機動戦士ガンダムこれくしょんX   作:星龜

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人工MS娘


 

突如、外宇宙から飛来した謎の存在【黒色機動群(こくしょくきどうぐん)】の侵略により、人類は中米から南米以外全ての土地を失った。

 

残された人類は黒色機動群への対抗策として【連合地球軍】を結成。

 

黒色機動群への有効的な反撃が可能な特殊部隊―機動戦士ガンダムシリーズに登場するモビルスーツの魂をその身に宿した少女【モビルスーツ娘 (MS娘)】を主力とした【M.G.F.(モビルスーツガールズフォース)】が結成された。

 

そして、連合地球軍と黒色機動群との戦争が始まって…

 

すでに100年が経っていた…。

 

 

だが、その100年の間に…

 

南アジアにある

エスタルド人民共和国

ガスタール民主共和国

ノーザンベル連合王国

の3国は

黒色機動群から技術提供を受け、独自のMS娘【人工MS娘】を誕生させ、連合地球軍に反旗を翻したのである―。

 

 

ところが

ノーザンベルは、早々に連合地球軍に降伏…。

 

エスタルドとガスタールは、以前から対立状態にあったため、ガスタールも連合地球軍に降伏し…

 

ガスタールとノーザンベルは、エスタルドに宣戦布告

したのである…。

 

 

午前10時―。

 

曇天の下…

 

西部戦線に向かう、人工MS娘10人を乗せたトラックと、

人工MS娘の装甲服と、かつての黒色機動群の機動兵器であったZK級を積んだ、4台のトラックが走っていた…。

 

 

前線司令部に到着すると、人工MS娘達は、指揮所に着任の申告に行く。

 

指揮所といっても、簡易な通信機器を備えた掘っ立て小屋だ。

 

10人もの人間が入れるだけの広さは無いため、隊長のみが指揮所に入った。

 

まもなく、隊長と一緒に、司令官が出てきた。

 

司令官は、中佐の階級章をつけた、身長は170センチほどの、40代半ばと思われる男性だった。

 

「よく来た。

お前達がいないと、戦いにならんからな。

全員、異状が無ければ、すぐに、ここから西に20キロ先にある前線に移動しろ。」

とだけ言って、司令官は指揮所に戻った。

 

その言動は、あきらかに、人工MS娘達のことを、たんなる戦争の道具としか見ていないものだった。

 

「全員、聞いてのとおりだ。

全員、異状が無ければ、すぐにトラックに乗れ。」

と隊長に言われたので、人工MS娘達は再び、トラックに乗る。

 

そして、トラックの隊列は、西に向かって走り出した…。

 

 

走ること15分―。

 

トラックの隊列は、前線に到着した。

 

指揮所に着任の申告に向かう。

 

前線の指揮所も、やはり、簡易な通信機器を備えた掘っ立て小屋だった。

 

隊長が指揮所に入って、着任の申告をすると、隊長と一緒に、この前線の指揮官が出てきた。

 

大尉の階級章をつけた、身長は170センチほどの、30代前半と思われる男性だった。

 

「よく来てくれた。

歓迎する。」

と、敬礼する指揮官。

 

前線司令部の司令官とは、まったく異なる対応だった。

 

最前線で戦う者と、後方から命令するだけの者との違いだろう。

 

「軍曹!!」

と、指揮官は、指揮所の中にいる軍曹を呼んだ。

 

「ハッ!!」

と出てきた軍曹は、身長が160センチほどの、指揮官よりかは若いと思われる、黒人の男性だった。

 

「彼女達を兵舎に案内しろ。」

と指揮官から命じられた軍曹は

 

「ハッ!!」

と敬礼すると、人工MS娘達の方を向き

 

「これより、お前達を兵舎に案内する。

来い!!」

と言って、右方向に歩き出したので、人工MS娘達は、軍曹についていく―。

 

 

案内されたのは、女性兵士用の兵舎だが、兵舎とは名ばかりの、掘っ立て小屋だった。

 

「空き部屋ばかりだから、好きな所使っていいよ。」

と、兵舎の管理をしているのであろう、おそらく30代前半と思われる女性兵士から説明を受ける。

 

人工MS娘達は、2人づつ、兵舎に入っていった―。

 

 

兵舎の中は、ワンルームマンションの部屋に相当するほどの広さしかない。

 

2人でギリギリ…

 

3人だと、窮屈な小屋だった。

 

「ようやく実戦だね、シィ。」

と、シィに声をかけるディ。

 

「嬉しいの?」

と訊くシィ。

 

「嬉しいね☆

だいたい、アチキはガスタール人が嫌いなんだ☆

ガスタール人を好き放題殺せるから、アチキはMS娘になったんだ☆」

と言うディ。

 

