僕自身がスケベになればいいのでは? 作:PhaseShift
028が先に投下されています。
「流石にやり過ぎでは?」
「いえ、これでも足りないくらいです」
「遊撃にオールマイト、索敵にハウンドドッグ、全体指揮に君が居る時点で彼に勝ち目はないように思えるのに、更に出口付近への守りにエクトプラズム、遠距離攻撃にミッドナイトとサポートアイテムまで引っ張るのは彼の限界を大きく超えてはいないかな?」
「いえ、校長。これが最低限です。こと単独の戦闘に関してはそれほどのポテンシャルがある。オールマイト、貴方なら分かるはずでしょう」
「Umm... 本気ならまだしもある程度生徒に対して手を抜いた状態で、しかも重りというハンデを背負うとなると……鬼ごっこをするだけでも難しいでしょう。機動力に関しては全盛期のサルヴォに匹敵している」
「イレイザーヘッドよぉ、一応確認するが……あいつはこれからほぼ打倒不可能なオールマイトに犬の嗅覚で追われながらビル上の狙撃拠点に狙い撃ちにされつつ物量で守られたゴールを通過する訳だよな?」
「ああ……そして俺は、これでも峰田にとって"まあまあキツい"で済むと思っている。食事量を絞ることで絶好調から普通に戻したとしても」
「否定できないわね。なんていうかあの子ならそれくらいで済むっていう言語化できない謎の信頼感があるわ」
「いまだに底が見えないっていう事の裏返しでもある」
「食事量については怪しいがね。あのサルヴォが常に腹いっぱいで修行させるとは思えない」
「……要は底を見るためにもっと追い込みたいと?」
「ええ。といっても、これ以上教師を追加したら不合格率が著しく上がると思われます」
「遠距離攻撃にミッドナイトじゃなくて俺を使うとかか?」
「ついでにパワーローダー製の武装や超小型通信機を使う事と、校長を司令塔にするのもナシです」
「……そう思うと今の構成が詰み一歩手前のちょうどいい塩梅に思えてくるから不思議ねぇ」
「話を戻そう。とどのつまり、これでは足りないが教師の追加はダメとなると……ようは彼がどう出るかわからない、予測不能の変数を入れたいというわけだね。相澤君」
「はい、校長。そして許可をいただきたい」
「これでは足りないが教師はダメ……」
「予測不能の変数?」
「マテ、嫌ナ予感ガシテキタ」
「まさか……」
「葉隠と八百万を遠距離攻撃の拠点に、ヴィラン役として動員します」
職員室を呻き声が満たした。
まあ、結局決行されるのだが。
「徹甲弾、装填!」
「防がないと死ぬぞ、峰田!」
確かに防御できるけど付き合ってやる義理は無い。口に含んだもぎもぎを吐き出しながら薄く整形。手に落とした後に武装色を込め、捕縛布を切り裂き拘束を脱出。
……抜け出すまでに撃てた筈なのに砲撃が来ない。
ああ、弾が徹甲弾じゃないかもな。
いやどんだけ僕を殺したいんだ?
「(個性は封じた! 峰田の狙いは間違いなく俺!)」
……と、思ってるのだろうが。まあ僕を近寄らせるのが狙いなのはわかっている。近寄らせてそのまま近接に持ち込みたい? ダメージを蓄積させたい? 違う。時間を稼ぎたいんだ。後ろからはオールマイトが来るだろうし。
そのために僕をここに引き留めておきたい、が正解かな?
