雪こそ降っていないものの一歩家の外へ出ようものならば容赦ない冷気が肌を貫くこの季節
春翔は職場、トレセン学園からの帰路に着いていた
自宅の駐車場に車を停めエアコンの恩恵で温かい車内から覚悟を決めて自宅までの道のりを行く
ハエのように両の手のひらを擦り合わせ白い吐息を吹き掛けながら玄関にたどり着く
カギを開けて温かい家の中へと足を踏み入れるが、いつもなら全速力で衝突せんばかりに盛大なお出迎えをしてくれる子どもたちがいない
おつかれさま、と言って労ってくれる妻の姿もなかった
しかしリビングの方から何やら楽しそうな声が聞こえる
「ただいまー」
帰宅の挨拶に呼応するようにやけに膨らんだコタツ布団からぴょこっと飛び出すウマ耳が1対…2対……4対
「…なにしてんの…?」
『お、おかえり…///』
シップ「ぱぱおかえりー!」
マイ「おとうさまおかえり!」
結翔「とーさん……ねむい…」
ショパン「おとーさおかーり」
大きなコタツの一辺からなぜか全員のお顔が見える…
キツいだろ、流石に
「もうコタツ出したのな」
『あぁ、流石に冷えて来たからな…』
『とはいえ、まだ電源はいれていないのだが』
「そうなん?」
『昨今はどうにも電気代が高くてな…それに床暖房も入っているから布団だけでも充分に暖まれるぞ』
「んじゃ、コタツの最大の恩恵は真冬までお預けってことで」
『あぁ、さくっと着替えてこい』
『今夜はすき焼きだぞ』
「やった!」
「にしても珍しいなすき焼きなんて」
我が家は幼い子どもたちがいるためホットプレートや鍋なんかを使った卓上料理はめったに出てこない
『実は今日カーリーから牛肉を貰ってな』
『向こうのお義母様が下さったそうなのだが2人では食べきれないからと…』
「ありがたいこって」
「今度あいつにもお礼言っとくわ」
『頼んだぞ』
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美味しいすき焼きを食べてお腹も膨れ、温かい湯船に浸かったら自然と眠気に襲われる
疲れてはいるが、家族との時間は何よりも大事にしたい
悶々としていると、もこもこパジャマに身を包んでかわいさ100倍なちびっこたちがコタつむりになっているではないか
「おやぁ?こんなところにかわいいかわいいコタつむりさんがいるなぁ?」
じりじりとにじりよりながらスマホを素早く起動させ写真を連写したのち動画を撮る
もふもふお耳をぴこぴこと震わせるアドマイヤグルーヴ横から、お姉ちゃん大好き結翔が顔を出す
何よりも大好きな姉からの熱烈な包容(抱き枕)に満面の笑みで応じコタツから幸せが溢れ出てきていた
方や暴れん坊ヤンチャ娘ルーラーシップと最近言葉を覚え、てちてち歩き始めた末娘ショパンはというと
シップ「あっ!ままきた!」ダッ
ショパン「おかーさ!」テチテチ
『こらこら、走るな』ナデナデ
女帝執念のスキンケアを終えて洗面所から戻ってきた母の元へと一目散に駆け寄る
親子でお揃いのデザインのパジャマ
肌触りが良いのか抱き止めて撫でられるとショパンひおろかシップも目がとろんとしてきた
シップ「あのねぱぱ」
「うんー?」
シップ「ままあったかいんだよ」
それでさっきもくっついてコタツに入っていたのか…
帰って早々の怪奇現象の原因を解明し、娘のお墨付き、妻のもとへ行く
しっぽを踏まないように後ろからぎゅっと抱き締めると
これは…
「あったけぇ…」ギュッ
マイと結翔もつられるようにコタツから這い出て母の懐へ
マ結「あったかーい!」
『ふふっ…まったくお前たちは…』ナデナデ
言葉とは裏腹に優しく柔らかい表情で愛する我が子を撫で、その姿はまるで慈愛に満ちた女神のようだった
うっとりしている子どもたちに気づかれないように妻の顔をこちらへ向け
ちゅっ
『!』
「ふふっ」
『たわけ…///』
コタツや床暖房、エアコンも便利で温かいがやはり人肌(ウマ肌?)がいい
いまならなんと母性に包まれ、優しいなでなで付き
使わない手はない
やっぱり我が家は"エア暖房"が一番人気だ
シップ「!」
シップ「ぱぱとままがちゅーしてる!!」
しばらくは独占させてもらえなさそうだが…