正直に言いますと、めちゃくちゃ不安です。
「では、これにて任命式を終了とする!
一同、解散!!」
「今回は自分のためにありがとうございました!」
駆は特狩組の面々にお礼を言う。
「では、失礼いたしました!」
「うむ。精進したまえ」
「はい!」
駆は退室する。
そして扉が閉まる直前で振り返り、もう一度頭を下げるのだった。
そして……。
「………いゃっ……たぁぁぁぁぁぁ!!」
部屋から見えない所まで来ると、駆は拳を振り上げながら喜びを露わにした。
「これでようやく、やっとスタートラインだ……!」
ついにハンターになれたのだ。
「(本当に長かった……。
でもここからが本番だ……)」
これから先、まだどんな困難があるか分からない。
しかし今は、この喜びを噛み締めよう。
そう思いながら、駆は帰路へとつく……。
その時だった。
『出動要請。
住宅地にてワイルドの目撃情報あり。
ハンターは現場の確認へ向かって下さい』
突然のアナウンスが流れ出す。
出動要請のようだが、目撃情報だけなので緊急性は低そうだ。
だが……。
「おい、駆!
お前も来るんだよ!」
「へ?」
駆を呼び止めたのは、
駆の教官であり、ハンターたちの隊長だ。
「そのライセンスを持った瞬間から、お前も特狩組のハンターだ。
今までみたいに『訓練生だから』なんて言い訳は通用しねぇぞ」
「えぇ!? ちょっと待ってくださいよ!! 俺、ハンターになってまだ一日どころか10分も経ってないんですよ!?
「安心しろ。
今回は現場の様子見程度で戦闘はないはずだ。
慣れるのには丁度いいだろ?」
深見は駆の肩に手を置き、優しく微笑みかける。
「……分かりました。行きます」
「よし。
じゃあ行くぞ!」
こうして、駆はハンターとしての初任務へと向かうのであった……。
––––––––––––––––––
八瀬井地区住宅地にて……。
「ワイルドの目撃情報があったのはこの近辺だ!
各員、捜索を開始しろ!
駆、お前は俺と一緒に来い!」
「はい!」
駆たちはワイルドの捜索を始める。
「さて、駆。
今日は初任務……それもワイルドの捜索任務だ。危険度は比較的低いだろう。
だが、油断せずにな」
「はい!」
「いい返事だ。
しっかりと先輩たちの仕事を見ておくんだぞ?
技術は盗め、経験は積め、知識は蓄えろだ」
「はい!」
それからしばらく、2人は住宅地を歩いていく。
しかし……。
––––––––––––––––––
「すごく静かですね……」
「油断するな、奴らはどこに潜んでるか分からんぞ」
ワイルド目撃警報が発せられ、住民全員が家の中に避難した住宅地は不気味なほどの静寂に包まれていた。
「……っ!」
張り詰めた空気と緊張感に思わず唾を飲み込む駆。
すると、そんな時だった……。
「こちらBチーム」
突如として、他チームから通信が入った。
「農地の物置小屋の中に目標を発見した。至急応援を頼む」
「了解」
どうやら、ワイルドを見つけたらしい。
「急ぐぞ!」
「はい!」
2人は急いで発見場所へと向かった。
––––––––––––––––––
「状況は?」
「目標はこちらに気付いていません。
恐らく、収穫物を食らっているのだと思われます」
そこには、物置小屋を包囲しているハンターたちの姿があった。
その視線の先には……。
「あれが……」
「
ボアの名の通り、そのワイルドは肩や胸にイノシシの鼻のような器官が生えており、背中からは反り返った牙が角のように突き出していた。
「よっし……。
ヤツが飯に夢中になってる今がチャンスだな……。
麻酔で目標を無効化する。援護射撃を頼む!
駆!ハンターの本業、よく見ておけよ!」
「はい……!」
そう言うと、深見はライフルを構えて狙いを定める。
「動くなよ……」
ボア・ワイルドの首に照準を合わせる深見。
そして、引き金を引こうとしたまさにその時だった。
「ブグルルル……。
……!」
突然ワイルドがこちらを振り向いた。
「ちっ!気付かれたか!
おい、撃て!!」
深見の指示に従い、ハンターたちが一斉掃射を行う。
しかし……。
「グルゥアァァァァァァァ!!」
小屋の壁を突き破り、こちらに突進してくるワイルド。
放たれる銃弾をものともせず、ハンターたちに襲い掛かる。
「くそ! 全員、やつを囲め!!
突進だけなら複数には対処しきれないはずだ!!」
ハンターたちは円陣を組み、ワイルドを取り囲む。
「グァ……グッ……!」
周りを囲まれたワイルドはハンターたちを見回す。
「なんだ……?」
深見が疑問を抱く中、ワイルドは突然地面に足を踏ん張る。
そして……。
「ブォォォォォォォォ!!」
「うおっ!?」
鼻状の器官から白い蒸気を噴き出した。
それは霧のように辺りに広がる。
「くそっ!!どこだ!?」
視界を奪われ、下手に発砲出来ないハンターたち。
「落ち着け!まずは状況を確認するんだ!」
「グガァッ!!」
「うわぁぁぁぁぁぁ!?」
「あぁぁぁぁ!?」
霧の中に響き渡るハンターたちの悲鳴。
「一度散開しろ!!これじゃヤツの餌食になるだけだ!!」
深見の言葉を聞き、ハンターたちは分散し、霧を抜け出す。
「動けるのは3人だけ……か」
ハンターたちは互いの位置を確認し合う。
「グルルルル……」
「……!」
そんな深見たちを、ワイルドは威嚇するかのように睨みつけていた。
「こいつ……!
