僕自身がスケベになればいいのでは? 作:PhaseShift
誤字報告、感想、評価、全部嬉しいです。
ありがとうございます。
これはお願いなんですが、気に入った文章、面白かった文章などがあれば積極的に「ここすき」を押してくださると作者として大変助かります。
自分がウケるだろうなって部分が全然ここすきされていなくて、逆に指が流れで書いた文章が滅茶苦茶ここすきされたりしているのを見るのは、創作活動においてとても参考になるからです。
勿論、感想や評価も首を伸ばして待っています。
どうぞよろしくお願いします。
追記:誤字、乱文の頻度がヤバかったので見つけ次第順次修正してます。すいません。
放課後、少し葉隠さんとお話した後。
彼女と一緒に食堂から教室に移動し、自席に座っていた。ただ気持ちは授業を受ける気分なんかじゃない。目の前に師匠が腕を組んで僕を見つめているかのようだ。
何故か? 教室に入った瞬間一斉に僕の方を向いて教室の雰囲気がややピリっとしたから「なんかあったのかな?」と思ってさ。勇気を出して近くに居た上鳴君に聞いてみたんだけど ――緑谷君は不在だった―― 彼曰く僕達の戦闘訓練から音声が復活し、全部モニタールームへ丸聞こえになってたんだとさ。
「峰田さん」
今世も楽しかったです。
「貴方がその……性に奔放というのは今日一日でよくわかりました」
八百万さんがすごーく言葉を選びながら話しかけてくれてる。
やっぱりこれ今日死ぬんじゃないかな。
「たはは……ウチもちょっと意外」
「まあ意外だよね。てっきり清楚系かと思ってた」
「それ! お団子ヘアだけど前髪ぱっつんだし、てっきり!」
「ケロケロ……まあ清楚どころか男の子だったわけだけど」
麗日さん、耳郎さん、芦戸さん、蛙吹さん、そして目の前に葉隠さん。
「峰田君がスケベって事、みんなSNS見て知ってるらしいから今更だよ!」
――……げぴ!!*1
葉隠さんの心無い一言で僕は教室の壁まで吹き飛ばされた。
「俺だったら立ち直れないぜ」
「容赦ねえなあいつら……」
じゃあフォローとか入れてくれません?
自主的に教室の壁に向かって十字に
主よ、今から逝くとこ見てて。*2
「ケロケロ。そんなことは置いといて。峰田ちゃんと緑谷ちゃんを皆待ってたのよ」
「え? 僕と緑谷君を?」
貼り付けになったまま話を聞くと、どうやらこれから教室に残った皆でワイガヤしながら反省会しようという流れになったらしい。で、僕と緑谷君を待ってたというのはシンプルに緑谷君の分析力と僕の戦闘センスからの視点が欲しかったのだとか。
「僕でいいならいくらでも。緑谷くんは?」
「さっきバクゴー追いかけてったからもうすぐだと思うぜ」
あ、俺切島な。と握手を求められたので貼り付くのをやめて握手に応じた。おお、そこそこ鍛えられてる掌……。
「峰田の手めっちゃすべすべだな」
「そう? ありがとう。嬉しい!」
「気を付けろよ切島。可愛い顔しながらコンクリの破片粉みじんにする手だぜ」
「マジかよ……」
あ、上鳴君!
「おう。戦闘訓練お疲れ。手足大丈夫か? めっちゃグロかったけど」
「大丈夫。上鳴君は大丈夫だった?」
「轟に溶かしてもらったから峰田程酷くねーな」
溶かしてもらった? ああ、氷の温度を操作できたのか。一人で納得した所で、教室付近が騒がしくなる。緑谷君が戻ってきたらしい。凄いぞ緑谷君。今行くぞ緑谷君。僕は賞賛したいんだ。
「緑谷君!」
「峰田君!」
「お疲れ様。今日の闘い、ナイスファイト。すごいパワーだったね。思わず興奮しちゃった……♡」
「峰田君、どうどう」
近くの葉隠ちゃんの背中ポンポンでちょっと落ち着いた。葉隠ちゃんの遠慮ないボディータッチに内心穏やかじゃないけど。ナチュラルに背中触るんじゃない。嘘ですもっと触ってください。
「えっ、えっと……ありがとう。怪我は大丈夫? 保健室に来たって聞いたけど、僕寝込んでて……」
「そうだよ怪我! 緑谷もそうだけど峰田は怪我大丈夫なん!?」
おおう芦戸さん声デカ。でも心配してくれてありがとう。性格も言動もキュート。優しい。葉隠ちゃん聞いてた? 人の心をナイフで刺しちゃいけないんですよ?
