【完結】推しのレネ・コスタさんが実は地雷系だった件 作:ブレイブ(オルコッ党所属)
皆さん、お待たせいたしました。
今回こそ本当に最終回、後編でございます。
「コスタさん。ここ4ヶ月君と色々あって、お互いの関係や環境も大分落ち着いたものになった。コスタさんも素は何処か粗暴なところあるけど実は優しいし面倒見良くて努力家で、友人として好ましく思うし。僕はコスタさんと一緒に居ることを苦に思わなくなった………それを踏まえて言わせてくれ」
「はい」
「君は僕を破滅させたいのかな」
グラスレー寮のMSハンガーでコスタさんがぶちまけたお誘い宣言に男共は阿鼻叫喚の渦中に。
顔芸猿叫の嵐、顔の至るところから汁を撒き散らし、中には血涙をした奴も居た気がするが幻覚だと処理した。
そんな集団恐慌状態の中で僕は速攻コスタさんの手を引いて空き部屋に押し込んで速攻正座させてお説教。
コスタさんもコスタさんでやっちまった感があったのか大人しく説教受け中。
「いやその、違うの。えと、その。私も先輩を見習って脊髄反射を発動させてしまってですね」
「ヴァァァ! ジークはドゴヴォアアアタ!!」
「シュクセイ! シュクセイ!」
「フィックスリリース! フィックスリリィスゥゥ!!」
「その結果がこれなんだけど」
鍵をかけた外側には狂い狂って正気を失った亡者どもがはびこり、なんちゃってバイオハザード状態に。
思わず泣けるぜ………と言ってしまいたいぐらい絶望的な状況。
先程パリスから「今出たら先輩死にますねwww」とメールが。草を生やすな。
「………まあいいや。えっとそれで、本気?」
「本気だし。じゃないとあんな叫ばないし」
確かに………
「何処行くの?」
「え?」
「デート」
「えーと、えーっと。何処行く?」
「考えてなかったの?」
「脊髄反射だって言ったじゃん」
「そんなに僕としたかったの、デート」
「そん! な、ことない、訳じゃないけど………」
訳じゃないんだ。
これは嬉しい。思わず顔がにやけそうになって慌てて口許を隠した。
「だってさ。あと一週間とちょっとしかないじゃん。先輩学園の誰よりもガンバったし、ご褒美ないと駄目じゃん。50連勝の」
「あれは僕の自業自得みたいなのあるし」
コスタさんに良いとこ見せたいという思春期が暴走した結果ですしおすし。
「先輩は私とデートしたくねーの?」
「そりゃ。願ったり叶ったりだけど」
「じゃあつべこべ言わず嬉しがれ」
「なんだろう。嬉しいけど程よく微妙なこの気持ち」
「素直じゃないなぁ」
君ほどじゃないよコスタさん。
「それでするの? しないの? どっちだよ」
「します。コスタさんとデートしたいです!」
最初は呆気に取られたが。これはかなり嬉しい。
あのコスタさんからデート。しかも恐らく打算なし。
快く答えたが、僕より目線が下のコスタさんは何処か不満げ。
「………………」
「どうしたの?」
「そのコスタさんって言うの。そろそろやめね? 名前で呼べよ、レネちゃんって。もう4ヶ月もいるんだし」
「………恥ずかしいです」
「このピュア野郎!」
ごめんなさい。こればっかりはどうしようもないんです。
ここ最近何度か名前で呼べと言われてるが。コスタさん呼びが定着して本当になんかむず痒くなって。
試しにコスタって呼んだら、なんか凄い顔された。「そうじゃねえ」って凄い睨まれた。
怖かった、あの時のコスタさん
あとレネちゃんって呼び方。ファンクラブの面々見たいのと同じになるような気がしてなんかやだ。
じゃあ呼び捨てに? そこまで
「ぜってー卒業までにレネちゃんって呼ばせてやる」
「お手柔らかにお願いします」
ーーー◇ーーー
「学園から出ちゃ行けないってマジ萎える」
「ごめんね。色々準備あったりするからさ」
デートの申し出を受けたから2日後。
いざデート! と意気込んでいたがまさかの学園外外出は禁止されている。
いま言ったみたいに卒業やカルメルア隊への手続き、テストやらなにやらなど結構ハードスケジュールだったりする。
今回のデートだって結構強引に捩じ込んだ。
「いや! ここでめげないのがレネ・コスタだから! アスティカシアにも面白いとこいっぱいあるし! ということで来たぜゲーセン!」
「おおっ………」
ゲーセン、ゲームセンター。
アスティカシア学園憩いの場の1つ。
アスティカシア学園は全員が寮生活のため、あまりフロント外に活動範囲を広げることはない。
故にストレス解消という名目で学園にはこういう娯楽施設が複数ある。
自然公園、大手スーパーエリア、映画館、カフェテリア、学食より少しお高めのレストランなど。
ここはそのうちの1つ。煌びやかでゲームの音がそこら中から乱舞してきて視覚と聴覚にガツンとぶつかってきた。
「ジーク先輩来たことない感じ?」
「ウィリーに連れられて何回かしか。自分からは来たことないかな」
「休日なにしてるんですか?」
「本読んだりとか」
「あー、っぽい。なんか難しい哲学系読んでそう」
「普通にマンガやラノベだよ」
「えー、ぽくなーい」
コスタさんちょくちょく僕のこと美化してるよね。
彼女の中の初対面イメージだと。僕は絵本の中の王子様みたいな存在だったそうな。
といっても出会う前のイメージで。今は等身大のモテ王子だと。それはそれでどうなのかと思うが。
余談だけど、コスタさんと過ごしてから女子からの告白が格段に減った。
女の趣味が悪いと思われたのか、コスタさんの存在が邪魔してるのかわからないが。これで告白を断って怨み節を叩きつけることも少なくなったから良かったと個人的に思っている。
これをうっかり口に出した物なら僕の身の安全は保証されないだろう。
明らかに不幸と見せかけた自慢に聞こえてしまうから。自分でもそう思うし。
カコンっ!!
