ばれたみたいで。それはそれとして、目に見えてやつれてますけど何かありましたか?」

「あー、うん。人のイメージって実際はイメージでしかないんだなって」

「さっきからこんな感じなのよ。どうしよう」

「叩けば直るんじゃないですか」

「君グエルが側にいないと唐突にIQ下がるときあるよね」

「ジョークのつもりだったのですが………」

 

 若干落ち込みながら右手で左に垂れた前髪を弄るラウダくん。

 叩けば直るか。ああいいな、それで僕の記憶を1日ぐらい飛ばしてくれ………

 

「あ、レネちゃんだ」

「ビクゥ!」

「みんなおはよー!」

「おはよーレネちゃーーん!!」

 

 昨日と変わらず盛り上がる食堂。

 

 相も変わらない愛らしいスマイルは男子に安らぎの風を送り込んだ。

 

「んー、相変わらずレネちゃん可愛いなぁ。そいやラウダはレネちゃん推しじゃないの?」

「あの女が兄さんより魅力的だとは思えません」

「うん知ってた。てかあれジーク? どこいった………なにしてんのお前?」

「え?」

 

 周りが喝采に湧く中。

 僕はいつの間にか机の下に隠れてプルプル震えていた。

 

「あ」

「あ?」

「ありのまま今起こった事を」

「ポル構文はいいから何してんだよ」

「さ、細胞の言うこと聞いたらこうなった」

「希少な表現ですね」

 

 いやーなんだろう。本能覚醒したんじゃないかな。

 知らないけどさ。

 

 とりあえず今はコスタさんに会いたくない。というか顔見れない

 

 未だ昨日の事が夢だと思いたい。

 

 ようやく騒ぎが落ち着いたな。てかむしろ静か過ぎるような………

 あー、安心したらお腹空いてきた。まだご飯残ってるかな。

 

「よい、しょ?」

「おはようございます先輩♪」

 

 あ、おはようございますコスタさん。

 

「ンオヴァア!!」

 

 机から這い出たら目の前にコスタさん。

 後頭部にはテーブルの板。

 姿勢そのまま下がればどうなるか。

 

 ゴン!! 

 

「ンヴゥゥ!」

 

 後頭部強打。サスペンス死防率ナンバーワンの必殺パターンである。

 

「いっあぁぁー」

「大丈夫かジーク!」

「大変! 大丈夫ですかせんぱーい」

 

 こ、この猫撫で声。色んな意味で頭に響くぅ。

 

「だ、大丈夫。言うほど痛くない」

「今日のお前本当に変だぞ」

 

 そこには触れないでくれ。

 それよりも、なんでコスタさんがここに居るのかな? 

 

「先輩。どうして机の下にいたんですか?」

「えっと………………今日のラッキースポットが食堂の5番テーブルの下だったから」

「わー、凄い限定的ですね」

「さっきと言ってること違うじゃないですか」

 

 ラウダくんシー!! 

 

「ていうかレネちゃんなんで此処に?」

「ジーク先輩の姿が一瞬見えたので」

「こっちに来る必要なくない? 意味わからない」

「だってぇ。折角昨日キープ君になってくれた先輩におはようって言いたかったんだもん♪」

「ちょっ、バッ」

 

 咄嗟にコスタさんの口を塞ごうと試みたが時既に遅し。何故なら。

 

「なぁぁにぃぃぃ!?」

 

 レネ・コスタのファンは彼女の声を決して聞き逃すことはないのだから。

 

「あいつまさかレネちゃんのキープ!」

「しかも昨日! 嘘だろぉ!?」

「あんなハイスペに勝てる訳ないじゃぁぁん!!」

「死んだ! 俺たちの神は死んだぁ!」

 

 阿鼻叫喚! 

 

 たった一言でサンクチュアリがアンダーグラウンドに早変わり! 

 このコスタさん魔性過ぎる! 

 

「せーんぱい」

「なに?」

「………あんまオドオドすんなよ。不自然だろ」

「ピッ」

「それじゃ先輩。またあとで~」

「またあとで? え、何があとで!?」

 

 怖くて身体が動かない。

 てか本当に挨拶だけだったの!? 

