結翔「にんじんやだ…」
ウマ娘s「えっ!?」
『ど、どうしたんだ?具合が悪いのか?それとも味付けが良くなかったか?』
シップ「じゃーしっぷがたべるー!」パクッ
モグモグ
シップ「おいしー!」ブンブン
ウチの子たちは今まで好き嫌いなどしてこなかったが故に母は困惑する
しかもよりによってニンジンだ
ニンジンが大好物なウマ娘ちゃんたちからすれば全く意味の分からない事態
未だ訳が分からず混乱している妻に声をかける
「まあそんなこともあんだろ」
「茹でたニンジンまるまる一本を美味しくいただける人間なんてそうそういねーよ」
『そうなのか?ニンジンだぞ?』
「だからだよ」
「ヒトの子どもが嫌いな野菜ランキングトップ5には入ってるだろニンジンなんて」
『…もしかしてあなたの口にも合ってなかったか…?』
「いや別に不味いとか感じたことはないし慣れたよ」
「ただまあ子どもが好む味ではないのはたしかだな…この量のニンジンを食べる機会もそもそも無いし」
『そう、だったのか…』ションボリ
ショックを受ける母を尻目に、これ幸いと結翔の皿にあるニンジンをかっさらっていく娘たち
まだ幼いショパンも小さなお口いっぱいにニンジンを頬張っている
なんだか気まずくってテレビに目をやると有名若手美人女優と名前も聞いたことがないようなミュージシャンが15歳もの年の差結婚をするとか
小綺麗なイメージのある女優とザ・アウトローといった男との結婚には世間ももの申したいようで街頭インタビューでもものすごい言われようだ
まあ、俺とエアの結婚もなかなかに世間を賑わせたとは思うが
「結婚ねぇ…」
『なんだ?私との結婚に不満でも?』ムスッ
「そうじゃないそうじゃない」
先程の事件で情緒不安定な妻は気が立っているようだ
勘違いされては困ると、慌てて言い返す
「マイとかがあんな男連れてきたらどうしようって」
『ふむ…まあ、最低限の礼節をわきまえていて信用に足る人間であれば私はどうこう言うつもりはないぞ?もちろん子どもたちの了承が前提だが』
「はあ?俺は絶対ムリ!」
「あんなのが来たらぶん殴ってやる!まあどんな奴でも認めたくないけど!」
『たわけ』
シップ「けっこんってなぁに?」
『それは、』
「お父さんと幸せになることだよ!」
『…』ピキッ
『そうかそうか』
「?」
『あなたは娘たちと結婚するんだな?』
『はやいうちに役所に行かなくてはなぁ?』
「なにしに?」
『決まっているだろう』
『結婚相手は1人だけなんだ…離婚届を貰ってこなくては』
「なっ!?」
「ちょっ!そんなマジになんなくたって良いだろ!?」
「ごめんって!謝るから離婚なんて言わないでくれ!」ペコペコ
『ふんっ!』
[newpage]
その日の夜
「おやすみ」チュッ
『あぁ…おやすみなさい』
子どもたちの寝かしつけを終え、1日の労いも込めた妻との挨拶もして羽毛布団の間に身を挟む
横になった瞬間に疲れたと共に1日の出来ごとがすぅっと吸い込まれる
気がついたら真っ白な世界
ここはどこなのか、なぜこんなところにいるのか
気になって辺りを見回すと、よく見知った後ろ姿
先が割れた長いウマ耳に、出るところは出ていて引き締まるところは締まっているパーフェクトボディ
見慣れた姿よりホンの少しだけ若さが残る彼女に声をかける
「エア」
耳がぴくりと震え、彼女が振り向く
「え?」
彼女じゃない
よく似ているが、違う
「えっと…」
人違い…いやウマ違いなのか?