それを聞いて、顔を曇らせるシィ。

 

「私は…

戦争を終わらせるためかな…。」

と言うシィに

 

「モノは言いようだね☆

よ〜するに、シィもガスタール人を殺したいんぢゃないか☆」

と言うディ。

 

「別に、そういうわけじゃ…。」

と言うシィに

 

「戦争を終わらせるんだったら、敵の兵士を殺さなきゃなんない☆

本当はシィだって、ガスタール人を殺したいんでしょ☆」

と言うディ。

 

「違う…。」

と、つぶやくシィ。

 

それっきり、2人の会話は途切れてしまった…。

 

「じゃ、アチキは寝るわ☆

おやすみな〜☆」

と、ディはベッドに横たわると、ほんの数分で眠りについた…。

 

シィも、ベッドに横たわると…

 

ほんの数分で眠りに落ちた…。

 

 

シィ*1

 

【挿絵表示】

 

ディ*2

 

【挿絵表示】

 

は、エスタルドの北部出身の少女だ。

 

ある日、学校からの帰りに…

 

2人はエスタルド軍の兵士に拉致された。

 

そのまま、人工MS娘を生み出す施設に送られ…

 

人工MS娘にされた…。

 

 

人工MS娘…。

 

それは

黒色機動群からもたらされた人体改造技術を利用し、モビルスーツの魂を宿していない人間の少女を、人工的にMS娘にした

ものである。

 

 

人工MS娘にされた2人の少女は、自分の名前を奪われ

シィ(C)

ディ(D)

という名前をあたえられた。

 

ほんの数週間の訓練ののち…

 

シィとディは、他の7人の人工MS娘とともに、ここ西部戦線に送られたのだ…。

 

 

翌日―。

 

雨が降る午前8時22分―。

 

敵襲を報せるサイレンが鳴り響いた―!!

 

朝食を食べていたシィとディだったが、食事をやめて、兵舎を出る。

 

降りしきる雨の中、指揮所前に集合する。

 

指揮所前には、一般兵の部隊も集結していた。

 

「ただいま、ガスタール軍の機甲師団および人工MS娘の部隊が侵攻中である!!

総員、ただちに戦闘配置につけ!!」

と指揮官に命じられ、各部隊は配置につく。

 

人工MS娘達は、装甲服を積んだトラックに向かう。

 

 

ここで、ちょっとした…

 

いや…

 

ちょっとどころじゃない問題がおきた…。

 

 

人工MS娘達は、周囲を見回す。

 

「男…いないよね…?」

 

「うん…いない…。」

周囲に男性がいないことを確認していた

 

というのも

モビルスーツの魂を宿していない人工MS娘は、装甲服とのシンクロ率を上げるため、装甲服を装着する際は全裸にならなければならない

のだ。

 

これは、通常のMS娘には無い欠点だ。

 

 

装甲服を装着するため、全裸になる人工MS娘達。

 

人工MS娘が装着する装甲服は【機動新世紀ガンダムX】に登場するモビルスーツ【パイロン】だ。

 

全身が曲面装甲なので、実弾兵器に対する避弾経始にすぐれている…

…という触れ込みだが、実際には、避弾経始など、ほとんど気休め程度である。

 

また、装甲服の性能も、人工MS娘の能力も、通常のMS娘よりも劣っている。

 

しかし、ガスタール軍の主力も人工MS娘であり、装着している装甲服もパイロンなので、通常のMS娘ほど脅威ではない。

 

ただし、ガスタールは連合地球軍に下っているため、連合地球軍の武器を使用しているかもしれないし、なにより、M.G.F.が援軍に来ているかもしれない。

 

装甲服を装着しおえた人工MS娘達は、続いてZK級を起動させる。

 

およそ100年前の旧式兵器であり、現在では、黒色機動群でも使用されていない。

 

黒色機動群は、旧式兵器であるZK級をエスタルド、ガスタール、ノーザンベルに供給することで、実質、廃棄処分しているのだ。

 

この部隊には、2機配備されているのだが…

 

1番機は起動したが、2番機が動かない。

 

「動きそうにないか!?」

と訊く隊長に

 

「まったく動きません!!」

と答える隊員。

 

「やむをえん!!

2番機は捨てる!!

出撃だ!!」

という隊長の号令一下、人工MS娘隊は出撃した―。

 

 

雨は、ますます激しくなってきて、雷まで鳴り始めた。

 

そんな豪雨の中、10人の人工MS娘と1機のZK級が進撃していた。

 

雨が装甲服内に流れ込み、体が濡れて、冷えてくる。

 

(うぅっ…!!)