 

「お前レネちゃんのキープだったの?」

「ななななんのこと」

「あー良いわ。とりあえず此処出るぞ」

「なんで?」

「ん」

 

 クイッと親指で示した方向には。

 無数の男子がこちらを。幻覚だろうか、みんな目が赤く光っている。

 

「ナニ? アノ男ナニ?」

「チョット顔が良イカラッテ、ナンデモ許サレルト思ウナヨ」

「処ス? アイツ処ス?」

「通報シマシタ」

「何処ニ?」

「然ルベキトコ」

 

 ヒィ! 何故みんな片言!? 

 やはり机の下から出たのが間違いだったか!? 

 

「逃げるぞ。だが決して走るな。獣は走る人間を追いかける習性がある」

「獣? あれ人間じゃないの?」

「人も突き詰めれば獣だ」

「真理………」

 

 ウィリーに連れられるまま力が入らない足を引きずっていく。

 その間絶えず無数の男から放たれる刺視線に堪えながら。

 

「戻ったぞ」

「あ、兄さんおかえり」

「なんだ? 妙に食堂が殺気だってるな。何があった」

「修羅場だよ」

「修羅場ぁ?」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 食堂を出てウィリーの部屋に連れられた。

 相変わらずアイドルや美人さんのポスターやらDVDなどが並べられててなんだか落ち着かない。

 その中にはレネ・コスタのポスター(本人公認ファンメイド商品)もあって、とりあえず視界の外へ。

 

「さーて。何があった?」

「黙秘権」

「レネちゃんのアハンウフンな現場にあって。あわよくばニャンニャンなネタを使って卑劣なことをアタァッ!」

「そんなわけないだろ!」

 

 手近にあった本でチョップしてやった。

 角でやらないだけ慈悲はあるとしれ。

 

「イテテ。掴みのジョークはよしとして。ほんと何があった? 昨日は遠巻きにレネちゃん眺めて微笑んでたお前が今日は化け物見るような目で見てたし」

「………」

「ジーク」

「言えない、口止めされてるから」

「誰に」

「………………」

「それも言えねえのな」

 

 イグザクトリー。

 

「お前のことは信用してるし疑うこともねえ。お前が清廉潔白な人間だってのはわかってるつもりだ」

「僕、コスタさんと付き合う妄想してヌフフって言うぐらいキモいけど」

「それは男として平常運転だから問題ない。俺なんて四六時中女の子とキャッキャウフフすることしか考えてねえからな。お前とは正反対よ」

佞悪醜穢(ねいあくしゅうわい)?」

「そこまで汚れてはねえよ」

 

 佞悪醜穢。

 清廉潔白の対義語。

 心が曲がって性質が悪く、醜く汚らわしいこと。

 

「ねえウィリー。キープのことみんな知ってたみたいだけど。周知なの?」

「ほぼ周知だぞ。レネちゃんのファンの中でも選ばれたお気に入りがキープになる。未来の彼氏候補なんじゃねえかって噂もあるぐらいだ」

「知らなかった………」

「お前レネちゃんの噂とかシャットアウトしてたもんな」

「深入りするつもりなかったし」

 

 遠巻きで見るだけで満足してたのに。

 あの時回れ右してればなにも知らずに無垢なまま彼女を眺めてガヤで居続けれたのに。

 

「わからんなぁ。キープだぞ? レネちゃんのキープなんてアス高男子にとっては大枚叩いても手に入れたい称号だ」

「お前にやる。僕はいらない」

「2個もいらないよ。とにもかくにも他の男子からしたらもうお前は危険人物だ。校内一のモテ男が彼氏候補なんて。絶望だな」

 

 笑い事じゃない。

 これから嫌がらせなりなんなりの相手をしなければならないかと思うと。胃が痛くなる。

 

「コスタさんがそんな尻軽とは思わなかった」

「いやいや。レネちゃんはキープ相手でも肉体接触なんかしないぜ。飽くまでお気に入りに選ばれたってだけでアイドルとファンの垣根は越えねえ。それがレネ・コスタだ」

「知ったような口を」

「だって俺もキープだし」

 

 は? 

