突如、外宇宙から飛来した謎の存在【
残された人類は黒色機動群への対抗策として【連合地球軍】を結成。
黒色機動群への有効的な反撃が可能な特殊部隊―機動戦士ガンダムシリーズに登場するモビルスーツの魂をその身に宿した少女【モビルスーツ娘 (MS娘)】を主力とした【
そして、連合地球軍と黒色機動群との戦争が始まって…
すでに100年が経っていた…。
だが、その100年の間に…
南アジアにある
エスタルド人民共和国
ガスタール民主共和国
ノーザンベル連合王国
の3国は
黒色機動群から技術提供を受け、独自のMS娘【人工MS娘】を誕生させ、連合地球軍に反旗を翻したのである―。
ところが
ノーザンベルは、早々に連合地球軍に降伏…。
エスタルドとガスタールは、以前から対立状態にあったため、ガスタールも連合地球軍に降伏し…
ガスタールとノーザンベルは、エスタルドに宣戦布告
したのである…。
◇
午前10時―。
曇天の下…
西部戦線に向かう、人工MS娘10人を乗せたトラックと、
人工MS娘の装甲服と、かつての黒色機動群の機動兵器であったZK級を積んだ、4台のトラックが走っていた…。
前線司令部に到着すると、人工MS娘達は、指揮所に着任の申告に行く。
指揮所といっても、簡易な通信機器を備えた掘っ立て小屋だ。
10人もの人間が入れるだけの広さは無いため、隊長のみが指揮所に入った。
まもなく、隊長と一緒に、司令官が出てきた。
司令官は、中佐の階級章をつけた、身長は170センチほどの、40代半ばと思われる男性だった。
「よく来た。
お前達がいないと、戦いにならんからな。
全員、異状が無ければ、すぐに、ここから西に20キロ先にある前線に移動しろ。」
とだけ言って、司令官は指揮所に戻った。
その言動は、あきらかに、人工MS娘達のことを、たんなる戦争の道具としか見ていないものだった。
「全員、聞いてのとおりだ。
全員、異状が無ければ、すぐにトラックに乗れ。」
と隊長に言われたので、人工MS娘達は再び、トラックに乗る。
そして、トラックの隊列は、西に向かって走り出した…。
◇
走ること15分―。
トラックの隊列は、前線に到着した。
指揮所に着任の申告に向かう。
前線の指揮所も、やはり、簡易な通信機器を備えた掘っ立て小屋だった。
隊長が指揮所に入って、着任の申告をすると、隊長と一緒に、この前線の指揮官が出てきた。
大尉の階級章をつけた、身長は170センチほどの、30代前半と思われる男性だった。
「よく来てくれた。
歓迎する。」
と、敬礼する指揮官。
前線司令部の司令官とは、まったく異なる対応だった。
最前線で戦う者と、後方から命令するだけの者との違いだろう。
「軍曹!!」
と、指揮官は、指揮所の中にいる軍曹を呼んだ。
「ハッ!!」
と出てきた軍曹は、身長が160センチほどの、指揮官よりかは若いと思われる、黒人の男性だった。
「彼女達を兵舎に案内しろ。」
と指揮官から命じられた軍曹は
「ハッ!!」
と敬礼すると、人工MS娘達の方を向き
「これより、お前達を兵舎に案内する。
来い!!」
と言って、右方向に歩き出したので、人工MS娘達は、軍曹についていく―。
案内されたのは、女性兵士用の兵舎だが、兵舎とは名ばかりの、掘っ立て小屋だった。
「空き部屋ばかりだから、好きな所使っていいよ。」
と、兵舎の管理をしているのであろう、おそらく30代前半と思われる女性兵士から説明を受ける。
人工MS娘達は、2人づつ、兵舎に入っていった―。
◇
兵舎の中は、ワンルームマンションの部屋に相当するほどの広さしかない。
2人でギリギリ…
3人だと、窮屈な小屋だった。
「ようやく実戦だね、シィ。」
と、シィに声をかけるディ。
「嬉しいの?」
と訊くシィ。
「嬉しいね☆
