義母との通話のあと
また1人頭を抱える
「はぁ…」
妻の妊娠中、共に話したはずだ
甘やかすばかりが愛情ではない
それは頭ではよく分かっていた、いや分かっているつもりだった
しかしながら人間とは身勝手なもので、先日の"我が子たちは皆ママ派事件"の傷はうっすら後を引き、母に叱られたからと俺に甘えてくる娘に心地よさを覚えてしまった
強い言葉で以て叱ることは相手に嫌われる覚悟を持ってしなくてはならない
妻はそれをよく理解していた
学生時代からよく問題児たちを追っかけ回して説教をしていたんだ
その矛先が俺に向かったことも何度かある
親として愛する我が子に嫌われるなど耐えられないものだ
それは恐らく子どもたちがこの世に生を受ける前から己の腹で大切に育み続けた彼女の方がよく認められることだろう
相反する2つの事象
子どもたちに嫌われたくない、でも叱らなくてはならない
そして聡明な彼女は大切な我が子の未来を案じて嫌われ役に勝手でた
それを俺は無に帰したどころか踏みにじったのだ
腹を立てられるのは当然のことだ
すっかり重くなった気分を幾分かマシにするため全てシャワーで流すことにした
あとのことは明日考えよう…きっとまだ悩むが
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お母様「エアグルーヴ」
『…お母様』
お母様「まさかホントに戻ってくるとはねぇ、あんなにラブラブだったのに、いや分からないものね」
『やはりご迷惑でしたか…すみません』
お母様「なにを勘違いしてるのよ」
お母様「娘と孫と一緒に居られるのだもの迷惑なわけないでしょ?ただし、あまり遅くならないうちに帰るのよ?」
『……はい』
お母様「ホントに分かってるの?」
『…』
お母様「別に夫婦喧嘩に口を出そうってんじゃ無いけれど、今回のことはあんたにだって反省すべき点はあったと思うわよ?」
『それは…分かっています…』
お母様「あんたたちは確かに夫婦だけれど子どもたちにとってはどっちも大好きな親なんだからね?」
『…どうすれば…良いのでしょうか』
『今までもケンカをしたことはありますが…いつも彼が折れてくれて……私は…』
お母様「ちゃんと腹割って話すのが手っ取り早いんじゃない?変に取り繕おうとか気を遣おうとするから上手くいかないのよ」
『…きっと…彼も分かってはくれているんです』
『甘やかすだけではダメだと、子どもたちのためにはならないと…なのに…どうしても行動に移してくれない…』
お母様「どうしてか聞いてみたの?」
『一応話はしました…でも叱るばかりが教育ではないと』
お母様「それもそうね」
『彼の言い分も分からなくはないのです』
『でもまだ幼いあの子たちには言葉で説得したって伝わらない』
お母様「ええ」
『だから叱っても、泣いて春翔さんのところに行けば許してもらえると思って…』
お母様「それは良くないことかもしれないわね」
お母様「でもねエアグルーヴ、両親に怒られたらシップちゃんは誰に行くの?」
『!』
お母様「もちろん叱るのは大切なこと、言葉で伝えるのも大事よ?エアグルーヴに叱られて春翔くんに甘えに行って許してもらえると思ってしまったなら、それはあんたたちの負け」
お母様「どうしてシップちゃんはあなたに怒られるかもしれないのにイタズラばかりするの?そこをちゃんと考えて、それで叱って納得させなきゃダメ…じゃないとどうして叱られてるかシップちゃんも分からないのよ、だから嫌われてるんだと思っちゃう」
『!私は嫌ってなんか!』
お母様「ええ、そうね」
お母様「思えばこそ、でもそれは幼いシップちゃんに伝わる?言えば伝わるとは限らないわ。でも言わなきゃ絶対に伝わらない」
お母様「春翔くんにもシップちゃんにも」
『…シップと少し話をしてきます』
お母様「押し付けるのはダメよ?ちゃんと話を聞いてあげること」
お母様「それと、さっき春翔くんから電話が来たわ」
『!』
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『シップ』
シップ「!」
『こちらへ来い』
シップ「や!」
『大丈夫だ、叱ったりしないさ』コイコイ
シップ「?」テクテク
『よいしょっと』ダッコ
『ふぅ…大きくなったな…』ナデナデ
『シップ…まずは謝らせてくれ』
『たくさん怖い思いをさせてすまなかった』
シップ「?」ギュー
『まだ幼いお前には難しい話かもしれないな…』
『私はな、もちろんパパもだが、お前たちのことが大切なんだ…大好きなんだ』
『分かるか?』
シップ「うん」ギュー
『大好きなシップにはしっかりした子に育って欲しい』
『私はシップがダメなことをしてしまったから怒るんだ』
『シップの好きなオモチャが壊されたらどう思う?』
シップ「や!」
『そうだな』
『それは皆そうなんだ。パパもママもおじいちゃんおばあちゃんもみーんな一緒だ』
『でもシップがしてしまったことはな、オモチャを壊すのと同じことなんだ』