 

「え、何番目?」

 

 ウィリーはニーと笑顔で指を2本立てた。

 

「キープ2号? マジか、え、なんで黙ってたし」

「お前みたいになるから」

「道連れでバラしていい?」

「やめろやめろ!」

「ウィリーに向かう分僕が楽になる(一蓮托生しようよ親友)」

「うん多分本音建前逆だな」

 

 これはうっかり

 

 まあやらないけど。

 流石に友達を売るほど人捨ててはいない。

 

「入学当初から目を付けててな。道が分からなくて案内してそこから親睦を深めた」

「なにそのスピード攻略」

「まあ流石の俺もキープ2号になって下さいって言われた時は目が点になったわ」

「そりゃそうだわ」

「でも可愛いからオールオッケー!」

 

 最強だねウィリー。

 僕もそんな鋼鉄のハートが欲しいよ。

 

「キープってなにするの?」

「別に特別なことなんてしねえよ。だが連絡先をゲット出来る。ということは会話する機会が増える。そしてより親密になれる。レネちゃんファンクラブの栄誉会員にもなれるし、あと優越感が半端ないし彼氏候補という噂も!」

 

 どれもいらない………

 

「捨てたいなぁ。誰か高値で買ってくれないかな」

「お前金に困ってねえだろ」

「論点そこ? じゃあウィリー買ってよ、ただでやるから」

「だからいらないって。お前なんでそんなレネちゃんに苦手意識出来たわけ?」

 

 マジで理解できねえって顔しないでくれ。

 僕だって一昨日の僕が見たら同じ顔するだろうけど。

 

 あー、話したい。

 胸のうち全てをぶちまけたーい。

 

「………まあ。お前に何があったのかは聞かないでやるし。詮索もしねえでやるよ。レネちゃんに裏の顔あったり、それでお前が何かしらあったのかは察しないでやる」

「うん」

「けど。辛くなったり危なくなったりしたら言えよ。レネちゃん・ファンクラブ副会長の俺がなんとかしてやるから」

「感激する場面なんだろうけどここで新情報が出て僕はどんな顔すれば良いかわかんないよ」

「笑」

「わないからね」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 どうもスネーク、じゃない。

 隠密行動中のジークフリートです。

 

 現在ジェターク寮からグラスレー寮に帰る途中なのですが。

 なんとも男子の視線がギョロギョロしてる。

 

 なんか空気でわかるの。こいつと目があっちゃ駄目だ。目があった瞬間詰問(バトル)になると。

 頭にビックリマークがつけば囲まれる前にCQC決めなきゃいけない。そんな激しいことはしたくない。

 僕はこれからも平和に学園生活を謳歌するんだ(無理です)

 

 自分の中に隠れたスニーキングスキルを存分に発揮し。なんとかグラスレー寮に入ることが出来た。

 

 だがここでアクシデントが発生してしまった。

 

 なんと、なんと。

 部屋の前になんかレネちゃんファンっぽい男が2人もいる!! 

 

 なんでさ。なんで待機してるの? おかしくない? スタンバらないでよ君たち僕のSPでもなんでもないでしょ? 

 頼むからそんな屈強な顔で部屋の前でスタンバらないでよ頼むから怖いから! 

 

 今日は操縦演習をキャンセルして部屋で籠城しようと思ったのに。それも看破されてたということか。

 ウィリーの部屋じゃなくて僕の部屋にしてもらうんだった! 

 

 いやどうしよう。話してわかってくれるかな? 

 でもことの詳細話せないしなにこのジレンマ! 

 

 おおおい君たち!? なに懐からパン取り出してるんだ! 

 張り込みじゃねえんだぞ! 張り込むならいま僕がいるようなポジションにいなさいよ! 

 

 仕方ない。時間を見てまた来るしか………

 

 ポンポン。

 

「!?」

 

 肩を叩かれた。

 まさか(ファン)!? 即座に戦闘態勢に。

 

「こんにちはー。さっきぶりだね」

「コッ」

 

 急いで口を塞いで声が出るのを防ぐ。

 大丈夫だ。バレてない。

 

 肩を叩いたのはコスタさん。

 笑ってはいるが何処か小馬鹿にしたような表情。素のコスタさんだ。

 

「脅かさないで下さい。危うく手が出るとこだった」

「えー、なにエッチなこと?」

「違う!」

「たくっ、そんなにムキにならなくてもいいだろ」

 

 ケラケラ笑うコスタさん。させてる元凶が言わないでくれ。可愛いけど………

 

「なんでいるんですか。というか何故見つかったの」

「たまたま見つけた。ほんとは生徒手帳に連絡しようと思ったけど」

 

 アスティカシアの生徒手帳はデジタル手帳。

 手帳として使えるだけでなく電話、メールを送ったりと多機能な一種の携帯として使える。

 

 昨日の一件で強引に連絡先交換したんだった。

 

「とにかく場所を移したい。部屋の前に君のファンがいて帰れないんだ。なんか良い場所ない?」

「私の部屋」

「男を気軽に部屋に招こうとするんじゃない!」

 

 ほんとこの子考えの次元が僕と違いすぎる! 