だいたい、アチキはガスタール人が嫌いなんだ☆
ガスタール人を好き放題殺せるから、アチキはMS娘になったんだ☆」
と言うディ。
それを聞いて、顔を曇らせるシィ。
「私は…
戦争を終わらせるためかな…。」
と言うシィに
「モノは言いようだね☆
よ〜するに、シィもガスタール人を殺したいんぢゃないか☆」
と言うディ。
「別に、そういうわけじゃ…。」
と言うシィに
「戦争を終わらせるんだったら、敵の兵士を殺さなきゃなんない☆
本当はシィだって、ガスタール人を殺したいんでしょ☆」
と言うディ。
「違う…。」
と、つぶやくシィ。
それっきり、2人の会話は途切れてしまった…。
「じゃ、アチキは寝るわ☆
おやすみな〜☆」
と、ディはベッドに横たわると、ほんの数分で眠りについた…。
シィも、ベッドに横たわると…
ほんの数分で眠りに落ちた…。
シィ*1
と
ディ*2
は、エスタルドの北部出身の少女だ。
ある日、学校からの帰りに…
2人はエスタルド軍の兵士に拉致された。
そのまま、人工MS娘を生み出す施設に送られ…
人工MS娘にされた…。
人工MS娘…。
それは
黒色機動群からもたらされた人体改造技術を利用し、モビルスーツの魂を宿していない人間の少女を、人工的にMS娘にした
ものである。
人工MS娘にされた2人の少女は、自分の名前を奪われ
シィ(C)
と
ディ(D)
という名前をあたえられた。
ほんの数週間の訓練ののち…
シィとディは、他の7人の人工MS娘とともに、ここ西部戦線に送られたのだ…。
◇
翌日―。
雨が降る午前8時22分―。
敵襲を報せるサイレンが鳴り響いた―!!
朝食を食べていたシィとディだったが、食事をやめて、兵舎を出る。
降りしきる雨の中、指揮所前に集合する。
指揮所前には、一般兵の部隊も集結していた。
「ただいま、ガスタール軍の機甲師団および人工MS娘の部隊が侵攻中である!!
総員、ただちに戦闘配置につけ!!」
と指揮官に命じられ、各部隊は配置につく。
人工MS娘達は、装甲服を積んだトラックに向かう。
ここで、ちょっとした…
いや…
ちょっとどころじゃない問題がおきた…。
人工MS娘達は、周囲を見回す。
「男…いないよね…?」
「うん…いない…。」
と
周囲に男性がいないことを確認していた。
というのも
モビルスーツの魂を宿していない人工MS娘は、装甲服とのシンクロ率を上げるため、装甲服を装着する際は全裸にならなければならない
のだ。
これは、通常のMS娘には無い欠点だ。
装甲服を装着するため、全裸になる人工MS娘達。
人工MS娘が装着する装甲服は【機動新世紀ガンダムX】に登場するモビルスーツ【パイロン】だ。
全身が曲面装甲なので、実弾兵器に対する避弾経始にすぐれている…
…という触れ込みだが、実際には、避弾経始など、ほとんど気休め程度である。
また、装甲服の性能も、人工MS娘の能力も、通常のMS娘よりも劣っている。
しかし、ガスタール軍の主力も人工MS娘であり、装着している装甲服もパイロンなので、通常のMS娘ほど脅威ではない。
ただし、ガスタールは連合地球軍に下っているため、連合地球軍の武器を使用しているかもしれないし、なにより、M.G.F.が援軍に来ているかもしれない。
装甲服を装着しおえた人工MS娘達は、続いてZK級を起動させる。
およそ100年前の旧式兵器であり、現在では、黒色機動群でも使用されていない。
黒色機動群は、旧式兵器であるZK級をエスタルド、ガスタール、ノーザンベルに供給することで、実質、廃棄処分しているのだ。
この部隊には、2機配備されているのだが…
1番機は起動したが、2番機が動かない。
「動きそうにないか!?」
と訊く隊長に
「まったく動きません!!」
と答える隊員。
「やむをえん!!
2番機は捨てる!!
