『すぅー…すぅー…』zzz
「すぅー…すぅー…」zzz
もぞもぞ
『ん……んぅ…?』
まだ残暑の残る日もあれど徐々に朝晩は冷え込むようになってきたこの頃
朝日…と呼ぶには少し暗いため、まだ早い時間なのだろう
腹部に感じる違和感でふと目が覚めた
この違和感の元凶には心当たりがある
寂しくて布団に入ってきた子どもか、隣で眠る夫…そのどちらかだろうと寝ぼけ頭で考える
どちらにせよ気にすることでもない…そう判断して再び眠りに着く準備をする
が
『…なんなんだ……』
それはもぞもぞと動き続け、どうにも私の腹を撫で回しているようだった
こんなことをするのは子どもたちではなく夫だろう
『やめてくれ…まだ眠いんだ……』
そう抗議してみるも効果は見受けられなかった
夫の左手は私の首の下を通って目の前にあり、右手は今もなお人の腹を撫で回している
ということは私はいま夫に後ろ抱きにされている状態か…
再び抗議の意を込めてしっぽではたいてみる
ぺしっ
「…ん…?…すぅー…」zzz
もぞもぞ
だめだ…まったく効果がない
どうするか…そう思索を巡らせていた時だった
むにゅっ
『へぁっ!?』ピクッ
あろうことか右手は腹から上へと侵略を開始し胸部へと到達していた
むにむに もにゅん くりくり むにゅっ
『ちょ、ちょっと、まて!』
慌てて身を翻し、夫の胸にすっぽり収まる
事後に気がついた
これは良策だったのでは?
この体勢であれば腹も胸も触られない
もしかしたら彼の右手も止まってくれるかもしれない
やっと眠れるな…
体の力を抜き、愛する夫の匂いに包まれながら微睡みに落ちようとしていたそのときだった
さわっ
『ひっ!』ピーン
尻よりもやや上、しっぽの付け根辺りに彼の手が差し込まれた
そして
さらさら むにっ さわっ もにゅもにゅ
『ま、まて、そうだ、ホントは起きているんだろう?///』
夫から…いや夫の手から与えられる刺激はもとより、しっぽの付け根なんて場所に触れられているという事実が恥ずかしく感じられて仕方なかった
そもそもどうしてこんな目に遭わなくてはならないのだ?
この人はいったいどんな夢を見ているんだ?
欲求不満なのか?
確かに昨晩はしていないがその前は朝まで交わっていたはずだ
次にイヤらしい触りかたをされたら手をひっ捕まえてやろう…そう覚悟して目を瞑る
ウトウト
ウトウト
『すぅー……ひんっ!』ピーン
またしても眠りを邪魔するは夫の右手
一瞬何が起きたかわからなかった
『んっ…ふぅぅ…んん…や、やめ、ろ…///』ピクピク
今度はしっぽで遊ばれていた
根本の方を捕まれ、指先で撫でるように刺激を加えられ続ける
次にイヤらしい触りかたをされたら手をひっ捕まえてやろう
そんなこと出来るはずもなかった
我々ウマ娘の最大の強みはパワーとスピード、最大の弱点は敏感なしっぽだろう
それを握られてしまっては体に力は入らず、彼の手を捕まえるどころかびくびくと体を震わせて耐えるので精一杯だ
どうにかしっぽを振って抵抗を見せるも彼が掴んでいるのは根本
まるで意味を成さない
このままではマズイ…力ずくで逃げ出すか…?
しかし私は彼の腕の中
逃げ出すには夫の腕をほどいてベッドから出るしかない
しかし今の私に器用に二本の腕から抜け出すなんて出来るわけもない
ならば夫を突き飛ばすか?
だめだ、今は力の制御なんて出来ない
もしそんなことをすれば夫に怪我をさせてしまう…最悪殺してしまうことだってあり得るんだ
どうする
どうする
ぼんやりと霞がかった頭で必死に考えているときだった
かぷっ
『ふにゃあ!』
はむっ かぷっ くにくに れろれろ
『ふぁあっ…ん、ふっ…みみはぁ…だ、めだ…や、もっ…むりっ…///』
もう、だめだ
そう思ったとき
「ん?えあ…?」
[newpage]
目が覚めたら妻が目に涙を浮かべ顔を真っ赤にしてプルプルと震えていた
いつもは凛々しくピンと立っているお耳もへにゃりと垂らしている
これは……あぁ…夫として情けない
「ごめんな、エア気づいてやれなくて…」
「具合、悪かったんだろ?」
『た、』
「た?」
『たわけぇぇえええ!!///』
『もう知らん!!二度と貴様とは一緒に寝ないぞ!!!///』ダッ
「?」
「!?」
「へぁ!?なに!?どういうこと!?」
「オレなんかした!?」
※エアさんはしばらく春翔さんに近づかず、逃げ回っていたそうです
※ご機嫌を取るのには相当な苦労が成されたそうです
[newpage]
「ん…?んぅ……ん?」
なんだかくすぐったくって目が覚めた
懸命に目を開いても暗闇
近くにあったスマホを見ると、まだ眠りについてから2時間ほど
まだ少し寝苦しい時期にも関わらずこの時間帯に目が覚めてしまうのは辛いものがある
それはそうと、俺を目覚めさせた元凶は何なのか
接触冷感のタオルケットをまくりあげるとそこには不思議な光景
俺のTシャツから毛の束が生えてきている
!?!?!?
わかる、いや、わからないのか?
うん、俺も何がなんだか分からなかった
だって正体不明の毛の束が服の中に入り自分の腹を撫で回しているのだ
そしてその毛束は隣で気持ち良さそうに眠る妻の腰に続いており、それが彼女のしっぽであると次第に理解した
時折ぴくっと震えたり、気持ち良さそうな表情と連動して揺れるのは夢のせいだろうか
バサバサと荒れ狂うのは何かに拘束されているような窮屈さからだろうか
はやくしっぽを出して寝よう
早々に決心して再び眠りに就く
ドンッ
「ぐはぁっ!」ゴロゴロ
『!?』
何が起きたのか…気がついたら床にいた
その前に腹部に強い衝撃を受けたのだ…先ほどの妻の体勢からして、彼女の右足から繰り出された見事な蹴りだろう
さすがだ、頑張って鍛えたもんな
『なっ!?大丈夫か!?』
「あ、あぁ…なんとかな…」
お前が言うのかよ、なんて言葉を口にすれば命はない
「な、なんで…蹴られたんだ…?」
『たわけ貴様!妻のしっぽを踏んで寝る奴があるか!!』
あぁ、そうか…しっぽ踏まれてびっくりしちゃったんだな…なるほど
なるほど?
これ、なんでオレ怒られてんの?