 そもそもチヤホヤされたいっていう願望だけで学園の男どもをたった3ヶ月で虜にし、なおかつ目立ったトラブルなしなんてヤバすぎるし! 

 

「冗談ですよ先輩。もしかして童貞?」

「どどど童貞言うな!」

「うわっ、本当にそんな反応する奴いたんだ。うわっ」

「二回もうわって言うな!」

「おい誰だ、煩いぞ」

「あっ」

「おっ」

 

 背後に見張りの一人と。

 目と目が合う………瞬間。

 

「うおわぁ!」

「のお!?」

 

 思いっきり突き飛ばした。渾身の力を込めて。

 

「ご、ごめんなさい!」

「ちょ、ちょっと!?」

「こ、こちらアーノルド! ゴルドラインを部屋の前で発見! 繰り返す! ゴルドラインを」

 

 学生がなんでトランシーバー使ってるの! 本格的だな! そこは生徒手帳使え! 

 なに、僕殺されるの? どっかにスナイパーとかなんかいるのか!? 

 

「ちょ、止まって! 止まれ! 転ぶだろうが!」

「え………なんで僕と手繋いでるの!?」

「お前が掴んだからだろうが! 本当に頭と身体くっついてんのか!?」

 

 た、確かに。

 あの時ゴミ箱を直しに行った時も半ば意識飛んでたし。

 もしかして僕。脊髄反射で動いてる? 

 

 こんなこと今までなかったのに。

 

「待てーー!」

「逃がすと思うかぁ!」

「なに手繋いでんじゃぁぁぁ!」

「ギロチン刑だぁぁ!!」

「ひぃぃぃっ!」

 

 振り向きたくない! もう足音の数がおかしいもん!! 

 逃げ切るのは無理。いまは隠れなきゃ。もうそれしか頭になかった。

 

「入って!」

「うわった!」

 

 寮を出て目に入ったのは倉庫。

 鍵がかかってないとわかるや否やコスタさんを中に押し込み、出来るだけ早くかつ音を立てずに扉をしめた。

 

「何処行った!?」

「探せ! まだ遠くには行ってないはずだ!」

「念のため他の寮の奴らに連絡を!」

 

 …………足音が遠退いていく。行ったか。

 

「はぁ、ふぅ。ふーーー」

 

 息が続かない。内臓まろびでそう。

 なんで僕こんなことしてるんだろう。

 ていうかなんか左手が暖かくて柔らかい。

 凄い触り心地がいい。ニギニギしちゃう。

 

「ひゃっ」

「ん?」

「おい。何時まで握ってるんだよ」

 

 薄暗い部屋の中視線を下に。自分より小さくて色素の薄い………コスタさんの手。

 

「うわぁごめんなさいっ」

「お前。このレネちゃんの手掴んでおいてうわっ、はないだろうが。てか今までこんな強引に連れ回されたの初めてだわ」

「ごめんなさい。ていうか完全に猫脱いでるけどいいの? あと一応先輩よ僕」

「いま現在私と先輩どっちが立場上?」

 

 あなた様でございます邪し……女神レネ・コスタ様。

 ………女神も女神でろくでもないのいるから間違いではないな。

 

「薄暗くてよくわからないけど、ろくでもないこと考えてるだろ」

「コスタさんは女神だなって」

「どういう系」

「ギリシャあたりの」

「地雷ばっかじゃねえか!」

 

 当たってるから良いじゃない。

 なんか一周回って冷静になってるな。なんだろう。今どういう精神状態なんだろうか。

 賢者タイム? 

