「ご飯できたぞー!」
父の声に耳をピクンと震わせ、持っていたオモチャをおいて一斉に食卓へ集まる
我が家ではお片付けは寝る前にやるお約束だ
『こーら、まずはおてて洗わなきゃだろ?』
ちびっこ「はーい」
母の声にも素直に答える
約2名は食欲に敗北してのことなのだろう
なぜなら今日は
「よし、みんな揃ったな」
「今日はニンジンハンバーグだぞー!」
みんな大好きニンジンハンバーグの日なのだ
四宮家では毎月28日を"ニンジンハンバーグの日"と命名し夕飯にニンジンハンバーグを作るようにしている
ニンジンハンバーグはみんなの好物でもあるし両親としても献立を考える手前が省けて一石二鳥なわけだ
ウマ娘sの分はナポリタンの上に肉厚ハンバーグ、そしてそのハンバーグを奥深く貫く蒸しニンジン
春翔と結翔の分はハンバーグにニンジンのグラッセを添えてある(そんなにニンジン食べないから)
みんな「『いただきます』」
しっかり皆で手をあわせて挨拶だ
挨拶などのマナーは幼いうちにしっかりと躾ようと夫婦でも話し合い、義実家にも甘やかさないようにと話を通していた
小さなお口でほっぺたいっぱいに料理を詰め込んで幸せそうな表情をしている子どもたちの顔を見ていると自然とこちらまで嬉しくなってしまう
「慌てなくても誰も取ったりしないぞ?」ニコニコ
『そうだぞ、落ち着いて食べろ』ニコニコ
目を輝かせてニンジンハンバーグを頬張る子どもたちの前では品など説いていられない
ハンバーグの一口一口をゆっくり楽しみながら味わうアドマイヤと結翔、一方でシップは特に大好きなニンジンをせっせと先に食べてしまったようだ
そしてシップの手が止まる
ハンバーグももちろん大好きだが、ニンジンはもっと好きだ
しかしシップの皿にはもうそれはない
そこで目に写ってしまったのだ
シップの右手側に座る姉、アドマイヤグルーヴの皿に乗る魅力的なオレンジ色が
もっと、たべたい
そんな思いから姉の皿に残されるニンジンを凝視してしまっていた
そしてそれに気がついた者も
マイ「たべたいの?まいのあげる!」ヒョイッ
アドマイヤはあろうことか後でじっくり味わおうと一口も食べずに取っておいたニンジンをフォークで刺し、主役のいない妹の皿へとおいた
シップ「ありがとー!」パアァァ
『ふふっ、優しいなアドマイヤは』
『さすがお姉ちゃんだな』ニコニコ
マイ「う、うん!えへへ…」ションボリ
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夕食後
結翔「とーさん、ぶーぶ!」
「うん?でもこれから魔法使いキャロリーヌの時間だろ?後でお父さんと一緒に見よう、な?」
そう、いつもはこの時間アドマイヤグルーヴがお気に入りのテレビアニメを見ている予定なのだ
結翔「やーだー!みるの!!」
マイ「いいよ!まいはおえかきするの!」
「…そうか?じゃあ結翔、お姉ちゃんにありがとうしような」
結翔「ありがと」
マイ「ううん、まいはおねえちゃんだもん」ションボリ
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お風呂タイム
『よし、おわりだ遊んでいて良いぞ』
シップ「これ、あそぶ!」
そう言って我が家の怪獣ウマ娘が手にしたのは姉のお気に入りのオモチャ
お風呂で使えるクレヨンだった
基本的に我が家においては"誰のもの"と所有者を決めておらず、皆で仲良く使うようにさせている
それでもみんな好きなものはあって、今回のクレヨンはマイのお気に入り、他のきょうだいはあまり使っていなかった
『うん?今日はクレヨンなのか?珍しいな』
湯船に入り父の膝の上に座って壁にお絵かきだ
さらさらと様々な色を使って真っ白な壁に彩りをもたらす
そのときだった
ポチャン
マイ「あっ…」ションボリ
アドマイヤが一番好きな色
母の勝負服の色でもある青
そのクレヨンがシップの手から湯船の中には沈んでしまった
