世界一幸せなトレーナーとエアグルーヴ   作:たわけ

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真実

「だ、れ…?」

 

 

『えっ?』

 

 

 

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Air groove side

 

それからのことはあまり覚えていない

 

医者を呼んできて

なんか話をして

 

それから…なんだったか

 

とにかく家に戻った

 

これからどうしようか

 

アドマイヤに何と言えば良いのか

 

 

 

 

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春翔 side

 

 

目が覚めたら美しいウマ娘が目の前にいた

 

どうやら俺のことを知っているようだったが、誰だっただろうか…

 

でも…なんだか…わからないが…しっている…ような気がしなくもない

 

なにか…とても大切な…大事なことを、忘れているような気がしてならない

 

大切な…大切な…何かを

 

思い出さなくては…

 

…あの女性に聞いたら何か分かるだろうか

 

明日も会えるだろうか

 

会える?

会いたい、のか?また…

 

 

 

[newpage]

 

ふとベッドサイドへ目を向けると、小さいジップロックに入れられた砕けたシルバーリングとこれまた砕けた青いネックレスに目が奪われる

 

これ、どこかで…

 

 

 

コンコンコン

 

「どうぞー」

 

ガラガラ

 

「よかった、今日も来て下さったんですね」

『え、えぇ』

 

「!」

「あっ」

『!どうかなさいましたか?』

「いえ、その…ネックレス」

『!これは…私の大切な人からのプレゼントで』

「そう、だったんですね…」

「その、あっ、お名前…伺ってもよろしいですか?」

『え?あぁ、そうですよね、私はエアグルーヴです』

「エアグルーヴさん、うん」

「俺は『四宮春翔さん』」

「!」

『ふふっ、知らない人の見舞いには来ませんよ』

「ですよね…」

 

「…伺っても良いですか?」

『どうぞ』

「俺は、どんな人間だったんですか?」

「エアグルーヴさんとは、どんな関係なんですか?」

『…』

『…とても、とても優しい方でした』

『私にも、他の人にも』

『結構子どもっぽいところとかもあって』

『私との関係は…今はまだ言えません、すみません』

「いえ、ありがとうございます」

 

『では、本日はこれで…』

 

 

 

昨日は気がつかなかったけど…おなか大きかったなぁ

太ってるようには見えなかったし妊娠とか?

 

…結婚してる、よな指輪してたし

 

それに、ネックレスも同じ…

 

……俺…?

 

でも、俺はウマ娘と接点なんて…

 

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一度眠ってスッキリしよう

そう思い目を閉じるが…眠れない

 

しょうがなく眠るのは諦め、テレビを見ることにした

 

 

 

…え?

なんで?

どうして?

 

 

おかしい、絶対におかしい

 

俺に家族はいない、だがこの部屋は個室だ、テレビだって見れるし病院にしては妙に病室が豪華だ

 

誰が払うんだ?

 

そもそも俺の職業は?

 

なんで?

 

 

 

考えても仕方ない、また明日エアグルーヴさんに聞こう

 

そう思いテレビに視線を戻す

 

天皇賞(秋)過去のレースを振り返る

 

あぁ、なんかあったらしいなぁ

 

他に見たいものもなかったからそれを見る

 

 

キャスター「先日の天皇賞(秋)もすごかったですが、いやぁ、天皇賞(秋)と言えば5年前の!」

タレント「ええ!エアグルーヴの!」

 

エアグルーヴ?

競争ウマ娘だったのか?彼女は、でもならなんで…

 

キャスター「では、その5年前の天皇賞(秋)を映像で振り返ってみましょう!」

 

 

 

 

実況「おおっと!ここで!ここで!女帝が来た!!先頭バブルガムフェローを躱して!エアグルーヴ!エアグルーヴゴールイン!!」

 

 

見たことが…ある

でも、これじゃない

いや、正確に言うならば"ここからの"景色じゃない

見に、行ったのか

でも俺は別にレースに興味はなかった

なぜ

 

 

そのとき、信じがたい光景が目の前にあった

 

汗だくのエアグルーヴにタオルを手渡し、共に歩く

 

 

 

俺の姿だった

 

 

 

 

どういう、こと、だ…?

 

どうして俺が?

 

トレーナーに、なったのか…?

 

エアグルーヴの?

 

じゃあ指輪は?ネックレスは?

 

いたい…

 

あたまが…

 

あたまがいたい、われそうなほどに

 

いた、い…

 

 

 

[newpage]

 

あいたい

 

 

あいたい

 

 

あのひとに

 

 

たいせつなひと

 

 

いのちをかけてもまもる

 

 

あのひとに

 

 

あいたい

 

 

おれの

 

 

おくさん

 

 

かぞくに

 

 

あいたい

 

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「はっ!」バッ

 

『大丈夫、ですか?』

「へっ?」

『その、泣いてたようなので』

「え?あぁ、うん、大丈夫、です」

『…悪い夢でも?』

「いや、うーん、どうだろう…」

『?』

「良いとか悪いとかっていうより、欲望…かな」

「誰かに会いたいって思ってたんだけど」

「俺、家族とか、大切な人とかいないからさ、へんだなぁって」

『…』

「でも…エアグルーヴさんの顔みたらなんかスッキリ?っていうか、落ち着いた?感じです」

『!』

『なら、よかったです』

 

『あっ、お水かえてきますね』

そう言ってエアグルーヴさんは花瓶の水を変えに行った

 

あまり気にしていなかったが毎日来る度に違う花を持ってきてくれている

 

花が好きなのかな…

 

「!」

いやいやいや

違うだろ

相手は既婚者なんだ

俺なんかにチャンスは…

 

でも、俺、かもしれないんだよな…

 

聞くべきだろうか…

 

聞いて…もう会えなくなったら…?