 

「ところて気づいてます? せーんぱい」

「ん?」

「部屋に連れ込むよりエロい場所に入りましたね」

 

 ………………確かに。

 暗がりの倉庫。目の前には美少女。

 これで僕がチャラ男か不細工なデブ親父だったら完全にアール乱暴系不純展開の完成だ。

 

 まあ僕はそのどちらでもないから問題なし。

 

「安心して。もう色んなことが起きすぎて萎えに萎えてるから」

「先輩遠慮なくなってきたね?」

「なんかオドオドするのすら疲れた………」

 

 ドカッと座ると土埃が舞った。

 とにかく疲れてもう動けん。ここ見つかったら、もう逃げられない。

 

「ねえ。なんで食堂であんなこと言ったの?」

「先輩の困った顔見たかったから?」

「それ本心で言ってるなら僕本当に嫌いになりそう」

「半分本心だよ」

「そこは濁してよ………もう」

 

 思わず顔を覆った。

 本当に性格悪いというか。

 

「まあ後半分は宣伝的な」

「なに。学園で一番モテてるゴルドライン先輩も私にかかればキープ3号ですよってアピールしたかった訳?」

「私の株も上がるし。他の男も負けるか! ってやる気だすし」

「逆恨みされてもしらねえぞ」

 

 只でさえ女子からの評価悪いんだから。

 

「大丈夫、ファンが守ってくれるし。これでも鍛えてるから。いざとなったら先輩が守って下さいね☆」

 

 そこでブリっ子出さないでくれ。聞こえる度に鳥肌が立つ

 本性知ってブリっ子がフリだとわかってからなんかゾワワってするんだよ。

 

「はあ。何も知らなかったあの頃に戻りたい………」

「まあ先輩は良いテストケースになってますよ。バレたらこうなるんだなっていう」

「ねえ。絶対に喋らないし平静を装うから解放してくれませんか」

「YA☆DA☆」

 

 畜生。こうなったら自爆特効でバラそうかな。

 駄目だ後が怖い! 

 

「ねえ」

「なに?」

「先輩って私のこと好きだったの?」

「え?」

「昔に戻りたいって言ってたし。彼女にしたいーって思ってた?」

「それは………」

 

 ない。遠巻きから見るだけでよかったし。

 どうせあと9ヶ月で卒業する。遠距離恋愛なんて出来る自信ないし。離れてる間にコスタさんが他の男に取られたらと思うと胸が痛む。

 

 でも今は違うから………本当に違うのかな? 

 

「外見しか見てなかったけど。普通に可愛かったから」

「普通レベル?」

「いや。とんでもなく凄いレベル。今までこんな可愛い子会ったことないっていうか」

「まあ当然よね。だって私だし」

 

 自信満々でなにより。

 

 ………あーでも。

 

「気になり始めたのは外見じゃなかったな」

「え? なにそれ。他に惚れる要素あったの? 自分で言うのもなんだけど私外面で勝負してるし。ねえ教えてよ、何処に惚れたの? 何処で惚れたの!?」

「ちょっ、近い!」

「ねえ教えてよ! これからに活かせるかもしれないから!!」

「ちょっとこんな暗いところで、うわっ!」

「キャッ!」

 

 お互いの足がもつれあってコスタさんが後ろに倒れかける。

 思わず手を掴んで立て直そうとしたが力及ばず一緒に倒れてしまった。

 

 ドシンと鈍い音が。

 せめてコスタさんを潰さないようにと腕に力を入れてなんとか踏みとどまった。

 

 が、ここで最大級の問題が発生する。

 

「「あっ」」

 

 至近距離で目と目が合う。

 相変わらず可愛いコスタさんの顔は流石に困惑したのか目をまん丸としたまま固まっている。

 

 僕の身体の下にコスタさんがいる。

 腕と腕の間にスッポリと収まったコスタさんは何時もより小さく見えて。それでいて主張の激しい胸部に当たらないように動こうにも動けずにいる。

 

 ………本当に可愛いなこの子。吸い込まれそう。

 

 いやいや待て待て待て。駄目だぞ、流石に駄目だぞ? 落ち着けジークフリート・ゴルドライン。

 合意なしは流石に駄目だって。明らかに地雷だから。

 あ、でも凄い良い匂いしてきた。なんかコスタさんも段々赤くなってるし、赤くなって更に可愛くなって。

 あーやばいやばいこれはやばい何かが警報だしてる。やばいマジでこれは本当にこれは………

 

「大丈夫かレネちゃん! 悲鳴が聞こえたけ………ど、お?」

「「………………」」

 

 そうか。希望と絶望って表裏一体なん………

 

「ぎゃあぁぁぁ!!」

「ぬおわっ!」

 

 一気に顔を真っ赤にしたコスタさんの渾身の張り手によって僕の身体が宙を舞った。

 その小さな身体の何処にこんな馬力があるの? 