出撃だ!!」
という隊長の号令一下、人工MS娘隊は出撃した―。
◇
雨は、ますます激しくなってきて、雷まで鳴り始めた。
そんな豪雨の中、10人の人工MS娘と1機のZK級が進撃していた。
雨が装甲服内に流れ込み、体が濡れて、冷えてくる。
(うぅっ…!!)
と、顔をしかめるシィ。
体が冷えて、腹が痛くなってきたのだ。
(い…痛い…
出るぅ…!!)
と、激しい便意に、シィは必死に耐えた。
しかし…
『い…いやぁぁぁ…!!』
『も…もうダメ!!
ガマンできないぃ!!』
という悲鳴が、通信機から響いた。
どうやら、シィと同じように、体が冷えて腹痛をおこした人工MS娘が排便してしまったのだ。
(わ…私も…!!)
と、シィは声を出さないように耐えながら…
装甲服内に、排泄音を響かせた…。
(お…おぇ…。)
と、激しい異臭に、えづくシィ…。
すると…
前方で、爆発がおきた。
敵の砲撃だ。
『散開しろ!!』
と、隊長からの通信が入った。
人工MS娘隊は2人づつ、5つの隊に分かれる。
しかし…
『ギヤアアア…ッ!!』
と、通信機から、砲撃の犠牲になったのだろう、誰かの悲鳴が響いた。
『こちらエフ!!
イーがやられました!!』
『かまうな!!』
という、エフと隊長のやりとりが聞こえる。
(イー?
どんな娘だったっけ?)
と考えるシィ。
シィは、イーとは、あまり話をしたことがなかったから、どんな娘だったのか、わからなかった。
(まぁ、いいや…。
もう、会うことはないんだから…。)
と、忘れることにした。
まもなく、レーダーが敵の反応を捉えた。
レーダーが捉えた情報は、直接、脳に伝えられる。
『来たぞ、シィ!!
ガスタール人どもだ!!』
と、ディからの通信が入る。
(来た…!!)
と、腹をくくるシィ。
不思議と、排泄物の異臭も、腹の痛みも感じなくなった。
『アチキが仕掛ける!!
援護を頼む!!』
「わかった!!」
と、シィは停止して、持ってきた重機関銃を地面に据える。
そして、腹ばいになって、重機関銃をかまえる。
(!!)
ロックオンカーソルが、ガスタール軍のパイロン…
人工MS娘を捉えた。
重機関銃の引き金を引くシィ。
重機関銃は、大きな発射音を響かせ、弾丸を発射する。
弾丸を発射するたびに、激しい反動がシィの左肩に伝わる。
重機関銃から飛び出した弾丸は…
ガスタール軍のパイロンの左肩に命中し…
左腕がちぎれ飛び、血が飛び散った。
さらに、頭に命中し…
頭が砕け散った。
血を飛び散らせて頭が砕け散る光景は、さながら、花火を思わせるものがあった。
そして、胸に当たり…
装甲服のジェネレーターを直撃したのか、パイロンは爆発した…。
『やるじゃねぇか、シィ!!』
と、ディからの通信が入った。
だが、シィは答えることなく、重機関銃を持って、すぐさまディを追いかける。
そして、再び、重機関銃を地面に据えて、撃つ…。
◇
戦闘開始から、どれくらいの時間が経ったのか…?
いつの間にか、雨はあがっており、陽は西に傾き始めていた…。
『エイ隊長は戦死した。
生きている者はアイのところに来い。』
というアイからの通信が入った。
『行こうぜ、シィ!!』
と、ディからの通信が入った。
戦いは終わった―。
ガスタール軍は撤退した。
勝ったのだ。
しかし…
隊長のエイをはじめ…
ビィ
イー
エフ
エイチ
ジェイ
が死んだ…。
ZK級も破壊された。
生き残ったのは
シィ
ディ
ジィ
アイ
の4人だけだった…。
「私達…
勝ったの…?」
と、
「当たり前ぢゃん☆」
と、
そして
「ガスタール人を4人殺したぜ☆」
と、笑顔を見せるディ。
「シィだって、ガスタール人を4人殺したぢゃないか☆」
とディに言われたシィは
「そうだね。」
と微笑んだ。
そう…
勝ったのだ…。
ふと、東の空を見上げれば…
綺麗な虹がかかっていた…。