僕自身がスケベになればいいのでは?   作:PhaseShift

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「焦凍にはオールマイトを超える義務がある」

 

「戦闘において、左は使わない」

 

「君との試合はテストベッドとして有益だ」

 

「クソ親父の個性なんか無くたって俺は……」

 

「みっともない試合はしないでくれたまえ」

 

「右だけで一番になって、奴を完全否定する」

 

 

 

「君と決勝で戦いたい」

 

「今までの成果」

 

「僕に叩きつけてくれるのを待ってるよ」

 

 

 

僕は……。

 

 

 


 

 

 

 

「どうした峰田?」

「いや……」

 

 え、何? みどりゃー、なんか叫んだ?

 ステージに居るみどりゃーを見つめる。何ともない……筈だけど、なんだ? 違和感が凄い。個性の炎が普段よりも燃え盛っている。ごうごうと……音を立てて。

 

 

「第二回戦第一試合! 両者トップクラスの成績!」

 

「緑谷出久!……バーサス……轟焦凍!」

 

「スタァトォッ!!」

 

 

 始まった。轟君はブリザドの構え。

 

「殴って砕いた!?」

「緑谷、パワーが制御出来るようになったんか!?」

 

 クラスメイトが驚愕する中、あのくらいは当然だという言葉を飲み込む。出力……なんかちょっと上がってないか? あれじゃ体が……いや、無意識に自分の限界ギリギリを見極めてるのか、あのナンセンスボーイのみどりゃーが。

 格闘自習にあんまり来なかった轟君はまさかみどりゃーに氷を真正面から砕かれるとは思ってなかった様子。動揺を覆い隠して連続攻撃に入ったけど、所詮轟君のブリザドは地面を伝う攻撃。しかもみどりゃーが轟君の個性の欠点に気付いてないわけがない。

 彼の氷が自分自身を冷やす以上、時間はみどりゃーに味方している。でもみどりゃーが近づけばすぐ決着がつくかと言われたら答えはNO。轟君の氷は彼自身から発生している以上、中途半端な接近は彼に有利だ。僕だったらヒットアンドアウェイでチキンレースを挑むけど……君はどうするんだろうな、みどりゃー。

 

「やっべ、もう始まってるか!?」

 

 お、切島君おかえり。

 

「2回戦進出、やったな!」

「ありがとよ! 次はおめえとだ爆豪。よろしくな!」

「ぶっ殺す」

「ハハッ! やってみな!……とはいえお前も轟も強烈な範囲攻撃ぽんぽこ出してくるからな……峰田に至っては握力だけでコンクリ粉々にするし」

 

 ぽんぽこじゃねーよ舐めんなカスと辛辣すぎる返しをしたバクゴー君の声を聴きながら考える。

 

「激しく動けば筋繊維が切れるし走り続けりゃ息切れする……クソ団子の言った通り、完全無欠、最強無敵の個性は稀だ。所詮は体に備わった機能。何らかの限度はあんだろ。おい、クソ団子」

「うん。そしてそれをコスチュームでカバーすることが多い」

 

 君の籠手もそうだろう?と振り返って見つめてみれば、つまらなさそうに鼻で笑われた。

 

「クソデクは本当に制御出来てんのかよ」

「自分に注げるコップギリギリ……たまに溢れさせて砕いてるかな」

「答えになってねンだよ」

「出来てるか出来てないかで言えば……今は出来てない」

 

 手首……いや肩か胸かな。骨は逝ってないけど負荷が凄まじいと思う。

 

「でもみどりゃーは自覚してると思うよ。実際、全部砕く選択肢を取るなら普段のみどりゃーじゃ出力不足だ」

 

 ていうか何で砕いてんだみどりゃー。

 今のみどりゃーなら回避出来るだろ。何やってる!?

 

 案の定、轟君が飽和攻撃をしながら接近。氷の陰から飛び出してみどりゃーに直接タッチを試みるが、みどりゃーは真正面から迎え撃つ覚悟だ。今のみどりゃーのパンチ、轟君なら一撃でKNOCKOUTだ。でもリスクが大きすぎないか?

 

 轟音。

 

「……あ!」

「踏み込みで床ごと砕いた!」

 

 あ、上手いぞみどりゃーそれ。震脚ってやつ?*1

 当然、走っていた轟君はバランスを崩す。

 慌てて氷壁を作るけど、間に合わない。

 強い踏み込みを伴った正拳突きが轟君の腹に突き刺さる。

 

「惜しい!」

 

 轟君は済んでの所で背中と腹に氷を展開できたみたいで、噎せながらも場外ギリギリまで吹っ飛ばされるだけで済んだ。

 みどりゃーは……あー、みどりゃーの右腕が氷に包まれている。

 カウンターで凍結させたのか。テクいな轟君。

 ……少し、彼らは言葉を交わしてるようだ。

 冥途の土産なのか、もう震えてる轟君の時間稼ぎか。

 