「あっ」
「先輩! レネちゃんを前にボーッとするとか良い度胸してん、じゃん!」
「ぬあっ!」
最初にやったのはエアホッケー。
ホッケーがぶつかる気持ちいい快音はゲーセンの電子音に負けない存在感を放った。
「コスタさん上手いね! 動きが早いんだけど!」
「先輩もあんまやってない割には上手いじゃん! さっきの嘘!?」
「クロスレンジは反射神経ないと死ぬからね!」
カカカカカッと絶え間ないラリー。ホッケーは縦横無尽にコートの中を駆け巡り初っぱなからヒートアップ。
中盤から制服の上着を脱ぎ捨ててインナーのままホッケーを弾き飛ばし。いつの間にかギャラリーが出来る程に。
「ちょっと、あそこ。ラリーが凄いんだけど。てかゴルドライン先輩とレネちゃん?」
「あー、昨日コスタさんがゴルドライン先輩にデート誘ったらしいよ」
「マジで!? くそっ、ゴルドラインめ………でも邪魔したら嫌われるなぁ。はぁ」
「けどさ」
「しゃおらぁ!!」
「よいしょぉ!!」
力強いホッケー対決。
互いに汗を飛び散らせるほど白熱する2人の顔はこれ以上なく笑顔だった。
「なんか楽しそうじゃね?」
「………………だなぁ」
「イエーーーイ!! 勝利ぃ!!」
「はぁ、はぁ。コスタさんスタミナあるねぇ」
エアホッケー対決はコスタさんの勝利。
後半バテ始めたところをガンガン狙われてそのまま御陀仏である。
息を切らした僕と違ってコスタさんは満面の笑み。
君の細い身体の何処にそんなフィジカルが?
そんな情けない僕を彼女はにんまりと見下ろした。
「せんぱぁい。エリート部隊への内定決まってるのにその体たらくは致命的じゃないですかぁ? ププッ、なっさけなーい」
「久しぶりに見たよその顔。僕じゃなくてコスタさんが化物だからね? 僕結構動けるほうなんだから」
「説得力ないでーす」
クソぉ。なんて良い笑顔してるんだ。
「よし次行くぞ次!」
「ちょ、待って。少し休ませて。あ、手引かないでー」
彼女に引っ張られるままギャラリーの横を突っ切って行く。
コスタさんの手は柔らかかったです。
「先輩射撃も上手いんですねぇ」
「いや俺よりエリザの方が上手いよ」
「私と遊んでるのに他の女の名前NGで」
「え、あ、ごめんなさい」
「スチュアート先輩の名前マジNGです」
ゾンビを倒すガンゲーの最中コスタさん少し不機嫌に。
こういうの駄目だよな。反省。
しかしエリザのこと嫌ってない? なんかあったのかな。あいつ結構ズンズン行く感じあるから。
「ほい、ほい、ほい、ほい」
「先輩入れすぎ! いやもう良いですって先輩バスケセンスやばぁっ!」
「いや近距離のトスシュートだし」
「二倍差付けられた私への煽りかコラァ!」
ゲームはゲームでもバスケシュートでは大差つけてWIN。
さっきのガンゲーでも相当やられたのでやり返せて少しスッキリした。
「うおらぁ!!」
「ヒッ!」
と思ったら隣にあったパンチングマシーンで彼女が叩き出したスコアに少し、いや普通に引いた。
コスタさん曰くムカついた時は何度も叩き込みまくった模様。
僕? 聞かないでくれるとありがたい。
「メダルゲーしますよ先輩! 財の貯蔵は充分かぁ!」
「ファンクラブから搾り取った金。今こそ解放の時!」
「ヒュー! 先輩イカすぅ!!」
決闘でむしり取った財力で脇目をふらずメダル大量購入。
こんなに大量のメダルで思いっきりやったことなかったからかコスタさんのテンションは有頂天のシイタケ目に。
そんな彼女が可愛くてリアルマネーに突っ込んだのは間違ってないはず。
良心的価格だから許されるはず、だ。
「先輩もっと寄って下さいよぉ。キュートなレネちゃんとプリクラ撮りましょうよぉ♪」
「ぬおっ。耳元猫なで声やめて」
「ほら先輩も書いて下さい。I LOVEレネちゃん♡って書いて良いですよぉ。ほら所有権主張しちゃえよ先ぱぁい」
「I LOVEジークにしてやる」
「ちょっと先輩それは振り切り過ぎじゃね!?」
何故そこで慌てるのか。
とりあえずI LOVEジークはやめておいた。
ファンに見つかったら間違いなく血の卒業式になる………
途中ランチを挟みながらゲーセンのゲームを網羅したのではないかと思うほど遊びまくった。
久々に遊びに遊んだ。
少し目と耳がチカチカするのはご愛嬌。コスタさんも通えば慣れるって笑ってた。
そんな彼女は僕がクレーンゲームでプレゼントしたでかい狐のぬいぐるみを抱えてご満悦だった。
「ムフー」
「気に入ってくれてなによりだよ」
「私クレーンゲームだけ苦手でさぁ。先輩ありがと」
「まあ、これぐらいはね」
と言ってるが全然落ちなかった。ほんとうに落ちなくてアームが弱いとはこのことか。
最後は意地でも落とすという誓いのもと溢れ出る財力パワープレイで勝利。
落ちろぉ! 狐ぐるみぃ!! って叫んでた気がする。顔芸してなかったかな、大丈夫かなぁ。コスタさん引いてなかったかなぁ(引いてました)
「ジーク先輩」
「ん?」
「私、ジーク先輩といると楽しい。みんなのアイドルであるレネちゃんとして振る舞うのも好きだけど。遠慮なしに話せる人って結構楽だし。今日も凄い楽しかった」
「うん。僕も楽しかった」
「あと………私って結構我が儘じゃん」
「え、自覚あったの? 自覚あってアレなの」
「黙って聞け」
はい。