「包帯ぐるぐるで派手に見えるけど大したこと無いから大丈夫だよ。」
「そっか! よかった……!」
それからオールマイトにお姫様抱っこされた話をしたらめっちゃ羨ましがられた。ちょっと引いたけどやっぱり君もオタクなんだね。どっどどどんな感じだった!?って聞かれたので超分厚い胸板に感動したことと、心臓の鼓動が滅茶苦茶デカくてこっちまでドキドキしたこと、滅茶苦茶調子悪そうなのにそれを顔に全く出さないところがすっごい素敵なおじさん感あったって回答。緑谷君何故かめっちゃ動揺してたけど、想像以上に彼と仲良くなれた気がする。
「諸君! 準備ができたから1回戦から順番に流そう!」
「流す前は簡単に個性の解説するからね!」
さて。スイッチを入れよう。
まず第1回戦。時折別アングルを混ぜたまま最初から最後まで見切る。その上で緑谷は講評を聞けなかったから、改めて八百万さん達から伝達。そしたら緑谷君がブツブツノートを取りながらマイワールドへ旅立ってしまった。
「デクくん……」
「オタクやん」
親近感覚えるな。
君はそういうタイプのオタクなんだね緑谷君。
仲良くしようね♡
「痛!?」
ただ埒が明かないので強制的に元に戻した。
「峰田さんからはアドバイスはありますか?」
八百万さんからのパスに思わず考え込んだ。
「立ち回りは八百万さんにほぼ同意。戦闘面だけど、皆個性の使い方がもったいないなって思う」
「「「もったいない」」」
オウム返しにされたので詳しく説明する。
「麗日さんとか触れた対象を無重力にする個性持ってるのに物を浮かして飛ばすだけとかもったいなさすぎる。個人的には格闘技術磨いて相手に無重力付与する方向に舵切っても面白いと思う」
「しょ、精進します……」
近接戦闘訓練なら付き合うからお気軽に声かけて。
「次は飯田君」
「!?」
さっきから戦闘訓練の総評で褒められてジーンと感動してるのはいいけど、ヒーロー一家出身の癖に引き出し少なすぎるでしょ。陰毛*3の名前が泣いているぞ。
「麗日さんの個性が怖くて近寄れなかったのかもしれないけど、それなら僕みたいにドア使えば? 無重力状態にされてもドアが自重で落下しないから、ドアと手すりにサンドイッチして蹴り放題のボーナスタイムになるよ」
「峰田君怖!?」
触ると効果発動するタイプの個性への対処は障害物挟めば大体解決するんだよな。
「あとは物を蹴っ飛ばして攻撃するとかあるじゃん」
「け、蹴飛ばす?」
おいこら陰毛1号。もうちょい弟に自分の背中を見せんか。弟が困ってるぞ。
「もう! 君のエンジンは"走る"だけしか能がないのか!? 勿体なさすぎる! インゲニウムが泣いてるよ!」
「なっ……」
「君がエンジンを使って速く走れる。ってことは、そもそもエンジンの本質って脚力を上げる事にあるんじゃないの? 脚力を強化してやる事が走るだけって……宝の持ち腐れだよ!」
もっとあるじゃん勿体ない! 僕はその個性が欲しかったよ! その個性があったらあの地獄の修行は無かったんだから! 僕がどんなに苦労して地面を10回以上踏んだり空中を蹴ったり出来るようになったか……。
「た、例えば……」
飯田君は震える手つきで眼鏡の位置を直した。もうちょい自分で考えるべきだけど、ここは皆に問題でも出して気付かせよう。
「ここで皆に問題だけど。足使ってやるスポーツは?」
「サッカー」
はい砂藤君早かった。正解。
サッカーは足を使ってボールを蹴るね。
「おう!」
砂藤君ガタイいいしよく見たらほっとする顔してるよね。
じゃあ皆、他は?
「野球」
うーん良い考えするね切島君。正解。
ヒットアンドラン。ラン! 走るよね。
「よっしゃ!」
ツンツン頭の元気印、シンプルに好印象。
皆、良いのが出たよ。他は?
「「「他ぁ?」」」
「セパタクロー」
セパッ……うん。八百万さん正解。
足使うバレーみたいなね、あるよね。
うんうん知ってた。本当だよ?