ならば手札を一つ切るだけである。
拘束を抜け出して落下を待ちながら、
頭のお団子へ手を伸ばし、
大きく息を吸う。
「喝ッ!!」
全身に覇気を漲らせ、こちらに干渉してくる個性を打ち消した。
「嘘だろ!?」
「よっしゃ出来たァッ!」
凄まじい虚脱感。なんかごっそりと持っていかれた反動が全身を襲う。これ師匠の個性を打ち消した時より疲れてる気がするけどまあ安い出費だ。ぶっつけ本番だったが手には確かにもぎもぎがひと捥ぎ。
「忍法、粘着手裏剣!」
発射の合図を待たずヤオモモがこちらに狙いを定めて砲弾を発射。月歩で素早く立て直した体勢から投擲……しない。スローモーションに見える推定徹甲弾が起爆するのに合わせてベールのように薄く伸ばし、爆発の反動で一旦横に移動。やっぱり徹甲弾じゃなかった。
そしてさらに月歩で一気に真上まで大ジャンプ。
「(投擲しない?――)」
「先生! 空蝉で――」
そのまま一気に降下して先生の頭に回転を加えた踵落としを叩き込む。相澤先生、ノックアウト。屋上に残っているのはヤオモモとはーちゃんだ。屋上の淵に飛び乗り、少し下に居る二人を注意深く見下ろしながら……ながら……あー……。
なんで二人が? そういう試験?……いや考えるのは後にする。まずは砲台を破壊してそれからゴールを目指そう。
「……おーっほっほっほっほ! わたくしはスーパーヴィラン、クリエティですの!」
「!?」
「この距離から皇居を爆撃しようとした私の目論見に気づくとは! 流石ですわ! スケベ忍者!」
ヤオモモがいつのまにかドロンジョみたいなマスクを着けて決めポーズしていた。え、えっちすぎる……ちょちょちょおっぱいがこぼれそうですよ!! あと見え見えの適当ぶっこくのちょっと面白いからやめてくれませんか?
……その瞬間、僕の胴に何かが巻き付いた。
えっ。
何これ。見えない。
見えない? え? 完全な不可視? バカな。
形状からして、ロープ状だ。ちょっといい匂いがする。そして本当に集中しないと見えない。僕と同じ気配を押し殺すテクニック。これを認識しているのは多分師匠と蘊蓄垂れやがったオールマイト達。
そしてほんの少しだけ気配を感じる、僕も使っているとある技の残滓。
あはっ。
「ヤオモモ、今!」
あはは。
「
これは透明の鞭だ。
「はーちゃぁん♡」
目が合った。
ちゃんと見てるよ。
繋いだ視線に割り込む様に一瞬見えた大きな谷間。全身を包む柔らかい衝撃。そして強烈な眠気。体も思い切り吹き飛ばされ、屋上の景色やミッドナイトのおっぱいと一緒に意識が段々遠のいていく。
不思議と痛くはなかった。むしろ有り余るくらい興奮している。勃起が止まらない。はーちゃん凄いよ。入れ知恵したのは師匠かな。それともミッドナイトかな。それとも両方なんだろうか。多分鞭自体がCCF*1で出来てるのかな。それを拙いとはいえ僕を相手にあそこまで接近を気付かせずに鞭を巻きつけさせるなんて。いや、僕だからできたのか? 二人がこの試験に混ざっているのは――いや今はどうでもいい。
最近コソ練してたのはこれだったんだね。
「自分から降りてくるとはな! 行くぞ、峰田少年ッ!!」
やばい。ちょっとおかしい。はーちゃん、可愛いよ。はーちゃん、本当にすごいよ。はーちゃん、鞭が少し熱を持ってたね。ああ、駄目だ。なんかもう。変なスイッチが入ってしまった。頬が熱い。脳味噌が外に流れてる気がする。僕もお礼に見せたい。
全部出し切ろう。我慢はやめて。
まだ制御できないよ♡
違うよこれはわざとだよ。
はい怒られるの確定♡
怒られてもいいよ。
はぁ? 雑魚のくせに生意気♡
おねがい。
……いいよ♡
「なんだッ!? このドス黒い気配は!?」
溢れ出す 蓋を開け、注ぐ。
真っ黒の衝動。纏え。武装色の限界値。