「そんな私にもなんだかんだ付き合ってくれてるしさ。ぶっちゃけ直ぐに駄目になると思ってたのに………だから先輩がいなくなるとつまらなくなる。私まだ一年だし。先輩は途中からいなくならなくてもまだ半年あるし。ぶっちゃけ半年遅れてもよくねってなる」
「それは、僕も思ってる。だけどそれは仕方ないことで」
「親父が言ったから? 親父の言うことはなんでも聞くってわけ?」
「そうじゃない。だけど僕個人だけの問題じゃないから」
「関係ないし。ジーク先輩は残りたくないの?」
「残りたいけど………引けない理由もある」
最初は親の復讐の代行だった。
アスティカシアで腕を磨き、カテドラルへの足掛かりとするだけだった日常。
ウィリーやエリザと出会って軟化したとはいえ方針は変わらなかった。
だけど目の前の。レネ・コスタという少女が僕の全てを変えた。
カテドラルのカルメルア隊に入りテロリストから人々を救う。そんな大義ですら彼女の前だと揺らいでしまう、そんな自分が怖くなった。
自分の覚悟はその程度だったのかと。色恋で揺らいでしまうほど脆かったのかと。
それでもここにいたい。コスタさんや皆と残りの学園生活を謳歌したいという気持ちで揺れていた。
だがそれと同時に。カルメルア隊行きを望む自分もいるのだ。
「迷ってるくせに一丁前に意地張ってさ。根っこは弱々のくせにほんともう先輩は………だったら私にも手があるし!」
「コスタさん?」
「ジークフリート・ゴルドライン!」
狐のぬいぐるみを脇に挟み、空いた右手の先が僕を射貫いた。
「あんたに決闘を申し込む!!」
ーーー◇ーーー
「双方、魂の代償を
「「ない」」
決闘委員会のラウンジでウィリーは決闘の立ち会いを立てる。
「レネ・コスタ。君はこの決闘に何を賭ける」
「ジーク先輩の中途卒業の取り消しを」
「え?」
「了承した」
「ええ!?」
真面目に形式通りの立会人をしていたウィリーが早速破顔する。
それもそのはず。ジークら三人のカルメルア隊行きは上層部のカテドラルが決めたこと。それを一介の学生が取り消せば、その道が断たれることを意味する。
「ジーク、本当にいいのか?」
「うん。続けて」
戸惑うウィリーとは対照的にジークは即答で了承する
ウィリーは納得出来ないながらも進行を続けていく。
「ジークフリート・ゴルドライン。君はこの決闘に何を賭ける」
「ここを卒業する時、見送りに来てほしい」
「先輩、そんなのでいいんですか? レネちゃんと付き合いたいって言っても許してあげますよ。それ以上でも」
それなりの対価を払わなければ釣り合わない。決闘では両者同意であればそれは許可される。
レネが示した賭け対象はジークの今後の人生を左右するもの。表面上はおちゃらけていても、レネは本気だった。
「決闘の結果で君を縛り付けても意味はない。伝える言葉は僕自身が言わないといけない。相手が君ならなおさらだ」
「………眩しすぎんだよ、先輩は………」
「え?」
「なんでもねえよ。了承する」
「
「どういうことだよジーク!」
「2人には悪いと思ってる。だけど」
「ちげーよ! 俺たちのことなんかどうでもいいんだよ! なんでレネちゃんの決闘に乗ったんだよ! カルメルア隊は俺たちの、お前の夢だろ!!」
「落ち着きなさいウィリー」
「落ち着けるかよ! なあ、レネちゃんになんか言われたのか? それとも脅されてるってマジだったのかよ!」
決闘の儀礼が終わったあとウィリーがジークに詰めよった。
だがそれでもジークはブレなかった。
いつもは少し頼りなくて、それでいて頼りになる男。
ファンクラブとの50連戦で終始伏し目がちだったジーク。だが目の前の彼はウィリーが今まで見たことないぐらい決意に満ちていた。
「違う。これは僕の意思だ。それにコスタさんに負けるようじゃ、どのみちやっていけないだろ?」
「だからって」
「断ってもよかった。けど、そしたら僕はコスタさんを引きずってしまう。男としての意地とケジメなんだ」
「だけど、お前………………わかった。なら俺は見届けてやる。立会人だからな!」
「ありがとうウィリー」
「お前はほんとに。たまにとてつもなく頑固になるよな、まったく………」
ごめん。子供っぽいとわかってるけど。
僕にも譲れないものがあるから。
「悔いは残しちゃ駄目よ、ジーク。引きずるぐらいなら全部吐き出しなさい。骨は拾って上げるから」
「うん」
「レネ・コスタを焚き付けたのは私のせいでもあるし………」
「え、それってどういう」
「頑張ってね」
「予想はしてたけど、本当にこうなるとはね。でも勝てるのかい? レネの実力はともかく。ハインドリーのスペックでシュベールトには」
「理屈とかどうでもいい。私がやりたいからやるんだよ」
「やっぱり彼のこと好きなのかい?」
「股間に蹴り入れられたくなかったらそれ以上やめろ、ミオリネに進めない男」
「物理と精神の両方から殺しにかかるのはやめてくれ」
胸あたりをギュッと握るシャディクを背にレネはタブレットでデータを集めていた。
ジークの戦闘データ。幸いにも資料は最近ごまんと出てきてくれた。これからいつものメンバーで対策を立てるつもりだ。
「真面目な話。彼を味方につけれるのならそれに越したことはないんだけどね」
「無理なのわかってるだろ」
「どうかな。レネとお付き合いしたら変わるんじゃないかな。テロリストを無くすという理念では共感出来るところもあるだろう」
