キャスター「沖縄から上陸してきた台風10号が明日にも関東へと……」
マイ「おかあさま、たいふーだって!」
『あぁ、今回のはかなり酷いみたいだな』
「まだ本格的に近いって訳でもないのに最近はこっちの方も雨風すごいもんな」
結翔「かーさん」グイグイ
『なんだ?』
結翔「たいふーってなーに?」
『ふむ…とっても天気が悪くなるんだ』
『雨がザーザー降って、風も外に出られないくらい吹くこともある』
『雷が落ちたりしたら家の電気が付かなくなったり』
「ほら、こんな感じ」
即興で台風をイメージしたグルグルを描いて子どもたちに見せてみる
シップ「たいふーつよい?」ピコピコ
「まあ、弱くはないだろうなぁ」
シップ「しっぷたいふーになる!!」ブンブン
「『?』」
シップ「ぶおぉぉぉん……ざざざざざざぁ……ぐるぐるぐる~!」グルグル
何をするのかと思えば腕を広げてぐるぐる回り、台風をイメージしているであろう効果音を発し始めた
しかしながら幼い故、三半規管は未熟で…
シップ「ん?うーん…?ぐるぐる…」クネクネ
シップ「まま、ぐるぐる…」
『目が回ってしまったんだろうな』ダッコ
エアがシップを腕に抱き、先程とは逆に回転し始めた
シップが復活し俺の膝に乗ってくる
『最悪の場合を考慮して避難の準備もしておかねばな…』
「何事もないのが一番だけど…」
我が家にはまだまだ幼い子どもたちが4人もいる
何がなんでもこの子達は守らなくては…
「つーか、明日もフツーに仕事なんだよなぁ」
「マイは休みなのにねぇ?」
『大変だな』
『屋外トレーニングなんか出来たものではないだろうに』
「屋内のジムとかプールも予約でいっぱいだろうしな……賢さトレーニングかぁ」
「エアのレース映像鑑賞会でもしよっかな」
『やめんかたわけ』
[newpage]
翌朝
「それじゃあいってきます」
「台風、ほんとに気をつけてね」
『あぁ、あなたもな』
みんな「『行ってらっしゃい』」
朝から雨も風も酷いがなんの連絡もなく、出勤することに
この天気のなか車を運転するのは不安なことこの上ないのだが致し方ない
外に出た瞬間に傘がぶっ壊れたんだ
超徐行運転で学園に着く
うちのチームのサブトレーナーたちはビシャビシャになりながらもどうにか出勤したようだ
尊敬する
とりあえず理事長室へと向かった
コンコンコン
たづな「どうぞ」
「失礼します」
理事長「歓迎ッ!用件を聞こう!」
「今日いつも通りで大丈夫なんですか?出勤するときかなり危なかったんですけど」
理事長「理解ッ!私もその点については憂慮している!しかし、URAの理事会で決まったことなのだ!」
「なんで…」
理事長「同意ッ!これからの秋のシーズンはレースが多い!室内限定とはいえ1日たりともトレーニングを欠かしたくないウマ娘も少なくない!」
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トレーナー室
「ということでした……」ションボリ
A「じゃあトレーニングあるんすね…」
B「でもこの天気じゃ…」
「そうなんだよ」
B「ジムもプールも予約でいっぱいですよね…」
A「今日は絶対休みになると思ってたのになぁ」
コンコンコン
「どうぞー」
雅哉「失礼します」
「どしたー?」
雅哉「今日のトレーニングって…」
「なーんにも決まってない」
「エアのレース映像鑑賞会だな!」
AB「賛成(です)!!!!!」
雅哉「…」
雅哉「奥さんにバレたら怒られますよ…」
ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピッ
みんな「!?」
突如室内にけたたましい電子音が響き渡る
「なんだ!?」
その音が各々のスマホからだと気がつき、画面を確認すると…
雅哉「避難…警報…!?」
学園近郊での台風による避難勧告だった
急いでテレビをつけ、ニュース番組に切り替える
画面にはL字の青い帯に赤い文字
この辺りは最大レベルの警報だった
そして顔を見合わせると…
ぷつんっ
みんな「!?」
「停電だ…」
A「思ってたよりヤバイっすね…これ」
「エア…ちびたちも……大丈夫か……!?」
この状態だと電波も繋がらないだろう
どうにか家まで帰ろうとトレーナー室の扉に手をかけるが
ツツー ツツー
理事長「トレセン学園内にいる全教職員、全生徒に次ぐ!」
理事長「たった今台風での避難勧告が出たッ!速やかに建物内に避難せよ!もう一度言うッ!速やかに避難せよ!」
理事長「トレセン学園はこれより近郊家庭の避難場所として解放するッ!出勤している教職員は安全に配慮して第一体育館までくるようにッ!」
「っ!」
「とりあえず行くぞ……このままだと連絡のとりようもない」
[newpage]
『ふぅ…大変だったな…』
カーリー「全速力でもビショビショだね…」
シップ「すごい!たいふーすごい!!ままもびゅーんってした!」ワクワク
『…我が子ながら能天気なやつだな』
カーリー「あはは…走ってるときも楽しそうだったもんねシップちゃん」