『された人はイヤな気持ちになっちゃうだろう?』
シップ「うん」
『そんなことをされたらシップのことが嫌いになってしまうかもしれない』
シップ「!や!!」ピーン
『そうだな、ママもいやだ』
『大好きなシップにはみんなに好かれて欲しい』
『素敵な人になって欲しいからダメなことはしないで欲しいんだ』
シップ「うん」
『だがまだシップには何がダメで何が良いことか分からないだろう?』
『だからシップがダメなことをしたらママは怒るんだ』
『色んなことが気になるのは良いことだぞ?』
『でもな、物を壊したりお花を抜いたり、人の物を取ったりして誰かがイヤな気持ちにならないか考えてみろ』
『イヤな気持ちになる人がいると思ったらしないでくれ』
『分かるか?』
シップ「うん」
『ふふっ、うん。なら良い』
『ママとの約束だぞ?』ナデナデ
シップ「やくそく!する!」
『よし、なら難しいお話はこれでおしまいだ』
『ねんねするぞ』
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ピロン
「!」
長らく連絡が着かなかった妻からのLANE
もう少し落ち着いたら戻る
簡潔なメッセージだ
"落ち着く"とは何が落ち着くのか
正直な話、俺にはどうやって謝れば良いのかは分かれどこの先どうすべきなのか
その術が分からずにいた
とにかく今は妻と子どもたちに会いたい
わかった
迎えに行くから連絡してくれ
こちらからもメッセージを返してダブルベッドに沈んだ
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2日後
ピーンポーン
お母様「はーい」
「おはようございます」
お母様「ええ、おはよう」
お母様「さっ、あがってあがって」
スタスタ
お母様「春翔くん来たわよー!」
エアグルーヴに指定された日の朝(待ちきれなかった)さっそく義実家へと赴いた
よく整理されたリビングへ通されると駆け寄ってくる子どもたち、そしてバツの悪そうな表情の妻がいた
マイ「おとうさまおはよー!」ギュー
結翔「おはよー」
シップ「ぱぱー!」
ショパン「んー」ハイハイ
「うん、みんなおはよう」
「いいこにしてたか?」
マイ「うん!」
マイ「あのね、おばあちゃんとねかけっこしたよ!すっごくはやかった!」
「そうかそうか、楽しかったか?」ナデナデ
マイ「うん!」
お母様「さてと…ほらおじいちゃんと遊んでいらっしゃい」
ちびs「はーい!」バタバタ
「エア…」
『…』
「…」
「ごめん」『すまない』
「『!』」
「謝るのは俺の方だろ」
「エアは何も悪くない」
『いや、ちゃんと話もせず挙句勝手に家を出ていったんだ…謝らせてくれ』
「俺もエアが大変な思いしてるの分からなくて…いや分かろうとしなくてごめん」
「ホントに…情けない話なんだけどさ」
「エアに怒られたシップが俺に甘えに来るのが嬉しく感じちゃって……もちろんシップの教育の面で良くないことなのは分かってるんだけど…でも俺には出来なかった…いや今も出来ない…ごめん」
『それは…どういう意味だ…?』
『今も出来ないとは…』
「ごめん…ホントにごめんだけど…俺にはあの子達を怒れない…」
『…理由を聞いても?』
「どうすれば良いかわからないんだ…叱ることも叱られることもちゃんとしてこなかったから」
「やり方も加減も分からない…もし間違えて子どもたちを傷つけるようなことだけは絶対にしたくない…」
『…そうか』
お母様「…エアグルーヴにも言ったことだけれどね」
お母様「何も難しいことじゃないのよ?話し合って納得させるだけ。別に声を張り上げたり怖がらせることは目的じゃないわ」
「!」
お母様「それなら2人とも納得点を見つけられるんじゃないかしら?」
「ありがとう、ございます…エアともしっかり話し合います」
お母様「ええ、それが良いわね♪」
お母様「それじゃ、仲直りもしたことだし。おとうさーん!!」
スタスタ
お父様「どうした?」
お母様「どうしたじゃないわよ!お寿司行きましょお寿司!あっ、焼き肉が良かったかしら?」
お父様「重くないか?」
お母様「そんなことないわよ。みんなお腹ペコペコでしょ?」
お父様「あ、あぁ…それじゃあ子どもたちも連れてくる」
スタスタ
『…少し痩せたか?』ピトッ
『ちゃんと食べてたのか?唇もカサカサだぞ?』
「そういや忘れてたよ…水は気がついたら飲んでたけど」
『忘れてただと?』
「ご、ごめんて…お前たちのことで頭がいっぱいで…そんな余裕なかったんだ」
「あっ!でも風呂はちゃんと入ったぞ?」
『当たり前だたわけ!』
『まったく…私がいないと食事すらまともに摂れんのか』
「うん…だから居なくならないでね」
『!』
『それは今後のあなた次第だ』ギュ
「っ!///」
「ねぇ…しばらく離れてたんだしさ……今夜、いい…?」
『!』
『あたりまえだ…///』ギュ
お母様「あらあらすっかりラブラブになっちゃって!かわいい孫たちはもう一泊させた方が良いかしら?」
『おっ、お母様!///』