「ごほっ、ごほっ」
『大丈夫か?』
「完全にうつされた…ごほっ…」
『病院行けるか?』
「むり」
『もう少し我慢してくれお父様に相談してみる』
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数分後
『少し動けるか?病院に行く準備をしたい』
「ん…」
『自分では無理そうだな…』
子どもたちを部屋に隔離した上でマスクも着用して扉の向こうにいる夫のもとへと向かう
極力着替えやすく今時期でも寒くないように…と服を考えるがなかなかに難しい条件だ
布団にくるまっている状態を見るに寒いのだろう…まだ熱が上がりそうだな
『体動かすぞ』
驚かせないように声をかけてから体勢を変えてやる
自力では座っていることすらままならない夫をスウェットに着替えさせコートは家を出る直前に着せることにした
それにしても
『ずいぶん重症だな…かわいそうに…』ナデナデ
「えあ…」
『なんだ?』
「ん」
ピーンポーン
『すまないお父様が来たようだ、少し離れるぞ』
先ほど連絡して子どもたちをしばらく実家で預かって貰うことになった
さすがに夫の看病もしながら家事育児は無理があるしアドマイヤが幼稚園にウイルスを持ち込むリスクも避けたい…子どもたちには悪いが
お母様「おはようエアグルーヴ」
お父様「おはよう」
『おはようございます』
お母様「予約は済ませたんでしょ?」
『ええ』
お父様「ならば早く行こう。春翔くんも辛いだろう」
お母様「私はちびちゃんたちとお留守番してれば良いかしら?」
『おねがいします』
[newpage]
病院
医師「あー、うん陽性だね、インフル」
「ですよね」
医師「薬出しとくから安静にしといてくださいね」
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帰宅
「すみませんお義父さん…お手数をおかけして…ごほっ」ゴホゴホ
お父様「あぁ、無理はしなくて良い。なに息子のためだ気にすることないだろう、親として当然の努めだ」
「ありがとうございます…」
お父様「歩けるか?」
「ちょっとキツいです…」
お父様「少し待っていてくれ、準備をして貰う」
ピーンポーン
お母様「あら、帰ってきたみたいね」
『さっ、お部屋に戻ろうな』
シップ「ぱぱ!」
『パパは風邪を引いちゃったんだ、少し離れていなきゃダメだからお部屋に行くぞ』
シップ「むぅー…だってぱぱとあそんでないよ?ずーっといない!」
『もう少し我慢してくれ、もうしばらくすれば会えるからな』ナデナデ
お母様「さてと、ショパンちゃんもおばあちゃんとお部屋に行きましょうね」ダッコ
ショパン「あ~」
結翔「とーさんかじぇ?かじぇさんばいばいする!」
『バイバイするのが大変なんだ、時間がかかってしまうからな』
『お父さんと遊ぶのはもうちょっと我慢だ』ナデナデ
お母様「いいわよー!」ガチャ
『大丈夫か?』
「ん」フラフラ
『お父様、代ります』
お父様「頼む」
『歩けるか?抱いたほうが楽か?』
「あるく…」
「うぉっと…」フラフラ
『まったく…無理をするなたわけ』
『無理なら無理だと最初から言え』ダッコ
「…えあちゃん」
『なんだ』
「はずかしいんだけど」
『我慢しろ』
「アラフォーのおじさんが20代の人妻美人ウマ娘にお姫様抱っこされてる構図はキツいものがあるよ」
『私は平気だぞ』
「おれがへいきじゃない」
『病人なんだ、大人しくしていろ』
スタスタ
ガチャ
ポスッ
「ん?べっど?」
『今日から子どもたちは実家でお泊まりだ』
『ベッドのほうが体も楽だろう』
「でも、えあは」
『大丈夫だ』
『ほら、大人しく寝ていろ』トントン
「…」
「すぅー…すぅー…」zzz
『ふぅ』
思いの外大人しく寝てくれたな
やはり相当体が辛いのだろうな…かわいそうに…
寝ている間に子どもたちの準備をしてやらねば
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お母様「それじゃ、行くわね」
『はい、子どもたちをよろしくお願いします』ペコッ
お母様「ぜんぜんウェルカムよ」
お母様「さっお父さん車出してちょうだい」
『お前たちもいいこにしてるんだぞ』ナデナデ
ちびs「はーい」
[newpage]
子どもたちを見送り再び夫の様子を見に行くが…
「…う、うぅ……はぁっ……こほっごほっ…すぅー…うぅ……」ゴホゴホ
寝付いたときよりも大変そうだな
家事は全て終わらせたし夕飯にはまだ早い
アイスまくらや冷えピタもまだ新しい
まったくと言ってよい程にする事も彼に出来ることもなかった
息苦しそうに顔を歪めて眠る愛しいヒトの頭を顔を胸を撫で、手を握る
一刻も早く快復することを祈ってひたすらに
驚くべきことに次第に彼の呼吸は安定し、表情も穏やかなものになっていく
少しでも自分の存在が彼の安らぎに繋がっているのかと思うと、かわいそうだと思いながらもしっぽは左右に振れてしまう
「ん…えあ…」
『どうした?』
「あつい……」
『ふむ……体を拭いてやるから少し待っていてくれ』
「だめ……」
「いかないで…」
「えあ…」
『!』
『あぁ、どこにもいかないぞ』
『ずっと側にいるから……安心して眠ってくれ』ナデナデ
私が彼の体調不良の場に居合わせるのは10年連れ添って2度目だが、それまではどうしていたのだろうか…
まさか一度も体調を崩したことが無いわけは無いだろう
やはり、1人…だったのか
親はダメ、兄弟もいない、頼れる親戚や深い付き合いの友人もいない
ずっと孤独だったんだな、寂しかったよな……
私は未だに彼の体を直視できない
見ていると彼の痛みを想像してしまうから
彼を同情の目で見てしまうから
ずっと、ずっとこうしていた
ずっと声をかけて、手を握っていた
気がついたらとうに夜だった
起こそうかとも思ったが折角眠れているのを邪魔するのも悪い(夕飯を食べないと薬を飲めないのだが)
まくらと冷えピタだけもう一度変えて私も眠りにつく
夢では楽しいことがあると良い、と彼に抱きついた……夢でも会いたい、側にいたい
エアさんの献身的な看護の甲斐あり、一週間後
「完全復活!!」