4月30日
お母様「アドマイヤちゃん」
みんな「『おたんじょうびおめでとう!』」
マイ「わぁー!ありがとうー!」
この日は娘のアドマイヤグルーヴの2歳の誕生日だった
エアグルーヴの両親と妹たちも自宅に招きお誕生日パーティーだ
プレゼントももらい、イチゴがたっぷり乗ったバースデーケーキも食べてご機嫌なアドマイヤ
大人たちもみんな盛り上がり、お義父さんとお酒でも…そう思っていた時だった
『その、実はご報告がありまして…』
みんな「?」
報告?なんかあったっけ?
『お腹の中に、2人目が…』
みんな「…」
お母様「えっ!?ついに!?おめでとうエアグルーヴ!」
「?」
お父様「今何ヵ月なんだ?」
『まだ5週で』
「??」
カーリー「女の子?男の子?」
『まだわからないな』
「???」
リン「いつ産まれるの?」
『それもまだだ』
「????」
「え"っ?エア、妊娠してるの!?」
『いまか?』
『だからそうだと言っているだろう』
「えっ?俺には言ってくれても良くない!?」
『驚かそうと思ってな』
お母様「まあまあ、なんでも良いじゃない」
お母様「とにかくおめでとうエアグルーヴ」
お父様「アドマイヤちゃんもお姉ちゃんになるのかぁ」
マイ「?」
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Air groove side
そんなこんなで月日は経ち
エアグルーヴのお腹も膨らんできた8月上旬ごろ
やけに気持ちいい晴天であったことが嫌でも思い出される
娘のアドマイヤグルーヴを母に預け、夫と2人仲良く散歩をしていたときのことだった
「でさー…」
『ふふっ、なかなか大変そうだな』
「ほんとだよ」
「!」ダッ
『なっ!?春翔さん!?』
夫が突然道路へと飛び出していった
私も、と思った時にはもう遅かった
目の前には大型のトラックと真っ赤に染まった肉塊だけが取り残されており
私の記憶はそこで終わっていた
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春翔side
何気ない日曜の昼下がり、レースなどもなかったその日娘を義両親へ預け身重の妻と散歩をしていた
「でさー…」
『ふふっ、なかなか大変そうだな』
「ほんとだよ」
ふと交差点の向こう側、歩道を見てみると40代くらいと思われる太った母親と反対にガリガリに痩せた娘と思われる2人が信号もないのに止まっていた
変だった
この8月の炎天下、30度なんて優に越えたこの日になぜ長袖なんて着ているのか
母親の方は半袖だ
車道の信号は赤だった
しかし向こう側からとてもふらついた青いトラックがもうスピードでやってくる
居眠り運転か?もしそうならエアを避難させなければ
そんなことを考えた時だった
女の子が母親から手を離し車道へと歩き始めた
「!」ダッ
気がついた時には体が動いていた
そこで俺の記憶は終わった
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気がついたら病院にいた
目の前には母が心配そうに私を見つめてきていた
『おかあ、さま…?』
お母様「あぁ、気がついたのねエアグルーヴ」
『どうして、ここに』
お母様「あなた道路で倒れて…」
『!春翔さんは!?』
お母様「動いちゃだめよ!」
お母様「いま、お腹の子が危ない状態なの。安静にしてなさい」
『っ!』
『お願いします、お母様、教えてください、彼は』
お母様「……とりあえず一命は取り留めたようだわ」
『…どういう、意味、ですか…?』
お母様「どうにも損傷が酷いようで…最悪の場合も覚悟して欲しいと…」
『なっ!?』
お母様「お願い、エアグルーヴ、大人しくしていてちょうだい」
『でもっ』
お母様「でもじゃない!お腹の子がどうなってもいいの!?」
『…』
お母様「とにかくアドマイヤちゃんはしばらく家で預かるから、あんたも安静にしてなさい」
『…はい』
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10日後
お母様「退院は出来たけど安静にしとくのよ?」
『はい、ご迷惑をおかけしました』
お母様「それで…行くんでしょ?春翔くんのところ」
『えぇ』
お母様「…驚くなって言うのも無理な話かもしれないけれど、覚悟はしておいてね」
『っ!はい…』
---------------春翔の病室
コンコンコン
ガラガラ
『!?』
『なっ!』ヨロッ
お母様「…」ギュ
ベッドの上には包帯でグルグル巻きにされ、沢山のチューブや機械に繋がれたヒトの姿があった
『は、ると、さん……?』
お母様「…えぇ」
『…』
お母様「…」
『…お母様』
お母様「なにかしら」
『すこし、彼と二人きりにしてもらえますか…』
お母様「!でも…」
『すこし、ほんのすこしで良いんです。10分だけ』
お母様「…わかったわ」
ガラガラ
ピー ピー
という機械の音だけが響く無機質な部屋で今一度最愛の夫を見つめる
体はおろか頭部も包帯が巻かれ、本当に夫がどうかすらもわからない
『はるとさん…』
わからない、のに
勝手に涙が溢れてくる
『はるとさん!はるとさん!』グスグス
『なんでっ、どうしてっ…』
どうして、あなただけ、あなたばかりが苦しい思いをしなければいけないのか
彼に一体なんの罪があるというのか
彼がいったい何をしたというのだ
ただ、生きていたいだけなのに
当たり前の日常を送りたいだけなのに
しあわせに、なりたいだけなのに
それすらも許されないのか
神の運命のいたずらだとでも言いたいのだろうか
とすれば私はどれだけ神を憎めばいいのだろう
どれだけ運命を呪えばいいのだろう
たのむ かれを かえしてくれ…