『では、行ってくるぞ…』
「うん、いってらっしゃい」
『…本当に大丈夫か?無理はしないでくれよ?』
「大丈夫だよ、エアもゆっくりしてきてね」
『そうか…では、何かあれば連絡してくれ』
「うん」
『それじゃあな』
「いってらっしゃい」チュッ
とある日の昼前、いつもよりオシャレな服装をしたエアグルーヴはスーツケースを持ってどこかへ行くようだ
やけに心配しているようだったが…
「ふぅっ、それじゃ頑張りますかね」パシッ
マイ「おかあさんは?」
「お母さんは明日のお昼までお出かけだよ」
「今日はお父さんと一緒にいようね」
マイ「うん…」
「寂しいか?」
マイ「うん」
「お母さん、夜になったら電話してくれるって言ってたぞ」
マイ「ほんと!?」
「うん、お父さんもお母さんもウソつかないだろ?」
マイ「うん!」
そう、エアグルーヴは今日から1泊2日で友人のフジキセキと温泉旅行に行くのだ
日々の家事に育児に疲れているだろう、と夫である春翔が勧めたことであった
つまりその間、四宮家の家事育児は春翔が1人でこなすことになる
朝ごはんと植物への水やりなどは終えているため、直近の家事は洗濯と掃除…それから結翔のごはんだろう
ミルクは妻が母乳を搾乳していってくれたものがいくつかあるが、それでは足りなさそうなため粉ミルクも使いながら上手くやる必要がある
どうしてか我が家の子どもたちは母乳以外は口にいれてくれないのだ
「洗濯は…まだ終わってないな」
洗濯機からの呼び出しはまだのため先に掃除をすることにした
とはいえ、我が家は掃除の鬼である妻によって常に綺麗に保たれているのだが…まあ、幼い子どもがいる家庭で掃除をしない、という選択肢はない
まずは掃除機からだ
床には物を置かないようにしているし、マイもオモチャをお片付け出来るようになったため床掃除はかなり楽だ
もう娘のアドマイヤグルーヴが掃除機にびっくりすることもなくなった
掃除機をかけながら部屋を右往左往する俺の後ろをちょこちょことついてくる姿に呼吸を忘れながらも部屋の隅までしっかりかける
1部屋終わるごとに結翔の様子を見て泣いていないか、困っていないかを確認する
「よしっ、掃除機終わり!!」
とりあえず普段の生活範囲の掃除機がけは終わったのでクイ○クルワイパーをかけて徹底的に綺麗にする
いつもはそれはマイの仕事のようなので今日も任せることにする
「マイ、お願いね」
マイ「うん!」
小さな体でもテキパキと動くその姿からは母の面影を充分に感じられる
まだ幼いながらも隅っこやソファの下などもしっかりとかけているのは妻から教わったのだろうか
ちょうどリビングは終わった、というタイミングで洗濯機からの呼び出しがかかったため洗濯に移行する
タオル類はアドマイヤに手渡し、庭まで運んで干す。大方の衣類も俺がカゴにいれて持ち同様に干す
下着などの類はランドリールームに干している
マイ「おとうさん、はいっ…はいっ!…はいっ!」
娘がカゴから洗濯物を取り出し俺に手渡して、それを俺が干す…完璧なコンビネーションだ
これまたエアグルーヴからの指導を受けたのか、それともお手伝い好きな自身での解明かはわからないが、タオル…トップス類…ズボン類…と行った具合にジャンルごとに分けて渡してくれる
うちの娘優秀すぎないか?
親バカを拗らせながらも洗濯を終え再びリビングへ戻る
娘にテレビを見せてやりながら穏やかに過ごしていると突如泣き声が響き渡る
「どうした~結翔」ダッコ
オムツは先ほど替えたばかりだ、おそらくミルクだろうと考え哺乳瓶にエアの母乳と粉ミルクをいれて人肌程度まで湯煎する
「よしよし結翔、ミルクだぞ~」ダッコ
結翔「んくっ」ゴクゴク
案の定見事な吸い付きだ
普段から哺乳瓶を活用していてよかった
しばらくリビングでチビたちの世話をしていたら結構いい時間になってきた
お昼ごはんを作らねば
カットして冷凍してある野菜やウインナーを使ってにんじんたっぷりのピラフにした。あとはにんじんのポタージュとちょっとしたサラダも添えてある
食事中にエアからLANEがきていた
アドマイヤと結翔は大丈夫か、とのことだったのでピラフを頬張る娘とぐっすり眠る息子の写真を送っておく
食後もすこしやりとりをした後でアドマイヤの歯磨きと食器の片付け、子どもたちのお昼寝だ
午前中に母のライブ映像を見てたくさん踊ったからだろう。布団を被せたらすぐに眠ってしまった
俺もひと休み…というわけにはいかず残りの家事を済ませる
夜に時間がとれるとも限らないため風呂掃除(入浴後にもしているが念のため)とお湯張りの設定もしておいた
「はぁ、すごいなエアは…」
掃除だけでもかなりの労力だった
労いに掃除用ロボットでも導入しようか…と考えたが掃除は妻の趣味でもありストレス発散に一役買っている、そんなことをすれば妻の機嫌を大きく損ねることになりかねないと判断し忘れることにした
寝室に向かいアドマイヤの隣に横になってウマッターを眺める
眠ってしまって子どもたちに何かあっても気づけないのが怖いから昼は寝ない
週末に買いだめをしているため買い出しに行かずに済むのが救いだった