 

「お、お前! レネちゃんに襲いかかるなんて! このクソ野郎!!」

「違う違う違う! 事故! 事故だから事故!」

「そうなのかレネちゃん!?」

「え、ああ。まあ事故だったかなー?」

 

 突然のラキスケ展開に半分ブリっ子出来てないコスタさんは曖昧になりながらもなんとか返事する。

 しかしそれが不味かったのか。今入ってきた大柄な男子は憤慨して詰め寄ってきた。

 

「お前本当に変なことしてないんだろうな!?」

「やってないしやる気もないよ!」

「だったらこんなとこに連れてくるんじゃねえ!」

「やめて! 私のために争わないで!」

「頼むから今は黙っててくれ!」

「てめえ! レネちゃんに何て口叩くんだ!」

 

 うるさい! こんな場面で明らかに狙ったようなド定番の台詞出たら文句の一つの二つ言ってしまうだろ! 

 

 あれよあれよというまに倉庫の入り口にファンの男子が集結してきた。

 入り口以外の逃げ道は換気用の窓。だけど脱出しようとしたらジエンド。正面突破してもジエンド。なにもしなくてもジエンド。

 

 詰みだ。

 

「レネちゃんを暗がりに連れ込むなんて許せねえ!」

「キープだからって何しても許される訳じゃねえぞ!」

「粛清だ!」

「吊るせぇぇ!!」

 

 世紀末だ。アスティカシア結構そういうきらいあるけど。

 だがただでやられる気はない。この際だ、存分に暴れまわってやろうか! 

 

 暫しにらみ合う僕とリーダー格の男。

 ジリジリと空気が籠るなか、コスタさんはなんか分かりやすくアワアワしてるポーズを取っていた。

 助けてよ。

 

「ジークフリート・ゴルドライン!」

「なにさ」

「お前に決闘を申し込む!!」

「なんでさ!」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「で、こうなったと」

「うん」

「グラスレーの寮長が何をやってるの?」

「聞かないでそこは」

 

 ウィリーに呆れられ、エリザに窘められた僕はもう落ち込みに落ち込んでいた。

 

 あのあと場所を決闘委員会のラウンジに移した僕らとコスタさんは決闘承認の場に立っていた。

 

 アスティカシアにおける【決闘】とは。

 モビルスーツを使用した一種の競技。

 勝敗の勝ち負けはお互いのモビルスーツの頭部にあるブレードアンテナを破壊された方が負けとなる。

 ちなみに校内にLIVE中継され。勝敗で金銭を賭けるなど校内において最上級の娯楽として認知されている。

 

 決闘をする際には双方が何らかを賭けて戦うことになり。その賭けは金、謝罪、行くところには女性との関係も賭けられる。

 今回の場合はそのコスタさん(女性)となりそうだが。

 

 そして決闘委員会とはその決闘が滞りなく行われるための学生倶楽部であり。学園としても高カーストの位置であるとされ。

 毎年御三家寮の寮長が中心人物となり。

 寮長である僕ら三人は揃って決闘委員会のメンバーとなっている。

 

「ウィリー、助けて。助けてくれるって言ったじゃん」

「無理。そいつファンクラブの会長でキープ1号だから」

「嘘じゃん」

 

 決闘委員会より権限上なの? 単に場の空気的な奴なの? 

 

 ウィリーは駄目だ。エリザは中立だし。

 僕は藁にもすがる勢いで委員会メンバーである二人の副寮長に助けを求めた。

 

「グエルくーん」

「決闘は飽くまで双方の問題なので」

「真面目くんめ!」

 

 いま答えた真面目くんはラウダ君の兄であり、御三家の一つジェターク・ヘビー・マシーナリーCEOの御曹司、グエル・ジェタークだ。

 先輩や先生に対する礼儀も忘れず。力強いリーダーシップを持ち。

 二年生でありながら僕たち三人と凌ぎを削り合い、学園1位に君臨している程の実力者。

 学園最強の証、ホルダーの座についている。

 

「シャディクー」

「ノータッチでお願いするよ」

「この腹黒とうもろこし!」

 

 酷い暴言だなーとシャディクはそれはそれは面白そうに笑った。

 シャディク・ゼネリはグラスレー・ディフェンス・システムズCEOの養子である。

 学生でありながら社長の右腕として活躍してる凄腕。

 甘いフェイスと大胆に着崩した制服から一見軟派な印象を持たれる彼だが。その根底には大人顔負けの慧眼を持ち、いつだって冷静に立ち振る舞えるTPOを弁えている男である。

