「しっかり腕振るぞー!」
『下じゃない!前を向いて走れ!!』
マイ「はぁっ、はぁっ…ふぅぅ」
「お疲れさま、はい飲み物」
マイ「ありがとう」ゴクゴク
とある休日、自宅の庭にてエアグルーヴ夫妻の長女は両親から指導を受けながら走っていた
マイ「これでうんどーかい、いっちゃくとれるかなぁ?」
「やってみるまでは分かんないよ」
『勝負とはそういうものだ』
どうやら来週末の運動会のかけっこのための練習のようだ
言わずもがな彼女の両親、母は女帝とまで呼ばれた最強と言えば必ず名の上がるウマ娘エアグルーヴ、父はそんな母を育てた名伯楽なのだ
それを幼いながらに知っている彼女は大好きで尊敬している母のようになりたいと、まずは運動会で一着を目指して励んでいるのだ
マイ「でもまいがかつもん!」
『ふふっ、その息だ』ナデナデ
マイ「あっ!おかあさまはしってよ!」
マイ「じょてーなんでしょ?はやいんだよね!?」
マイ「みたいなぁ」ウワメヅカイ
『うっ…わかった』
「無理すんなよ?」
『分かっているさ』
『無事是名バというからな…』
ちびっこギャラリーと共に女帝の走りを見る
『一周だけだぞ』
マイ「うん!」
「よーい…スタートっ!!」
『ふっ!』ダッ
『ふぅ…どうだった?』
マイ「すごい!かっこよかった!びゅーんって!」
シップ「しっぷも!はしる!」
「シップ…走り疲れてバテてるのにか?」
ちなみにだがゴールデンウィークからの練習だったため遊びにきていた祖父母にもトレーニングをつけてもらっていた
祖母は女王ダイナカール、祖父はそのトレーナー
いくら払えばそんな偉人たちに指導して貰えるのか…この世の全ウマ娘が憧れる面子である
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そして運動会当日
ーでは、選手の入場ですー拍手でお迎えください
「うん、落ち着いて歩けてるな」パシャパシャ
お母様「きゃー!アドマイヤちゃん来たわよ!お父さん!」バシバシ
お父さん「あぁ」ドウガトル
ーまずはクラス対抗の玉入れです!
小さな体で遥か高くにあるカゴに玉を入れるのは容易ではない
故に、だ
ぺしっ
ぱしっ
園児たちに投げた玉が当たることもある
アドマイヤグルーヴにも当然その機会は訪れることはあり…
ぺしっ
マイ「あっ」
玉を拾って立ち上がったタイミングで彼女のウマ耳の間に空高くからの赤い玉が振ってきた
驚いて耳としっぽがピーンとたった後どちらもしゅんと垂れてしまった
そしてそれを家族は見逃さなかった
お父様「なっ!アドマイヤちゃんに!」
「くっ!許さんぞあのちびウマ娘め…!」
『落ち着かんかたわけめ』ペシッ
「でもっ」
『でももだってもない』
『この競技であれば意図せずともそんな事故が起こりうることは明白だ』
エアグルーヴからの鶴の一声でアドマイヤのモンペ達による怒りは少し収まったのだった
ー続いては綱引きです、みんなで力を合わせて頑張りましょう
ドーベル「みんな頑張るよ!」
ドーベル「せーの」
園児たち「えいえいおー!」
元気よく円陣を組んだあと綱のもとへ行く
マイ「うぐぐぐぐっ…」グー
マイ「むうぅぅ…」グー
お母様「あらあら必死なお顔も可愛いわねぇ♪」
その後もいくつか競技があり…
ーこれにて午前の競技は終了です、各自お昼休憩を取ってください。午後は1時からの再開予定です
たったったったったっ
『おかえり、お疲れさまアドマイヤ』
マイ「うん!つかれたー」
「頭大丈夫か?玉入れのとき当たってたろ?」ナデナデ
マイ「へーきへーき」ブンブン
お母様「さて、お昼にしましょ、おばあちゃんも作ってきたのよぉ」
エアグルーヴとお母様が作ったお弁当にはおにぎりや唐揚げ、卵焼きなどなどお弁当の定番メニューや俺も好きなマイの好物であるカボチャサラダなどとにかく盛りだくさんだった
一般家庭であれば食べきれるか不安になる量だが、うちには生まれたばかりのショパンを除いてもウマ娘が6人もいるのだ
余る、なんてことはまずないだろう
みんな「いただきまーす」
もぐもぐ
マイ「おいしー♪」ピコピコ
『それは良かった』
『食べすぎて午後の競技に支障をきたさないようにな』ニコニコ
お母様「喜んで貰えてよかったわぁ…朝から頑張った甲斐があった」
カーリー「朝4時から起きてたもんね…」
「エアも4時起きだったな」
『あなただって何度も荷物の確認をしていただろう』
「そろそろ午後の競技が始まるな」
リン「レースあるんだよね?頑張ってね!」
マイ「がんばる!」フンッ
『さあ、行ってこい』
ーまもなく、午後の部が始まります
父兄参加のリレーに参加される方はご準備願います
ぞろぞろとやる気満々、と言わんばかりのお父さんたちがグラウンドに向かう
春翔はというと参加する気はつゆ程もなかったため、普通のスニーカーに黒のパンツ、青いカッターシャツ…と運動する気の全くない服装であるが彼らと共にグラウンドへ向かっていた…
アナウンスが流れたときに家族勢揃いで春翔に視線を向けていたうえ、アドマイヤまでもが選手席のほうから目を輝かせていたのだ
これを拒む、だなんて選択肢は春翔にはなかった
「おれ、走るの嫌いなんだけどなぁ…」
なぜトレーナーになったのか
そして運悪くじゃんけんに負け、なんとアンカーになってしまったのだ
憂鬱な気持ちでコースに立って準備運動をする
みんな一斉にスタートし、春翔のチームは現在3番手、次の選手にバトンが渡るところだった
ころんっ
バトンが落ちた
「あっ」
気の弱そうなお父さんが一生懸命に拾って走るもしんがりで春翔の手にバトンが渡った
「はぁ」
別に勝ちたいとは思わなかったが、スタートしたときに見えてしまった
不安そうな娘の表情
うちの娘にそんな顔はさせたくない
アドマイヤにはよろこんで貰わねば
そう決意し全力で走る
「ふっ!」ダッ
まがいなりにもトレーナーだ
ストライドの取り方、コーナリングの技術、楽な呼吸の仕方、ダートを走るときのコツ
知っていることを全て使いきる
「はぁっ!」
4番手
3番手
2番手
あとひとり
フジキセキのトレーナーと並んだときだった
ゴール!!