「それこそ無理だろ………私たちはそのテロリストすら利用してる」
レネたちシャディク勢力の目的。
それはベネリットグループと戦争シェアリングを解体し。宇宙と地球の抑止力による天秤の均一化する。
そのやり方は性急的。シャディクや他のメンバーは迷いなく進んでいるが………
「レネ、降りるなら降りてもいいんだぞ」
「冗談。シャディクがやめると言わない限り私はやめないよ」
「彼と戦うことになってもかい?」
「私が決闘で勝てばそうならないかもしれないだろ」
「やっぱり、そういうことか」
ジークとレネの未来は相容れない。
対テロ部隊のカルメルアにジークが入れば間違いなく障害になる。
「レネも案外不器用だね」
「シャディクほどじゃないし」
「そうだね」
「とりあえず対策だ対策。3日後の決闘に勝てなきゃやれるものもないだろ」
先ずは勝つ。
格上が相手ならなおのことシミュレーションを濃密にしなければならない。
手札が少ないならなおのこと………
「ならレネ。君に試してもらいたいものがある」
「ああ?」
決闘当日。
観戦者は過去を見ても最大レベルの盛り上りを見せていた。
男子人気1位のレネと女子人気1位のジークフリートの対戦となればこうもなる。
「レネちゃーん!」
「頑張れレネちゃん!!」
「ジークフリートなんてぶっつぶしちまえ!」
「うん! レネちゃん頑張るから!!」
ファンに見送られながらレネは機体に乗り込む。
コンソールとヘルメットに写るウィンドウの最終チェック。
(私、ほんと迂闊だよな)
決闘の儀礼でうっかり口走ったことを思いだす。
あの時本当にジークがレネの言う通りの条件を出していたらどうだっただろう。
結果はそうではなかったが。普通の男ならこちらから言わなくても絶対その条件になるはずだったのに。
断ってくれて嬉しかったのは何故なのか………
「っ! 私は今さらなに考えて」
レネは振りきるように首を振った。
余計なことを考えて勝てる相手じゃない。
気を引き締め、レネを乗せたコンテナがアリーナに向かう。
「全セクション完了。今回は完全にアウェーっすね」
「知ってるから驚かないよ。パリスがコスタさんにシュベールトのデータ渡したことも知ってるし」
「いやー、レネちゃんに上目使いで『お願い♡』って言われたら落ちない男いないっしょ。あと秘匿してる訳じゃないからモーマンタイモーマンタイ」
「開き直るな。整備の方は」
「今までで一番っすよ。レネちゃんは真剣勝負を望んでるんすから。メカニックはこれで答えるっす!」
パンパンと力こぶもない腕を叩くパリス。
パリスはなんだかんだメカニックとしての誇りを持っている。
それはジークも十二分にわかっているし、50連戦を勝ち抜けたのも彼を含めたメカニックチームがいたからこそだ。
「シュベールトのデータぐらいくれてやるさ。それでも僕は勝つ!」
「それでこそっす先輩!」
両者MSコンテナがフィールドに立つ。
ハッチが開き、荒野が目の前に広がる。
『指定位置到着。周辺に障害となるオブジェクトなし。MSコンテナ展開。射出タイミング、先輩に譲渡したっすよ!』
『指定位置到着、MSコンテナ展開。レネちゃん! 発進どうぞ!』
「了解」
「オッケー!」
互いのサイトアイに光が灯り、ハンガーとモビルスーツを繋ぐロックが解除される。
「JP002、ジークフリート・ゴルドライン」
「LP013、レネ・コスタ!」
「ハインドリー・シュベールト、出撃する!」
「ベギルペンデ・ブルーム、行くよ!!」
互いのモビルスーツが大地に立つ。
ジークが駆るシュベールトは正統派でありそれでいて美しいフォルムのハインドリー。
一方レネのモビルスーツはこれまた異様だった。
グラスレー系列でありながらハインドリーとはまったく異なるフォルム。
機体色は白をベースに紫色とジークのシュベールトと似たような配色。
左手には巨大な十字シールド、右手には花の蕾のような異形の武装が取り付けられていた。
『頑張れジークフリート先ぱーい!!』
『負けるなレネちゃーん!!』
『やっぱり騎士のモビルスーツってカッコいいよね!』
『レネの奴見たとこないね。グラスレーの新型?』
お披露目となった両者のモビルスーツの登場にギャラリーは興奮のボルテージが最高潮に。
いまかいまかと火蓋が切れるのを待ち、その瞬間が来るのを画面越しにかぶりつく。
『これより、双方合意のもと決闘を執り行う。勝敗は通常通り、相手のブレードアンテナを折った者が勝利となる。立会人はジェターク寮寮長、ウィリー・ハークが執り行うぜ! ──両者、向顔!』
ジークのシュベールトにレネ。レネのベギルペンデ・ブルームにジークの顔が表示される。
画面越しに目を合わせ、互いに笑みを浮かべる。
様々な思惑を無視しても、この決闘を楽しみにしていたのは他でもない彼らだ。
「勝敗はモビルスーツの性能のみで決まらず」
「操縦者の技のみで決まらず」
「「ただ、結果のみが真実!」」
「
ーーー◇ーーー
「さあ、どうくるコスタさん」
夜の荒野をハインドリー・シュベールトが走る。
試験区域13番。荒野エリア。
遮蔽物が少なく。あるとすれば岩山が並ぶ程度。
クロスレンジ相手だと遮蔽物がある方が不利だから当然か。ということは遠距離で来るか。
ピーピー!