「このくらい当然ですわ」
腰に手を当てながら胸を張る八百万さん。
えっへんって感じが可愛いしおっぱいもでっかいね。
はい、じゃあ他ある人は?
「もう無いんじゃね?」
「えー、思いつかないかも!」
「野球がアリなら……陸上競技とか?」
あ、それいいよ耳郎さん最高。正解。
「ありがと」
ああ~いいよその笑み。クール。格好いい。最高。
滅茶苦茶いい例が出たね。他は?
「野球も怪しいのに陸上競技アリか!? 槍投げとかあるじゃん!」
「じゃあダンス! アタシダンス得意なんだよね」
はーい芦戸さん正解。ダンスは足使わないと踊れないよね。
「やったー!」
ぴょんと飛んで喜ぶ芦戸さん。
おっぺぇもぴょんと飛んでんだわ……。
「陸上も野球もダンスも正解かよ。確かに全部足使うけどよ」
「もう、皆さんまだ峰田さんが仰りたいことがわかりませんの?」
あ、気付いたね。
勘のいい人たちは気付きました。
一方で飯田君は頭をひねっている。
「そう。全部足使うんだよね」
「そうか! スポーツの動きを取り入れ――……」
「この石頭がー!!」
僕は取り出したピコピコハンマーで飯田の頭をひっ叩いた。
「な、何をするんだ!?」
「ちょっとは柔らかくなるかなって」
肉とかそうだよね。麺棒で叩くと柔らかくなるでしょ。
もう一度言うぞ。
「走るだけじゃもったいない!」
「……あっ」
飯田君がピンと来ていた。
気づいた? 気づいたね。ヨシ!
「走るだけではなく、キック、ジャンプ、ステップ、ダンス全てに……」
「そ、そうか! 飯田君の足の膂力を上げるエンジンは足を使う運動全てに応用できる! 何で気付かなかったんだろう! 峰田君の言う通りだ。個性は工夫一つで――……」
「一番ナンセンスなのはお前だーッ!!」
「ちにゃ!!」
またブツブツ呟き始めた緑谷君の頭にどこからともなく取り出したラバーチキンを乗せてしこたまピコピコハンマーでシバき倒した。
「ふっ、くくっ……」
「あはははは! クェー!って! あははは!」
「何あれ?」
「ラバーチキンでしょ?」
「すげー速さで殴りつけるじゃん」
「峰田ちゃんやめてあげて。緑谷ちゃんの変なスイッチが入りやすくなっちゃうかも」
「嘘ぉ……」
ふー、ふー……緑谷君、嘘じゃないよ。
個性が遅咲きらしいけどそんなの特に関係ない。
こういうのは発想の問題だからね。
「君の個性を述べよ」
「え?」
ラバーチキンとピコハンを構えた。
「自分の腕も破壊しちゃう超パワーです!」
「そうだね。じゃあ発動プロセスを述べて」
「え?」
左手のラバーチキンを右手のピコハンでパシパシと叩いた。
「あははははは!!」
「くくっ、あっははは! ダメだ! あの鳥ダメ!」
「芦戸ちゃんはともかく、耳郎ちゃんも割と笑いの沸点浅いのね……」
……。
出てこないか。
「みどりゃー*4」
「み、みどりゃー……?」
「君の個性、使う前に肌が変色してバチバチするでしょ」
「? うん」
あれは絶対ということは。
「殴らなかったことある?」
「え?」
「だから、君が"殴ろう"!って腕バチバチさせた後に殴らなかったことある?」
緑谷君はぼけっと僕を見つめたままふるふると横に振った。
「じゃあ」
僕はビデオを巻き戻した。
具体的には彼が天井をぶち抜く直前だ。
「この構えた瞬間。肌の色が変色してたけど……痛かった?」
「痛み?」
「この瞬間、痛みはあった?」
どこかぼーっとした顔でみどりゃーは答えてくれた。
「多分……痛くなかったと思う」
「多分さ、腕を引き絞って……撃とう、撃つぞ、撃った、撃ってるって時は痛くないんだよね?」
黙ってこくこくと頷いたみどりゃーに僕は笑みを送った。よし。多分だけどわかったぞ、みどりゃーの個性の特徴。遅咲きの個性。自分の腕をも破壊する超パワーって考えてる時点でもうよろしくないんだよな。
「緑谷の個性、大体掴めたと思う」
「ほんと!?」
「みどりゃー、もう一度個性を述べよ」
「え?」
僕はラバーチキンをみどりゃーのもじゃ頭に乗せた。
「自分の腕も破壊しちゃう超パワーです!」
「そう思い込んじゃってるってとこだよ。でもそれでも仕方がない」
僕は強く彼を見つめた。
「もいちょい噛み砕こうね。要するにみどりゃーは、膨大なエネルギーを体から引き出して、それを腕にチャージして、パンチという形で放つっていう、少なくとも3つの動作が出来る訳でしょ」
はっとなるみどりゃー。
気づいた? 気づいたね。ヨシ!