 

「とりあえず始めていいかしら? もうどっちにしろ逃げられないわよ貴方」

「はぁ、わかった。頼むよエリザ」

 

 ラウンジのガラスがモニターに変わり。決闘委員会委員長であるエリザが決闘の仲介人として僕と彼の間に立った。

 

「双方、魂の代償を天秤(リーブラ)に。決闘者はアーノルド・ハルマーとジークフリート・ゴルドライン。場所は戦術試験区域4番。7対1のデスマッチ方式とする」

「いま何て言った? 7対1のデスマッチ?」

 

 なんだよその戦力差。しかもデスマッチって、全部のアンテナ折らなきゃ勝てないじゃないか。

 

「流石に理不尽過ぎないか?」

「俺たちとしては絶対に負けられない。1人1人では勝ち目が薄いが我らファンクラブの結束を持ってお前を討つ!」

「言葉の勢いで誤魔化そうとしてない?」

「そしてこの方式はレネちゃんの提案でもある!」

「コスタさん、流石に怒るよ?」

「ごめんねー先輩。でも先輩ならこれぐらい出来るって信じてるよ。頑張ってね♪」

 

 ぶちギレそう。

 

「まさかウィリーも出るのか? 出るなら流石に容認出来ない」

「安心しろ。それやったらパワーバランス崩れるし。俺はファンクラブとジークどっちの味方でもあるからな。悪いな、ジーク」

 

 いや、うん。

 割りきるしかないか。

 エリザにアイコンタクトを送り、先を促す。

 

「アーノルド・ハルマー。君はこの決闘に何を賭ける?」

「レネちゃんに不用意に近づかないこと! レネちゃんが選んだからキープをやめろとは言わないが節度を持て!」

「わかった(近づいてくるのあっちなんだけど)」

「それともう一つ!」

「まだあるの?」

「俺たちが勝ったら。お前はレネちゃんファンクラブに入ってもらう!」

 

 ぜっっっったいに嫌だ! 

 何が悲しくてあんなむっさい熱狂空間に行かなきゃいけないんだ! 

 人格変異するわ! 僕はお前たちみたいな狂信者になるつもりはない! 

 

 僕の必死の訴えもあり、ファンクラブ云々は保留となった。

 

「ジークフリート・ゴルドライン。君はこの決闘に何を賭ける?」

「僕は………コスタさんといてもあまり五月蝿く言わないでほしい」

「いいだろう。7対1に勝てばお前の想いは本物だとわかるからな」

 

 残念だけど。そこに君の考えてる想いはありません。

 

賽は投げられた(アーレア・ヤクタ・エスト)。決闘を承認する」

 

 パン! とエリザが手を合わせ。

 決闘が受理された。

 

「レネちゃん。寮まで送るよ」

「うーん、ちょっとシャディクと話すことあるから」

「わかった。じゃあまた明日。絶対に俺たちが勝つからな! ジークフリート! 首を洗って待ってろよ!!」

 

 心配しなくても全身洗ってから行くよ。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「ふーー」

 

 決闘委員会として何かやろうかと聞いたがエリザに今日は休んでと言われて大人しく帰ることに。

 

 とりあえず明日はモビルスーツハンガーに行って機体のチェック。委員会のメンテと称して区画の安全確認もして。

 

「ジーク先輩!」

 

 背後から元凶の声。

 聞こえないフリしてダッシュしたいけど。後がめんどくさいことを察して嫌そうに振り返った。

 

「シャディクと話あるんじゃなかったの?」

「そんなの先輩と話すための建前だし」

「一緒には帰らないからな」

「わかってる。流石に今日は自重するし」

 

 振り返ってその憎たらしい顔を睨み付けてやろうか、と思ったが。なんだかしおらしくなっていた。

 こんなコスタさんは見たことがない。演技ではないかと警戒して観察することにした。

 

「今日はごめん。調子乗った。まさかここまで大事になるとは思わなかった」

「7対1仕掛けておいてよく言うよ」

「もし私が口添えしなかったらファンクラブのパイロット科に総出で叩き潰されることになってたよ」

「それはありがとうございますコスタさん」

 

 まあそれ以前に決闘委員会が承認しないわ。

 それでも認められたのは。立会人が僕を信頼してくれてるということだろう。

 嬉しく思う反面、重いなぁ。

 