警告! 2時方向!
緑の閃光が見える前に機体を捻り着弾を避ける。
コスタさんから撃たれたビームが地面を抉る。
この距離でこの威力か!
「しかも連続!」
次々と撃たれるビームを掻い潜りながらも、望遠カメラが岩山の上に立つ敵の姿を捉えた。
その姿はコスタさんの愛機ハインドリーのそれではなかった。
「新型!」
あれって、ハインタイプのグレードP系列じゃなくてベギルタイプのグレードK系列じゃないか!?
かつてドミニコス隊のエースパイロットが使用していたモビルスーツ、ベギルベウの後継機。
「だとしても!」
やることは変わらない。近づいて斬るだけだ!
コスタさんの新型。肩にマウントされた2門のビームキャノンでこちらを狙い撃ってくる。
やはり遠距離でこちらを近づかせない算段か。
しかし狙いが良い。こっちの動きを読んでるみたいだ。
相当頭に叩き込んできたのか。だけど!
「それで止められると思ったら大間違いだぞ、コスタさん!」
「だったら近づいてくれば先輩!」
「ならそうさせてもらう!」
ビームが降りしきるなか迷わず直進。
放たれるビームをホバー走行で、シールドで、バルムンクで切り払って進む。
シールドライフルの有効射程、入った!
左手のライフルから撃たれたビームがコスタさんより下の山肌に当たる。
真横、そしてシールドで防御するコスタさんだが近づかれても動こうとしない。
誘ってるのか、高所の優位性を捨てないつもりなのか。
「なら!」
シュベールトの増加スラスターが火を吹き、コスタさんに向かって飛翔。
撃たれるビームの応酬を紙一重で捌き、あと少しでバルムンクの射程距離。
「ここは僕の距離だ!」
バルムンクがしなる。3倍の長さとなったそれは新型を屠るためにその鎌首を上げる。
依然コスタさんは動かない。
「フッ」
「っ?」
かすかに聞こえたコスタさんの笑み。
何かある、アラート!?
左方向から砲撃!?
「ヌゥッ!」
機体をよじり、しなったバルムンクと砲撃がかち合い、弾かれたビームが空間に散っていく。
「弾いた!?」
「なんだ!?」
バルムンクを岩山に突き刺し、伸縮を利用して緊急回避。
そして視界に映る何かからまたビームが。
「あっぶない!」
バルムンクを機転に宙返り、その勢いのまま岩山の上へ。
視界が裏返るなか視線は先程の謎の砲撃に。
目に入ったのは空中に浮かぶ3枚の花。その花弁に当たる部分から緑の粒子光が漏れていた。
花はそのまま引き寄せられるように右手に装着された。
「んだよその動き! 今の必中だったろ!」
「それグラスレーで試作中の
「ベギルペンデ・ブルーム。先輩を倒すために持ってきた機体だ!」
レネがスラスターを吹かして接近。
近づいてきた!?
ビームキャノンとブレイザーで弾幕を張りながらこっちにくる。
近づくなら好都合、バルムンクのウィップをベギルペンデの延長線上に走らせる。
左からくるバルムンクをシールドで弾き飛ばしてなおも接近。
「バルムンクはあえて近づく!」
「甘い!」
バルムンク内部の特殊合金ワイヤーに電気信号。弾かれた切っ先が背後からレネに襲いかかる。
「そっちがぁ!」
だがそれを読んでいたレネはその場で回転して再度バルムンクを弾いた。
再度向き直りブレイザーのビームクローで肉薄。僕はクローの一部をシールドで受け流しそのまま体当たりを噛ます。
ビームサーベル抜刀。体勢が崩れたところで砕こうとサーベルをアンテナに突き刺さんとする。
するとベギルペンデのシールドの中央と4辺のスリットがわずかに拡張し、スリットから青い光が見えた。
ヴォン!!
「うぅ!?」
次の瞬間。強力な電磁パルスがシュベールトを殴り付けた。
「EMP!?」
強力なプラズマ力場にシュベールトのレーダーロスト。モニターにもノイズがかかり、思わず機体の挙動が緩む。
モビルスーツには対電子兵器処理がされてるとはいえ、こうも至近距離でやられたら無傷ではすまない。
ノイズだらけのモニターに緑の光が明滅。ほぼゼロ距離のフルバースト!
