僕自身がスケベになればいいのでは? 作:PhaseShift
「死ねェッ!」
「ボケがァッ!」
『爆豪と峰田がお互いに空中を跳ねまわって激突しながらコースを進んでいくゥー!! お前らそんな仲悪かったっけか!?』
『峰田が主催してる自習で時折ガチンコやってんのは知ってるが……』
『しかもこいつら戦いながらもレースの趣旨は忘れてねェー!!』
クソ狭いゲートの上空を爆豪君と殴り合いながら進んでいく。剃パンチ剃剃パンチパンチ月歩剃月歩パンチキック月歩回し蹴りと重ねてんだけどこいつすっごい食いついてくるな! 両側が壁だから僕のフィールドの筈なんだが! 動体視力上がって来たっていうよりちょっと自習で動きを
轟君の氷壁をすり抜け、瀬呂君のテープを奪ってターザンごっこをかまし、尾白君にヒップアタックを仕掛けて雑にバウンド、棒高跳びする八百万さんの背中を優しく踏み台にし、爆豪君のクイブ*3と見せかけた僕への攻撃を弾いてからちぎった粘着球を周囲に散布する。あーやっぱ触った瞬間ほぼ終わりって気付いてるからか避けてくれるね。当ててるつもりなんだけどな。
「テメェ硬化使えや!!」
「使わせてみな!」
この。
「ポップコーン野郎め☆」
ブチンと音がした。
お? キレた? キレたね。途端に読みやすくなった爆豪君の顔面に僕の靴の裏の模様をプリントした。SQUARE ENIX*4ってうっすら浮き上がってて草。このシューズ高かったんだよね。
「ックソォァッ!! 舐めプしてんじゃねえぞ饅頭頭ァッ!!」
「ゆっくりしていってね☆」
すれ違ったみどりゃーのジャージをひっつかんで思いっきり爆豪君の方へぶん投げる。ああんみどりゃー、そんな「えっ?」って顔しなくても。体育祭楽しんでねーと声を掛けたら声にならない悲鳴を上げてたので個人的に満足。
……ん? ありゃ!? ロボット!?
『第一関門! ロボ・インフェルノ!』
ゲートを抜けた先に滅茶苦茶大きいロボットが5機、小さいのと中くらいのもちらほら居て生徒を襲い始めている。あれってもしかして皆が言ってた一般入試の試験ロボットか。デカいのはみどりゃーがワンパンでぶっ壊したっていう奴かな多分。
……あ! 轟君のマヒャド!
「ずるいぞ轟君……?」
え。ちょちょちょちょちょ待った待った待った!
死ぬぞそれ!
「――……な体勢ん時に凍らしたから」
「危ない!」
「倒れるぞ」
思いっきり傾いてる試験ロボットの下へ全力で移動し、下敷きコース直行だった普通科と経営科の生徒らしき子たちを全員粘着糸で回収する。切島君とB組の子は大丈夫だろ。ただ個性の分からない一般の4人は全力で回収する。着地するのは……エリアを抜けた先だ。
『轟が妨害と攻略を同時にこなしたぞ! こりゃシヴィー!! そして峰田はナイスジョブだぜ!』
「峰田、信じてたぞ」
「えっ」
やば、直接攻撃。
「しゃらくさいんだらァッ!!!!」
助けた子たちを背後に回し、轟君の氷壁を渾身の回し蹴りと衝撃波で破壊する。砕いた先にある轟君の顔は見たこともないニヒルな笑みだ。
もう、あくどくなっちゃってさ……♡
『そして轟の大氷壁を峰田の回し蹴りが砕いたァ! なんて威力だよ二人ともずりーな!!』
「失敗」
轟君ごとぶった斬ろうとしたのに面での衝撃波しか出ないんだよなぁいっつも。
「あ、あの」
「ありがとう……」
おん? あ、いいのいいの。
怪我がないか確認したけど全員無事。よかったよかった。
ただちょっと申し訳ないことしたな……。
「ごめん、その糸ってくっつくと今日一日取れないから……リタイアにしちゃった。本当にごめん」
「いいんだよ気にすんな!」
「行ってくれヒーロー科!」
「ほんとありがとね! 頑張って!」
4人を粘着糸を使わずにあの速度で助けるのは無理だったから物凄く申し訳なくなってたけど、ありがたいお声を聞いて安心した。
「ありがとう……応援しててね!」
ウィンクしながら走り出す。月歩で空に上がってみたら、もうだいぶ出遅れてるのがわかった。ていうか何あれ、落ちちゃうエリアまであんの? 何故かこの世界の人間は頑丈すぎるから気にするの僕と師匠だけかもだけど、普通に死ぬようなギミック仕掛けるよなぁ。あの落下ゾーン、僕でも底見えないぞ……? 安全装置とかあるのかな。いやでもあの巨大ロボで殺しに来る連中だからな雄英。
?