「いや――SMAAAAAAAAAASH!!!!」
下から迫るオールマイトのパンチを、左手に構えた竜爪拳で掴み取る。押される左腕。落下速度。下へ向かう重力。パンチの衝撃。真っ黒の覇気。右手から迸る赤い稲妻。全てを吸収して右腕に纏わせる。
「ウォオオオアアアアアアアアッッ!!」
間違いなく全力全開の指銃、獣厳をオールマイトの顔面に突き刺した。
……鋼鉄の壁殴ってる感じ。
そうか。ここまでやってまだオールマイトをノックアウトできないか。全く壁は高いな。残念ながら手ごたえはない。ていうかすげえ金属音したし。なんで金属の音すんだよ。少しの疑問は沸いたけど面白い速度で地面に消えていくオールマイトを放置して、落下中のまま月歩で移動。
何歩か飛べばゴールが見えてきた。
ああ、今までにないくらい速い。
体の内側から燃えあがってる。
「フーッ……フーッ……!!」
沢山居るのは……ああ。エクトプラズム先生か。もぎもぎをいくつか捥ぎ取り、この有り余る覇気を封じ込める。もういい。後先考えずにカードを切ろう。僕も見てほしいのだ。自分の力を。届かせたいのだ。最強に可愛くて強い、その頂点へ。
「ココハ通サン……!!」
ゴールまで目前。
バカみたいな数の分身が拘束手錠片手に僕へ殺到する。
「遅い」
忍法、粘着糸の術。
剃と月歩を組み合わせ、雁字搦めに補強した粘着糸を縦横無尽にばらまき、目に見える範囲、目に見えない範囲全ての分身を絡めとり、拘束する。
「奥義、月果赤嶺」
「蜘蛛ノ手遊ビ如キデ……!!」
僕の両手は、月果赤嶺とまだ繋がったままだ。
「我ノ分身ハ出シ入レ――」
「竜爪拳」
僕の忍法。僕の奥義だ。
何が核かは、僕が決める!
「竜の息吹」
広範囲に張り巡らせた全ての糸に過剰なほど込められた覇気が全て爆散した。轟音と閃光、そして空間が振動するほどの衝撃。土煙とビルのガラス片が晴れた頃には分身は全て消滅し、エクトプラズム先生が地面に横たわっていた。
……ゴールは。
遠くにぶっ飛んでたゴールの残骸を拾いに行き、コンクリートの道路に突き刺した。
どこにあったかわかんないけど、これでゴールでいいか?
『そこまで。峰田君、試験終了!』
僕は大きな息を吐き、半分に叩き折れたゴールの残骸を投げ捨てた。
二度とやるかこんなクソゲー。
……。
……。
……投げ捨てた残骸はちゃんと拾った。
試験が終わればすぐ総括の時間……という訳ではなかった。
死屍累々である。オールマイトはずっと居ないし、相澤先生とハウンドドッグ先生はリカバリーガールの指示で1日検査入院。そしてエクトプラズム先生は病院に運び込まれることとなってしまった。
意識はあるらしい。
「合格な」
ベッドで体を起こす相澤先生からその声を聴いたのは、試験終了から数時間後。もう日もくれそうな時間帯である。
僕は処刑を待つ罪人の心持で臨んでいただけに、足元を透かされた気分になった。
「えっ。怒らないんですか?」
「なんでそう思う」
「いや……威力を出し過ぎたので」
「エクトプラズムの事か」
その通りである。
考慮できないくらいの火力を用いたのは明確なミスの筈だ。
「……その前に、今回のお前の点数を共有してやる」
「はい」
「85点だ。赤点は30点だな。だから合格だ」
85点。
85点か……。
「そもそも峰田。薄々感づいてるかもしれないが、お前の試験は特別仕様だ。1学期の内容のテストとは別に、お前の底を見たいという雄英の……いや、俺の思惑が多分に含まれていた。今回のテストはお前はギリギリゴールできなさそうなラインを想定している。故に、ゴールできたかゴールできなかったは大した評価項目ではなかった」
えっ。
でも"条件はここから北にあるゲートを通過することだ"って言ってなかった?