フットペダルを蹴り飛ばして横っ飛び、ブレードアンテナは防げたが、シールドライフルが溶解した。
距離を取る、シュベールトを逃さず何発ものビームが襲いかかる。
「けったいな武器を使う!」
「でも効果はあったろ!」
各計器のノイズが収まり視界が晴れる。
機体挙動には問題ないが、盾と射撃兵装、サーベルも1本紛失と武装の半分が持ってかれた。
だがレネのベギルペンデ・ブルームも無傷ではなく。EMPを発したシールドから煙が漏れていた。
どうやらあれは一回限りの兵装だったようだが、リスクに見合ったリターンはあった。
決して見くびっていた訳ではないが、正直ここまで攻めきれないとは思わなかった。相当対策してきたのだろう。
予想外の攻撃を連発することで、こちらのリズムを崩してきた。
「先輩。このまま本当にいなくなるのかよ」
「しつこいよ。僕が決めたことだ」
「親父に言われて逆らえねえだけだろ!!」
ベギルペンデ・ブルームがブレイザーを射出。二方向からの砲撃をスラスターだけでかわし。一定距離を保つ。
「僕が決めたことだ! 卒業したらカルメルア隊に入ると決めていた! それが半年早くなっただけだって言っただろ!」
「言ってねえよ!」
「似たようなこと言ったでしょ!」
避けられない。右肩の対ビームマントが熱量負荷で千切れ飛ぶ。
「大体なんだよ、一人の男にこんなに固執して! 君はそんなタマじゃないでしょ! さっさと僕以外のキープ作りまくってモテ生やされれば良いじゃないか!」
「ジーク先輩だって! 月に何回も告白されるくせに一向に彼女作らないし! そんなに私のこと好きなわけ!?」
「そうだよ悪い!?」
バルムンクで強引にビームを切り払い一太刀浴びせる。
コスタさんはブレイザーとシールドで防御して押し留める。
「じゃあなんで告白しねーんだよ! 近づいたらイメージ違ったから!? 悪かったなこんなガサツで!」
「違う! 今でも好きだよ! 好きになった! だけど僕は卒業するし! 遠距離になる! 軍属だから頻繁に連絡なんか取れなくなるし、いつもチヤホヤされたい君に遠距離なんて無理じゃないか! そもそも告白して付き合えるなんて欠片も思えなかった!」
初めて君を見て。ファンに笑顔を向けるコスタさんを遠くから見ていた。
このまま関わらずに卒業して軍に入る。手の届かないアイドルを応援して勝手に好きになってそれで終わり。
それだけで良かった。遠巻きに見てるだけで良かった。なのに!
「君のせいだ! 君が僕を繋いでしまったから! ただのファンでいたかったのに、お陰でこんな未練がましくなったんだよ!!」
ベギルペンデ・ブルームを蹴り飛ばしバルムンクの鞭が十字シールド越しに左腕に巻き付いて砕いた。
負けじと乱射されたビームがこっちの左腕を焼き払い吹き飛ばす。
「告白しないのかだって!? 断られて関係がこじれるぐらいならずっと今の関係で良いと思った! それとも告白したら………僕らは恋仲になれたのかって! なれるなんて思わなかった! だから踏ん切りつけようとしてるんだよ僕は!」
言葉が雪崩のように溢れかえる。
こんなこと言うつもりなかったのに。困らせてしまうだけなのに。幻滅されるだけだというのに。
お互いの動きが止まる。
銃口を構えることなく、剣を向けることもなく。
通信が聞こえない外野は何が起こったのかと訝しむなか。
「………たくっ、告白より恥ずいこと言ってんじゃねえよ………」
「僕は本気だ。多分あとで猛烈に後悔するだろうけど。本気だから」
「………私だって、嫌いじゃないし。でも告白されても、付き合えないのは事実だよ」
「………」
わかっていても、胸が締め付けられる。
バルムンクを構え、ビーム刃を展開し。スラスターを吹こうとした。
「だけど!」
「?」
「それは先輩が言ったような理由じゃないの。遠距離だって、チヤホヤされなくたって。私的には問題じゃないんだよ」
「………」
「でも私は先輩と付き合えない。私には、シャディクやみんなと果たさなきゃ行けない目的があるから………先輩と私じゃ相容れないから………」
ベギルペンデ・ブルームのビームブレイザーが開いた。
「先輩との学園生活は楽しかった。楽しかったから続いて欲しい………我が儘だよ、我が儘でしかねえよ。でも私は、私自身の我が儘を偽りたくないんだよ!」
ロックオン警報が鳴る。
ビームブレイザーの砲門に光が灯り、ビームクローの3本爪が開いた。
「私だってジーク先輩のこと好きなんだよこの野郎!! だからもう少し一緒に居るって言えーー!!」
ベギルペンデ・ブルーム突進。
ビームキャノンとブレイザーを撃ちながら突っ込んでくる。
それと同時にシュベールトの増加スラスター点火。
回避することなく無数のビームをバルムンクで弾いていく
5発。
最短最速、回り道などせずにただひたすらまっすぐに。
「くっ、ぬぅ………」
10発。
操縦桿を動かす指がつりそうになる。
操縦桿のボタンを絶えず押し、ボールスイッチをグルグルと動かしてビームと斬り結ぶ。
15………17発まで弾き飛ばしたバルムンクが耐久限界で千切れ飛ぶ。
すかさずビームブレイザーが射出され、残ったバルムンクで下に叩き落とすもブレイザーのビームクローがシュベールトの左足をもぎ取る。