 

どうして、会いに来てくれるんだ?

 

 

ガラガラ

 

「あのっ!」

『はい』

「いつもお花、ありがとうございます」

『いえ…』

「お花、好きなんですか?」

『はい』

『見た目の美しさも然ることながら、開花に至る過程、花言葉なんかも魅力です』

「花言葉…」

『えぇ、ただ花によってだけでなく色や本数によっても違うんです』

「へぇ、面白いなぁ」

「退院したら育ててみようかなぁ」

『…それが良いと思います』

「…あの、エアグルーヴさん」

『はい』

「…いえ、なんでもないです」

『…では、私からも良いですか?』

「なんですか?」

『この写真の子どもを見てください』

「構いませんが…」

 

『…何か、分かることがありますか?』

「…いえ、特には…かわいらしい子ですね」

『そうですか』

『では今日はこれで…』

 

 

 

[newpage]

 

エアグルーヴさんと会うようになってから数週間

 

秋も真っ只中になり寒さこそあれど日中は日が昇り陽射しがあたるとぽかぽかとして気持ちいい日々が続いていた

 

エアグルーヴさんに車椅子を押してもらいながら病院の庭に出る

 

『寒くないですか?』

「はい、久しぶりに出ましたがやはり外の空気は良いですね」

『良い天気ですね』

「えぇ…本当に」

 

良い天気

 

 

いいてんき

 

 

イイテンキ

 

 

「あの日も良い天気だった」

『!』

『あの日?』

「そう、あの日」

「あの日?」

 

あの日って

 

 

 

いつだ?

 

 

 

「いた、い…」

 

「いたいっ!」

『!大丈夫ですか!?』

「いたいいたいいたい」

『っ!』

 

 

 

 

 

---------------------------------------------------------------------------

 

そうだ…あの日…俺は

 

ごめんなエアグルーヴ

 

 

 

 

 

『!』

『よかった…目が覚めたんですね』

『体調はどうですか?頭は痛くないですか?』

「ふふっ、うん」

「大丈夫だよ」

 

「エア」

 

『!』

 

『あっ、あぁ…よがっだっ、よがっだぁ…』グスグス

『はるとさん…よがっだぁ』グスグス

 

「ごめんね、寂しい思いさせて」ナデナデ

 

 

[newpage]

 

後の医者の話によると「信じられない、奇跡的なレベルです!」とのことだ

 

俺も同じ気持ちだが

 

『春翔さん?どうしたんだ?』

「うん?大丈夫、なんともないよ」

『本当か?具合悪くないか?』

「大丈夫だよ、本当に」ギュ

「はぁー、早くマイに会いたいなぁ」

「あっ!忘れられてたりしないかなぁ」

『それはないだろう…』

『かなり寂しがっていたからな』

「うんー、お菓子とか買ってったほうが良いかなぁ」

『あまり甘やかすなよ』

『それに、』

『マイに会うのも大事だが、あなたはその前に警察だろう?』

「げっ」

『とりあえず事故に遭いかけた子どもを春翔さんが助けようとして轢かれたってことになってるが…』

「!」

「そんだけ!?」

『!違うのか?』

「ぜんっぜんちがう!それじゃ何の解決にもなんない」

 

 

 

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警察署にて

 

警察「ご足労ありがとうございます、お体は大丈夫ですか?」

「えぇ、まだ完治はしていませんが」

 

警察「それでは早速お話を伺わせていただきますね」

警察「事故のことで覚えていることをお話ししてもらえますか?」

 

「まず、あれは事故ではないです」

警察「と、いいますと」

「あの子は意図的に車が来ているところに向かって行きました」

警察「何のために?」

「カメラにも写っていたと思いますが、あの日は炎天下で、半袖を来ていても暑かった…のにも関わらずあの子は長袖だった、母親は半袖なのに」

「母親はふくよかな体型なのに娘は度が過ぎるほどに痩せ細っていた。なにより、娘が車の来ている車道に行くのに追いかけなかった。繋いでいた手が離れたら絶対気がつくのに」

警察「…つまり?」

「あの子、虐待うけてませんか?」

「長袖は傷痕を隠すため、道路に出たのは…保険金目当てでは?」

警察「…保険金のために、我が子を…ということですか?」

「はい…違ったらそれはそれで良いですが」

警察「では、すこし調査してみます」

警察「連絡先を教えて頂けますか?」

「はい…」

 

 

 

そんなこんなで事件は終末を迎えた

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