と、顔をしかめるシィ。

 

体が冷えて、腹が痛くなってきたのだ。

 

(い…痛い…

出るぅ…!!)

と、激しい便意に、シィは必死に耐えた。

 

しかし…

 

『い…いやぁぁぁ…!!』

 

『も…もうダメ!!

ガマンできないぃ!!』

 

という悲鳴が、通信機から響いた。

 

どうやら、シィと同じように、体が冷えて腹痛をおこした人工MS娘が排便してしまったのだ。

 

(わ…私も…!!)

と、シィは声を出さないように耐えながら…

 

装甲服内に、排泄音を響かせた…。

 

(お…おぇ…。)

と、激しい異臭に、えづくシィ…。

 

すると…

 

前方で、爆発がおきた。

 

敵の砲撃だ。

 

『散開しろ!!』

と、隊長からの通信が入った。

 

人工MS娘隊は2人づつ、5つの隊に分かれる。

 

しかし…

 

『ギヤアアア…ッ!!』

と、通信機から、砲撃の犠牲になったのだろう、誰かの悲鳴が響いた。

 

『こちらエフ!!

イーがやられました!!』

『かまうな!!』

という、エフと隊長のやりとりが聞こえる。

 

(イー?

どんな娘だったっけ?)

と考えるシィ。

 

シィは、イーとは、あまり話をしたことがなかったから、どんな娘だったのか、わからなかった。

 

(まぁ、いいや…。

もう、会うことはないんだから…。)

と、忘れることにした。

 

まもなく、レーダーが敵の反応を捉えた。

 

レーダーが捉えた情報は、直接、脳に伝えられる。

 

『来たぞ、シィ!!

ガスタール人どもだ!!』

と、ディからの通信が入る。

 

(来た…!!)

と、腹をくくるシィ。

 

不思議と、排泄物の異臭も、腹の痛みも感じなくなった。

 

『アチキが仕掛ける!!

援護を頼む!!』

 

「わかった!!」

と、シィは停止して、持ってきた重機関銃を地面に据える。

 

そして、腹ばいになって、重機関銃をかまえる。

 

(!!)

 

ロックオンカーソルが、ガスタール軍のパイロン…

 

人工MS娘を捉えた。

 

重機関銃の引き金を引くシィ。

 

重機関銃は、大きな発射音を響かせ、弾丸を発射する。

 

弾丸を発射するたびに、激しい反動がシィの左肩に伝わる。

 

重機関銃から飛び出した弾丸は…

 

ガスタール軍のパイロンの左肩に命中し…

 

左腕がちぎれ飛び、血が飛び散った。

 

さらに、頭に命中し…

 

頭が砕け散った。

 

血を飛び散らせて頭が砕け散る光景は、さながら、花火を思わせるものがあった。

 

そして、胸に当たり…

 

装甲服のジェネレーターを直撃したのか、パイロンは爆発した…。

 

『やるじゃねぇか、シィ!!』

と、ディからの通信が入った。

 

だが、シィは答えることなく、重機関銃を持って、すぐさまディを追いかける。

 

そして、再び、重機関銃を地面に据えて、撃つ…。

 

 

戦闘開始から、どれくらいの時間が経ったのか…?

 

いつの間にか、雨はあがっており、陽は西に傾き始めていた…。

 

 

『エイ隊長は戦死した。

生きている者はアイのところに来い。』

というアイからの通信が入った。

 

『行こうぜ、シィ!!』

と、ディからの通信が入った。

 

 

戦いは終わった―。

 

ガスタール軍は撤退した。

 

勝ったのだ。

 

しかし…

 

隊長のエイをはじめ…

 

ビィ

 

イー

 

エフ

 

エイチ

 

ジェイ

 

が死んだ…。

 

ZK級も破壊された。

 

生き残ったのは

 

シィ

 

ディ

 

ジィ

 

アイ

 

の4人だけだった…。

 

 

「私達…

勝ったの…?」

と、頭部装甲(ヘルメット)をはずして、ディに訊くシィ。

 

「当たり前ぢゃん☆」

と、頭部装甲(ヘルメット)をはずすディ。

 

そして

「ガスタール人を4人殺したぜ☆」

と、笑顔を見せるディ。

 

「シィだって、ガスタール人を4人殺したぢゃないか☆」

とディに言われたシィは

 

「そうだね。」

と微笑んだ。

 

 

そう…

 

勝ったのだ…。

 

 

ふと、東の空を見上げれば…

 

綺麗な虹がかかっていた…。

 

*1
イラスト:黒瀬夜明 リベイク

*2
イラスト:黒瀬夜明 リベイク

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