「まだまだぁ!!」
前に飛び出し、無理矢理射程圏内へ。
千切れてもなお2倍の長さを誇るバルムンクの突きが右肩のビームキャノンを砕く。
バランスを崩しながらもプログラミングされたバルムンクの切っ先が敵のアンテナに食らいつかんとしたが、ベギルペンデは回避。
戻ってきたブレイザーのビームサーベルとバルムンクがかち合い。ブレイザーは溶断され爆発、バルムンクは持ち手ごとシュベールトの腕から弾き飛ばされた。
両手と左足を失ったハインドリー・シュベールト。対しベギルペンデ・ブルームはまだ右肩のビームキャノンが残っている。
コスタさんは激情の中でも冷静に勝ちをもぎ取ろうと半歩機体を下がらせ、ビームキャノンの照準を頭部に合わせた。
勝った。
誰の目から見てもジークのシュベールトに勝ちの手はないと見て取れた。
ただ一人、学園のホルダーである彼を除いて。
「行けえ!!」
僕は諦めずフットペダルとレバーを押し込む。
スロットルマックスパワー。意地とともに機体ごと増加スラスターで吹き飛ばし。ビームキャノンの照準がコクピットと重なってロックがかかった。
「ジーク先ぱぁぁぁいっ!!」
「レネぇぇぇぇ!!」
照準がコクピットから脚部に移り、ビームキャノンが放たれるも残った右足が焼け落ちるだけとなり。僕とシュベールトはダルマ状態になりながら突貫。
シュベールトとベギルペンデの頭部が豪快にかち合い、その勢いのままベギルペンデの後頭部に生えたブレードアンテナをへし折った。
アンテナとぶつかったシュベールトはベギルペンデを飛び越えたあと無様に地面を滑り。ベギルペンデはその勢いのまま尻餅をついた。
《勝者ジークフリート・ゴルドライン/ハインドリー・シュベールト 57勝4敗0分》
ーーー◇ーーー
「卒業おめでとうございます。ジークフリート先輩」
「ありがとうシャディク。新寮長頑張ってね」
「ええ、学園は任せてください」
一足早く卒業する僕たちを送り出そうと大人数の生徒が宇宙港まで見送りに来てくれた。
ウィリーの方にはレネちゃんファンクラブの面々がオーイオイと泣きながら別れを惜しんでいる。
なんとも熱量というか、あそこだけ変な空間になってる気がする。
エリザの方はペイル寮のみならず多数の女子がエリザの周りに集まっていた。
エリザは男子にも人気だがそれを追い越すように女子の人気もある。女子からの告白も少なくないとか。
僕はというと。会えるのが最後だからと多数の女子から告白ラッシュ。女子のエネルギッシュオーラに胸焼けを起こしつつ丁重にお断りしてシャディクと話すに至る。
「僕としてはまだまだ話したいことがあるんだけど。彼女が待ってるからね」
「みたい、だね」
視線を向けるとふさふさのビッグテールをゆらゆら揺らしながらむくれている子がいた。
学園のマスコットアイドル的存在であるレネ・コスタ。いまもなお不動の男性人気を獲得し。ジークフリート・ゴルドラインと対等にやりあったとしてパイロット科目線でも人目置かれている期待の一年生。
チラチラとこちらを見て落ち着かなそうに貧乏ゆすりをしている。
「それでは、お元気で。カルメルア隊での武勲を期待しています」
「ありがとう」
シャディクと入れ違いになるように彼女が僕の前に立つ。
ウィリーの側にいたファンクラブメンバーの何名かがが飛び出そうとしたところをウィリーとファンクラブ団長のアルバートが止めてくれた。
「………ジークせんぱぁい。卒業おめでとうございまぁすぅ」
「こらこら。女の子がしていい顔じゃないよ」
決闘の最中で盛大な大暴露を噛ましあった僕らの関係だが。そこまで変わってない。
一番は彼女の事情。結局理由は話してくれなかったが。無理強いすることなく、とりあえず主人と奴隷から友達以上恋人未満という形で収まっている。
周りから、というよりウィリーとエリザからそれで良いのかと問い詰められたが。僕自身、レネ・コスタが自分に好意を抱いてくれていたという驚天動地の事実だけでお腹いっぱいになってしまった、と答えたらもうこれ以上ない呆れ顔で「お前が幸せならいいよ」と言った。
その時の僕はとてもだらしない顔をしていたそうな。
ただ一つ、今までとは明確に変わったこともある。
「私としては未だ不満なんだよ」
「そう言わないで笑って送り返してよ………レネ」
コスタさん、いや彼女のことを名前で呼ぶようになった。
レネちゃんからすっ飛ばして呼び捨てで呼ぶのは。やはりちゃん付けは少しムズっとするのと。
他の男がレネちゃんというなかで自分が呼び捨てで呼ぶのは、特別感あって良いなって思ったから。
それを言うとレネは顔を真っ赤にして僕の尻にタイキックし「ちょ、調子乗るなよコラァ! 先輩の癖に生意気なんだよコラァ!!」と照れMAXで捲し立てられた。
ただその後も名前呼びして反対されないということは名前で呼ぶことを許可してくれたこと。と勝手に喜ぶどうしようもない男がそこにいたのだ。
面と向かってなにか言おうとしたのに忘れてしまったレネは一度深呼吸をしたあとニンマリと笑みを浮かべた。
ファンには見せないような、人を小馬鹿にしたような悪い笑みを。