結翔「ううぅ…」グスグス
『あぁ…結翔……そろそろ泣き止んでくれ』ダッコ
マイ「ゆうくんだいじょーぶ?いたいいたい?」
結翔「ねーちゃ…ぐすっ…ひぐっ……ごわがっだ……」グスグス
マイ「だいじょーぶだよ!いたいのいたいのとんでけー!」ナデナデ
『優しいな』ナデナデ
カーリー「アドマイヤちゃん面倒見いいね」
『まったくだ』
カーリー「ショパンちゃんは爆睡してるけど…」
『この子も肝が座っているものだな…』ピコピコ
リン「あっ!おねーちゃーん!!」ダッ
『うん?』
『久しぶりだな、元気だったか?リン』
リン「うん!お姉ちゃんも?」
『あぁ』
カーリー「避難してきたはいいけど…どこに居ればいいかな?」
リン「さっきあっちにお兄ちゃんたちいたよ?」アッチ
リン「2人ともすっごい心配してたよ、お姉ちゃんたちのこと」
『…一応顔を出しておくか……学園のために…』
カーリー「…お姉ちゃんだって会いたいくせに」
『シップ!行くぞ!』
4人の子どもたちと妹を連れ夫たちを探す
シップ「ぱぱだ!!まま!ぱぱいる!!」バタバタ
『うん?本当だな』
「むむっ!愛しの娘に呼ばれた気がする!」
雅哉「…気のせいでは?いくらエアグルーヴさんでもお子さん4人連れてこんなに早く「ぱぱ!!」
雅哉「ホントにいた!?」
カーリー「雅哉さん!」
雅哉「カーリーまで……ずいぶん早かったね」
シップ「ぱぱ!まますごかった!びゅーん!だった!」ブンブン
「だよなぁ、ママすごいだろ?そう思うよなぁ?」ギュー
ショパン「しょぱも!しょぱも!」グイグイ
「ふふっ、はいはい」ダッコ
「っと…すまん、今忙しくてな…しばらくゆっくりしててくれ」
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理事長「学園の非常用電力も底を尽きつつある……それが無くなれば電力よ供給が…」
「とてもじゃないが、この状況では電力の回復は見込めませんね」
理事長「仕方がない…学園地下にあるシステムを稼働しよう」
雅哉「なんですかそれ?」
理事長「エアロバイクやランニングマシーンを使うことで電力が供給されるのだ」
「それならまだなんとかなりそうですが…」
理事長「同意ッ!お察しの通りこれからレースシーズンだというのにウマ娘たちにハード負荷のトレーニングはさせられない!」
いつ回復するかも分からない電力のために、いくらたくさんいるとはいえ、プロのアスリートである生徒たちを高負荷マシーンでトレーニングさせ続けるわけにはいかないのだ
「…すこし、案があります」
学園の体育館を見て思っていたことがある
我が家にも同じことが言えるが……ウマ娘が多い
現役でなくともウマ娘ならばエアロバイクやランニングマシーンは使えるだろう
[newpage]
「あー、あー……お集まりの皆様にお願いがあります」
「現在、この学園の電力は予備電力で賄っておりますが、それが尽きつつあひます」
「電気が復活するまでの間、学園の発電システムから電力を供給しなくてはなりません」
「エアロバイクやランニングマシーンなどのトレーニング機器の使用により発電が可能ですが、皆様も日頃より応援して下さっている当学園のウマ娘たちはこれからが本番」
「今、負担をかける訳には参りません」
「つきましては、いま、この場にいらっしゃるウマ娘の方々にお願いです。どうか、お力を貸してはいただけないでしょうか」
「もし、協力してもいい、という方がいらっしゃいましたら、学園内のトレーナーにお声掛けください」
「どちらの機器につきましても、10分で交代とさせていただく予定です」
結翔「とーさん、かっこいい」キラキラ
『ふふっ、そうだろう?』
『さっ、カーリー……子どもたちをお願いできるか?』
『私も久しぶりに走りたくてな』
カーリー「後で交代ね?」
『あぁ』
あの女帝エアグルーヴが協力する
その事実に老若男女全ての人々が沸き上がった
エアグルーヴと走りたい
エアグルーヴの力になりたい
そう思ったウマ娘たちが続々と声をかけてきてくれた
それだけではない
「最高だ…職場でもエアの手料理が食べられるだなんて…」
A「こっ、これが、あの、エアグルーヴさんの…手料理っ!」
学園のカフェテリアを使ってエアグルーヴが主体となって料理を振る舞ってくれたり
『彩りファンタジア~』
ギャー!!
学園内でのミニライブに特別参加してくれたり
『うむ、こんな状況でも泣かずに偉いな』ナデナデ
小さなファンとの撮影会を開いてくれたり
「助かったよ」グッタリ
『なに、あなたにも…この学園にも、そして…私に声をかけてくれた皆にも世話になったんだ』
『恩返しをする良い機会になったさ』
エアグルーヴという偉大なウマ娘の存在によって、暗くつらいハズの避難場所は明るく楽しい場に変わったのだ
いつまでも応援し、推してくれる者の存在がある
その事実が改めてエアグルーヴというウマ娘の素晴らしさを浮き彫りにしてくれる
そんな特別な1日になった