 ……。

 

 

「どこ見てるんだ……」

 

 

 僕の背中にも背筋に冷たい何かが走った瞬間、みどりゃーが自分の右腕で自分を包む氷を粉々に砕いた。凍てつき、握りこぶし以外取れる形のなくなった手が、僕の目から見ても少しだけ脅威に感じる。

 なんだ? これは……このプレッシャーは。

 

「左側の熱で、その震えは解決できるんじゃないのか」

「皆本気でやってるんだよ」

「勝って目標に近づくために」

「1番になるためにさ……!」

「半分の力で勝つ……?」

「僕を見ろ轟焦凍。まだ僕はピンピンしてるぞ……全力で掛かってこい!」

 

 プッツン来たらしい轟君、みどりゃーに向かっていくが動きが鈍い。接近戦を挑むのは思ったように氷が出せないからか? 当然、みどりゃーは凍てついた右手と無事な左手を使い分けて襲い掛かる氷に対応する。凍結されたら内部から思いっきり砕く。砕く、砕く、砕く、砕く……!

 

「デク君、腕がもう……」

 

 ああ、屋内で轟君と戦った時の僕より酷い。動くだろう。威力も出るだろう。でも皮が剥がれ、流れる血潮すらも凍てついたそれを打撃に使うのは……並み以上の精神力が要る。ソースは僕。

 

「なんでそこまですんだよ……緑谷!」

「皆の期待に応えたい……」

 

「笑って、答えられるようなッ!」

 

「格好いいヒーローになりたい!」

 

「だから、僕が一番になる!」

 

 

 みどりゃーの魂の叫び。

 

 

「君も……君の力じゃないかッ!!」

 

 

 瞬間、熱を感じた。轟君がずっと封じていた炎を開放したのを見て、思わず顔がにやけてしまう。みどりゃーのやりたかった事がうっすらだけどわかったからだ。みどりゃー、お前素敵だよ。

 そうして、僕が内心悶えてる間。二人は少しだけ会話して……轟君は冷気と熱を。みどりゃーは胸の炎を全開に。

 彼らの力がぶつかり、フィールドは暴風と砂塵に包まれる。

 

 

 

 

「轟君……場外。緑谷君、三回戦進出!」

 

 

 

 

 響き渡るミッドナイトの声を背に、僕は控室へ向かった。

 

 

 


 

 

 

「ナイスファイト」

「すみません、学んだことを少しも活かせず」

 

 申し訳なさそうにすれ違う塩崎さんに気にしないでと返しつつ、僕はリングに上がる。騒がしさも感じないくらい、五感も頭も澄んでいた。実況も何も……聞こえているけど頭に入らない。僕は先のみどりゃーの戦いを頭の中で反芻することに夢中だった。

 

 

 

「スタートォッ!」

 

 

 

 あんなものを見せられたら、アガるな。

 僕は粘着玉を1捥ぎ、全部口の中に含んだ。

 

「えっ」

 

 ヤオモモが何かを作ってるようだから、僕も作ろう。

 もぐもぐと全力で咀嚼し、形を作り、両の頬袋で二つに分け。

 

「忍法、口寄せの術」

 

 再び一つに混ぜ合わせたそれを口の中から、それをゆっくりと引き出した。

 

金剛如意

 

 硬化、剃。

 

「くぅッ!!」*2

「む」

 

 電流が走ってる棒……多分スタンバトンで受け止められた。ヤマカンで見切ったのか? いや、僕の癖が見切られてると考えたほうが良いかな。ならこれ以上考える時間を与えずに畳みかける。パワーじゃ負けないぞ。続くもう一振りで更に真正面から殴り……殺気!?

 

 慌てて月歩で上空に逃げた瞬間、ヤオモモのお腹が思いっきり炸裂した。

 比喩じゃない。マジで吹き飛んだ。

 

「チィッ!!」

 

 指向性のある爆弾……クレイモア地雷か!? 僕じゃなかったら即死してるぞ!? そんなことするならこっちも思いっきりやるからな!!

 金剛如意を空中から思いっきり横に振り払う。気分はマスターガンダムだ。食らえインチキ判定マスタークロス! 発生1F以下です。あと硬化を解除して接着、拘束します。おっぱいが目立つ形で。ついでに揉ませてください。FACKはしませんので。

 

 ……えっ!? ヤオモモがぶっ飛んだ!?

 

「……小麦粉か!」

「ご名答」

 

 ジャージを脱ぎ捨てた彼女はいつもより真っ白だった。黒いインナーすら白く染まっている。僕の個性の粘着力は粉じんが付着したら著しくその性能を落とす。ああ、一番お手軽だな。個性で拘束するプランを潰された。

 

「真っ白になっても翳りないくらい、綺麗だね」

「あら、いつもと違ってお上手ですのね。やれば出来るのですから、いつもからそうなさったらいいのに」

 

 いや? そうでもない。

 

「ごめん、師匠以外で強い人とリアルで戦ったの初めてだから」

 

 武装、硬化。

 

「スッッッッゴイ……興奮してる♡」

「おあいにく様、わたくしより身長が高い方がタイプでして……よっ!」

 

 剃、月歩。

 遠心力を加えて金剛如意で殴りつけ……ようとしたけど、これ見よがしに腹筋から生成されたクレイモア地雷をそのまま炸裂させられそうだったので慌てて距離を取……る……?