「それは試験終了条件だ」
……。
――『お前の試験終了条件はここから北にあるゲートを通過することだ。明確な不合格判定は2つ。1つ目はこの市街地エリアから500m離れること、2つ目はお前自身の戦闘不能だ』
「あっ……ああ~~~~~~~!!」
「今回の試験はお前がゴールに入るまでの過程を持ち点の100から減点及び加点する方式で評価した。試験の主な観点はお前がどれくらいヒーローらしい振る舞いをしながら適切な判断を行えるか。そしてあからさまに難易度が高い課題に対し、パフォーマンスとモチベーションをどれくらい維持できるかだ」
病室の丸椅子の上で思わず頭を抱えた。
「まず、減点から話すぞ」
「はい」
「まず最初。ハウンドドッグから奪った通信機を破壊した」
えっ!?
「あ、あれ壊しちゃダメでしたか……? 位置情報を警戒したんですが……」
「よく見たか? あれは市販の無線機だ。サポートグッズですらない」
た、確かに腰につける無線機なんて使わないか……?
大体は小さいのを耳につけるか。うん。
「深読みが過ぎたな。かもしれない行動は確かにヒーローが心掛ける鉄則とは教えたが、あの場面では無線機を持ち続けるメリットの方が上回るはずだ」
でも回線変えられたら元も子もないのでは。
「たかが市販の無線機の周波数だぞ。ちょっとダイヤル回せば20チャンネルしかない事はわかるはずだ。それに、もし仮に位置情報を発しているかもという判断が頭にあったならそれを利用するべきだし、お前にはそれを実行できるだけのポテンシャルがあるはずだ」
ぐう……!!
「その通りです」
「素直に認めるところはお前の良い点だな。オールマイトに追われてるプレッシャーは察して余りあるが、それを差し引いても相手の情報を得る手段を安易に捨てないこと。10点減点」
無線機のメーカー、調べとこう……。
うつむいた僕の耳にクリップボードを捲る音が届く。
「次。これは試験中に伝えたな。屋上の砲台が明らかに釣りであることに気づかず、気配を消した状態で奇襲しなかった。お前なら気配消しながら屋上まで登れるだろう。少しは時間かかるだろうが目立つ紫色の糸であんな大掛かりなカタパルト射出してたら屋上の俺たちはもちろん、オールマイトでも気づくぞ」
ハウンドドッグをのして驕りが出たか? 油断というよりも調子に乗り過ぎだ。
そう付け加えられた言葉にぐうの音も出なかった。
「これは結構デカいやらかしだ。屋上の俺達にもカタパルト設置を事前に察知されてる上、自分でオールマイトを引き寄せてるわけだしな。40点減点」
……あれ。
「はーちゃ……葉隠さんと八百万さんが居ることを考慮しなかったのは減点じゃないんですか?」
「しない。試験中はああ言ったが、事前情報0であいつらが居ることを考慮なんて出来るわけないだろう。そこまで考え始めたらキリがない……
えぇ……。
いや、あれも挑発というか心理テストか。
「だから問題は知り合いが敵側に居ると認識した後だ」
「は、はい……」
相澤先生はまた手元のクリップボードの紙をめくる。
「八百万のブラフを読み切ってから一気に俺を気絶させるまではよかった。だが……いや、あれは八百万と葉隠が上手かったな。動き出そうとしたお前を大仰なアクションで気を引き、その隙に葉隠がステルスウィップで捕縛。そしてミッドナイトを発射した」
「全く気づけませんでした。油断もあったと思います」
「ここでも減点されてるわけだが、何が原因だと思う?」
ええと。
砲台を破壊できなかった。
「そうだ。八百万の砲台を破壊することがマスト中のマストなのにまんまと気を取られたな。お前ならあの一瞬で砲身歪めるくらいはできただろ。10点減点」
「ぅーむ……」
「ちなみにあそこは加点のチャンスもあったぞ」
えっ。
「屋上到達後にミッドナイトの所在を突き留めたら大幅加点だ」
は?
