僕自身がスケベになればいいのでは? 作:PhaseShift
お待たせ
評価、ここすき、感想お待ちしてます。
追記:誤字報告してくださる人本当にありがとうございます。
「……」
「……」
「……」
「ゴーゴーレッツゴー! Aェ~組!」
お昼明け。ドンパチやってるけど一応体育祭だから、最終種目に出ない人たちはレクリエーションがあるらしい。A組からは葉隠ちゃん含む7人の友達が出場するのでしっかり応援しないとな。
「葉隠ちゃーん! 耳郎さーん! 梅雨ちゃーん! 青山くーん! 障子くーん! 砂藤くーん! 口田くーん! 頑張れ~! ファイトー! みぃ~んな~!」
「いいぞ峰田ー! 可愛いぞ~!」*1
「Fooo!!」*2
そこでこれ。
葉隠ちゃんリクエストのチアリーダー衣装! スパッツだから思いっきり足上げても恥ずかしくないし、男だからノーブラでも気にならないのだ。ヤオモモに作ってもらったので僕は今実質ヤオモモを着ているといっても過言ではない……受け取って着替えた時はまだヤオモモの体温残っててちょっとぬくかったんだよな……武装色硬化。
「キメーんだよ」
ヂッ!!
……というデカすぎる舌打ちに思わず振り返った。
「バクゴーも一緒にやる?」
「……」
シカトは泣いちゃうからやめんか? せめて罵倒してくれない?
ふぅー、とため息ついてから座席に腰かける。
「バクゴーっていつもあんなんなの?」
「あ、あはは……シカトは珍しいかな……」
レアって事じゃん!
後ろに振り返ってバクゴーもふぁいとぉ~ってポンポンをふりふりしたら無言で掌向けられたので慌てて前を向いた。これ以上構うと普通にポンポンを燃やされそうだ。今も後ろを向けてる間に僕のお団子を焦がされないか少し心配だったりする。
「整列したけどしばらく解説とか準備かな」
「うん。そうだと思う」
よし、じゃあ応援は休憩かな。
ふぅー。体冷やさないようにしなきゃね。
……で。
「みどりゃー、僕に何か言いたいことがあるの?」
「え」
おいおいみどりゃー! なんだその表情は。
ちょっと悲しい。何回君を殴り倒したと思ってるんだ。ただでさえ分かり易いのに、こっち向いてパクパク……なんてされたら見聞色使うまでもなくわかるよ。
「いや……僕の勝手な……なんていうか、そんな感じだからいいんだ、ほんとに」
「複雑?」
「複雑っていうか言語化出来ないっていうか……」
言語化出来ないというよりそれは。
いや、うーん。
みどりゃー優しいな。
「ありがとね」
「え?」
「気ぃ使ってくれて。ありがと」
でも。
「言ってほしい。友達だろ」
「……」
「僕が扱う技術、見聞色の覇気は今を捉える事に特化している……けど、みどりゃー挙動不審すぎて見なくてもわかっちゃうな」
視線を向けなくてもみどりゃーがぐっと閉口したのがわかる。マイク先生の盛り上げで会場が湧く中、僕とみどりゃーだけがぽつんと取り残されたようだ。掴んだ水筒の不気味な冷えの自己主張が激しい。
「騎馬戦の中盤、君が心操くんの言いなりになってる事に気付いて」
うん。
「思ったんだ」
うん。
「……君はあんなに強いのにって」
……。
「……あっ。なっ何言ってるんだろね僕! ごめんね峰田君! 多分あれ心操君の個性でしょ? しょっ、初見の個性はほぼ見抜けないし条件もなんだそれズルだろって事もあるから仕方ないよねあっははあのそのほらっ、……、……。ごめん」
「いいんだよ」
「それと」
「うん」
「君が葉がくにゃむっ」
ほっぺぷにっとな。
「あれは真剣勝負の結果。僕が心操君より弱かったから起こった」
「でも」
「本番なら死んでた。お互いにね」
普段、僕や師匠に精神干渉系の個性は利きにくいはず……なんだけど。あの時は僕がごめん寝のポーズでへこたれていたからだろうか。今後の課題だな。後で師匠に連絡とらなきゃ。今連絡するのはなんか違う気がする。
「
「!」
「いや、うん。でも体育祭は本番だから……不甲斐無い所がデータで残っちゃうし危うく1位を取れないところだったって考えると……死んでるかも? だって皆の話を聞くに、僕って心操君のラジコンだったらしいし」
「そんなこと……」
あるんだよ。みどりゃー。僕がやらかした。弱かったせいで葉隠ちゃんを手加減抜きで傷つけた。原因と結果だ。そういう原因があったからああいう結果になった。シンプルな話だ。
「これは葉隠ちゃんもわかってくれてる。九死に一生を得るって感じ」
だからあんまり、僕のためにそんな顔をしないでほしい。みどりゃーはオタク顔でメモ取ってるくらいが丁度いいんだ……なーんて事も併せて伝えると、みどりゃーはきゅっと唇を一文字に引き締めた。
でもまあ、それはそれとして。
「次は負けないぞ」
「……うん! 僕もトーナメントで当たったら気をつけなきゃ」
ぜひそうしてくれ。
心操君の個性、めっちゃ強いからね。
ていうか初見殺し率がヤバいし。多分声かけるか返事するかが条件だと思うんだけど……。
「「「あっ!」」」
ん?