 

「は!?」

 

 僕のニンジャ動体視力が捉えたのは軍が採用してる最新式プラズマグレネードだった。バックステップで回避する僕に合わせて、的確に投擲されたそれが起爆。電気と熱の両方が僕に襲い掛かる。

 

「あっばばばばばばばっばびびびびび痛ァッ!?」

 

 すかさず脳天に衝撃。ギリギリ硬化間に合ったけどちょ、ちょちょちょ、待て。待って♡ 12ゲージスラグ実包は聞いてない。しかもその手にあるのは重機関銃では? しかもヤオモモから直接伸びてるヤオモモベルト給弾式では?*3

 いやまあ一丁だけなら……紙絵でなんとか。

 

「……よいしょ」

 

 がしょんと何ががヤオモモから生み出された。

 ……投げっぱなし式設置型セントリーガン*4を複数出してくるとか聞いていません。

 

「待って♡」

「ダメ♡」

あああああああああああああッッッ!!!!!!!!

 

 流石の僕でも実弾は死ぬ!! 紙絵紙絵紙絵紙絵紙絵紙絵紙絵紙絵紙絵紙痛っ紙絵紙絵紙絵紙絵紙絵紙絵紙絵紙絵紙絵紙絵紙絵紙絵紙絵紙絵紙絵紙絵剃剃剃剃剃剃剃剃剃剃剃剃剃剃剃剃剃剃剃!!

 

「……バカ!!」

 

 審判(ブッダ)よ!! 寝ているのですか!!

 ていうかあなた眠らせる方でしょ!!

 

「そんなに逃げ回らないでくださいまし!! ツれないお方ですわね!!」

「このデカチチコマンドー!! 流れ弾とか考えないのか!!」

「デカチッ……あなたが観客を背にするなどという反ヒーロー的な行為をしない限り大丈夫ですわ!」

 

 な、なんだとぉ……! そもそもお前がそんな武器持ち出さなければいいだけだろうが……!! あと避けるのに必死過ぎて、恐らく発砲と一緒に超揺れていたであろうヤオモモのおっぱいを見れなかった事に自分の未熟を感じ……ムカついている。そしてもう見れるチャンスは少ない。

 何故なら。

 

「弾丸は無限じゃない」

「……ここがわたくしの正念場! 行きますわよ! 峰田さん!」

「滅茶苦茶にしてやる!」

 

 冷静になれ。何故12ゲージのスラグを選んだ? 僕には熱と電気で攻めるのが定石ってわかっただろうに。わかってないはずが……無いよな。ていうことはこれは陽動。爆音、衝撃、掠める恐怖、そして空中を封じた。その次は……。

 逃げる、逃げる、逃げる。

 何発か被弾するけどこれは必要経費だ。近づいたら爆薬からのパルスグレネードが殺意を持って襲い掛かってくる。粘着させることも困難。そしてこうして逃げ回る間にも……ヤオモモは僕に対する詰みの一手を創造してるかもしれない。そう、ヤオモモに考える時間を与えてはいけない。速攻だ。

 

 頭に被弾。剃から転倒したように見せかける。

 ヤオモモとの距離は依然離れたまま。

 

「そこです!」

「釣れた」

 

 離れたままでいい。

 転倒に見せかけたローリングから、片膝立ちで金剛如意を構える。

 そう。金剛如意(・・・・)。如意棒だ。

 じゃあやる事は一つだよな。

 

「……あっ」

「伸びろ! 如意棒ォォォオオオッッッ!!」

 

 凄まじい加速を伴った如意棒がヤオモモに突き刺さる。

 

「指銃、Q!!」*5

 

 そしてそのままの勢いにヤオモモは吹き飛んだ。セントリーガンや重機関銃を置き去りにして。

 

 

 

「八百万さん場外! 峰田君、三回戦進出!」

 

 

 

 ……よし。

 待ってろよみどりゃー。

 

 

 

*1
ワンポイント師匠:地面に加えた衝撃が全部地面に全部逃げちゃってるから震脚ではないね。地面を踏みつけた時のエネルギーを全部打撃に変換するのが震脚。勉強になった? 今度実際に試してあげるね!

*2
八百万注:いつもの何倍も重い!

*3
八百万注:12ゲージ弾に対応した機関銃は自分で設計しましたの。割と楽しいですわね!

*4
八百万注:これは既製品ですわ

*5
師匠注:これもまだ1回しか見せた記憶無いんですけど!?






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