「本当にごめんなさい。もしマジで嫌だったら私から取り直そうか?」

「え、なに行きなり優しくなってるの? 怖い!」

「あんたねえ! 私がここまで申し訳なくしてるのにその言い草はなくない!?」

「言われて仕方ないことしてるんだから甘んじて受け入れろよレネ・コスタ」

「ちょ、ド低音じゃん。ごめんて、悪かったからそんなガチ切れしないでよ………」

 

 シュンと心なしか彼女のビッグテールも萎びた気がする。

 本気で反省してるっぽいな。心なしか少しビクついてるし。

 怒られなれてないんだろうな、この子。

 

「ごめん。あんまり怒りなれてないから凄味が出た」

「結構怖かった」

「悪かったよ」

 

 ちょっと大人気なかったかな。

 それにしても………

 

「なに、そんなじっと見て」

「いや。しおらしいコスタさんはいつもと違う感じで可愛いなと」

「こんな時に口説くって先輩私のこと好き過ぎじゃね?」

「外見だけはいいからな。外見だけは。外見だけだけど」

「怒涛の3連発は流石に傷つくんだけど」

 

 自業自得だよ。

 

「コスタさん的にはどっちに勝って欲しいの」

「どっちとかないし。みんな私の大切なファンでキープくんだし。どっちかだけ応援するのってなんか胸がモヤモヤする………でも今回は先輩に勝ってほしいかな。少なからず負い目あるし」

「そうか。てっきり私の手の中で戦いなさい、勝った者を私が全身全霊をかけて愛してあげるよ。的な感じに考えていたかと」

「そんな希代の悪女みたいな考えしてないし!」

 

 流石にそこまで行ってなかったか。

 コスタさんが自分を取り合う男を前にして舌なめずりするような性悪女ではなかったことに少しホッとした。

 

「本当に応援してくれるって言うなら。なんかエール欲しい」

「え?」

「それぐらいの役得あっていいと思うんだけど」

「まあ、別に良いけど………頑張ってくださいね、セーンパイ☆」

「すいません媚びゼロでお願いします。鳥肌たった」

「先輩結構余裕あるな!?」

 

 もうレネちゃんボイスが受け付けない身体になってしまった。ほんとどうしてくれるんだろうね。

 

「うー。媚びなしで応援なんかしたことないんだけど」

「そこをなんとか。お願いしまーす」

「………うわ、なんか恥ずくなってきた」

 

 ペシペシと頬を叩いて気合いを入れるコスタさんだが。唸って赤くなるばかりで。

 なんか逆に困らせてるみたいで少し面白くなってきた。

 

「が、がんばれージーク先輩。ふぁいとー」

「プフッ」

「あ、笑った! 酷くない!?」

「だって。だって酷い棒読みなんだもん。応援下手すぎる、フフッ」

「しょうがないじゃん! 素で応援なんてしたことないんだからさ!」

 

 フギャー! と猫のように怒るコスタさん。全然怖くなくてなんか可愛い。

 ほんとずるいなぁ、何しても可愛いんだもの。

 

「ありがとう。凄いやる気出た」

「え、これで? 先輩単純すぎるでしょ」

「男が単純な生き物なのはコスタさんが一番知ってるでしょ。とにかくやる気出た、よーし勝ちに行くぞー!」

「なんかキャラ変してません? 私が言うことじゃないですけど」

 

 その後成り行きでコスタさんを部屋に送る途中ファンクラブの1人に見つかり一悶着になったのは別の話。

 

 なにはともあれ。負けられない戦いになってしまった。

 

 






 読者の皆様、申し訳ありません。
 モビルスーツ出せませんでした!

 決闘やって終わり!って感じにしたかったのですが気付けば文字数が12000に。
 悪い癖が出てしまいました。ごめんなさい。

 しかし今回は今まで書いたことのないキャラ書いてて大変です。主人公が【僕】なのが初で間違って【俺】って書いちゃいますし。
 一番大変だったのがレネちゃん。素の彼女がどんだけジークに砕けた口調をするのかその案配が大変でした。
 本編もそこまで数喋ってないですしね。

 次は絶対に出しますので暖かい目で見守っていて下さい。
 それはそれとして。決闘承認の流れ書くの凄く面白かったです。賽は投げられた(アーレア・ヤクタ・エスト)って凄い厨二心擽られますよね
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