慌てて掬おうとするも時すでに遅し
透明だった湯が青く染まり、固形物は包装紙を除いてはなくなっていた
シップ「ぅぅ…ごめんなさい……」ションボリ
「ごめんなマイ、また新しいの買っておくから…」ナデナデ
マイ「うん、だいじょーぶだよ」
まいはおねえちゃんだから
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夜
アドマイヤの寝室にて
「よし、そろそろ寝ような」トントン
マイ「うん…おかあさまは?」ションボリ
「ショパンにご飯をあげてるんだ…今日はお父さんと寝よう」ナデナデ
マイ「うん…」
「マイ…大丈夫か?」ナデナデ
マイ「…」
「我慢しなくていいんだぞ」ナデナデ
マイ「うぅぅ…」グスグス
マイ「ぐすんっ…おとうさまぁ……まいね…にんじん、たべたかったぁ…」グスグス
「うん」ナデナデ
マイ「きゃろりーぬもみたかった……くれよんもかなしかった……」グスグス
「うん」ナデナデ
マイ「おかあさまに…ぎゅーってしてほしかった……」グスグス
「うん」ナデナデ
マイ「でも…まいはぁ…おねえちゃん、だから……」グスグス
「…」
「違うよマイ」ナデナデ
「そんなのどうだって良いことなんだよ」ナデナデ
「確かにマイはシップや結翔、ショパンから見たらお姉ちゃんだ」
「でもな、お父さんとお母さんの大切な子どもなんだよ…」
「マイも他のみんなも、すっっっごく大切なんだ」
「いっぱい甘えて欲しいし、いっぱいわがままも言って欲しい…」
「難しいかもしれないけど、それが出来るのは今だけなんだ」
「マイにたくさん我慢させちゃってごめんな、つらかったよな…ごめん」ナデナデ
「無理なんかしなくたって良いんだ」
「欲しいものは欲しい、嫌なことは嫌、そういうの、お父さんとお母さんにちゃんと教えて欲しいんだ」
「できるか?」
マイ「う"ん"…」グスグス
「うん、ありがとう」ギュー
マイ「おとうさま…」
「ん?」
マイ「まいね、きょうね、おとうさまとおかあさまといっしょにねたいの……」
「うん、もちろん良いぞ」ダッコ
「じゃあお父さんとお母さんのお部屋行こっか」
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夫婦の寝室にて
ガチャ
スタスタ
ポスンッ
『うん?』
「今日は一緒に寝るんだもんな?」
マイ「うん…だめ?」
『ダメなわけがないだろう』
『ほら』バッ
マイ「!」ポスッ
『ふふっ』ギュー
マイ「おかあさま…あったかい…」スヤスヤ
『この子も…まだまだ小さいな』ギュー
『…泣いていたのか?』
「うん」
「にんじんとかクレヨンとか、おねえちゃんだからって我慢してたみたいで」ナデナデ
『まったく…不器用な子だな』ナデナデ
『誰に似たんだか…』ジー
「おれぇ?」
『…どうしてあなたまで泣きそうなんだ』
「…なんか、情けなくってさ…」
「…俺は、俺が親になったら…絶対子どもを泣かせるようなことしないって、そう決めてたのにさ、結局マイに辛い思いさせちゃって…」
『…それを言うならば私のほうがヒドイだろう』
『この子が悲しんでいるのを気づいてすらやれなかったんだ』
『…最近な』
『アドマイヤがあまりにしっかりしていて、全然相手をしてやれていないんだ』
「怪獣さんたちは手がかかっちゃうもんな」
『それにショパンも見なくてはならない』
『それで、この子がまだ幼子だというのを忘れてしまうんだ』
『アドマイヤなら大丈夫だろう、わかってくれるだろう、許してくれるだろう…』
『ちゃんと見ていてやらなければならない、他ならぬ母である私が、だ』
『…申し訳ないことをしたな…ほんとうに…』
「…明日のさ、マイの弁当…にんじんいっぱい入れてあげような」
『あぁ…』
「クレヨンも、もっといろんな色入ってるの買おう」
『あぁ…』
「夜も、こうやって時々3人で寝よう」
『あぁ…』
「今までの分、いっっぱい甘えさせてあげよう」