は?
やばwwwwwwww
これはやべーやつ
空ダしてるwwwwwwww
何今の超絶技巧空中戦は
入学してひと月ちょいの1年生がやっちゃダメな奴
wwwwww
wwww
草
これなんか写しちゃいけない奴じゃないの?
やばすぎる
wwwwwwwww
瞬歩だ!?!?!???!?!?
今のは瞬歩じゃない。響転だ
悲恋脚かな?
かなしそう
何今の空中戦
尚今も足踏みして滞空してた模様
『すごいでしょー』
「いつ見てもヤバいね!」
「……ていうか前より速くなってる」
『高速移動する、瞬歩っぽいのが剃。空中跳ねるのが月歩だよ。剃は剃刀の剃。月歩は月の歩みって書くよ』
「ソルとゲッポー?」
「……違う技術なんだ」
ソリ!w
ソリすぎて になった
ソルね
剃りって書いて剃なのね
命名センス◎
なんか種があるんやろな
そりゃそうよ
頭の粘着球の応用じゃないの?
でもババアも使えるんちゃうんか?
師匠ならそう
『あれ個性使ってないし理論上は普通の人でも出来るよ』
「そうなの!?」
「……」
『そうそう。剃は床を一瞬で10回以上蹴って急加速して、月歩は大気を踏みしめるよ』
「???」
「……?」
??????????
???????
??www
???????
?wwwwwwwwww
は?
なんて?
認知症にはまだ早いぞ
人間やめましたシリーズ
個性使ってないって事?
これ無個性で習得できる奴じゃん
理論上は再現可能です
可能か……?
TASさんみたいなこと言わないでもろて
『それを実は……あらっ』
「あっぶな!」
「……実、お人よし」
『流れるように4人くらい救出したわね。さっすが……あああああ!!』
「ブリザガ!?」
「……いや、防いだ」
『あー……あの子、足技で衝撃波出して切り裂こうとしたのね』
「衝撃波?」
「……?」
『カメラ! ナイスアングル! カメラー!!』
「可愛いー!」
「……ウィンクあざとい」
「大丈夫! だいじょーぶ! 大丈夫だからね! 僕に任せて!」
第二ステージも相当危険だね。分かり易い篩とも言うけど……ちょっとヤバそうだから通過点に居る落っこちそうな子たちは全員糸で吊るしておこうと思う! 怪我したら、ヤバいし!
よっ、ほいっと。
ていうか雄英生やっぱり無謀すぎ! 確かにチャンスだけどさ!
あれ、ていうか雄英体育祭って死人出たこと無いんじゃなかったっけ?
「目標、峰田さん!」
「ん?」
……さっきから散発的に聞こえる発射音はヤオモモキャノンだな? 避けるのは簡単だけど……絶対なんかある! 絶対なんかあるでしょ!? そもそも不意打ち狙いなら僕の名前を態々呼ぶか!? 他のヒーロー科との連携、閃光弾、ゴム散弾! 一体どれ? 何を企んでるんだ……八百万百!
視線を向けるとヤオモモはジャージの前を全開に……――
「ファイア!」
――……デッッッッ!!!!!!!!!!
あっ*5
閃光、灼熱、轟音。
『オィィイイイイ!! どうした峰田!? お前なら避けるの楽勝だろ!!』
『あのバカ……』
うおやべっ、一瞬意識飛んでた。
……古今東西探しても……おっぱいに見惚れて砲弾の直撃をノーガードで喰らったのって僕だけだろうな! 師匠ごめんなさい油断してたわけじゃないんです。ヤオヨロッパイが……師匠並みにデッカイからつい。ついね?