急に周りがざわめきだした。どした? 怪我人?
「峰田! 緑谷! モニターモニター!」
えっ? うわ!!
僕とみどりゃーがキスカム*3に抜かれてる!?!?!?
おいやめろ馬鹿! 雄英体育祭のワイプで抜かれたカップルはちゅーする奴だろこれ!! あっ凄いですフィールド中央やや左らへん具体的には1-Aの予選落ちの皆が固まってる場所から物凄い焼ける感じな視線のレーザービームを受けている気がしますすいませんごめんなさい透お嬢様。*4
適当にアピールしとこう。
フリーズしてるみどりゃーに顔を向けて精いっぱいのアピールだ。応援用のポンポンで口を隠し、小首を傾げる。副音声は「ボクと……する?」だ。喰らえみどりゃー。アグレッシブな応援で汗ばんだじとぺた前髪真っ黒お団子頭チアリーダー忍者男の娘の上目遣いです。
「――……」
「――……」
その瞬間僕の側頭部、具体的には麗日さんとフィールドの某位置から死ぬほど強い殺気というかプレッシャーが突き刺さるが気にしない。色々と見え過ぎる奴が楽しく長生きする秘訣は、ある程度見えない振りをする事なのだ。
「……」
みどりゃー、ストリクスヘイヴン版ミスティカルアーカイブのブレインストーム*5*6みたいな顔になってて草。キャパ超えさせちゃってごめん。
「はっ!? えっ!? しないしないしないよ!?」
ものすっごい勢い首を横に振られながら拒否られてしまった。みどりゃー顔真っ赤で可愛いね♡ でも僕はエンターテイナーなのでポンポンをみどりゃーに投げつけ、精いっぱい不貞腐れた顔をしつつみどりゃーのバーカとでも言いたげにスタジアム側へそっぽを向いた。
……。
トーナメントのためにくじ引きをした時、尾白君と庄田君が棄権した。二人とも"心操君と峰田君とは違って"と言ったけど、本当にそうか? ちょっと悩んで僕も降りようとしたら二人に止められた。心操君の個性に操られていたのは自分もで、活躍できたのはたまたま運が良かったに過ぎないのに。ていうかこんな事を考えなくちゃいけない状況に居る事が無様だ。折角掴んだチャンスを二人の様に捨てられない。
トーナメント表を見る。初戦は芦戸さんと。次は常闇君か八百万さん、その次は鉄哲君か切島君か麗日さんかバクゴー。そして決勝は多分轟君……だよな。
ちらりと横を見る。
「みどりゃー」
「えっ!? あ、えっとなんでしょうか!?」
「君と決勝で戦いたい」
「えっ」
「今までの成果、僕に叩きつけてくれるのを待ってるよ」
「……うん」
1年生最強認定されることもそうなんだけど。折角なら決勝でみどりゃーと戦いたいなと思った。
「緊張してきた?」
僕がうんうんと頭を捻って対戦カードを見つつ全員への対策を考えていると、隣にはいつの間にか葉隠ちゃんがエントリー。
「ううん、あんまり。そう見えた?」
「ゲームの企画で作戦会議してる時と同じ感じだったから……そうだね」
む。
両方の手のひらで自分のほっぺを揉み解してから葉隠ちゃんに顔を向けた。
こんなもんでどうでしょう。
「おっけー!」
……ふぅー。
本当は緊張してるのかもなぁ。なんだかんだ地上波映るのは多分初めてだし、サシで負けたりなんかしたらちょっと恥ずかしいし。
「トーナメント表と睨めっこしてたけど、対策考えてたの?」
「うん。誰と当たってもいいように勝ち筋は考えてる」
「ねね、トーナメントの中で誰が一番手ごわそう?」
葉隠ちゃんの質問に、僕の周りが少しピリついた。まあ気になるよね。僕が削れたリソースを注ぐ相手が誰か。正直な話、一番警戒してるのはバクゴーとヤオモモだ。轟君は……あの子の氷より僕のほうが速いからなぁ。大穴はみどりゃー。
「内緒」
「まあそうだよね」
「でも戦いたい奴ならいるよ?」
「誰?」
「みどりゃー」
更にピリついた。既にみどりゃーと轟君は観客席に居ない。
「……意外?」
「う、うん。てっきり轟君とかバクゴーが出てくるかと思ったから」
「色々やってきたけどよォ! 結局これだぜガチンコ勝負!」
マイク先生が叫び、このトーナメントの初戦を飾る二人が舞台に上がる。
みどりゃーの表情は気合十分。対面の心操君も不敵な顔をしている。
「みどりゃーには教えられること、全部って訳じゃないけどそこそこ詰め込んだからなぁ」
二人の紹介が終わり、ルールが読み上げられる。相手を場外、行動不能、降参させることで勝利。ケガさせてもOKだけど死にそうになるのはやめようねって感じだ。そりゃそうよ。でも怪我上等なのは助かるなぁ。
「戦ってみたいんだ?」
「うん。決勝まで来てほしいね」
「レディィィイイイイイイイッ!!」
「まあ、来れるように」
「スタートォッ!!」
「色々教えたんだけどね!」
さあやっちまえ、みどりゃー!