どのタイミングで分かるって――
――『こちらオールマイト。後を追っている』
――『まだ開始から5分も経ってないぞ!』
――『ハウンドドッグの信号が止まったままだ』
――『次の砲撃はどうするの?』
――『待てミッドナイト! 周波数を変――』
あっ。
あああああああああああッ!!
「気づいたか」
「無線機奪った時のですね!」
「看破は無理でもあの時点で屋上にミッドナイトが居ることを警戒出来てたら花丸やれたんだがな」
うわー!! 全然気づかなかった!!
なんだこれ!! 嫌なアハ体験だな!!
「減点は以上、10、40、10。合計60点減点」
「oh...」
まあ確かにちょっとよくなかったか……あれ。
でも僕の点数って85点だよね。
「しっかり胸に刻んだか?」
「メモもとりました!」
今のは余さず手に持ったルーズリーフとクリップボードに全部書き込んでいるわ。抜かりはない。こういうところを反省しないとな。うん。強くなってもムーブがヤバかったら意味ないからね。
「じゃあお待ちかね。加点の話だ」
相澤先生がペラペラ紙をめくり、何やら書き込みが多いページを見ながら淡々と続けた。
「まず全体を通して、追跡するオールマイト相手に緩急付けた立ち回りが出来ていたな。パワーで押す相手には押させなかったり透かしたり搦手を駆使したり、と見せかけて真正面から意表を突く動きだった。そして砲撃を受けた後に優先順位を整理して臨んでいる事が確認できた。特に砲台の破壊に失敗しても意固地にならず、迅速にゴールを目指せた。5点加点」
正直オールマイト倒すの無理って弱音吐いてたけど、暖簾に腕押しというかまともに付き合わないことが結構効くってわかったのは収穫だ。倒すのはマストじゃない。あの人はそういう災害なのだ。災害には避難が一番。搦手は二番、真正面は三番だ。
「次。よくハウンドドッグを見つけたな。オールマイト自身の索敵能力はそうでもない。そこから推測されるメンツを選定して迅速に潰しに行ったのはいい判断だ。10点加点」
痛打で意識を朦朧とさせた後に一気に気絶までもっていくのは極めて合理的だとこぼす相澤先生に思わず涙が出そうになった。まあ案外頑丈か。エクトプラズム先生に対してもそうだし、その辺の塩梅もちゃんと身につけなきゃ。
「次行くぞ」
「はい」
「屋上で俺の個性を解除した上に、ミッドナイトが発射されてモロに食らった後も寝てなかったよな」
「……はい」
ちなみに空砲で打ち出されたミッドナイト先生はしっかり命綱をしていた。そりゃそうか。でもマジでおっぱい柔らかかったしいい匂いだった。毎日あれで寝付けたら最高だろうな。
「おい、顔引き締めろ」
「すいません」
「……個性の打ち消し。どうやった?」
「相澤先生の時は覇気を全身に纏ってこう、全身にまとわりついたスライムぶっ飛ばすみたいに破ァッ!ってやったらできました。ミッドナイト先生の時は覚えてません。あの時は……」
あー。
はーちゃんがすげーいい感じだったからつい。
嬉しくて脳みそから変な汁出まくっててテンションぶちあがって……。
「こう……テンションが変な感じに振り切ってて」
「ようはテンションが上がって、その覇気とやらでミッドナイトの個性も打ち消した上で」
「はい。あのパンチを繰り出せました」
「なるほど。お前、お前の保護者、そして緑谷に……全く。意志の力なんて半分オカルトだと思っていたが、案外現役ヒーローの中でも無意識に習得してるやつがいるんだろうな。そうじゃないと説明がつかん現象がたびたび起きてる」
それは……。まあ、そう。
絶対死んだだろってときにも死んでないことが多すぎるよね、この世。
「一応加点としては個性の打ち消しをしたことで10点。オールマイトに対して痛打を負わせたことで10点加点だ。特にあのパンチ、V見たが凄まじかったな。甘いとはいえ逃がす気もなかったオールマイトのパンチを技で受け止め、その反動で上体を捻り落下の勢いと一緒に叩きつける。流石のオールマイトも空中でフラッシュダウンした結果着地をミスりかけたらしい」
フラッシュダウン?