「「勿体ない」」
そう! そうだみどりゃー。
やれば出来るじゃん。
「なっ……なんで思いつかなかったんだ!」
よしよし。僕の言いたいことがわかったらしい。
僕も案外、教師とか向いてるんじゃない?
「足も使って蹴り技も取り入れ――……」
「この石頭がー!!」
「なぴょ!!」
頭を抱えながら涙目でこちらを見るみどりゃー。ああそうだよなわかんないよな。だからお前はみどりゃーなんだ。
僕は周りで爆笑したり苦笑したり、黙って行く末を見守ってくれているギャラリーをよそに、みどりゃーの全身をピコハンで嬲った。くすぐったそうに身をよじるみどりゃーを見てまだ気づかんのかと思わずため息を吐く。
「全身でやりなよ」
「……えっ」
「一番みどりゃーがナンセンスって言ったのはそこ! 腕だけにエネルギーを120%充填してワンパンかました挙句腕が全損するなら五体に行き渡らせて強化すれば右腕20! 左腕20! 右足20! 左足20! 頭で20! 胴体で20! あのヤバい火力の20%ずつ割り振っても僕の半分程度は動けるんじゃないの! 20の出力に耐えられるか耐えられないかはこの際置いといて!」
僕が覇気の修行したときにそれがあったら絶対に楽だった。
確信できる。マジで楽が出来たはずだ。
「全身に、割り振る」
「そう! 五体に割り振るなり、君の体全体を"1"として捉えて満遍なく行き渡らせるのも良し!」
「僕自身を、1として……満遍なく、行き渡らせる。」
繰り返す緑谷に僕は心の底から笑みを送った。きっとみどりゃーが初めて個性を開花させたとき、腕が弾け飛んだんだろうな。そして恐らく凄い破壊が周囲に齎された。怪我人だって出たかもしれない。そして一向に進まないコントロール技術。でも雄英には来ることが出来た。その圧倒的火力によって。
確かに肉の器は脆いかもしれないけど、どんどん補強できるはずだ。それは泥でもいい。粘土でもいい。石を混ぜ、砂を塗し、焼いて固め、それが徐々に銅へ、鉄へと繰り返せば、彼の出来る事は多く、大きく、そして強くなる。
自分から枷を嵌めてしまってるんだ。一度認識してしまうとそれを崩すのに多大な月日が居る。これを専門用語で"ガバ"といいます。そしてそのガバはリカバリーする必要がある。
「君の」
うん?
「君の、"意志の力"は……こうやってやってるの?」
……――。
「あはっ♡」
誘い方がお上手じゃないか。
僕が"硬化"して殴ればすぐ死ぬ雑魚オタクの分際で……♡
「う、お」
「殺気!?」
「何これ、息苦しい……」
「ちょ、ストップ。峰田ストップ!」
いいよみどりゃー。凄く良い。
そう、全身に行き渡らせろ。一歩間違えれば自分を破壊しかねないエネルギーを薄く、全身へ、しっとりと、ゆっくり……腹ペコの僕の目の前で、焼き立てのトォ~~~ストに……バターをゆっくり塗って見せびらかすように……えへっ。生意気だ。クソ。この陰毛頭のクソオタク。良い靴履いてもお前の"陰"は補正されないぞ……♡
「峰田君、落ち着きたまえ」
凄く落ち着いた^^
みどりゃーも麗日さんに肩を叩かれて解除したみたいだ。
「っぷは!」
「峰田ヤバ……」
「すっげえ、なんだ今の」
葉隠さんの一言と背中すりすりで落ち着いた僕はまったりと息を抜き、みどりゃーの頭の上のラバーチキンとピコピコハンマーを自分の机にしまった。
「みどりゃー、今日時間ある?」
「作る!」
「戦闘訓練のおさらい終わったら後で職員室に行って空きグラウンド借りよう」
流石雄英、滅茶苦茶楽しみだ。
みどりゃーはきっと強くなるぞ!
早く育って、僕のスパーリング相手になってくれ。
オールマイトと同じ篝火を灯しているなら、出来るよね?