30分ほどすると息子が再び泣き始めた
結翔「あぁー」オギャー
「どーしたぁー?」ダッコ
「あぁ、オムツか」
ささっとオムツを替えて、ついでにミルクもあげる
げっぷもさせてベビーベッド…ではなくアドマイヤの隣に寝かせ写真を撮り愛妻へと送る
[newpage]
夕方頃になり娘も起きて軽くおやつを食べさせたら遊びに付き合ってやる
最近はもうピアノのレッスンが日課になりつつあるが娘の成長を直に感じ取れるのは嬉しいものだ
20分ほどのレッスンを終えると
マイ「かけっこしたい!」
とのプリンセスからの要望があったためちょうど目覚めていた息子を連れ庭に出る
夜になればまだ冷えるが今はちょうど良い気温だ
怪我をしないようしっかりと準備運動をさせてから好きなように走らせてやる
からだの使い方が上手くなってきていて、転ぶかもしれないと肝を冷やすこともほとんどなくなってきていた
つくづくウマ娘とは不思議な生き物だ
楽しそうに走る娘と気持ち良さそうに日向ぼっこをする息子の動画も撮り、これまた妻へと送信する
しばらく走り満足したようだったのでついでに、と洗濯物を取り込み娘とともに畳むことにする
当然のごとくこれも手伝ってくれるのだ
タオルの端と端をきちっとあわせて角の立つように畳む
時間はかかってしまうが親の贔屓目なしでも充分に美しく感じる仕上がりだ
タオルは娘に、それ以外は俺が畳んで収納した
そうこうしているともう夕飯の準備をしなくてはならない
さすがにこれを手伝わせるわけにはいかないので娘にはお絵かきをして待っていてもらうことにした
子どもたちがやんちゃだったときのことも考えて設計時には壁や床は防汚加工もしていたがアドマイヤグルーヴは紙からはみ出さないように丁寧に丁寧に描いてくれる
机の上で描いているため、はみ出してしまったときは目をうるうるさせて、「あのね、まい、くれよんてーぶるにかいちゃった…ごめんなさい…」と律義に謝ってくるのだ
もちろん俺もエアもそんなことで怒ったりはしないのだが、普段からエアが一生懸命に掃除をしているところを見ているからだろう
おそらく母が一生懸命磨いた机を汚してしまった、との罪悪感から謝罪をしているのだ
まだ幼いのにしっかりしている、もっと子どもらしくても良いのに…と思う反面この年から人のことを思いやれるように育ってくれているのが嬉しく、誇らしくもあった
夕飯の支度をしながらも娘と息子の様子見は欠かさない
万一のことがあってからでは遅いのだ
「よし、できたぞ」
「味見してくれるひとー!」
マイ「はーい!」
元気な味見係さんがやってきたのでスプーンでシチューをすくい、しっかりと冷ましてから口に入れる
「どうだ?」
マイ「おいしー!!」ブンブン
「ふふっ、そっか、良かった」
「もうすぐご飯だからお片付けして、手も洗って来るんだぞ?」
マイ「はーい!」
「よし、いいこだ」ナデナデ
自分たちの食事の用意もしつつ息子もそろそろお腹を空かせるだろうとミルクの準備もしておく
お片付けも手洗いも終えたアドマイヤがダイニングへ来たので夕食の時間だ
「「いただきます!」」
しっかりと手を合わせていただきますの挨拶もする
我が家の食事は野菜たっぷりだが、アドマイヤは一切好き嫌いすることなく口にしてくれる
きっとエアの料理が上手だからだろうなぁ
と思うとさらに妻に頭があがらない
夕食の後片付けを終えたら入浴だ
設定していた時間通りに風呂が沸いたため娘と息子を連れて浴室へ行く
正直、今日1番の山場だと思う
今まで1人で子どもの入浴をしたことがないのだ
いつもならエアが側にいて2人で分担できるのだが…
どうしたものか…と考えた結果、浴室のドアを開けたまま俺が髪や体を洗い、その後でアドマイヤと結翔を洗うことにした
最初から一緒に入っても良かったのだが、結翔を置いておける場所がないのと、お湯にあたれない間体を冷やして風邪を引いてしまうと思ったのだ
2人の世話でいっぱいいっぱいで俺自身が湯船に入ることは出来なかった
子どもたちのドライヤーやスキンケアを終えて、水分補給と食後のホットミルクを飲ませて歯磨きも終わらせる
あとは寝かしつけるだけ…というタイミングで妻から連絡が来る
「もしもし」
『私だ』
「うん」
『子どもたちはどうだ?』
「2人ともお風呂とかも終わってあとは寝るだけって感じ、まだ起きてるよ」
「見る?」
『あぁ』
テレビ通話へと切り替えて娘に渡してやる
「マイー!」
マイ「なあに?」
「お母さんだぞ」
マイ「わぁ!おかあさんだ!」ピコピコ
今日1日会えなかったからな、嬉しいのだろう
今日会ったことを耳としっぽを存分に動かしながら楽しそうに話していた
エアも目を細めて嬉しそうに聞いていた
もう遅いからな、おやすみだ…と言われるまでずっとしゃべりっぱなしだった
その後は戸締まりと消灯を確認してマイに絵本を読んで寝かしつけて俺も就寝だ
途中で息子に起こされながらではあるが一日の疲れがすっと抜けていくようだった
泥のように眠るというのは正にこのことなのだろうとすら思った
本当に妻には頭があがらない
これからも労り、協力し続けようと再認識した1日だった