「ボクシング観ないのか? 意外だな。ダメージの蓄積でもなくいい所に入ったのでもなく、一瞬の意識の間隙を突かれて一瞬ダウンすることをフラッシュダウンと言う。まあダウンはダウンだ。1本いいのが入ったと思うぞ」
お、おお……。
「次行くか」
「はい!」
「エクトプラズムへの一斉拘束と有無を言わさない速攻起爆だ」
「えへへ……」
「で、あれの仕組みは?」
「まず前提として竜爪拳は物の芯、核を捉える事が重要な術。本来は核を掴み取り――「ふむ」――その後の覇気の注入で対象を内部から破壊するのが真骨頂です」
「ちょっと待て」
「はい」
「……いや後にする。前提はわかった。続けろ」
「まず忍法粘着糸の術にもっと覇気を込めたものを用意して敵を拘束します」
「より速く頑強に拘束できる訳か」
「はい。そして僕の糸なので、糸の核というか芯は丸わかりです。文字通り手に取るようにわかります。自分の体の一部と言っていい」
「……それで?」
「糸に対して覇気を注入し、内部から破裂させました」
「なるほど。エクトプラズムの内部を破壊したわけではなく、あくまで全身を拘束している糸を内部から破壊したのか」
エクトプラズム先生は直接の内部破壊を食らった訳では無かったものの、覇気を込めた糸を内部破壊した結果発生する衝撃波を全身に満遍なく浴びたことでノックアウトしてしまった。いやむしろし過ぎた。
「はい。連鎖的に糸が爆破する際の衝撃でノックアウトできます。ただ――」
予想よりも規模が大きすぎたのだ。
「当ててやる。練習じゃ粘着糸の術の拡張版、いわば奥義に対しては使ったことがなかったんだろう」
「はい……」
これは仮定の話だが。
「……これが加点なんですか?」
「まあお前がミスったのは今知ったからな。評価は既に下りた。俺たち評価する側と確認できた事実として、数で勝るエクトプラズムを僅か5秒足らずで完全に制圧。分身ごと纏めて打倒してゴールした。文句なしの加点だ。なに悩んでんのか知らないが、そもそもヴィランがヒーローにやられ過ぎて病院に担ぎ込まれるなんて日常茶飯事だぞ」
お……おお? 意外と軽傷だったのか。
「エクトプラズムは全身の打撲
「……」
「お前は切れる札が多い分、札の組み合わせを安易に試すと予期しないしっぺ返しを食らうかもしれないぞ。意志の力とやらで戦うのも結構だが、テンションでヴィランぶっ殺しちゃ元も子もない。これは今回、俺からお前に送る最も大事な忠告だ」
「はい……反省します」
「よし。加点は10点だ」
「……あれっ?」
えーと。
全体の動きで5点、ハウンドドッグ先生の制圧で10点、個性解除してすぐ反撃して10点、エクトプラズム先生への超必で10点。後10点は?
「最後の10点、気になるか?」
「はい。なんなんでしょうか」
「当ててみろ」
「ええと……」
「わからんか」
「すみません」
「お前がガス欠にならず、気絶しなかった」
あっ。
「ヒーローとは最後まで立って、ドヤ顔で回りを鼓舞するもんだ」
……やった!
「進歩だな。峰田」
あぁぁあああああ~~!!
せ~んせェ~~~~~~♡
思わず両頬に手を当てて悶えてしまった。
おじのニヒル笑み、いっぱいしゅき……♡
「先生! ハグしていい!?」
「お前本当に見境ないな……!」
えへ。
よろしければ高評価や感想、よろしくお願いいたします。