「……」
思いっきり吹っ飛ばされながら現実逃避してると実況が耳に入った。最終エリアは地雷原、"怒りのアフガン"とやららしい。体育祭で地雷を埋設するのは雄英高校くらいだろうな!とりあえず加速して、顔を覚えてるヒーロー科の連中の背中を片っ端から蹴っ飛ばしたり踏み台にしながら加速を続けて続けて続けて続けて……コストとして粘着球を3掴み捧げる。
「粘着糸の術! 武装色硬化!」
通常よりも太めで長い、硬化させたロープでゴール手前の地雷を6個ほど跳ね上げた。そして硬化を解除して……っと。
「追いつくの早くねえか!?」
「団子頭!?」
「とぉー」
先頭争いしてる、
「どぉー」
轟君と爆豪君にぃ、
「ろぉー」
地雷だらけの……、
「きぃー」
粘着糸を巻き巻きしちゃいまして~~~ッ!!!
「くぅぅうううう~~~~んッ!!!」
「ふざけてんのか!?」
『おおっと峰田がデッドヒート中の先頭二人を拘束ゥー!!』
これ僕からのプレゼントね。
「さっきはお世話になりました☆」
お前らスタート直後からやったらめったら僕に妨害してきやがって! ヤオモモから受けた砲撃の分くらい一番頑丈そうなお前らにそっくりそのままお返ししてやるわッ!!
「やめっ」
「クソッ」
「峰田式チェーンマイン!!」
起爆! 閃光! 灼熱! 轟音!……ってあんまり熱くないなぁなんて他人事みたいに思いながら、轟君と爆豪君と一緒にアフガンの大地を転げまわって更に誘爆しまくった。
「お前頭おかしいんじゃねえのか!?」
「イカレてんのかクソボケ饅頭!!」
『おおっと後方で大きな爆発音!!』
「「「あ゛っ!?」」」
「わぁああああああああああッ!!」
『緑谷、地雷を踏みつけまくって加速加速加速~ッ!!』
はぁっ!?
「みどりゃー!?」
「クソデクヮァッ!!」
「こんなことしてる場合じゃねえ!!」
慌てて3人で追うけど間に合わず。
『まさかまさかの伏兵、一着はA組の緑谷出久!! 序盤の展開からこんなん予測できるわけねえだろ!』
超僅差で2位だった。
……あああああ悔しい!!
やられたらやり返す原則に夢中になり過ぎた!!
悔しい~~~!!!
『あまりの悔しさに地面を転げまわってるぞ峰田ァッ! お前受けた攻撃の割には元気すぎねえか!?』
……!
確かに。
ていうかゼロ距離即席チェーンマインよりヤオモモキャノンの直撃の方が遥かに痛かったなぁ……ヤオモモは僕を本気でぶっ殺そうとしてた……って、コト!?
いやいやそれよりもだ。自戒の意味も込めて、みどりゃーの足元までゴロゴロと転がって近づく。ふんふん、見た感じ骨とか筋に異常は無いみたいだけど。ていうかみどりゃーの靴カッコイイな。
「うわぁっ!? 峰田君!?」
「いつの間に!?」
「全然気づかんかった!」
ああ、飯田君と麗日さんもお疲れ様。ナイスランね。
3人を見上げる形で手を振りつつ、僕はみどりゃーの足に目を戻す。
「みどりゃー、足は?」
「え? いや、特に平気だけど……」
平気……平気?
「最後の地雷原ダッシュってもしかして」
「うん、峰田君の剃を参考にしたんだ」
だよね? うーん……。
僕の目から見てもみどりゃーの足に異常は無い。
「大丈夫ならいいや。次の本戦は負けないぞ」
「うん!……所で」
「峰田君全国放送だぞ!」
「なんでうつ伏せに……?」
「これは油断してごめん寝の姿勢」
「「「油断してごめん寝の姿勢……」」」
ミッドナイトが順位を表示している中、僕は3人から見守られつつずーっと床に突っ伏していた。時たま道端に落っこちてるうんちのように謎の棒で突っつかれたけど*6甘んじて受け入れる。
……最後のチェーンマイン要らなかったなぁ。でも轟君にやられっぱなしも嫌だったし……塩梅が難しいね。
発表された順位を見るに、上位40人はほぼヒーロー科だったみたい。
『勝負事に妥協はしないが
『A組で最も障害になり得る3人の手が塞がった一瞬を見逃さなかった緑谷ァッ! 普段から周辺に目を配る良い一面が現れてたぜェッ! NiceRun!』
褒められまくり! 照れまくり! たははと頭を掻くみどりゃーに観客もほっこりである。なんかムカついたのでみどりゃーの脛毛を探してブチっと引き抜こうとしたけど長ジャージだったからダメだった。おのれみどりゃー。この恨みどうしてくれようかな……。
……ん?