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、っ」
フジトレ「くっそ!速すぎたろっ…はぁっ、はぁっ」
「ごほっ…はぁっ、あー、つかれた…」
幼稚園の運動会にカメラ判定などあるわけもなく同着になった
『お疲れさま』タオル
「ん」
リン「お兄ちゃんカッコよかったよ!」
カーリー「普通に速すぎ、陸上とかやってたの?」
「いや、ぜんぜん」
「俺走るの嫌いだし」
お母様「この感じなら来年はぶっちぎりで一着間違いなしね♪」
「ら、らいねん?」
来年もあるのか?こんな苦痛を伴うイベントが?
「…エアさん、来年走りません?」
『たわけ、私が走ってどうする』
「俺が走ったって何にもならんだろ!」
『私としてはあなたが走っているのは初めて見たからな、貴重なシーンだったぞ』
『アドマイヤも喜んでいるようだったしな』
ー続きまして最終競技1ハロンレースです!皆さん応援よろしくお願いします
お父様「アドマイヤちゃんは…次の次だな」
お母様「春翔くんずいぶんと気合いが入っているわね」
「?まぁ愛娘のデビュー戦ですからね」
『そうではない、幼稚園の運動会にレース用のカメラを使うやつがあるか!』タワケッ
「いますー」
「ほらっ」シセン
フジトレ「頑張れよーキセキ!」
フジ「…さすがに気合い入りすぎじゃないかな?」
妻s「『はぁ』」
偶然にもエアグルーヴの娘アドマイヤグルーヴとフジキセキの娘キンシャサノキセキは同級生で、レースも同じラウンドだった
「おっ、マイの番だぞ」
『フジの娘もいるな』
「がんばれーマイ!!」
『…おい待て』
『それはなんだ?』
「それって?」
『揃いも揃って手に持っているうちわのことだ』
春翔も含めエアグルーヴ一家は
アドマイヤちゃん頑張って♡
勝利の女神♡
などなど見るのもこっぱずかしいような文言が描かれたうちわを持ってアドマイヤグルーヴを応援しているのだ
なにより恐ろしいことに、アレは彼らが自ら手作りしている…恥ずかしくないのか?
「お前そりゃ、自分の娘を応援するのに何が恥ずかしいんだよ」
『応援するのは良い、うちわが恥ずかしいだろう』
そんな良い合いをしているとレースが始まった
『出遅れてはいないな』
アドマイヤはまずは4番手当たりにつけてペースを保っている
父に教わった通りだ
残り1/3といったところでバクシンしていた1番手2番手が落ちてきてアドマイヤはスパートをかける
いくらウマ娘と言えどまだ園児
スタミナは少ないしスピードも限られている
戦略なんて立ててくるのは親がガチ勢の子くらいだ
順調にペースをあげていきキンシャサノキセキと肩を並べ、さらに力強く踏み出す
母と祖母に教わったことだ
そしてトップスピードを維持したまま…
ゴール!!
ー1着アドマイヤグルーヴちゃん、2着キンシャサノキセキちゃん、3着…
「いよっしっ!!」
お母様「短い距離なのにちゃんとレース出来てたわね」
『すごいぞ…アドマイヤ…!』
お父様「うぅっ…」グスグス
食後でお昼寝中の妹弟たちに見せられないのが残念なほどの走りだった
ー続きまして本日最後のプログラム
子どもたちが一生懸命に練習してきました
ダンスです!
野外用のスピーカーから少し男が割れながらも流れるうまぴょい伝説
お母様「ぎゃー!!」
「がわ"い"い"ぃぃぃ!!!」
リ、カ「かわいいー!」
ーこれにて運動会を閉会します
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帰宅
『お疲れさまだな、アドマイヤ』ナデナデ
「よく頑張ったな」ギュッ
お母様「ダンスもいつもより3割増しで可愛かったわよー♪」
お父様「レースもすごかったぞ」
マイ「ほんとに!?まいもおかあさまみたいなじょてーになれる!?」
「あぁ…なれるさ、きっとな」
リン「いーなー、運動会…楽しそうで」
カーリー「私たちにはもうないもんね」
『喜べアドマイヤ、今日の夕飯はお前の好物がたくさんあるぞ』
マイ「ほんとぉ!?やったぁ!ありがとうおかあさま!」ギュッ