??「おとうさま」
??「今までありがとうございました」
「へっ?」
「ま、マイ…なのか…?」
マイ?「幸せになるからね!」ニコッ
「ちょ、まって!まってよ!!」ダッ
こちらを見て微笑んだ娘はなぜだか遠のいていく…追いかけても追いかけても追い付けない
そしてそのまま…
[newpage]
「っ!」バッ
「はぁっ…はぁっ…」キョロキョロ
「マイ…?」
先ほどまでの景色はどこへやら
目の前には愛しの妻の寝顔
アレは夢だとわかったものの、いずれ必ず訪れる未来であることもまた現実として突きつけられる
そう思ってしまうと居ても立ってもいられずベッドから飛び出して子ども部屋へと足を進めていた
[newpage]
『すぅー…すぅー…んん…うん?』
気持ちいいほどの朝日に照らされ、アラームより30分もはやく目が覚めてしまった
しかしながら目の前には気の抜けた顔で眠る夫の姿はない
『トイレか?』
なんだか寂しくなって彼の枕に顔を埋めるが、ウマ娘の敏感な感覚を持ってしても体温は感じられない
おかしい
『何かあったのか…?』
夫の身に何かあったのではないか
心配で耳やしっぽの毛が逆立ったのを感じた時だった
???「ウー ウ-ッ 」
ヒトよりも幾分か性能の良いウマ耳を器用に動かして音源を探る
『!』
子どもたちのところだ
命よりも大切な我が子に危険が差し迫っているのだと思うと思考などしている場合ではなかった
急いで寝室を飛び出し子ども部屋にたどり着く
そこには
シップ「うー!ぱぱくるしーよ!!」
マイ「おとうさまはなしてよー!」
ショパン「おとーしゃ」
結翔「くるし…」
「いかないで…離れないでくれー!」ギュー
『何をしているんだ…?』
[newpage]
結局、朝の時間はイロイロと忙しくて夫と落ち着いて話が出来るのは夜、夫が帰宅し子どもたちも寝静まった後のことだった
『それで?今朝のアレは何だったんだ?』
「いや、その…夢でね?」グスッ
『なっ!?なぜ泣くんだ!?』
泣きながら彼が言うことには、昨晩アドマイヤが結婚して私たちの下を去っていく夢を見た
子どもたちが離れていくなんて耐えられない
ということだった
『まったく…』
「だってだって!エアも耐えられないだろ!?」
「俺だって分かってるんだよ!?」
「あの子たちだってそう遠くない未来には立派な女性になって、幸せな家庭を築くんだろうなーって!でもさぁ…ってもしかしたら結翔も婿養子に!?」
「ムリムリムリムリムリ!!ぜっっっっったいにダメ!!」
『落ち着かんかたわけっ!!』ペシッ
「いたいっ!しっぽで叩かないでよ」
『そんなことを言ったってまだ10年以上後のことだろう?』
「でもさぁ…」
『それに、あなただって同じことをしたのだぞ?』
「それはそうだけどね…」
どうにも納得がいかないようで頭を抱えて唸っている
『はぁ…別に悪いことだけでもないだろう』
「はあ!?」
「どー考えたってヤなことしかないじゃん!」
『結婚するとなればいずれ子も産まれるだろうな』
「やだーーーー!取られた!どこのウマの骨とも知れん男に!!」
『まあ、まて』
『孫だぞ?私たちの』
「…まご?」
『ああ、孫だ』
突如頭の中に溢れる存在しない記憶
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マイ「ほら◯◯、おじいさまだよ!」
◯◯「おじいちゃんだいすきー!」ギュー
シップ「もう!□□を甘やかさないでって言ってるじゃん!」
結翔「いつまで✕✕を抱っこしてるんだよ…代われ」
ショパン「えへへ、かわいーね△△」
『ふふっ、賑やかになって…』
『幸せだな…あなた?』ニコッ
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「いい!!孫めっちゃイイ!!」
『ふふっ、そうだな…私も柄になく想像して顔が緩んでしまった』
「俺さ、将来は孫たちを目一杯甘やかして子どもたちに怒られたりしてさ、そんでみんなに囲まれて逝きたい…」
『たわけ、そんなにはやく逝くことなど許さんぞ』
『しかし悪くない…ガーデニングに料理に大掃除…ふふっ、腕が鳴るな…!』
よく分からない妄想をして2人の顔にはなんとも不気味な笑みが浮かび上がる
これが現実の話になるのはまだまだ先のお話