「しかし決闘の時の先輩必死でしたねぇ。清廉潔白の化けの皮が剥がれたな」
「僕はもともとあんな人間だよ。ていうかほじくらないでよ。あれほんと黒歴史なんだから。あー、なんであんなこと言ったかなぁ。終わった後絶対嫌われたと思ったし。そういうレネだって、あんなこと行きなり言って………その」
「ヴァー! 思い出すな思い出すな! 私から切り出してあれだけど思い出すな馬鹿!」
んな理不尽な………。
だがこれがレネ・コスタだよな、と納得してしまってる僕は骨の髄まで末期だ。
しかけておいて盛大に自爆してしまったレネはこれまた不機嫌ですオーラ全開で口を尖らした。
「最近先輩にマウント取れないんだけど。先輩調子乗ってない?」
「それはまあ。なにもかも盛大にぶちまけて振りきりまくってもうある種の境地に至ってしまったというか………何をされてもレネが可愛くて、ね」
「~~! おまっ、そんな歯の浮くようなこと喋る奴じゃないだろ! キャラじゃねえ!」
「自覚はしてる」
自分で言ってもムズムズしちゃうのに自然と口に出てしまう。
なにもかも目の前の女の子が可愛すぎるのが悪いと思うの。責任転嫁? 知ってるよ。
「あっちいっても連絡しろよ。先輩はいつまでも私の愚痴聞き係だからな」
「わかった。レネも元気でね。学園に寄る時は連絡するよ」
「ん………」
さっきとは打って変わってしおらしくなるレネ。
そんな顔されたらこっちも寂しくなる。
ようやく表面上振り切った体で通してるのに、決心が揺らいでしまう。
「おーいジーク! いつまでもイチャコラすんなよー。もう出るぞ船ー!」
「わかった! ていうかイチャコラしてないし! てかそんな大声で言ったら」
「なに!? レネちゃんとイチャコラだと!?」
「カテドラルじゃなくて断頭台に行かせてやろうかぁ!!」
「決闘だ!
ほらファンクラブが湧いた!
これは二重の意味で早く行かなければ。
「それじゃ。元気でね」
「おう………先輩」
「ん?」
「ちょっと屈んでくれない」
「屈む、こう?」
「そのまま横を向いて」
「横を向く………」
チュッ。
「え?」
一瞬時が止まった。
あれほど騒がしかったファンクラブの面々も石化したかのように固まって。
ウィリーとエリザも目を丸くした。
頬に感じた生暖かく湿った感触。
経験はない、だが確かに知ってるそれを知覚して。
「え、はっ、ええっ!!?」
熱となって爆発した。
「ちょ、レネ。なに、をっ!?」
「プッ、ハハハハ! 顔真っ赤! ほっぺにキスぐらいで照れるなよジーク先輩!」
「キッ………」
キスだって!? いやだけど、ええ!!?
「じゃあなジーク先輩! もっと良い男にならないとキープ外すからねー!!」
「あ、あう………」
頬を染めたレネが走り去るのをただただ呆然と眺める子としか出来なかった。
完全な不意打ちを受けた身体が熱くて熱くて。それでいて頬に受けた跡は更に熱くて。
もう処理限界もいいとこで………。
それでいて真横から来る異様な殺意を前にしても完全に熱が冷却されることはなかったが、それはそれとして黙っていられない男たちが大勢いた。
「ジークぅぅぅぅ!!!」
「てめぇ! ほっぺチューとか! ほっぺチューとかぁぁぁぁ!!」
「殺す! 殺す! ころぉぉす!!」
「や、やばぁ!!」
脱兎! 一目散に二人のいる港まで全力ダッシュ!
男の嫉妬により一瞬で阿鼻叫喚の渦となったアスティカシア宇宙港。
なんだか遠くからレネの笑い声が聞こえてくる気がする! まったくあの性悪女め!
そんなこんなで。見送りにしてはドタバタ過ぎる旅立ちに笑いながら、僕らはアスティカシア学園を後にしたのだった。
この先、僕とレネがどうなるか。そんなことはわからない。
なんてことない感じで収まるかもしれないし。
予想だにしない激動が待ってるかもしれない。
ただ一つ、確実に言えることはある。
僕はこれからも彼女を好きでいるし
そんな可愛くて取扱い注意なレネ・コスタにはこれからも敵わないだろうということだけだった。
【推しのレネ・コスタさんが実は地雷系だった件】
Fin。
どうも読者の皆様。作者のブレイブです。
いやはや。今回は過去一の文字数。16000突破です。こんなに書いたこと初めてだと思います。
もう後編②なんて駄目だと思いましたからね。長い文を呼んでくれてありがとうございます!
水星の魔女、第2シーズン。一話ごとに展開が早いしアゲサゲが激しい!怒涛のフラグ回収もそうですし。我らがグエル復活!ジェターク復活!な展開最高でしたね。
いよいよシュバルゼッテ誰乗るんや問題も出ますが。
それはそれとしてシャディク陣営に明るい未来が見えません!
第2のシュラク&ネネカ隊になりそうでなりそうで!
さて、本編でも書いた通り。ジークとレネはくっつく、とは行かなかったです。最後の最後で結構迷いました。くっつけようかと。
視聴者の方はヤキモキした人もいるのかな。友達以上恋人未満の延長線上。こういう終わり方もオツかなと。勝手に思ってます。
長々とあとがき呼んでくれてありがとうございました。
これからもブレイブの作品をよろしくお願いします!!
それでは!また別の作品でお会いしましょう、さよなら!