「ああ、あの不細工な猿とオカマ野郎の事だよ」
「なんてこと言うんだ!――……」
「……俺の勝ちだ」
「「「あっ」」」
1-Aの観客席で何人かとハモった。思わず葉隠ちゃんと顔を見合わせ、その隣の尾白君、さらに向こうのヤオモモと目が合い、そしてもう一度舞台へ視線を戻す。
えっ。引っかかった? あの分析大好きなみどりゃーが? やられちゃったわけ?
……。
みどりゃーは茫然とした表情で一時停止している。
僕は葉隠ちゃんに向かって言った。
「ダメそう」
「えぇー……」
尾白君の反応を見るに、彼は心操君の個性をみどりゃーに教えたようだ。流石に無警戒が過ぎるだろ……いやでもあれは無理か? 無理か、うん……みどりゃー優しいもんな。分かっててもカッとなる事はあるよ。人間だし。
「ちなみに心操君の個性って……」
まあ、そろそろ時効かな。
「心操君の個性は洗脳。彼の問いかけに答えたら言いなりになる」
「もしかして緑谷君、もう?」
僕が答える代わりに、後ろのほうからバクゴーのクソデカい舌打ちが聞こえた。みどりゃーは踵を返して場外に向かい始めたのだ。もうヤバヤバである。普通科によるヒーロー科へのジャイアントキリングが決まることがわかったのか、観客席が歓声に包まれ始めた。凄い、強いぞ心操君。ていうか挑発とかで人の回答誘うだけなら最強の初見殺しだよなぁ……なんでヒーロー科に居ないんだろう。
「……?」
あれ。
みどりゃーが止まっ
思わず最前列まで詰めかけ、身を乗り出しながら舞台に居るみどりゃーを見つめた。
「緑谷とどまったァァァ~~~~ッッ!!!」
えっ、ちょ……は? なんで? みどりゃーの個性か? 何で動けるんだ? なんで解除できたんだ? 完全に意識を失うはずだ。解除しようとも思えないはずだ。個性に備わった能力? いや、
罵詈雑言を浴びせる心操君。
歯を食いしばって耐えるみどりゃー。
「みどりゃー、君は……」
みどりゃーのジャージを掴んで右ストレートを叩き込む心操君。
一発食らうみどりゃー。そしてみどりゃーも心操君のジャージを掴み、
「僕は!」
腹の底から、
「絶対にッ!」
声を出して、
「負けられないんだッ!!」
心操君の顔面に強烈な右ストレートを叩き込んだ。
「そうか……そういう事か」
衝撃。
「緑谷君、二回戦進出!」
入場口から顔を出すオールマイトとみどりゃーを見比べた。見ればわかる。そうか。だからみどりゃーなのか? ああ、そう。そうだ。
……僕じゃない。
二人の健闘を称える歓声がとても遠く聞こえる。みどりゃーにはもちろん、心操君にもだ。彼にも惜しみない声援が贈られている。多分彼は編入してくるだろうなぁ。
「峰田くん?」
あ、やべっ。
葉隠ちゃんの声で正気に戻った僕は慌てて立ち上がり、そそくさと座席に戻った。
みんなの視線が集中する中、僕はふんぞり返って一言。
「まあ僕はみどりゃーを信じてたけどね!」
「さっきダメそうって言ってたじゃん!」
「すげえ、手摺が歪んじまってるぜ……」
「やっぱ峰田のフィジカルおかしいよ」
「……信じてたけどね!」
滝汗を流しながら知らんぷりした。