世界一幸せなトレーナーとエアグルーヴ   作:たわけ

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やっと帰れたたわけ

やっと

やっとだ

ようやく帰れる

2ヶ月もの間離ればなれだった

愛する妻のもとへ

 

 

 

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ブロロロロロ

 

ガチャ

 

『!』

たったったったったっ

『お帰りなさ…い?』

「すぅー」

「たらいま…」

『…2ヶ月ぶりの再会だというのに』

『いったいどこに挨拶をしているんだ』

 

玄関の鍵が開かれる音がして、2ヶ月ぶりに愛する夫と会える

そう思って小走りで玄関まで迎えに行ったのに、彼はというと…私の胸に顔を埋めて深呼吸

ましてや、そのまま帰宅の挨拶まで済ませたときた

疲れているのだろう

わかる

わかるのだが…

なんか、もっとこう…あるだろう!

行く前はあんなに寂しがっていたのに何だこれは!?

私の顔を一見すらせずに胸に飛び込む?意味がわからない!

だいたい、なんでソコなんだ!普通に抱きつくんじゃダメなのか!?

 

「えあー」

『…なんだ』

「あいたかったよ…」

『私もだが』

『疲れているのは承知の上で言わせてもらう』

『挨拶くらい顔を見てしろ、たわけ』

「だってぇー」

「ここがいちばんエアの匂いするから…」

「おちつくの」

「すぅー」

「はぁー」

『はぁ』

『まったく、仕方のない旦那様だ』

『このままではスーツがシワになってしまうぞ』

『肩を貸してやるから立ち上がれ』

「…」

『聞いているのか?返事くらい…』

zzz

『なっ!?寝ているのか?』

『っ!しょうがない…』

 

 

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すっかり眠ってしまった夫を抱きかかえてベッドまで運びネクタイはクールビズでしていなかったため、スラックスからベルトを抜き取って靴下を脱がしてやる

どうせ寝ているときに脱いでしまうんだ

ストレスは少ない方がいい

本当なら着替えさせてやりたいが起こしてしまっては可哀想だし、なにより私をここまで悲しませたバツだ

スーツがシワになるくらい甘んじて受け入れて貰わねば

まあ、クリーニングに出すのは私なのだが…

 

『はぁ』

本日何度目か分からないため息が出てしまう

 

期待していた私がバカだったのだろうか

彼ならば私を一目見た瞬間に襲いかかってくると、割と本気で思っていた

帰省などで少し肌を重ねなかっただけで襲われるし、昨年の夏合宿の後だって大変だった

 

もう、私に魅力は感じなくなったのだろうか

それとも、合宿中に新しい女が?

いやそれはない

もしもそうならば匂いで気がつく自信がある

潮風の匂いで精度は落ちるが他の女の匂いなど嗅ぎ逃す訳がない

結ばれず彼の片想いだったならば?

 

『はぁ』

考えすぎだ

しばらく寂しくてナーバスになっているのだろう

きっと彼もただ疲れていただけに違いない

きっと明日は…いや、余計な期待はやめよう

 

そんなことを考えながらも、久しぶりの夫の匂いと体温に包まれて微睡みへと落ちていく

 

[newpage]

「…んっ」

「んぅ…」

『…』zzz

「ふぁぁぁぁあ」

「もう朝か」

昨日は確か…

そうだ、帰ってきてそのまま寝ちゃったんだ

 

目の前には安心した様子で眠る妻の姿があり、帰ってきたんだと自覚する

 

「エア?まだねてる?」

『…』zzz

 

むにっ むにゅ

『…んっ』zzz

ほっぺ 柔らかいな

もうちょっと

むにっ むにゅ むちっ

『むうぅ…』

「あっ、起きちゃった?」

『にゃにしゅるんだ…』

「無防備なほっぺが可愛くて」

「いじめちゃった」

『はにゃせ…』

「えぇー?やだ」

「もうちょっと遊ばせてよ、可愛いし」

『んにゅう…』

「もうっ、耳絞んないでよぉ」

「そんなに怒ることないだろ?」

『ふんっ』

「ごめんごめんっ、気持ちよく寝てたもんね?」

「ゆるして?」

『たわけ』

「うん」

『…罰として今日の朝ごはんはあなたが作れ』

「それは大変だ。女帝陛下の仰せのままに」

『貴様、そう言えばやり過ごせると思っているだろう』

「あれぇ?ばれちった?」

『たわけ』

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