あ、いつの間にか次の内容発表されてる!
「……騎馬戦?」
誰かが呟いた。
そう、騎馬戦である。
ミッドナイト曰く。
まず障害物競走の順位に応じたポイントが選手全員に付与される。そして騎馬を構成している選手たちのポイントを合算した合計値が騎馬のハチマキポイントとなり、これを奪い合う。騎馬の構成人数は2人から4人。制限時間は15分。獲得したハチマキは絶対に首から上に巻くこと。
そして何より重要なのはハチマキを取られても騎馬が崩れても失格にはならない。常に10組以上の騎馬がフィールドに居るってわけだね。あと個性発動有りだけど、崩し目的の攻撃は一発レッドカード。これ割と条件厳しいけど、一体何を想定してるんだろう。チームアップのコミュニケーションとか?
ていうかみどりゃー、1位は1000万ポイントって聞いて青ざめてるね。今のうちからよさげな個性の人の所に転がっておこう。何人かアテがあるし。梅雨ちゃん、砂藤くん、障子くん、常闇くん辺りが良いかな。早い者勝ちってわけじゃないけど、向こうにとっても僕と組むメリットは十分あると思う。
多分僕、この騎馬戦の騎馬で最強だろうし。
「ねぇ、何してんの?」
「うん? これはごめん寝の姿勢といっ……て……――」
あ、やば 精神 渉
覇 切っち た
「……お疲れ」
……?
「えっ」
死屍累々であった。
空は割れ、フィールドは崩れ、紫色の糸がフィールド中に張り巡らされ。
みどりゃーが憤懣遣る方無しと言わんばかりに僕を睨みつけている。
会場は熱狂していた。熱狂していたけど……なんだ、この圧力は。
「あれ?」
『さて! 早速順位の方見ていこうか!』
あっあっあっ。
ちょっと、待て。全く記憶が無い。
『1位! 心操チーム!』
しんそう……。
モニターを見る。心操、しんそう……1000万と少しポイント。
え?
何?
終わった?
「峰田、お前本当にすごいよ。俺たちの世代のトップヒーロー、多分お前だよ……」
横を見る。
目の隈が酷い少年が一人、引き攣った笑みで僕を見つめていた。
『2位! 轟チーム!』
「俺は謝らない」
ああ。
『3位! 爆豪チーム!』
「何……を……?」
やめてくれ。
『4位! 緑谷チーム!』
「俺は謝れないんだ……!」
彼が僕の後ろに目を向ける。
思わず視線を追って振り返ると葉隠ちゃんが頬を赤く腫らし、気絶していた。
「……」
まあ待て。実。爆発するな。
心操はいつでも殺せる。
まずは葉隠ちゃんだ。
だから落ち着け。
話を聞こう。
「耳郎さん、砂藤くん、口田くん。葉隠さんは?」
「……ぁ、えっと、大丈夫。
葉隠ちゃんに近寄ると、介抱していた耳郎さんが答えてくれた。僕からも頬以外には特に傷は無いように見える。
「峰田も一緒に来てあげて」
僕がやったのか。でも失格になっていない。
よりにもよってあんな事件の後に。
傷ついてる女の子に対して。
僕にやらせたな。
「……峰田?」
ダメだ。
いや殺そう。
一生を棒に振るぞ。
いや殺そう。
これがヒーローの日常だ。
いや殺そう。
でも確かにあいつが僕にやらせたんだよな。
いつの間にか。
目の前には耳郎さんではなく心操くんがいる。射程圏内だ。
でもさっきふと思い出した。後ろを振り返るけど、葉隠ちゃんは起きていない。ああ、そうだ。そうだった。これは
「良い……」
「……」
「……個性だった!」
「!」
頭に血が上り過ぎていたことを反省する。
彼には今後、敬意をもって接しようと思う。
今大会に於ける僕の慢心を打ち砕いてくれた、油断ならざるライバルとして。
Q 心操君の個性でどうやってそこまで動いたんですか……?
A そこまで動けちゃったシンプルかつクソみたいな理由があります。
描写がB組対抗模擬戦くらい先になっちゃうことをどうか許してください……。