一旦退くぞ……。
このままじゃ全滅だ……」
「はい……」
銃を下ろし、戦意がないことをアピールしながら後退しようとする3人。
だが……。
「……え!?」
駆は小屋近くの物陰に隠れていた女の子を発見してしまった。
「あっ……」
女の子は駆と目が合い、小さく声を上げる。
「……!
……!」
手でバツ印を作り、『動くな』と女の子にジェスチャーを送る駆。
「……!」
そんな駆の意志が伝わったのか、女の子は無言で頷いた。
だが……。
パキッ……!
「あっ……!」
「なっ……!」
木の枝を踏み折ってしまった音が響いてしまう。
「グルル……!」
ワイルドはその音に反応し、女の子の方へと振り向いた。
「マズイ……!」
深見は慌てて走り寄る。
「グルアッ!!」
「きゃ……!」
「うおおっ!!」
深見は女の子の前に飛び出し、ワイルドの突進を受け止めようとするが……。
ドガァッ!!
「がっ!?」
勢いを殺しきれず、吹き飛ばされる深見。
「大沖さん!!」
「ぐっ……う……ゲホッ……!
か……駆……この子を連れて……安全な場所まで……!」
「で……でも、それじゃ……」
「いいから行けぇ!!」
「……!」
深見の怒号にビクッとする駆。
「俺は……こいつを仕留める……!」
興奮状態のワイルドを沈静化させることは容易ではない。
たとえ沈静化出来たとしても、また人に危害を加える可能性が高い。
「これを……使うしか……」
深見は周りに散らばった狩猟具を掴む。
それは、ベルトのバックルに銃が取り付けられた特殊狩猟具、『ヴァレルドライバー』だった。
「はぁ……はぁ……う……ぐっ……」
ヨロヨロと立ち上がる深見。
「……ぐっ……あ……!」
体に走る痛みを堪え、ドライバーを装着しようとするが……。
「ブグァァァァァァァ!!」
「なっ……!うわぁぁぁぁぁ!!」
またもワイルドの突進を受け、吹き飛ばされる深見。
「大沖さぁん!!」
「グルルルルルルル……」
「ぐっ……あ……う……」
ワイルドはゆっくりと深見に近づいていく。
「(このままじゃ大沖さんが……!
なにか……なにか手はないのか……?
……これしか……ない!!)」
駆は深見の手から吹き飛ばされたヴァレルドライバーを拾い上げる。
そして……。
「おい!!」
「ブギッ……?」
「お前の相手はこの俺だ!!」
振り向いたワイルドを真っ直ぐと見据え、そう叫ぶ駆。
「駆……!?
何やってんだ!?逃げろ!!」
「嫌です!!」
「!?」
驚く深見に対し、駆は必死の形相で訴えかける。
「このままじゃ大沖さんも、ハンターのみんなも全員殺されます!!
そんなの、絶対に嫌です!!」
「新米が何言ってんだ!!
それに、お前シミュレーションしかやったことねぇだろ!?」
「そんな事……やってみなきゃ分かりません!!」
「そういう問題じゃ……!」
『ヴァレルドライバー!』
深見の静止を聞かず、駆は起動スイッチを入れ、バックルを装着する。
すると、腰にベルトが巻かれた。
『アクセスライセンス!』
スキャナーにハンターライセンスをかざすと、音声が流れる。
『クロウバレット!』
腰のポーチからマガジンを取り出して起させる。
そのマガジンをドライバーに取り付けられている銃『ヴァレルバスター』に装填すると、仰々しい音楽が流れ始める。
「すぅ……ふぅ……。
……!」
一度息を整え、バックルから銃を外し、構える。
そして……。
「変身!!」
『狩猟解禁!プリデイション!
本能解放!百獣王!レオ!』
トリガーを押し込むと、駆の周囲を眩い光が覆う。
「グガアァッ!!!」
光が晴れると、そこには黒いアンダースーツに、黄色いアーマーと吊り上がったバイザー、首に獅子の鬣の意匠のブラウンのマフラーを身に纏った駆の姿があった。
「うおぉぉぉぉ!!」
百獣の王の名の如く、雄叫びを上げる駆。
今、一人の
校正に校正を重ねすぎました……。
変になってる部分あったら遠慮なく言っちゃっていいです。
○今回登場した新キャラ、新アイテム
・大沖 深見(おおおき ふかみ)
駆たちハンターの教官にして、隊長。
支部長とは旧知の仲。
・ヴァレルバスター
ヴァレルドライバーのバックル部分に装着された銃型の変身アイテム。
これにバレットを装填する事により、変身とフォームチェンジをする事が出来る。
余談ですけど、大沖さんは変身失敗おじさんとか変身失敗隊長とか言われそう。